給与明細がもらえないのは違法?アルバイト・正社員を税務署観点から解説

給与明細(給料明細)は様々な場面で必要です。しかし、旦那が給与明細をもらってこない、給与明細が退職後届かない、バイトだから渡されない等給与明細がもらえない場合が多々あると思います。給与明細がもらえないのは違法なのか、もらえない場合どうするべきかまとめました。

給与明細(給料明細)がもらえないのは違法?

会社勤めをする人にとって、楽しみなのは給料日ですね。


そして給与明細は、もらえる額が明文化されているものであるとともに、社会保険料など把握しておくべきことが書かれている大切なものです。


しかし、中には勤務先から給与明細がもらえない、もらえなかったという経験をした方もいらっしゃるかもしれません。


普通に毎月もらっている人からすれば「給与明細がもらえないなんて違法では?」と感じるところですが、実際のところどうなのでしょうか。


この記事では、

  • 給与明細がもらえないのは違法か
  • 給与明細がもらえない、交付が遅い場合はどうしたら良いか
  • 給与明細は保管しておく必要があるか
について詳しく解説します。

この記事を読めば、給与明細の法律上の扱いが分かり、万が一もらえない時の対処法を知ることができます。

ぜひ最後までお読みください。

給与明細(給料明細)はもらえないわけがない!

一般的に考えて、給与の支払いがある以上、給与明細は必ずセットになっているものですよね。


給与明細がもらえないという経験をしたことがない人にとっては「もらえないわけがない」というのが実感でしょう。


しかし「バイト先から給与明細がもらえない」「配偶者の会社では給与明細をもらえないと言っている」「最後の給与明細が退職後届かない」などの事例が、実際に存在しています。

言わないとくれない場合がある?

勤務先によって「給与明細をこちらから請求すればもらえるけれど、言わない限りもらえない」というケースもあるようです。


言えばもらえるだけまだ良いのかもしれませんが、そもそも会社の側から交付する義務はないのかという疑問が浮かびますね。


ここで、給与明細の交付について、ポイントとなる2つの法律を押さえておきましょう。まず労働周りに関して真っ先に思いつくのが「労働基準法」です。


実は、労働基準法では給与明細の交付はおろか、作成そのものについても義務付けられていません。労働基準法は労働契約については定めていますが、給与明細には言及していないのです。


では給与明細の交付についての法律はないのかというと、そんなことはなく「所得税法」にその規定があります。


所得税法による給与明細の扱いについては、後ほど詳しく解説します。

給与明細(給料明細)の電子化は違法ではない

各分野でペーパーレス化が進む現代、給与明細を電子化している企業も見受けられます。


もらう側からすれば、紙でなくなることで紛失するリスクが減る一方、給与をもらったという実感がやや薄れたり、職場の人から覗き見られてしまう可能性が気になるといったところでしょうか。


給与明細の電子化は違法ではありませんが、事業主には「電子化することについて事前に全従業員の承諾を得ること」と「従業員の求めに応じていつでも書面で交付すること」が義務付けられています。


電子化について気になることがあれば、社内の給与を扱う部署に相談してみても良いでしょう。

所得税法231条の規定によると給与明細を渡さないのは違法

さて、前述した、所得税法による給与明細交付についての規定をご説明します。


所得税法231条では、賃金の支払いをする者(事業主)に対し「給与等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払いを受ける者(労働者)に交付しなければならない」と明確にうたっています。


つまり会社から給与明細がもらえないとなれば、その事業主はこの定めに反していることになり、歴とした法律違反となるのです。

所得税法231条に違反すると罰則がある

この所得税法231条に違反した場合の罰則については、同法の242条に規定されています。


その内容は「支払明細書(給与明細)を交付しない、もしくは偽りの内容を記載して交付した場合」に「1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」というものです。


罰則の内容がどうこうと言うより、大切なのは、給与明細を渡さないのが違法であるという事実そのものですね。


勤務先から給与明細をもらえない時など、給与担当部署に問い合わせをするにしても、こうした法的根拠を知っておくと心強いでしょう。

正社員、派遣、アルバイトの区別はなく違法になる!

当然と言えば当然のことながら、この法律は、労働者が正社員であっても、派遣やパート・アルバイトなどであっても区別はありません。


もしも勤務先が給与明細を渡さない口実として「アルバイトだから」など雇用形態のことを持ち出したとすればおかしな言い分です。


雇用されて給与を受け取っている以上、全員に給与明細を受け取る権利があることを覚えておきましょう。

給与明細(給料明細)がもらえない・交付が遅い場合

では万が一、給与明細がもらえない当事者になった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。


また「もらえることはもらえるけれど、給与の支払いと同じタイミングでなく、給与明細の交付が遅い」という例もあります。遅いだけなら問題はないのでしょうか。

給与明細交付が遅いのは違法?

所得税法100条には「給与等の支払いをする者は、支払明細書を、その支払いの際に交付しなければならない」という文言があります。


これは給与明細書を渡すタイミングについて、給与支払いと同じ時期、例えば給料日が毎月25日なら同日に給与明細も渡さなければならないという意味です。


事業主は、給与明細を渡さないのはもちろん、交付が遅れることも違法になるのです。

税務署や労働基準監督署に相談

給与明細がもらえない場合、事業主側が「交付しなければならないのを知らなかった」ということはあり得ません。


交付したくない何らかの意図があるものと考えるのが妥当なので、社内での解決に期待するより、社外の機関に相談する方が賢明です。


このような場合の相談先は、税務署が良いでしょう。給与明細がもらえないことは所得税法違反に関係する問題なので、税務署の管轄となるためです。


そして、税務署から事業主に指導を行ってもらうには「給与支払明細書不交付の届出書」を提出する必要があります。


書式は国税庁のサイトからダウンロードできますので、必要事項を記入のうえ、所轄の税務署に郵送または持参をしてください。


この届出が受理されることで、税務署から勤務先に指導が入ります。もっとも、この指導には強制力も罰則もありません


それでも法的手段をとることで勤務先に本気度は伝わるでしょうし、ここまでしても会社が動かないのであれば、その会社で働き続けること自体を見直しても良いかもしれませんね。

給与明細(給料明細)を保管しておく必要性はある?

給与そのものが、ひとまとめの「金額」であるのに対し、給与明細はその内訳を明らかにするものです。


とても大切なものであることは間違いありませんが、では、確認した後の給与明細を保管しておく必要はあるのでしょうか。


支給された額に誤りがないことを確かめるだけならば捨ててしまっても良さそうなものですね。


しかし、実は生活の中で給与明細が必要になる場面があり、そのため給与明細は大切に保管しておかなければなりません。

給与明細(給料明細)には何が書いてある?

そもそも、給与明細にはどのようなことが書いてあるかを改めて確認しましょう。給与明細には、大きく分けて「勤怠の内容」「支給される額」「控除される額」が記載されています。 


勤怠については

  • 出勤日数
  • 勤務時間
  • 有給日数

などの項目があります。


そして支給される額としては

  • 基本給
  • 通勤手当
  • 残業手当
  • 家族手当

などがあり、控除される額には

  • 所得税・住民税
  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険

などが当てはまります。


「学生時代は親の扶養枠内のみで働いていたので、社会人になって、天引きされるものの多さに驚いた」という方も多いのではないでしょうか。

給与明細は確定申告の際に必要になる場合がある

会社員であっても、住宅ローン控除を受ける場合やふるさと納税を利用している場合など、確定申告を行う方は多いでしょう。


これまで、確定申告を行う際には源泉徴収票の添付が求められていましたが、2019年4月

以降分の所得税に関する申告から添付不要になりました。


とは言え、確定申告書に必要事項を記入するため、源泉徴収票が必要であることには変わりがありません。


そして、この源泉徴収票が手元にない時、給与明細で代用できる場合があります。必要な情報は年間の給与額と控除額なので、給与明細を元に計算できるためです。


そもそも源泉徴収票を大切に保管しておくのが大前提なのですが、うっかり紛失したり、退職した会社から源泉徴収票が送られてこないというトラブルの時に、バックアップとして給与明細が役立ちます。

失業給付金の申請時に必要

勤めている会社を退職した場合、失業給付金(失業手当)を受け取れる場合があります。


正式名称は雇用保険の「基本手当」といい、失業して求職活動を行っている人に対し一定期間、ハローワーク(公共職業安定所)が給付金を支給するというものです。


この給付金の受給資格を確認するため、また支給日数支給額を決定するために、過去の給与額と雇用保険の加入状況が参照されます。


一般的には離職票を用いてそれらの手続きを行いますが、給与明細にも同じ事柄が記載されているため、何らかの確認事項が発生した場合に給与明細を求められる可能性があります。


確定申告・失業給付金の申請とどちらのケースでも、直接的に給与明細が必要なわけではありませんが、「備え」としてとっておくことで、いざという時に自分を助けてくれるのです。


なお保管期間に関しては最低限2年分が目安となります。給与や雇用保険料は2年前までさかのぼって請求ができるので、支給額の間違いなどに気が付いた時、その証明に使えるようにするためです。


さらに、確定申告の場合には過去5年分の給与明細が必要になることもあります。毎月渡される書類を数年分となればそれなりの枚数になりますから、方法をきちんと決めて保管することがおすすめです。

給与明細をくれないのは違法!所得税法231条を確認しよう

給与明細がもらえないのは違法であることと、その対処法について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは

  • 給与明細がもらえない(事業主が給与明細を渡さない)ことは所得税法231条に違反する
  • 所得税法100条では、給与支払いと明細交付は同じ時期と定められているため、交付が遅れることも違法になる
  • 給与明細がもらえない場合、税務署に訴えることで勤務先に指導を行ってもらうことが可能
  • 給与明細は確定申告や失業給付金の申請時に必要となる場合があるため、大切に保管すべし
でした。

給与明細がもらえない時、ともすれば「給与はもらっているからまあいいか」と諦めてしまいそうになるかもしれませんが、これはとてもリスクの高いことです。

給与明細をもらうことは法律に照らして当然の権利であることを認識しておきましょう。

また前述した通り、給与明細をもらえない場合、事業主側が渡す義務を知らなかったということはあり得ません。

明細が渡されないことについて会社に掛け合う時には、最初からケンカ腰になる必要はありませんが、毅然とした態度で向かいましょう。

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この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、保険相談や選び方のポイントを伝える「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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