生活保護受給者は介護保険を受けるとき介護保険料が必要なのか解説!

生活保護受給者で40歳~64歳の方々は、介護保険料を支払う必要がありません。65歳以上(第1号被保険者)になれば、40歳~64歳のときに介護保険料を支払っていなくても介護保険が適用されます。ただし、65歳以上になれば介護保険料の支払義務が発生します。

生活保護受給者は介護サービスを利用できるが、介護保険料を支払うのか?

高齢になって自立した生活が難しくなったときの助けとなる、介護保険制度。 


一方で、必要最低限の生活を送るための助けとなるのが、生活保護制度です。 


もちろん生活保護を受けている方も、介護保険のサービスを利用することができます。 


しかし介護保険を使う人は皆、介護保険料を納めているはず。 


はたして生活保護受給者も介護保険料を納める必要があるのでしょうか? 


この記事では生活保護受給者の介護保険料について、 


  • 受給者が65歳以上である場合 
  • 受給者が40~64歳である場合 
  • 生活保護受給者が介護保険料を納める上で気をつけたいこと


以上のことを中心にお伝えしていきます。 


この記事を読めば、介護保険における生活保護受給者の取扱いや介護保険料の納付に関して、しっかり理解することができます。 


現在生活保護を受けている方も、今後受給予定の方も、役に立つ情報が得られるはずです。 


ぜひ最後までご覧ください。

生活保護受給者の介護保険料は生活保護費で賄ってもらえる

40歳以上の生活保護者は、原則自己負担なしで介護保険サービスを使うことができます。 


毎月の介護保険料も、生活保護費から支給されます。 


しかしそのシステムは、やや複雑な構造になっています。 


生活保護受給者の年齢によって、介護保険上での立ち位置がまったく違ってしまうのです。 


それには、複数の制度が絡んだ複雑な事情があります。

生活保護受給者も65歳以上と40歳~64歳に区分けされる

まずは、一般的な介護保険被保険者の区分けについてお伝えしましょう。 


原則として40歳以上の日本国民はすべて、介護保険の被保険者となっています。 


介護保険被保険者はその年齢層によって、以下の二つに区分けされます。 


  • 65歳以上…第1号被保険者 
  • 40歳~64歳…第2号被保険者 


この二つの被保険者で何が違うかというと、
「どういう状態になれば、介護保険サービスを使えるのか」
というハードルの高さです。 


第1号被保険者でサービスを使えるのは「認定調査を受け、要支援1以上と認定された人」。 


65歳以上なら誰でも、介護保険を申請して認定調査を受けることができます。 


ただしその結果「非該当」と判断されたなら、介護保険サービスは使えません。 


一方で第2号被保険者には
「特定16疾病に罹患しており、認定調査で要支援1以上と認定された人」
というさらに高いハードルがあります。 


そもそも40~64歳の第2号被保険者は「特定16疾病」に該当しなければ、介護保険の申請すらさせてもらえないのです。 


特定16疾病とは、介護保険法で定められた「加齢を要因とする」16の疾病です。  


ただし、これらの病名がつきさえすれば良いわけではありません。 


特定疾病の判断は加齢が原因であることが重視されるため、加齢以外が原因とされた場合には適用されにくくなります。 


1.がん末期 


医師が「回復の見込みがない」と判断した場合に限られます。 


おおむね余命6ヶ月程度である場合に、適用が認められるケースが多いようです。 


2.関節リウマチ 


全身の関節に変形や痛みが発生します。 


特定疾病の判断には細かな条件、たとえば「朝に関節のこわばりが1時間以上継続すること」などが取り決められています。 


3.筋萎縮性側索硬化症(ALS) 


筋肉の委縮・筋力の低下といった症状が急速に進行します。 


「成人発症である」「進行性である」といった細かな条件があります。 


4.後縦靱帯骨化症 


後縦靱帯が骨化して神経を圧迫し、四肢のしびれ・運動障害・知覚障害をきたします。 


血液検査やX線による検査による医師の所見が必要です。 


5.骨折を伴う骨粗鬆症 


腰椎骨密度の検査や、脊椎のX線検査で一定の基準を満たす必要があります。 


まだ骨折していなくても、リスクが高ければ認められます。 


6.初老期における認知症 


原則として認知症の種類は条件に含まれません。


ただしアルコール性認知症に限っては、原因が外部にあるため認められません。 


7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病 


発症時の年齢・進行速度・症状の内容などについて、専門医から総合的な診断を受ける必要があります。 


8.脊髄小脳変性症 


あらゆる運動が本人の思い通りにならなくなる原因不明の疾患です。 


症状を仔細に診断した上で、総合的に判断します。 


9.脊柱管狭窄症 


下肢のしびれや痛みが発生する疾患です。 


画像所見が実施され、脊柱管狭窄の程度を確認した上での判断となります。 


10.早老症 


急速に身体の老化が進行する疾患です。 


外見のみならず、皮膚や骨の状態を調べるといった細かな検査が発生します。 


11.多系統萎縮症 


線条体黒質変性症・オリーブ橋小脳萎縮症・シャイ・ドレーガー症候群であると診断された場合は、多系統萎縮症として取り扱われます。 


MRIなどの精密検査を受ける必要があります。 


12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症 


糖尿病を患っているだけでは認められません。 


合併症についてはそれぞれ細かなな基準が設けられています。 


13.脳血管疾患 


脳梗塞・脳出血など、脳血管に異常が起こったために発生する疾患の総称です。 


外傷で脳出血・くも膜下出血が起こった場合には認められません。 


14.閉塞性動脈硬化症 


動脈硬化症と診断されただけでは認められません。 


腹部大動脈抹消側・四肢の主幹動脈・下肢の中等度の動脈などに閉塞が確認されていることが必要です。 


冷感・しびれ感など軽度の症状は除外となります。 


15.慢性閉塞性肺疾患 


慢性気管支炎・肺気腫・気管支喘息・びまん性汎細気管支炎の総称です。 


気流閉塞が起こっている場合のみ適用となります。 


16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 


X線を用いた検査のほか、症状の度合いを加味して総合的に判断します。 


以上の条件いずれかを満たした第2号被保険者が申請後に審査を受けて「要支援1以上」と認定されれば、介護保険サービスを利用することができます。 


これらの疾病以外では、どんなに重い症状があったとしても介護保険を利用できません。 


このように介護保険被保険者は、65歳を境に大きく扱いが変わるのです。 


生活保護を受けている方にも、同様のことが言えます。 


40~64歳の生活保護受給者も、特定16疾病の患者でなければ介護保険申請はできません。 


そしてこの「65歳」という境界線が、生活保護受給者の介護保険料の仕組みをより複雑にしているのです。

65歳以上、40歳~64歳で介護保険料・介護サービスの負担割合は異なる

生活保護受給者の介護保険料についてお話しする前に、通常介護保険料はどのくらいかかるのかということについてお伝えして行きましょう。 


第1号被保険者と第2号被保険者。 


この二つの被保険者は、介護保険料の決定方法がまったく異なります。 


それぞれの介護保険料は、どうやって決めているのでしょうか。 


また実際にサービスを利用したとき、負担金額に差はあるのでしょうか。 


第1号被保険者の介護保険料決定方法と徴収方法 


第1号被保険者(65歳以上)の介護保険料は、運営主体である市区町村が被保険者の前年度の所得から決定します。 


介護保険の財源の50%は、介護保険料によって賄われています。


50%のうち22%は第1号被保険者、28%は第2号被保険者の保険料で構成されています。 


まず市区町村は、必要となる介護保険サービスの費用全体を推計します。 


その数字を根拠に、22%を占める第1号被保険者の保険料総額を試算します。 


そこからさらに逆算して、個々の介護保険料は決定されるのです。 


費用の試算は3年ごとに行われますので、介護保険料も3年ごとに見直されます。 


具体的な計算方法をご説明しましょう。 


各市区町村はまず「基準額」という基本となる月額の介護保険料を決定します。 


そして第1号被保険者を、前年度の合計所得金額や世帯状況に応じて数段階に分類します。


所得段階区分ごとに係数を設定し、


基準額×所得段階区分の係数=介護保険料


という式でそれぞれの介護保険料を算出します。 


自治体により異なりますが、


  • 最も所得が低い段階は基準額の半額以下
  • 最も所得の高い段階は基準額の2倍程度


というように、所得によって保険料額には大きな違いがあります。 


また前年度の所得が同額でも市区町村によって基準額が違うため、介護保険料は居住地によってかなり差があるのが実情です。 


事実、2018年度の改定で基準額が最も高かったのは福島県葛尾村の月額9,800円。 


これに対して保険料が最も安かった北海道音威子府(おといねっぷ)村は、3,000円です。 


なんと3倍以上もの差が発生しています。 


次に保険料の徴収方法です。


第1号被保険者の介護保険料の徴収方法には、特別徴収と普通徴収の二つがあります。 


特別徴収とは、公的年金から天引きする方法です。 


公的年金を "年額"18万円以上受給している方は、特別徴収の対象となります。 


一方で普通徴収とは、市区町村から納付書または口座振替による方法です。 


年金が年額18万円未満の方や、年度の途中で65歳を迎えた方などはこちらになります。 


そして実際にサービスを利用したときの負担割合は1割または2割となっています。 


ただし2018年8月からは、それまで2割負担とされた方のうち"現役並み所得"の方は3割負担となります。 



第2号被保険者の介護保険料決定方法と徴収方法 


40~64歳の第2号被保険者の介護保険料は、加入している公的医療保険が設定します。 


公的医療保険とは、協会けんぽ・企業の健康保険組合・国民健康保険などの、強制加入の健康保険です。 


国民健康保険以外の医療保険では、保険者が「保険料率」を設定します。 


ちなみに2018年度の協会けんぽにおける保険料率は、1.57%になっています。 


保険料率×標準報酬月額=1ヶ月当たりの介護保険料 


という式で、介護保険料は算出されます。 


標準報酬月額とは、給与・残業代・通勤代などの報酬額をランク分けしたもの。 


月5万8,000円から139万円まで、50等級に分かれています。 


保険料は労使折半となっていますので、本人が実際に払う額は算出された数字の半分です。 


 一方で国民健康保険に加入している第2号被保険者の介護保険料は、所得割・均等割・平等割・資産割の4つを、自治体の基準で独自に組み合わせて算出されます。 


  • 所得割…世帯ごとに被保険者の前年の所得に応じて算出される 
  • 均等割…被保険者一人について課される 
  • 平等割…一世帯ごとに課される 
  • 資産割…所有する土地や家屋に応じて算出される 


資産割がない自治体の場合、計算式は以下のようになります。 


介護保険料=所得割+均等割+平等割 


ちなみに40~64歳の会社員や公務員などが2018年度に負担する介護保険料は、1月当たり平均で5,723円(労使折半前)。 


国民健康保険に加入している40~64歳の介護保険料の平均額は、5,659円です。 


給与所得者・国保加入者ともに、介護保険料は過去最高額となっっています。 


第2号被保険者の介護保険料は、公的医療保険の保険者が健康保険料と一緒に徴収します。 


たとえば給与所得者の場合は、会社が介護保険料を健康保険料といっしょに給与から天引きし、翌月末に会社負担分とあわせて保険者(協会けんぽなど)に納付するしくみです。 


第2号被保険者が実際にサービスを利用したときの負担割合は、所得に関係なく1割負担に統一されています。 


どんなに収入があっても、1割負担から上がることはありません。 


この世代は、子供の学費などで家庭の消費支出が高いということを考慮したものです。

生活保護受給者が40歳~64歳ならば介護保険料は支払いが免除される

生活保護を受けている人が40~64歳である場合、毎月の介護保険料は保護費から支給されるのでしょうか? 


いいえ、支給されされません。 


40~64歳の生活保護受給者は介護保険を使わないため、保険料の支払いも免除されます。 


えっ? 


生活保護受給者も、通常と変わらず介護保険サービスを使えるんじゃなかったの? 


そう思われることでしょう。


これは一体どういうことなのか、 詳しくご説明していきましょう。 

40歳~64歳の生活保護受給者は基本的に第2号被保険者とならない

40~64歳の生活保護を受給する人は、ほとんどの場合第2号被保険者となりません。 


なぜなのでしょうか? 


ここで、第2号被保険者の介護保険料の徴収方法を思い出してください。 


「介護保険料は、公的医療保険料と一緒に医療保険の保険者に徴収される」 


ということでしたね。 


そして生活保護を受ける方のほとんどは、公的医療保険に加入していません。 


生活保護受給が認められると、国民健康保険からは脱退しなければなりません。 


つまり無保険となってしまうのです。 


医療費は生活保護費の「医療扶助」として支給されるため、医療保険は必要ないのです。 


ここで少し、生活保護受給者の医療費について説明します。 


医療保険に加入していない生活保護受給者は、診察代・薬代・手術費・入院費・入院中の食事代もすべて無料です。 


(ただし差額ベッド代など、対象外の費用もあります) 


また利用できる病院は、生活保護法の指定医療機関に限られます。 


病院の窓口では、医療保険証の代わりに福祉事務所からもらった「医療券」を提出します。 


公的医療保険料を払っていないわけですから、介護保険料も徴収できません。 


したがって40~64歳の生活保護受給者は、介護保険被保険者にはなれないのです。  


ただし会社に勤務しつつ生活保護を受給しているなら、職場の健康保険に加入している場合もあるでしょう。 


そういったケースでは、生活保護を受給しながら第2号被保険者となることもあります。 


この場合も介護保険料分については控除され、実質の負担はありません。  

40歳~64歳の生活保護受給者が要介護状態になれば介護サービスは利用可能

40~64歳の生活保護受給者が特定16疾病に罹患して要支援1以上と認定されたときには、問題なく介護保険サービスを受けることができます。 


正確に言えば、「生活保護費の"介護扶助"を使って、介護保険と同じサービスを受けられる
ということになります。 


ただし利用できるのは、介護保険法だけではなく生活保護法の指定も受けている事業者のサービスに限ります。 


デイサービス・ヘルパーなどのサービスを提供する事業所にしてみれば、受け取る利用料が 


  • 利用者1割(2割):介護保険料9割(8割)
  • 生活保護費10割


このどちらかになるという違いだけです。 


介護保険では、認定区分を決めることでサービス利用の上限金額が決まります。 


認定区分は、最も軽い要支援1から最も重い要介護5の7段階に分かれています。 


重くなればなるほど、介護保険の利用上限額も高くなります。 


認定区分ごとの1ヶ月当たりの利用上限額は以下のようになっています。 


※1単位=10円として計算 ※右にドラッグできます

介護度要支援1要支援2要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5 
利用限度額50,030104,730166,920196,160269,310308,060360,650
自己負担額 (1割負担の
場合)
5,00310,47316,69219,61626,93130,80636,065


40~64歳の生活保護受給者も、この基準に沿って生活保護からの支給上限額を決めています。 


財布が違うとはいえ、介護保険と同じサービスを使うからには介護保険被保険者と同じく要介護認定調査を受ける必要があります。 


被保険者ではなくても、各種手続きは第2号被保険者と見なす形で行われていきます。 


そこで「40~64歳の生活保護受給者」は、介護保険上で「みなし2号」と呼ばれています。

生活保護受給者が65歳以上になれば必ず第1号被保険者になる

一方で、65歳以上の生活保護受給者はまた話が違ってきます。 


65歳以上の方は生活保護需給の有無にかかわらず、必ず第1号被保険者となります。 


もちろん介護保険サービスを受けたときには、費用の9割が介護保険から支給されます。

生活保護受給者が第1号被保険者になると保険料を支払う義務が生じる

すべての被保険者は、介護保険料を納める義務があります。 


したがって当然、65歳以上の生活保護受給者も介護保険料を支払わなければなりません。 


生活保護受給者の介護保険料は、最も安い段階になっています。 


その額は、たとえば東京都世田谷区なら年間34,830円。 


月額に直せば2,900円程度ですが… 


この額を、支給された保護費から捻出しなければならないのでしょうか。 

  

生活保護の第1号被保険者ならば生活扶助費に介護保険料加算(還付)がある

大丈夫です。 


生活保護受給者が65歳以上なら、生活保護費の"生活扶助"に介護保険料分が加算されます。 


生活扶助は、日常生活に必須である食費・被服費・光熱費などを目的とした費用です。 


介護保険料が月額2,900円なら、その分がプラスされた保護費が支給されます。 


生活保護を脱却するまで、または介護保険料が年金からの特別徴収となるまで、介護保険料の加算は続きます。 


特別徴収となった場合でも、年金収入に介護保険料控除がつくため実質の負担はありません。

生活保護受給者(第1号被保険者)が介護保険料を支払う際の注意点

生活保護受給者は、介護保険料の心配はしなくていいことが分かりましたね。


保護費を節約して介護保険料を捻出する必要はないのです。


しかし、まったくの安心とは言い切れません。


第1号被保険者である生活保護受給者が介護保険料を納めるときには、いくつか注意しておきたいことがあるのです。

原則、介護保険料は年金から天引されるように生活保護費から天引きされる

かつて生活保護を受ける第1号被保険者の介護保険料は、保護費に現金で上乗せされて本人が納付する「普通徴収」が一般的でした。 


生活保護制度の「自立を促す」という主旨に沿っていたわけですね。 


しかし残念ながら、生活保護受給者の介護保険料滞納が続出する事態に。


そこで現在は、保護費から天引きして福祉事務所から市区町村に直接納める「代理納付」がほとんどとなっています。 

介護保険料は生活保護費からの天引き(代理納付)できない場合もある

しかし、中には代理納付できないケースもあります。 


まずは生活保護を受け始めたばかりのとき。 


手続きの関係上、代理納付が始まるまでの間は介護保険料加算が現金で支給される場合があるのです。 


もう一つは市外に住民票があるときです。 


少しややこしい話になりますが、介護保険には他の自治体の施設に入所しても元の自治体の被保険者であり続ける「住所地特例制度」があります。 


介護保険制度では、原則としては住民票がある市区町村の被保険者になります。 


その例外として存在する制度が住所地特例です。 


被保険者が他の市区町村の施設に入居して住民票を移した場合には、現住所(施設所在地)の市区町村ではなく元の住所地の市区町村の被保険者になるという制度です。 


なぜこのようなルールが必要なのでしょうか? 


介護施設が多数ある市区町村に外部から多くの利用者が転入してきた場合、その市区町村の介護保険財政が圧迫されてしまいます。 


そのような負担のかたよりを無くしていくために、住所地特例は必要なのです。 


ただし対象となるのは、以下の施設に限られます。 


  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • 介護老人保健施設 
  • 介護療養型医療施設(療養病床等) 
  • 介護医療院 
  • 養護老人ホーム・軽費老人ホーム(ケアハウス等) 
  • 有料老人ホーム 
  • サービス付き高齢者向け住宅 


生活保護受給者が他の市区町村にあるこれらの施設に入居したときも、もちろん住所地特例は適用されます。 


一方で生活保護に関しては、自治体が移管される場合とされない場合があります。 


そのような介護保険の自治体と生活保護の自治体が一致しないケースで、介護保険料が現金で支給されることがあります。 


介護保険料の納付書が送付され、本人または代理人が窓口まで介護保険料を支払いに行く必要があります。 


しかし施設に入居しているなら身体不自由である可能性が高く、なかなか支払いに行くのも厳しいかと思います。 


もしも介護保険料加算がついているにも関わらず介護保険料を支払っていないと、介護保険の問題だけではなく生活保護費の不正受給とみなされてしまう可能性もあります。 


必ず忘れずに納付するよう、周囲の人が働きかけていただきたいものです。

生活保護の第1号被保険者が介護保険料を滞納するとペナルティを受ける

生活保護を受給している第1号被保険者が介護保険料を滞納したら、どのようなペナルティが科せられるのでしょうか。 


まず、生活保護受給者ではない介護保険被保険者が介護保険料を滞納するとどうなるかということからご説明します。 


災害などのやむを得ない事情を除き、介護保険料の滞納が続いた場合には次のような処置が取られます。 


処置の重さは、滞納期間によって異なります。 


納付期限から約20日 


市区町村から督促状が発行される。 


介護保険料に加えて、督促手数料・延滞金も請求される。 


納付期限から1年以上 


介護保険を利用している場合、給付の支払い方法が変更され、1割(または2割)ではなく、一旦全額を支払う。 


後から自治体に申請して、払い戻しの手続きをする必要がある。 



納付期限から1年6か月以上 


介護保険サービスを利用した場合、全額負担の上に払い戻し申請資格を失う。 


未納の介護保険料は、介護保険給付額から充当されることもある。

 


納付期限から2年以上 


介護保険料の納付は2年が時効であるため、追納ができなくなる。 


滞納期間に応じて一定期間介護保険給付減額され、3割負担に引き上げられる。 


期間中、高額介護サービス費や高額医療・介護合算療養費制度は利用できない。 



それでは、生活保護受給者の介護保険料滞納はどういう扱いになるのでしょうか。 


介護保険法には、滞納に対するペナルティの記載とともに以下のような条文があります。 


介護保険法第69条 
(略)ただし、当該要介護被保険者等について、災害その他の政令で定める特別の事情があると認めるときは、この限りでない。 

介護保険法施行令第35条 
法第69条第1項ただし書に規定する政令で定める特別の事情は、次に掲げる事由により居宅サービス(これに相当するサービスを含む。)若しくは施設サービス、特定福祉用具の購入又は住宅改修に必要な費用を負担することが困難であると認められる事情とする。 
(略) 

三 その他前二号に準ずる事由として厚生労働省令で定める事由があること。 


介護保険法施行規則第113条 
令第35条第3号に規定する厚生労働省令で定める事由は、次のとおりとする。 

(略) 

三 要介護被保険者等が被保護者であること。 

四 要介護被保険者等が要保護者であって、給付額減額等の記載を受けないとしたならば保護を必要としない状態となるものであること。 


難しい言い回しですが、要するに


「生活保護受給者は給付制限措置の対象とならない」


ということが述べられています。 


確かに、必要最低限度の生活費しか持っていないはずの人に給付制限をかければ、健康で文化的な生活はいっそう遠ざかってしまうでしょう。 


とはいえ、納付義務がなくなるというわけではありません。 


もし生活保護から脱却したときには、即座に給付制限の対象となってしまいます。 


少しずつでも払う姿勢を見せるよう、ケースワーカーからも指導されるでしょう。 


また給付制限の対象とならないのは、生活保護受給前の滞納に限られます。 


前述した「受給後に納付書で支払うはずだった介護保険料」を滞納した場合は、通常通りの給付制限がかかるのでご注意ください。 


ところで生活保護というものは、近年ますます受給へのハードルが上がっています。 


日本全体で増加する生活保護受給者に、財源が追いつかなくなっているからです。 


2017年度分の受給世帯(月平均)は過去最多の164万811世帯。 


その過半数を占める高齢者世帯も、86万4709世帯と過去最多を更新しました。 


生活保護を頼りに暮らす貧困高齢者は増え続けています。 


2018年10月からは、生活扶助の引き下げも決定しています。 


自治体により受給の難易度は異なりますが、生活が苦しくても生活保護の申請が認められないケースが増えてきています。 


そんなときに有効な「境界層制度」というものがあります。 


境界層とは、生活保護を受けられるほどではないが、経済的に苦しいと認められた層のこと。 


この制度は、経済的に困窮していても生活保護が認められない方の救済措置となっています。 


適用が認められると「境界層該当措置証明書」が発行されます。 


この証明書があれば、 


  • 介護保険料滞納があっても給付制限がかからない 
  • 介護保険料が減額される 
  • 介護施設での食費や居住費が下がる 
  • 高額介護サービス費の負担上限額が下がる 


などの負担軽減措置が適用されます。 


決して、介護保険料が払えないからと放置してはいけません。 


ぜひこういった制度の活用も、視野に入れておいてください。

まとめ

生活保護受給者の介護保険料についてお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか。 


この記事のポイントは、 


  • 生活保護受給者の介護保険料・サービス利用料ともに本人の負担はない 
  • ただし40~64歳の生活保護受給者は介護保険の被保険者とはならないため、そもそも保険料が発生しない 
  • 生活保護受給前の介護保険料滞納は、給付制限の対象とならない 


以上のことでした。 


生活保護受給者が介護保険を利用するときには、介護保険制度・生活保護制度・公的医療保険制度という3つの制度が絡むため、構造が複雑です。 


さらに介護保険の運営は各自治体に任されているため、市区町村によって法の解釈が異なる場合もあります。 


2つ以上の自治体をまたぐ状況なら、事態はいっそうややこしくなります。 


残念ながら、自治体の担当者も構造をきちんと理解できていない場合があります。 


ぜひこの記事を頭に入れて、ケースワーカーや窓口と話し合っていただければと思います。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい介護保険をはじめとした保険に関する記事が多数掲載されています。 


ぜひご覧になってください。

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