示談金にも税金が課税される?示談金や慰謝料と税金の関係とは

離婚や交通事故が原因で示談金を受け取る際、基本的に税金はかかりません。さらに、示談金に消費税を上乗せして払う必要はなく、受け取りに贈与税もかかりません。示談金に税金が課税されるケースは、示談成立後に被害者が亡くなってしまった場合や、被害者が事業者である場合が挙げられます。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

示談金に税金はかかる?課税されるケースって?


傷害事件や交通事故、離婚などの際に支払ったり受け取ることがある示談金ですが、場合によっては高額になる可能性もあり、税金を支払う必要があるのか気になる方もいるのではないでしょうか。


示談金には基本的に税金はかからないことになっていますが、場合によっては税金が課されることもあります。


そのため、示談金と税金の関係について押さえておかないと、後で困ることになるかもしれません。


この記事では示談金にかかる税金について、

  • 和解金・慰謝料と示談金の意味の違い
  • 課税されないケース
  • 課税されるケース
上記を詳しく解説していきます。

この記事を読んでいただけたら、示談金と税金の関係について理解することができるので、示談金を受け取る際や支払う際に役立つと思います。

ぜひ最後までご覧ください。

示談金に税金は課税されない

示談金は所得税法上、基本的に非課税となり税金はかかりません


具体的には、加害者として示談金を払う際には、示談金に消費税はかかりません。

また、被害者として示談金を受け取る際にも、示談金に贈与税所得税などの税金はかかりません。


ここではまず、示談とは何かについてご説明し、税金のかからない基本的な示談金について解説します。


そして、「示談金と和解金・慰謝料の違い」や「損害賠償金・損害保険金の課税」についてもご紹介していきます。

示談金とは

人と人の間で起こった争い事を裁判を行って解決するのではなく、被害者側と加害者側の話し合いによって解決すること示談と言います。


示談の際に、被害者側と加害者側が争い事によって生じた損害を話し合い、双方が合意した金額示談金となります。


示談金は、相手が知人や取引先など顔見知りの場合には双方で決めて円満に解決できることもあります。


しかし、相手が顔見知りでない他人の場合や、争い事がこじれている場合には、示談がなかなか成立しなかったり不当な示談金額で示談してしまったりする可能性もあるため、弁護士を立てて示談を行う方がメリットが大きい場合もあります。


示談金額は、被害者側と加害者側の話し合いによって決めることができますが、示談金の相場は、民事裁判で認められる金額が基準となることを覚えておきましょう。

示談金に消費税を上乗せして払う必要はない

示談が成立後、加害者側として示談金を払う場合には、消費税を上乗せして払う必要はありません


示談金は、上記でご説明してきたように所得税法上、基本的に非課税となっているため、払う必要がありません。

また、消費税がかかる条件は「商品やサービスなどの資産を渡して、お金などの対価を受けること」という観点からも、示談金に消費税はかからないことがお分かりいただけるかと思います。


例えば、交通事故を起こして加害者になってしまったと仮定します。

被害者側との間で示談交渉を行い、示談金が30万円と決まった場合には、加害者側として示談金30万円を被害者側に払うことになります。

示談金を受け取っても贈与税を払う必要はない

贈与税とは、個人から年間110万円を超える財産を受け取った場合に、受け取った側の個人にかかる税金を言います。


現金や不動産などの相続財産に相続税がかかることを防ぐために、生前に親族へ財産を受け渡すケースがあります。

そのような相続税を免れる行為を補完するために作られたのが、この贈与税です。


贈与税は、年間110万円を超える財産を受け取った場合以外でも、

  • 自分が掛け金を負担していない保険の満期保険金を受け取った
  • 対価を払わずに、不動産などの名義を自分に変更してもらった
  • 対価を払わずに、借金を免除してもらった
  • 著しい低単価で、財産の受け取った
  • 返済能力がないが、親兄弟から多額の借金をした
などの場合には、贈与としての税金が課せられます。

したがって、示談金は損害の賠償が目的であり贈与には当たらないため、示談金を受け取っても贈与税を支払う必要はありません

示談金・和解金・慰謝料の違い

示談金の他に和解金や慰謝料という言葉も良く聞くと思います。結論から言うと、和解金や慰謝料も示談金と意味合いは同じです。


ここで、和解金と慰謝料の意味を見ていきます。

  • 和解金とは:当事者同士が譲歩して、合意した金額。
  • 慰謝料とは:当事者同士の合意のもと、精神的苦痛に対して支払われる金額。
示談金は、当事者同士の合意により支払われる金額です。そのため、示談金と和解金、慰謝料は同じ意味合いであることが分かると思います。

ただ、精神的苦痛に対して支払われる慰謝料は、基本的に示談金や和解金の中に含まれています。

また示談金の場合は、示談成立後に納得がいかなければ再度争う事が可能ですが、和解金は、和解成立後に当事者がやはり納得できないと思っても再度争うことはできないという違いがあります。

多少の違いはありますが、和解金や慰謝料も示談金と同じ意味合いであるため課税対象にはなりません。

事故や傷害による損害に対する損害賠償であっても同様

示談金や和解金、慰謝料は税金がかからないと話しましたが、税金がかからないのはそれだけではありません。


事故や傷害によって損害を受けた場合に支払われる、損害賠償金も税金はかからないことになっています。


例えば交通事故にあった場合、受けた損害(ケガ、車などの損傷、精神的な苦痛など)に対する賠償金が相手側の保険会社から支払われます。


この損害賠償金は、被害者側と加害者側の保険会社が話し合い、合意のもとで支払われる金額です。


そのため、損害賠償金は示談金を構成する要素であり、税金はかからないことになります。

参考:交通事故等が原因の損害賠償金・損害保険金も非課税

交通事故などにより損害を受け、加害者側から支払われた損害賠償金は非課税であるとお話ししましたが、非課税になるのは損害賠償金だけではありません。


ご自身が加入している各保険から支払われる損害保険金も、非課税の対象となります。


例えば、交通事故を起こして車が損傷してしまった場合には、車両保険を使用して車の修理代としたり、傷害保険を使って通院や治療の費用に充てたりすることもあるでしょう。


この場合の損害保険金にも税金はかかりませんので、保険金の全額を受け取ることができます。


一方で、人身傷害保険等の死亡保険金は課税対象となります。

ただし、死亡保険金の全額に税金がかかる訳ではなく、過失割合に応じて税金が課される仕組みとなっています。


例えば、交通事故により運転手(被害者)が死亡してしまった場合に、死亡保険金が1億円支払われたとします。

その際の過失割合が「被害者20:加害者80」の場合では、被害者過失分の20%にあたる200万円に税金が課されます。


つまり、加害者過失分の80%にあたる800万円は非課税となります。

示談金に税金が課せられるケースを紹介



示談金は所得税法上、非課税となり、基本的に税金がかからないことをお伝えしてきました。


しかし場合によっては、示談金を受け取ったり支払ったりする際に、税金が課せられることがあります


示談金に税金が課せられるケースでは、

  • 示談金が、給与やボーナスとみなされた場合
  • 示談成立後に、被害者が亡くなった場合
  • 被害者が、事業を行っている場合
  • 離婚解決金が多く支払われる場合
  • 資産を離婚前に受け渡した場合

以上のことが挙げられます。


ここからは、示談金に税金が課せられる場合について、それぞれ詳しく解説していきます。

示談金の内容が給与やボーナスにあたるとみなされた場合

未払いの給与やボーナス、不当解雇に対しての示談金を受け取った場合、示談金の内訳によっては税金がかかることもあります。


課税の対象となるのは、示談金の内容が収入になるとみなされたものです。仮に示談金の内容が、慰謝料+未払いだった給料分の金額であったとします。


この場合、慰謝料は非課税のためそのまま受け取ることができますが、未払いだった給料分の金額は収入とみなされるため、課税の対象になるということです。

示談成立後に被害者が亡くなってしまった場合

示談成立後に被害者が亡くなってしまったとしても、損害賠償請求権はなくなりません。そのため、被害者が死亡しても家族に示談金が支払われることになります。


ただ、被害者本人ではなく家族が受け取ることになる際は、被害者本人から家族への相続とみなされ、相続税が発生してしまうので注意してください。


また示談を行う前に被害者が死亡してしまった場合の示談金については、非課税となります。

被害者が事業者である場合

被害者がお店の経営や不動産など何らかの事業を行っていて、その事業に関する保険金や損害賠償金を受け取った場合、所得税や法人税、消費税を課せられることがあります。


これは、自身の事業の損害に対する示談金が収入として扱われてしまうためです。例えば、以下のような場合に所得税や法人税がかかります。

  • お店の商品の損失に対する補償金
  • 被害により、事業を休まざるおえなくなった場合の、休業補償金や収益補償金
  • 従業員に対する給料の補償金
  • お店の家賃など維持費の補償金

自身が経営するお店の商品が壊されてしまった場合などに支払われる示談金には、所得税や法人税がかかることが分かると思います。


また、強盗などによりお店の商品が盗まれた場合には、買い取られたことと同じ扱いを受けるため、受け取った示談金に所得税・法人税消費税もかかってしまうので注意してください。

離婚解決金が支払われる場合

離婚をするには相手側に原因があるという明確な事実を示せない限り、双方の同意が必要です。


お互い離婚する意思であるのなら良いのですが、離婚後の金銭面の不安などを理由に、一方が離婚に応じなかったりすることもあると思います。


そのような場合に離婚したい側が、相手から離婚の同意を得るためにお金を支払うことがあります。このお金を離婚解決金といいます。


離婚解決金の内訳は慰謝料や養育費が主であるとされるため、非課税となることが多いです。


ただ、離婚解決金として支払う金額が多すぎると、財産の贈与だとみなされて贈与税がかかってしまうこともあるので、注意してください。

離婚前に資産を受け渡した場合

離婚の際、慰謝料だけでなく家や土地などの資産を受け渡すこともあると思います。ただ、この資産には受け渡すタイミングによって税金がかかってしまうことがあります。


税金がかかるのは、離婚をする前に資産の受け渡しをした場合です。資産の受け渡しには通常、贈与税や不動産取得税というものがかかります。


離婚した後であれば資産の受け渡しは財産分与という扱いに変わるため、基本的に非課税となります。


そのため、離婚する前に資産の受け渡し内容などをあらかじめ決めておき、離婚後に財産分与を行うのが一番良い方法と言えます。

参考:課税される場合でも税金分までは支払われない

示談金の内容によっては課税されるケースもあるとお伝えしてきましたが、この税金分を考慮した金額が支払われることは基本的にありません


何故なら、確定した示談金に対して税金が課せられているからです。


ただし、示談金に消費税が課税される場合には、消費税分を上乗せした金額が支払われることになります。

まとめ:基本的に示談金に税金はかからない

ここまで、示談金と税金の関係についてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。


この記事のポイントは、

  • 示談金には基本的に税金はかからない
  • 事故などによる損害賠償金や損害保険金、慰謝料は全て示談金に含まれる
  • 示談成立後の被害者死亡時は、示談金に相続税がかかる
  • 事業に関わる示談金は課税対象
  • 示談金に消費税がかかる際は、消費税分も加算した額が支払われる
以上のことでした。

事故や離婚など様々なことが原因で示談金は発生しますが、示談金にかかる税金について知らない方は意外と多いです。

いつ示談金を支払う側・受け取る側になっても良いように、きちんと示談金と税金の関係を押さえておくと良いと思います。

ほけんROOMでは他にも保険に関する記事を多数掲載しておりますので、よろしければご覧ください。

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