えっ!被扶養者の介護保険料も支払う義務があるの?あなたの場合は?

配偶者やご両親を健康保険の被扶養者にしている方は少なくないと思います。健康保険料は払わなくていいけど…介護保険料はどうなんでしょう?実は、いろいろなパターンがあるようなんです。被扶養者の介護保険料支払い義務について、それぞれ事例を出してご説明します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

被扶養者は介護保険料を支払う必要があるのか

40歳になると健康保険料に上乗せされて納めることになる、介護保険料。

総報酬制により、賞与からもきっちり引かれています。


介護保険が改正されるごとにその額は上昇しています。

社会保険加入の方は労使折半とはいえ、その負担は大きいですよね。


ところで、健康保険の被扶養者である方が40歳を迎えたら?

また、40歳以上の方を新たに扶養に入れたら?

その方の介護保険料は支払わなければならないのでしょうか。


気になる被扶養者の介護保険料支払い義務について、解説したいと思います。

被保険者と被扶養者の年齢によって介護保険料を払う必要があるかが決まる

結論から言ってしまえば、

「被保険者と被扶養者の年齢」

「加入している健康保険」

によって、支払い義務があるかないかが異なるんです。

被扶養者が介護保険料を支払わなければならない場合

被扶養者でも介護保険料を支払わなければならないとき。

その状況には、いくつかのパターンがあります。


ありがちな状況について、それぞれ事例を出して説明したいと思います。

被保険者が40歳未満で被扶養者が40歳以上の場合

ヨシキさん(38歳)は、給与明細を見て驚きました。

「介護保険料が引かれている…僕は30代なのに、なぜ?」


心当たりは、扶養している妻が40歳を迎えたこと。

「なぜ被扶養者の介護保険料が請求されるんだ?先輩は、自分の介護保険料は払ってるけど扶養に入れてる奥さんの介護保険料は免除されてる、って言ってたのに…」 

これは一体、どういうことなんでしょうか? 


健康保険組合の介護保険料は、原則として介護保険の第2号被保険者(40~64歳)である健康保険被保険者本人が徴収の対象であり、被扶養者が保険料を納めることはありません(健保組合で工面します)。

だから先輩の奥さんは払う必要がなかったんですね。


しかし、ヨシキさん夫婦の場合はどうでしょう。

実は健康保険組合によっては、被保険者本人が40才未満または65才以上で被扶養者が40~64歳の場合、被保険者(この場合ヨシキさん)を「特定被保険者」と呼び被扶養者の介護保険料を徴収するところもあるのです。


ちなみに日本最大の保険者である「協会けんぽ」(自社の健保組合を持たない中小企業を対象とする組合)には特定被保険者の制度はありませんので、ヨシキさんと同様の場合でも妻の介護保険料は請求されません。

ご自身が加入している健保組合に「特定被保険者制度」があるかどうか、問い合わせてみましょう。


他にも考えられるパターンとしては、

「35歳の息子が、62歳の母を扶養に入れる」

「43歳の夫が失業し、37歳妻の扶養に入る」

などがあります。


「被扶養者の介護保険料を支払う義務がある」とされる、この特定被保険者制度。

 実は、ヨシキさんのように「年齢の関係で本人の介護保険料が給与から天引きされない方」以外にも該当する方がいます。


日本国内に居住しないため介護保険の適用除外となる方

身体障害者療護施設などに入所しているため介護保険の適用除外となる方


がそれに当たります。海外赴任している方や、会社に籍を置きながら障害者施設などに入所されている方は同様の事態となる可能性が高いというわけですね。 



被保険者が40歳以上65歳未満で被扶養者が65歳以上の場合

ヒロシさん(43歳)は、独りになり経済的に苦しくなった母(70歳)を引き取り同居を始めました。

「これで母さんも健康保険料を払わなくていいし、俺の節税にもなるな」

なんて喜んでいたのですが…


同居してしばらく経ったときに、

「母さん、健康保険料とか介護保険料が引かれなくなって、振り込まれる年金も増えたんじゃない?よかったな!」

そう母に言うと、

「健康保険料は払わなくてよくなったけど…介護保険料は払ってるし、むしろ金額も去年より上がったみたいよ?」

そう返されてしまったのです。


なぜ?同じように扶養に入れている妻(42歳)の介護保険料は払わなくていいのに?

ヒロシさんのお母さんは、どうしてこういうことになってしまったのでしょう。


65歳以上の介護保険第1号被保険者は、たとえ扶養に入っていたとしてもそれぞれ介護保険料を支払わなければならないのです。

さらにヒロシさん親子の場合は、扶養に入ることで同一世帯となり世帯収入が上がったため介護保険料が高くなってしまったというわけなんですね。


それでも健康保険料免除のメリットを考えれば、被扶養者になったほうが断然お得だとは思いますが。 

被保険者が65歳以上で被保険者が40歳以上の場合

定年退職後に契約社員となったシゲルさん。

会社の社会保険に入り、5歳下の妻を扶養に入れています。


シゲルさんが65歳を迎えたとき、自宅に役所から封書が届きました。

「なになに、介護保険料納入通知書…?そうか、俺は65歳になったから今後は介護保険料は健康保険料と一緒に引かれないんだっけな」


郵便局に支払いに行ったシゲルさん。

しかし、次の給与明細を見てびっくり。

「介護保険料が引かれてるじゃないか!」

二重払いではないかと怒り心頭の様子。

一体なぜこんなことに?


さて、ここで思い出してください。

「特定被保険者制度」のことを。


被保険者本人が40才未満または65才以上で被扶養者が40~64歳の場合、被保険者(この場合シゲルさん)を「特定被保険者」と呼び、被扶養者の介護保険料を徴収する健保組合があるということでしたね。

つまり、引かれたのは60歳である妻の介護保険料だったのです。


ちなみに年度の途中で65歳になった方は、しばらくの期間は年金天引きではなく納付書で介護保険料を納めます。また、年間ベースで介護保険料を計算するため、加入する健保組合や自治体によっては納付書と給与天引きの時期がかぶってしまうこともあるようです。


そういったことからも、65歳になる時期に二重払いの疑いを持ってしまう方は多くいるのです。

被扶養者の介護保険料の支払い方法

さて、実際に被扶養者が介護保険料を納める方法にはどんなものがあるんでしょう。

二つのパターンについてお伝えします。

給与・賞与から支払われる場合

  • ・被扶養者が介護保険第2号被保険者(40~64歳)である
  • ・扶養者が40~64歳でない
  • ・加入健保が特定被保険者制度を採用している

この3つの条件がそろったとき、初めて被扶養者の介護保険料が請求されるんでしたね。


この場合、介護保険料は扶養者の健康保険料に上乗せされます。

給与明細によって介護保険料と健康保険料の欄を分けているものと分けていないものがあるので、後者の場合はその金額を注意して見ておきましょう。 

年金から支払われる場合

被扶養者が65歳になったときから、介護保険料は被扶養者本人に請求されることになります。


徴収方法は、通常の第1号被保険者と同じく

特別徴収

(年金から天引き。年金が年額18万円以上の方。老齢福祉年金・寡婦年金・恩給などを除く)

普通徴収

(納付書が送付される。特別徴収以外の方) 


の2種類となります。

基本的には取りっぱぐれがないよう特別徴収の方が多いのですが、

以下の場合は一時普通徴収となります。 


・年度の途中で65歳になった方

・年度の途中で他市町村より転入してきた方

・年度の途中で所得段階が変わった方

・年度の初め(4月1日)には年金を受給していなかった方

・年金の受給権を担保に借り入れしている方

・現況届けが遅れている方 

介護保険は介護保険料を支払っていない被扶養者もサービスを受けられる

介護保険のサービスは、介護保険料を納めていない被扶養者も利用する資格があります。

実際は、扶養者の加入する健保組合が負担していることになるんですけどね。がんばってお仕事するご家族の福利厚生であり、それを支えるあなたへのサービスと思いましょう。


ただし、介護保険料を払わなくてすむ被扶養者ということは第2号被保険者に該当するため、その利用には一定の条件が設けられてます。 

介護保険制度で定められた「老化に起因する16の特定疾病」により介護が必要になった方にしか、介護保険の申請は認められていないのです。

まとめ

社会保険の被扶養者は、介護保険料納めなくてはならないのか?

ということについてお伝えしてきました。 


正解は「それぞれの場合による」ということになります。

突然給与から引かれていたり納付書が送られてきても戸惑わないように、基本的な部分は把握しておきたいですね。


しかしそれでもやはり疑問点が残る場合は、ご加入の健保組合・役所の担当窓口にお問い合わせください。稀なこととはいえ、介護保険料誤徴収のニュースは全国で後を絶たないというのも正直なところです。

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