家賃補助(家賃手当・住宅手当)にも税金(所得税)はかかる?

企業の福利厚生の一環として支払われることもある家賃補助(住宅手当)ですが、この手当には税金がかかるものとかからないものがあります。現金での家賃補助は課税対象になり、家賃補助から税金分が引かれます。今回は、家賃補助に税金はいくらかかるのかの計算方法を合わせて解説します。

家賃補助(住宅手当・家賃手当)は課税対象になるのかを解説

給料のほかに家賃補助として住宅手当や家賃手当をもらっているけど、税金はどのくらいかかるんだろうと考えたことがあると思います。


住宅手当に税金がかかるのであれば、少しでも税金が安くなる方法はないか気になりますよね?


住宅手当は課税対象なので、ほかの所得との合計額に応じて所得税がかかりますが、実は家賃補助には税金がかかるものとかからないものがあります。


この記事では

  • 家賃補助に税金がかかる理由
  • 最近の家賃補助の動向
  • 非課税の家賃補助を受けるメリットとデメリット
  • 国や自治体による家賃補助制度にはどんなものがあるか

について解説していきます。


この記事を読んでいただけたら、どうすれば家賃補助にかかる税金を安くすることができるかを理解できるので、ぜひ最後までご覧ください。


現金での家賃補助は課税対象!家賃補助から税金分引かれる

国税庁は企業が従業員に支払う手当を、一部を除いて原則給与所得としています。そのため、現金で支給された家賃補助は給料と同じとみなされ、所得税の課税対象になります。


つまり、基本給や残業手当などの手当と合算して課税されるので、住宅手当の分だけ所得税が増えることになります。


たとえば家賃補助なしで課税される所得金額が310万円で計算してみると、課税率は10%(控除額97,500円)で、310万円×10%-97,500円=212,500円が源泉徴収される税金の額です。


月1,5000円の住宅手当をもらっていた場合課税給与所得金額は328万円で、上の計算式に当てはめると税額は230,500円となり、18,000円多く税金が引かれます。


また、月2万円の住宅手当をもらっていたとしたら課税給与所得金額は334万円となり、課税率は20%(控除額427,500円)に上がります。


そのため、税額は334万円×20%-427,500円=240,500円となり、引かれる税金の額もその分増えます。

家賃補助は単身赴任に伴い支給されている場合も税金がかかる

企業は単身赴任を行っている従業員に対して、

  • 毎月一定額を単身赴任手当として支給する
  • 帰宅するための旅費を、月単位あるいは年単位で支給する

ことがあります。


しかし、転勤に伴い単身赴任を行った場合に支給される手当にも、通常の家賃補助と同じように税金の控除はありません。どのような理由であろうと、現金で支給された家賃補助は課税対象となります。


そのわけは、家族と離れて暮らすことで単身赴任者の生活費などの負担が大きくなることを配慮し、給与の補填として単身赴任手当が支給されたとみなされるからです。


また、単身赴任者が帰宅するための交通費については、職務の遂行に必要な交通費として認められないため、単身赴任手当同様課税対象となります。

現金による家賃補助を行う会社は年々減少している

厚生労働省の「平成27年就労概況賃金制度」によると、住宅手当を支給している企業は年々減少しています。その支給額は企業規模や業種によって違いはありますが、労働者1人当たり平均17,000円です。


支給企業数割合
平成17年44.8%
平成22年41.2%
平成27年40.7%


住宅手当は毎月決まった金額を人数分支給するため、年間に企業が負担する金額も大きくなります。さらに、家賃補助を利用する従業員の把握や手続きの管理コストもかさみます。


住宅手当をなくすことで課税所得が減り、労使折半である社会保険料の企業負担も減ることから導入を見送る企業も増えてきています。

家賃補助(住宅手当)には消費税はかからない

企業が負担している通勤手当や出張旅費のうち、交通機関の利用や交通用具を用いている費用について、実費扱いとされている分は消費税の対象となってきます。


ただし、出張旅費に関しては、実費以外のたとえば、宿泊費用や食事代込みなどで企業が福利厚生費として出している分については所得の一部とみなされ課税所得となるため、消費税はかかりません。


これと同じく家賃補助(住宅手当)は福利厚生の一環であり、所得に該当されているため課税されてしまいますので、消費税はかかってきません

税金がかからない家賃補助とは?非課税の家賃補助は税金対策になる

家賃補助を受けながら節税したいのであれば、社宅制度を利用するのがオススメです。社宅は保有形態によって2つのタイプがありますが、どちらも一般の賃貸住宅を借りるよりも安い賃料で借りることができます。


この場合、「会社が借りている部屋の家賃の一部を従業員が支払う」ということになるので、税金がかかることはありません。


ただし、会社に支払っている家賃が賃貸料相当額の50%未満の場合は、家賃と賃貸料相当額との差額が給与として課税されるので注意してください。


それでは、非課税の家賃補助となる2つの制度について詳しくみていきます。

税金がかからない家賃補助①:社宅制度

社宅制度とは、会社が所有する物件を、福利厚生の一環で社宅として安い賃料で従業員に賃貸することです。


一般の賃貸物件を月額家賃10万円で借りて住み、住宅手当を5万円もらっていた場合は住宅手当に対して課税されます。


しかし、従業員が社宅に住み、家賃として5万円を会社に支払っている場合、負担額は同じ5万円ですが、税金が課税されることはありません。


ただ、固定資産税がかかったり、建物が老朽化すると管理費・修繕費が増えるデメリットもあるため、社宅を保有する企業は少なくなってきています。


メリット

従業員側のメリットとしては、

  • 会社が管理や修繕を行うので安心
  • 敷金・礼金など賃貸契約の管理が楽
  • 賃料が安い

などがあります。


デメリット

従業員側のデメリットとしては、

  • 所有している会社が少ない
  • 転勤などで退出しないといけない
  • 自分で物件を選べない
などがあります。

税金がかからない家賃補助②:借り上げ社宅制度

借り上げ社宅制度とは、会社名義で民間の賃貸住宅を借り、それを従業員に貸し出す制度で、家賃として一定額を従業員から徴収します。


ここで徴収した家賃と実際の家賃相場の金額の差を家賃補助の額とみなされ、住宅手当と同等の効果が得られます。


このとき、企業側から従業員へお金を支給しているわけではないので、会社と社員の双方に追加の税金がかかることはなく、税金対策としても有効です。


また、借り上げ社宅の場合家主は第三者なので、企業は建物の保守管理や修繕を行う必要がなく、手間やコストがかかりません。


そのかわり、企業は借り上げ社宅1件ごとに契約や解約の手続きを行う業務が煩雑になります。


メリット

従業員側のメリットとしては、

  • 家賃が天引きされるので所得金額が減り、節税効果がある
  • 条件の範囲内で自分の好きな物件を選べる
  • 個人で契約するより家賃が安くなる
  • 賃貸契約の更新料も発生しない

などがあります。


デメリット

従業員側のデメリットとしては、

  • 解約内容によっては、違約金の一部を負担しなければいけないケースもある
  • 所得金額が減ることで、社会保障の金額が減ることもある
  • 条件の範囲外では自由に物件や場所を選べない
  • 会社を辞めたら住めなくなる
などがあります。

国や自治体による家賃補助制度

国や自治体による家賃補助制度を利用することも税金対策としては有効です。国や自治体からの家賃補助を受けることができれば経済的負担も軽くなり、より生活環境の良い物件に住むこともできます。

なお、現金や現物支給による補助は国や自治体からの補助でも課税対象になるので気を付けてください。

また、制度の利用にあたっては、各自治体で家賃補助の内容や条件が異なります。そこで、家賃補助を受けるためのポイントや条件について詳しくみていきます。

例1:特定優良賃貸住宅(特優賃)【非課税】

特定優良賃貸住宅(特優賃)とは、主に中堅所得層のファミリー世帯向けの制度です。入居する世帯の所得に応じて国や自治体が家賃の一部を家主へ支給し、本来の家賃との差額を入居者が負担します。


補助の割合については毎年一定率下がっていき、最長で20年の家賃補助が受けられます。なお、補助割合を算定するために毎年所得を証明する書類の提出も必要です。


また、仲介手数料や礼金、更新手数料も必要ないので、入居時の初期費用が安く抑えられるメリットもあります。


申し込みには、「入居予定者全員が日本国籍を有しているか、外国人登録をしている」「年収が基準を満たしている」「同居予定の親族がいる」など、いくつかの申し込み基準があります。


申し込み基準は各自治体によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。

例2:保育士宿舎借り上げ支援事業【非課税】

保育士宿舎借り上げ支援事業とは、保育園が保育士のために借り上げた住宅にかかる費用を、国や自治体が補助する制度です。


待機児童解消のために、保育士の人材確保・雇用促進を目的として実施されています。補助の対象となる経費は 1戸当たり月額82,000円が上限で、その4分の3を補助するところが多いようです。


具体的な補助金額や割合は各自治体で異なりますが、月々の家賃負担を軽くすることができ、生活で自由に使えるお金が大幅に増えるメリットがあります。


また、敷金や礼金、仲介手数料などの初期費用も保育園の負担となるので、保育士は初期費用を抑えての入居が可能です。


さらに、保育士宿舎借り上げ支援事業は住宅手当と違って補助金が保育士の給与に加算なされることはないので、税金が課税されることもありません。

例3:新婚世帯向け家賃補助制度【課税】

新婚夫婦が新たにその地域に住むと、税収がアップしたり街の活性化にもつながります。そのため、新婚世帯を優遇する新婚世帯向け家賃補助制度を実施している自治体が数多くあります。


この制度は、同じ都道府県内でも年収などの受給条件や支給される補助金額が異なりますので、住む前にあらかじめ調べておくほうがいいでしょう。


たとえば大阪府の場合、月額の所得が153,000円超322,000円以下、婚姻1年以内かつ夫婦ともに50歳未満の世帯であれば、月額最大2万円の補助を最長6年間受けられます。


また、東京都板橋区のように、以前は区立住宅の家賃が月額3万円最長3年間減額されていましたが現在は終了しているなど、状況が変化していることもありますので注意が必要です。

参考:所得税が非課税になる住宅手当以外の手当とは?


給与は企業ごとで給与規定を設けていて、それぞれの会社で給与の手当が決められています。


手当については会社独自で決められているものが多く、金額も時間給や日給や週給、または月給でそれぞれ決められています。


基本給に関しての見直しは1年に1度昇給という形の企業が多いですが、手当や割増の手当に関してはその人の待遇や月の状況で変動があります。


では、ここで給与手当のうち非課税になる手当を見てみましょう。

  • 通勤手当
  • 食事手当
  • 住宅手当
これら3つの手当に関しては所得税が非課税となります。


ここからは、住宅手当以外の通勤手当と食事手当について、詳しく見ていきましょう。

通勤手当

通勤手当は、給与手当の中でもどの会社でも支給される手当で、ほとんどの方が非課税となる手当です。


ただし、通勤手当は全ての方が一律に非課税という訳ではありません


会社までの通勤に公共交通機関を利用している方と、マイカー等で通勤されている方とでは非課税の金額は違います。


では、この非課税の金額はどのように計算されているのでしょうか。


公共交通機関を利用している方は金額が明確にされていますので、交通費の相当額が支給され非課税となっていますが、マイカー等のみの利用という方は、次の表のように決められています。

片道の通勤距離1ヶ月当りの限度額
2km未満全額課税
2km以上10km未満4,200円
10km以上15km未満7,100円
15km以上25km未満12,900円
25km以上35km未満18,700円
35km以上45km未満24,400円
45km以上55km未満28,000円
55km以上31,600円

食事手当

次に食事手当ですが、この手当は食事代の補助に対する手当となっていますが、支給される金額全てが非課税になるとは限りません。


非課税となるのは、残業や宿日直を行っている際に支給された食事代です。


食事手当が非課税になるための要件を見てみましょう。

  • 本人負担が食事代金の半分以上になっていること
  • 1ヶ月の手当金が税抜きで3,500円以下になっていること
これら2つの要件を満たしていれば課税されません。

わかりやすく言えば、多額の手当でなければ食事手当は課税されないということです。


例えば、毎月5,000円の食事手当が支給されているが、本人負担が2,000円という時にはいくら3,500円以下になっていたとしても、半分以下になっていないので、課税となってしまいます。

非課税の手当で税金対策する際の注意点



では、ここで非課税の手当で税金対策をする際の注意点について見ていきましょう。


給与所得のほとんどに所得税がかかってきますので、少しでも手当が非課税になることで節税に繋がります。


けれども、非課税の手当については、全面的に非課税というのは少なく、次の3つの非課税の手当にはそれぞれ非課税となるための条件が付いています。


  • 通勤手当
  • 宿直手当や日直手当
  • 出張旅費
これらの手当は基本的には、現金でなければ非課税で受け取ることができるのですが、支給された金額全てが非課税になるのではなく、それぞれに条件や上限などが設けられていますので、注意が必要です。

通勤手当は条件付きの非課税

非課税の手当の中で、通勤手当は条件付きの非課税となっています。

先ほどの参考の項目でも述べたように、通勤手当に関しては公共交通機関を利用する方とマイカー等を利用している方とでは非課税の額が違っています。

ただし、その非課税の金額についても条件付きとなっています。

公共交通機関を利用している方の条件は、たとえ通勤に多額の交通費がかかったとしても、ひと月に15万円までの交通費が非課税額の限度額となっています。

月に15万円まででしたら、ほとんどの方があてはまるのではないでしょうか。

一方、会社まで全てマイカー等を利用して通勤している方は、それぞれ会社までの片道の通勤距離で限度額が定められています。

そのため規定通りの範囲内であれば、非課税となります。

宿直手当や日直手当も条件付きの非課税

そして、宿直手当や日直手当も条件付きの非課税となっています。


宿直手当や日直手当は、緊急の連絡などに備えて勤務先に交代で泊まることになった場合に、支給される手当のことを言います。


宿直1回につき支給される手当の非課税額は、4,000円となっています。


ただし、この宿直は日中の通常の業務時間の前後に宿直をする場合に支給される手当となっています。


その上、宿日直手当以外に食事が支給されたりすれば、4,000円からその食事の支給代金を差し引かなければなりません。


そのため、夜間や休日に会社の留守番のための雇用の方や、または夜勤の方、そして代休を後日与えられる方に対しては対象外となります。

出張旅費も条件付きの非課税

出張旅費に関しても条件付きの非課税となっています。


出張旅費とは、その名の如く出張に対する旅費ということですが、出張は会社の業務のため遠方に出掛けて行くのですから、身の回りの物や外食代など、普段の生活時より余分な支出が増えるため、会社側がその分を手当として支給するというものです。


条件付きといっても、出長旅費の非課税とされる額は、通常必要と認められるものとなっていて、通勤手当や宿日直手当と違い、はっきりいくらという金額の設定はありません。


設定がないということは、渡し切りでも良くて、実費精算も不要となります。


けれども、会社側が高額な支給をしていれば一番に目につく科目でもあります。


そのため、企業内できちんと出張旅費規定を定めているところが多く、その規定に従って非課税金額が決まります。

まとめ:家賃補助(住宅手当・家賃手当)は課税対象になる場合がある

家賃補助と税金」について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか? 


 この記事のポイントは

  • 現金や現物給付による家賃補助には税金がかかる
  • 社宅や借り上げ社宅制度は非課税なので、税金を安く抑えることができる
  • 非課税の家賃制度を利用することのメリットとデメリット
  • 国や自治体も家賃補助を行っているので、引っ越し前に調べるのがお得
でした。

家賃は毎月かかってくる費用なので安く抑えることができれば経済的です。しかし、単に家賃の安い物件を選ぶだけでは生活のレベルを落としてしまう結果になるかもしれません。

また、会社からの住宅手当などの現金による補助は、原則課税対象となることも忘れないようにしましょう。

今回ご紹介した社宅や特定優良賃貸住宅などの非課税の家賃補助制度を上手に利用することで、より良い物件に住むことも可能になります。ぜひ住宅選びにこれらの家賃補助制度を活用してみてください。

ほけんROOMでは、他にも読んでおきたいマネーライフに関する記事が多数掲載されていますので、是非ご覧ください。

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