介護保険のサービスは、消費税課税・非課税どっち?詳細に解説!

どんどん上がっていく消費税率。容赦なく家計を圧迫します。ところで介護保険のサービスは課税対象なのでしょうか、非課税対象なのでしょうか?気になるところです。課税となる介護保険サービス・非課税となる介護保険サービスの内訳と、その内容についてお伝えしたいと思います。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険のサービスの中には消費税が非課税のものがある

例えば、あなたが美容院に行ったとします。

カットで4,000円、支払いは消費税込みで4,320円。


今度は、お家の排水溝が詰まって業者を読んだとします。 

作業代が8,000円、支払いは8,640円。


私たちの日常にまつわるサービスには当たり前に消費税が課税されています。 


それでは、介護保険サービスについてはどうなんでしょう?

調べてみると、どうも消費税非課税のものがたくさんあるようなんです。


介護保険サービスの中には非課税のものと非課税じゃないものがある

結論から言うと、介護保険にまつわるサービスには消費税非課税のものと、非課税ではないものがあるんです。 ケチケチと細かいようですが、なんといっても消費税率は8%から10%になりました。

1割となると、これはもう黙って見過ごすわけにはいきませんよね。

消費税が非課税になる介護保険サービスとは

ではまず、消費税が非課税になる介護保険サービスから見ていきましょう。

居宅サービス

施設サービス

に分けて紹介していきます。

居宅サービス

消費税が非課税となるサービスには、以下のようなものがあります。

各サービスの内容も説明します。


  • 訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 通所介護
  • 通所リハビリテーション
  • 短期入所生活介護
  • 短期入所療養介護
  • 特定施設入居者生活介護


訪問介護

ヘルパーさんのことですね。家事や身体介助(オムツ交換や入浴など)をしてくれます。


訪問入浴介護

移動入浴車が来て、自宅に浴槽を持ち込みお風呂にいれてくれます。


訪問看護

主に看護師さんが自宅に来て、健康管理や医療処置をしてくれます。


訪問リハビリテーション

主に理学療法士さんや作業療法士さんが自宅に来て、リハビリをしてくれます。


居宅療養管理指導

主にお医者さんや薬剤師さんが家に来て、診察や薬の処方をしてくれます。病院に通えない方にはありがたいですね。


通所介護

いわゆるデイサービスです。大きく分けて、通常のデイサービスとリハビリに特化した機能訓練型デイサービスがあります。


通所リハビリテーション

いわゆるデイケア。機能訓練型デイサービスよりさらに、専門的なリハビリを受けることができます。


短期入所生活介護

通称ショートステイ。特別養護老人ホームなどに短期間宿泊し介護を受けることができます。


短期入所療養介護

これも通称ショートステイ。ただしこちらで入所するのは、介護老人保健施設や病院です。医療処置が必要な方も使えます。


特定施設入居者生活介護

主に介護付有料老人ホームやケアハウスなどで実施される介護の方式。(後述します)  



えっ?「居宅サービス」なのに、やたら施設が出てくるのはなぜ?と思った方もいるのではないでしょうか。


では説明します。


まず施設でのショートステイについてですが、これはケアプラン上は居宅のサービスなので施設介護には該当しません。もっと分かりやすく言えば、

「この利用者はちょっと預かってるだけ。本当は自宅で受けるべきサービスを、一時的に施設が代行している」という考え方なのです。


そして「特定施設入居者生活介護」という言葉についてです。

普段なにげなく使っている、「施設」という言葉。高級有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームなど、老人ホームの全てが一般的には施設と呼ばれています。


でも本来は、介護保険法で正式に「施設」として認められているのは 

  1. 特別養護老人ホーム(特養)
  2. 介護老人保健施設(老健)
  3. 介護療養型医療施設(療養)

この3つだけなのです。

それ以外で提供される介護サービスは全て、「居宅サービス」の範疇にあるのです。


さて、この「特定施設入居者生活介護」。

これはサービスの方式を指す名称です。

介護保険の指定を受けた(通称)施設のみが実施できる、定額で使い放題の介護サービス。

住宅型有料老人ホームや多くのサービス付き高齢者向け住宅のように「ヘルパー1日○回」などという制限はなく、必要なときに随時介護サービスを利用することができます。  

施設サービス

では次に施設サービスについて。


前出の介護保険3施設で提供される介護サービスは原則全て非課税です。 

また、食費・居住費・光熱費・理美容費用などは、介護サービスではないので全額自己負担ではあるのですが、最低限日常生活で必要な範囲については非課税と決まっています。

居宅支援サービス計画書

居宅サービス計画書(通称ケアプラン。利用者が受けるサービスを、ケアマネジャーが具体的に計画します)の作成費用も非課税。ただし全額介護保険で負担しますので、そもそも利用者の負担分はありません。

居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス

「居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービスは非課税」

 というルールも規定されています。


この言葉を分かりやすく説明すると、

「介護保険適用サービス(1~2割負担の対象)は非課税。また同様のサービスも非課税」

ということです。つまり、

「使える単位数をオーバーしちゃって(10割自己負担で)利用したデイサービスとかヘルパーについても、介護保険サービス外だけど同じサービスだから非課税でいいよ」 

ということです。

非課税対象とならない介護サービス

こうして見ると、ほとんどが非課税に思えますよね。 

では逆に消費税がかかるサービスってどんなものなのでしょうか? 

今度は課税されるサービスを挙げていきます。 

事業実施地域以外の地域での送迎など

デイサービスは通常、送迎があります。

送迎エリア外に住んでいるけど、ぜひこのデイに通いたい!という場合には、オーバーした距離分の交通費をデイに直接払わなくてはなりません。

イレギュラーな対応ですから、この交通費には消費税がかかります。


 同じく遠方のヘルパーや訪問看護などを利用した場合も、オーバーした交通費は実費負担で、消費税も課税されます。  

訪問入浴介護における浴槽水

訪問入浴は、自宅に浴槽がやって来てベッドの横でお風呂に入れてもらえるという何ともありがたいサービスです。

一人で入浴するのが難しい方は、多くの場合まずは訪問ヘルパーやデイサービスの入浴介助を勧められるでしょう。

しかし寝たきりになると、自宅の風呂場で訪問ヘルパーが入浴させるのは不可能になってしまいます。

また、体が弱ってきて短時間しか床から離れられない方・デイへの移動に耐えられない方・そもそもデイに絶対いきたくない方など、さまざまな事情をお持ちの方にも訪問入浴は重宝されています。


やはり日本人たるもの、体を拭くだけではなくたまには湯に浸かりたいですもんね。


それで、消費税が課税されるという「浴槽水の料金」。

でもこれ、なんだかおかしいと思いませんか? そもそも入浴サービスにお湯(浴槽水)が必要なのは当たり前。なぜ課税されるのでしょう。 


その答えは、 「多くの場合、浴槽水は利用者宅の水道を使うから」です。


ご家庭の水道を使う方と使わない方両方が居るわけですから、業者が持参の場合は公平を期するために料金を徴収するのは致し方ないことなのです。 

イレギュラーな対応に該当するので、消費税は課税されます。最近では

「○○温泉の湯をご自宅で!」

なんて、特別なお湯を持ってきてくれる訪問入浴もあるようですよ。  


要介護者が選定する特別な食事など

ショートステイでもデイサービスでも、

「利用者側の希望による特別な部屋の利用料・特別な食事・特別なサービス」は課税対象となります。ただし通常のサービスを利用した場合の費用との差額部分のみが課税対象となります。


介護保険に関する課税で分からない事は担当にケアマネジャーに相談

介護事業の消費税についての取り扱いは、会計事務所や税務署も処理規定を知らない場合が多いといいます。

ケアマネジャーさんも、熟知している方は少ないのではないでしょうか。


「あれ?なんでこのサービスに消費税がかかってるの?」などの疑問が発生した場合は、遠慮なくケアマネジャーさんに伝えてくださいね。

まとめ

特別なサービスを受けていなければ、消費税はさほどかからないんですね。

介護保険サービスは、基本的に消費税の手が届かない聖域にいるということなんでしょうか。


いえいえ、介護保険への消費税の影響は絶大なんです! 


2015年4月から消費税率が5%から8%に引き上げられましたが、同時に介護保険料も引き上げられています(協会けんぽで年額6,882円アップ)。

介護保険料と同様に介護保険サービスの利用料自体も値上がりしています。 


なぜ消費税が上がると保険料やサービス料金が上がるかというと、介護保険サービスを提供するための必要なコストが上がるからです。


介護保険の事業者がサービスに必要な物品や燃料などの購入には消費税がかかりますから、消費税率が引き上げられると同内容のサービスでもそのコストは上がってしまうのです。


非課税のサービスにも、事前にしっかりと増税の分が上乗せされているんですね。

 それにしても、

「消費税増税の影響で税金を増やします」

なんて、利用者さん側からすれば、まさに踏んだり蹴ったりの話ではないかと思います。


増税による増収で介護保険料を軽減するという報道もありましたが、サービス費用がどう変わるのかは未だ不透明です。

課税サービス・非課税サービスの種類を簡単にでも把握し、介護費用の節減に取り組んでいただけたらと思います。 


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