更新日:2020/11/21
ボーナスにかかる税金が高い?引かれる税金の種類と計算方法を解説
ボーナスを何に使おうかと楽しみにしていたのに、いざ支給額を見ると引かれる税金が高いと感じたり、なぜ高いのか疑問に感じたりする人は多いのではないでしょうか?ここでは、ボーナスから引かれてしまう税金の種類や引かれる税額が高い理由、さらに年末調整について解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- ボーナスで引かれる税金が高いのはなぜ?
- ボーナスにかかる税金が高い主な理由:所得税と社会保険料
- ボーナスから引かれる所得税
- ボーナスから引かれる社会保険料
- 先月の給与がボーナスからの控除額に関係するのはなぜ?
- 先月の給与がボーナスの控除額に関係する理由
- 年末調整でボーナスの控除額の過不足は精算される
- 補足:年末調整について
- 実際の手取り額のシミュレーションをしてみよう
- 一般的にボーナス手取り額は額面の約8割
- ボーナス額60万円、扶養家族なしの場合の手取り額
- ボーナスを含む所得から引かれているのは税金だけではない
- 所得からは税金のほかに社会保険料も引かれる
- 社会保険料と税金の違いは?
- まとめ:ボーナスから引かれる額が高い理由
目次
ボーナスで引かれる税金が高いのはなぜ?
支給日よりも前からボーナスを楽しみにしている人は多いと思います。
しかしボーナスからは税金が引かれているので、額面金額よりも手取り額はかなり少なくなります。
なぜこんなに高い税金がボーナスから引かれているのか、その理由を知りたい人もいるでしょう。
また以前よりもボーナスから引かれる金額が増えたように感じて、いつから高い税金がかかるようになったのかと、疑問に思っている人もいるはずです。
そこで今回のこの記事では「ボーナスにかかる税金が高い理由」について
- 高い税金の内訳
- 前月の給与額次第でボーナスから引かれる税金の額が変わる理由
- ボーナスから引かれている税金以外のお金
ボーナスにかかる税金が高い主な理由:所得税と社会保険料
ボーナスの額面金額と手取り額を見比べると、かなりの差があることが分かります。
これほどまでに高い税金が引かれているのかと、驚く人も多いはずです。
実はボーナスからは、税金も含めて以下で紹介するような様々なお金が引かれています。そのため額面金額と手取り額の差が大きくなっています。
そこで以下では、ボーナスから引かれているお金の内訳や計算方法について、見ていきたいと思います。
ボーナスから引かれる所得税
まずボーナスからは所得税が引かれています。
これは会社がボーナスを支払うとき、差し引いて納付しなければいけないと法律で決まっているからです。
また日本では、所得が多い人ほど高い所得税率が適用される制度になっています。そのため給与やボーナスを多く貰う人ほど税金も多く払うことになります。
そして引かれる所得税額のことを源泉徴収税額と言い、「(賞与額の額面金額から社会保険料を引いた金額)×算出率」で計算することができます。
ボーナスから引かれる社会保険料
所得税だけでなく、実はボーナスからは社会保険料も引かれています。
所得税と同様に、ボーナス支給時に会社が差し引いて納付することが法律で決まっています。
つまり、ボーナスの手取り額を見て高い税金が引かれていると感じたのは、所得税に加えて社会保険料も引かれているからです。
そのため、額面金額から手取り額を計算するには、社会保険料を計算できなければいけません。
また既に見たように、所得税の源泉徴収税額を計算する上でも社会保険料の金額を知る必要があります。
そこで社会保険料の内訳を見てみると、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の3つが引かれています。
社会保険料の合計額を計算するためには、それぞれの計算方法を理解することが大切です。
健康保険料
「賞与額(千円未満切捨)×保険料率」で求めます。
保険料率は、加入している健康保険制度や地域、そして年齢が40歳以上かどうかによって変わります。
例えば「協会けんぽ加入者・東京勤務・40歳未満」の人であれば、2019年度の保険料率は9.90%です。(協会けんぽ:平成31年度保険料額表)
保険料率は労使折半(社会保険料を企業と労働者が半分ずつ負担すること)のため、ご自身の負担は4.95%となります。
ここで仮にボーナスの額面金額が40万円の場合、健康保険料は以下のように計算することができます。
賞与額:400,000円×保険料率:4.95%=19,800円
厚生年金保険料
「賞与額(千円未満切捨)×保険料率」で求めます。
保険料率は加入している健康保険制度や地域によって変わります。
例えば「協会けんぽ加入者・東京勤務・40歳未満」の人であれば、2019年度の保険料率は18.3%です。
そして保険料率は労使折半のため、ご自身の負担は9.15%となります。
ここで仮にボーナスの額面金額が40万円の場合、厚生年金保険料は以下のように計算することができます。
賞与額:400,000円×保険料率:9.15%=36,600円
雇用保険料
「賞与額(額面金額)×保険料率」で求めます。
保険料率は事業の種類によって変わりますが、例えば一般の事業であれば2019年度の保険料率は0.3%です。(厚生労働省:雇用保険料率について)
ここで仮にボーナスの額面金額が40万円の場合、雇用保険料は以下のように計算することができます。
賞与額:400,000円×保険料率:0.3%=1,200円
以上で計算した健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料を合計すると、ボーナスから引かれる社会保険料の合計額を求めることができます。
先月の給与がボーナスからの控除額に関係するのはなぜ?
それほどライフスタイルや家族構成の変わらない同僚と、同じ金額のボーナスをもらっているのに、自分のほうが手取り額が少ないと感じたことはありませんか。
もしかしたら、自分は損をしているかも、と考えてしまうかもしれません。
しかし、ボーナスの控除額は、先月の給与額が多く影響しています。
そこで次は、
- 先月の給与がボーナスの控除額に関係する理由
- ボーナスで多く引かれても、安心していい理由
について解説します。
これを読めば、控除のしくみがわかり、なぜ手取り額が違うか納得できるでしょう。また、自分だけが少ないのではないか、という不安を感じることもなくなりますよ。
先月の給与がボーナスの控除額に関係する理由
ボーナスの控除額は、前月の給与額が影響を与えますが、これには源泉徴収額が関係しています。
ボーナスの控除額は、国税庁から算出表が出ていて、それで計算できます。
手順は、ボーナスの前の月の給与から社会保険料などを引き、その金額に扶養人数を当てはめて、税率を求めます。
給与は毎月、全く同じ金額ではありませんが、ボーナスをもらうときの算出率は、「毎月、その一定額を給与としてもらっている」と仮定しています。
ボーナスをもらう前の月に残業が多いと給与額が上がり、同じ額のボーナスでも上記の条件が異なるため税金の金額も異なるので、人によって手取り額が違うのです。
ですから、ボーナスをもらう前の月は、あまり残業を増やさないほうがいいんですね。
年末調整でボーナスの控除額の過不足は精算される
ボーナスで控除額が大きくなり、損をした気になる人もいますが、心配ありません。ボーナスによる控除額の過不足は、年末調整で正しく清算されるからです。
払いすぎた分はもちろんのこと、もし引かれる税金が安かった場合も、年末調整で計算されます。
ですから、扶養人数など条件が同じで、給与や賞与も同じであれば、1年間のトータルとして引かれる税金などの金額は等しくなります。
補足:年末調整について
年末に会社から書類の記入を求められて、年末調整に関する書類を提出したことがある人も多いはずです。
その時に会社が年末調整をして、税金の過不足を精算してくれています。
ここでそもそも過不足が生じる理由ですが、これは源泉徴収税額と所得税額の計算方法の違いにあります。
まず源泉徴収税額の計算に用いる算出率は、例えば扶養親族2人の場合、以下のようになっています。(賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表)
前月給与額 (単位:千円) | 算出率 |
---|---|
133未満 | 0.000% |
133以上 ~ 269未満 | 2.042% |
269以上 ~ 312未満 | 4.084% |
312以上 ~ 369未満 | 6.126% |
・・・ | ・・・ |
つまり前月の給与額だけで率が決まっています。
その一方で最終的な所得税額を計算する上での税率は、以下のようになっています。
課税される所得金額 | 所得税率 |
---|---|
195万円以下 | 5% |
195万円超~ 330万円以下 | 10% |
330万円超 ~ 695万円以下 | 20% |
695万円超 ~ 900万円以下 | 23% |
900万円超 ~ 1,800万円以下 | 33% |
1,800万円超 ~ 4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
(国税庁HP「所得税の税率」より抜粋)
ここで表中の「課税される所得金額」には、ボーナスや毎月の給与以外でも含まれている所得があります。
また一定の金額(控除額)を引いた後に税率を掛けるので、所得金額自体に掛けるわけではありません。
つまり源泉徴収税額と所得税額では、率を掛ける対象がそもそも違うということです。適用される率の数値自体も、全く異なることが表から分かると思います。
そのため源泉徴収税額と所得税額で違いが生じるのは当然です。
年末に調整をする必要があるので、文字通り年末調整が行われることになります。
実際の手取り額のシミュレーションをしてみよう
ボーナスをもらえるともちろん嬉しいですが、意外に少ないな、と感じるかもしれません。税金や保険料が引かれるため、額面そのままをもらえるわけではないからです。
では、実際ボーナスに対して、いくらくらいもらえるのか、ご存じでしょうか。
次は、ボーナスに対して手取り額がいくらになるのかを見ていきます。
税金や保険料の金額もそれぞれ計算していくので、手取り額の目安がつけられるようになります。そうすれば、ボーナスをどのように使っていくかの計画も立てやすくなりますね。
一般的にボーナス手取り額は額面の約8割
通常、ボーナスをもらうと、手取り額は額面のおよそ8割ほどになります。
これは、所得税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の4つが引かれるからですが、合算すると、全体の2割程度を占めています。
もし、ボーナスが80万円だとすると、
手取り額は、80万円×0.8=64万円
保険料などの合計は、80万円×0.2=16万円
というのが1つの目安になるでしょう。
ちなみに、住民税は引かれません。住民税は、前年の給与をもとにして計算され、月収から引かれているからです。
住民税とボーナスの関係については他の記事でより具体的にまとめているので、そちらを参考にしてください。
また、このような計算ができるのはボーナスの支給が年3回までの場合です。年4回以上出るときは、社会保険料の計算が変わり、ボーナスと月給の合算で計算します。
ボーナス額60万円、扶養家族なしの場合の手取り額
では、実際の手取り額を見てみましょう。
たとえば、前月の給与が30万円、ボーナスの額面が60万円、扶養家族なし(独身)の場合の手取り額はいくらになるでしょうか。
まずは、社会保険料をそれぞれ計算してみましょう。
種類 | 金額 |
---|---|
健康保険料 | 60万×0.099=59,400円 |
厚生年金保険料 | 60万×0.183=109,800円 |
雇用保険料 | 60万×0.003=1,800円 |
これらを合計すると、
59,400+109,800+1,800=172,800円
になりますが、実際は半分を会社が負担してくれるので、自分で負担する金額は、
172,800÷2=86,400円
になります。
次に所得税の計算ですが、
(ボーナス額-社会保険料の合算分)×源泉徴収率
によって出せるので、以下の金額になります。
(600,000-86,400)×0.06126=31,463円
これらをすべてボーナスから引けばいいので、手取り額は、
600,000円-(86,400円+31,463円)=482,137円
となります。この金額は、ボーナスの80.3%になるので、およそ8割になっています。
ボーナスを含む所得から引かれているのは税金だけではない
これまで見てきた通り、ボーナスからは所得税だけではなく社会保険料も引かれています。
「高い税金が額面金額から引かれている」と疑問を感じた人もいたはずですが、額面金額と手取り額の差は税金だけが原因ではないということです。
ボーナスから引かれている社会保険料について、より詳しく見ていきたいと思います。
所得からは税金のほかに社会保険料も引かれる
既に見たように、ボーナスから引かれる社会保険料は健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の3つです。
このうち厚生年金保険料の保険料率は特に高く、ご自身の負担分だけでも10%近くにもなります。健康保険料と併せると約15%にもなるわけです。
これだけ引かれていれば、高いと感じる人も当然多いはずです。
なお以前はボーナスから社会保険料は引かれていませんでした。
そのため「いつからか額面金額と手取り額の差額が増えた気がする」「より高い税金が引かれるようになった気がする」と思っていた人もいるはずです。
そもそもボーナスから社会保険料が引かれるようになったのは平成7年からです。年金財政を支えるために徴収が開始されました。
しかし当時徴収されていた特別保険料は、あくまで高齢者世代のための年金支給の財源でした。保険料を払っている人たちの年金額には反映されませんでした。
そのため「この制度はおかしい」と批判が出ました。
また毎月の給与からだけ社会保険料が引かれていたため、賞与の比率を上げれば社会保険料の負担額を減らすこともできました。
これも制度としておかしいと批判が出た理由です。
そこで平成15年には制度が改正され、毎月の給与だけでなくボーナスも含めて社会保険料を計算する総報酬制に移行しました。
こうして現在のように、ボーナスからも社会保険料が引かれる形になりました。
なおここまで社会保険料や所得税について見ましたが、住民税のことが気になった人もいるでしょう。
毎月の給与から住民税が引かれているため、ボーナスからも引かれるのではないかと思うかもしれません。
しかし実はボーナスから住民税は引かれません。これは所得税と住民税の違いが理由です。
所得税は、毎月の給与やボーナスを支払う度に源泉徴収され、年末調整で最終的に精算を行う仕組みです。
一方で住民税は、前年の所得金額を基準にして住民税額を計算し、毎月の給与から引く形で徴収されます。
つまり住民税は後払いの形であり、税額を12で割った金額が月々の給料から引かれます。ボーナスからは徴収されないということです。
社会保険料と税金の違いは?
これまで社会保険料と税金について見てきました。この2つはボーナスから引かれる点では一緒です。
しかしいくつかの点で大きな違いがあります。
まずあなたの所得金額によって料率が変化するかどうかで違いがあります。
所得税は所得が高い人ほど高い税率が適用される累進課税制度です。一方で社会保険料は、あなたの所得金額の大小で料率が変化することはありません。
これは徴収する目的がそもそも異なるからです。
所得税などの税金は、高所得者から低所得者にお金を移動させる所得の再分配を目的にしています。所得格差を是正するためです。
また暮らしやすい社会を作るためには、高い所得・高い負担能力がある人ほど多くの税金を払うべきであるという考え方に基づいています。
一方で社会保険料は自分自身のために払うお金です。
例えば厚生年金保険料であれば、あなたが将来受け取る年金を積み立てるために保険料を支払っています。
給与額に関わらず料率は固定なので、低所得者のほうが寧ろ負担感が大きい逆進性があるとも言えます。
このように社会保険料と税金では、大きな違いがあることが分かります。
これまで「ボーナスから高い税金が引かれている」と同じに見えていたものが、社会保険料と税金という全く異なるものであることが理解できたと思います。
まとめ:ボーナスから引かれる額が高い理由
「ボーナスにかかる税金が高い理由」について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
この記事のポイントは
- ボーナスにかかる税金で高いのは所得税と社会保険料の2種類
- ボーナスの前の月の給与額が高いと、ボーナス時に引かれる税金は高くなる
- 税金の過不足は、年末調整で清算される
- 住民税のように、ボーナスから引かれない税金もある
でした。
この記事を読んでいただけたことで、額面金額と手取り額の差について理解することができたと思います。
社会保険料も引かれていることや具体的な内訳・計算方法も理解できたことで、ボーナスから引かれる額が大きい理由も理解できたはずです。
ほけんROOMでは、他にも読んでおきたいマネーライフに関する記事が多数掲載されていますので、是非ご覧ください。