
更新日:2023/04/18
人材派遣業が加入すべき法人保険と取り巻くリスクを徹底解説!

人材派遣業には、損害賠償に関するリスクだけでなく、財物などのリスクも潜在的にあります。こちらの記事では人材派遣業を取り巻くリスクについてとリスクを軽減する保険を紹介します。またリスクや保険に関する相談は「マネーキャリア」をご利用ください。
内容をまとめると
- 人材派遣業は、個人情報の漏洩や労働災害に関するリスクなどがある
- このようなリスクを回避・軽減するためには損害保険に加入することをおすすめ
- 保険や事業のリスク対応に関する相談は「マネーキャリア」がおすすめ
- 人材派遣業での倒産は2種類あり、派遣会社と派遣先が倒産した場合で対応が違う
- 派遣会社が倒産した場合、社員との雇用契約が消滅
- 派遣先が盗難した場合、次の派遣先の紹介が必要
目次を使って気になるところから読みましょう!
人材派遣業を取り巻くリスクとは?
企業経営に関するリスクマップ

最初は、人材派遣業の経営を取り巻くリスクにはどのようなものがあるのかを解説していきます。その後に、人材派遣業において加入すべき法人保険の紹介をしていきます。
上記は事業が抱えるリスクをマップにして、可視化したリスクマップと言います。リスクが発生する頻度とリスクが経営にどのくらい影響を与えるのかの2つの軸で構成されています。事象を経営リスク、社会的経済リスク、自然災害事故リスクの3つのカテゴリに分類しています。
今回のこちらの記事では、以下の3つを上記からピックアップして解説していきます。
- 労働災害(発生頻度・高、リスク・低)
- 業務上の損害賠償(発生頻度・高、リスク・低)
- 個人情報の漏洩(発生頻度・低、リスク・中)
①労働災害(発生頻度・高、リスク・低)
②業務上の損害賠償(発生頻度・高、リスク・低)
続いては、業務上の損害賠償責任についてです。こちらのリスクは、発生頻度は比較的高いリスクですが、事業に与える影響は小さいリスクになっています。
労働者が仕事上のミス等により使用者に損害を与えた場合、労働者が当然に損害賠償責任を負うものではありません。労働者のミスはもともと企業経営の運営自体に付随、内在するものであり、使用者がそのリスクを負うべきものと考えられます。
しかし、事業の性格、規模、施設の状況、労働者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様・予防・損害の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度で、労働者が損害賠償の責任を負うことがあります。
③個人情報の漏洩(発生頻度・低、リスク・中)
最後は、個人情報の漏洩についてです。こちらのリスクは、発生頻度が低いリスクですが、事業に中程度の影響を与えるリスクです。
個人情報が漏洩したことで起こると考えられるリスクは以下になります。
- 社会的信用力の低下
- 売上や利益の低下
- 業務効率の低下
- 株式の下落
- 調査・賠償・対策コストがかかる
人材派遣業で起こった損害事例
ここからは人材派遣業で実際に起こった事故や、損害事例を3つ紹介します。紹介する事例は以下になります。
- 派遣社員が成果を偽装
- 派遣社員による横領
- 財物に関するリスク
事例1:派遣社員が成果を偽装
こちらの事例は、「ベルシステム21事件」という事件で、東京地方裁判所平成15年10月22日に判決が出ています。
事件の詳細は、NTT東日本から委託されて電話回線の訪問営業を行っていた派遣先で、派遣社員が本来は回線の申込者が記載する申込書を偽造して営業成果が出たかのように装い、派遣先からインセンティブの支給を受けていたことが発覚した事案です。
派遣先は本件が原因となってNTT東日本から訪問営業の委託契約を解除され、その結果、「約2700万円」の損害が発生したなどとして、派遣会社に対して損害賠償を請求しました。
派遣会社は、派遣社員に対して実際に指揮命令をしていたのは派遣先であり、本件の不正行為は派遣先の監督不足にも原因であること、派遣先としては、派遣社員の不正行為を防止するため、別の社員が申込書の文字や印鑑を照合して申込書に偽造がないかをチェックするなどの不正防止措置を講ずることが可能であったのに行わなかったことを主張しました。
裁判所の判決は、派遣会社の過失相殺の主張を認め、派遣会社には派遣先に発生した損害の「5割」を負担するように命じました。
事例2:派遣社員による横領
続いてのこちらの事例は、「パソナ事件」と言われる事件です。東京地方裁判所平成 8年 6月24日に判決が出ています。
この事件は人材派遣会社である株式会社パソナから派遣されていた派遣社員が派遣先で現金を横領し、派遣先が株式会社パソナに損害賠償請求をした事例です。
裁判所の判決は、株式会社パソナに対し、横領により派遣先に発生した損害の全額を派遣先に賠償するように命じました。
損害金額を全額賠償することを命じた理由としては、派遣会社の社員が1週間に1回程度の頻度で派遣先を訪問して派遣社員を監督しており、派遣料も派遣社員の給与の1.5倍程度と高額に設定されていました。
つまり、派遣会社が派遣先から派遣社員の監督業務を依頼され、監督業務に見合う対価も受け取っていたと理解されるケースであり、このような例外的な事情を考慮して派遣会社に損害の全額を負担させたと考えられます。
事例3:財物に関するリスク
最後は、人材派遣業での財閥に関するリスクの事例をいくつか紹介します。人材派遣業の多くの拠点は、テナントビルに入っており、テナントビル特有のリスクを内在しています。業務上、特徴的なリスクはなく、オフィスそのものは一般的な事務所と同様のリスク状況です。
事故の事例は以下になります。
- 人材派遣会社の事務所に強盗が押し入り、女性従業員などを脅迫などし、現金約10万円を強奪
- 8階建てオフィスビルで火災があり、1階から8階まで煙が充満
- 5階建て雑居ビルで火災があり、5人が重軽傷を負う。出火部分から油が検出されたことから、放火と断定
人材派遣業でリスクを回避、軽減するための保険
次は、人材派遣業を取り巻くリスクを回避・軽減するための損害保険を紹介します。紹介する損害保険は以下の3つです。
- 事業総合賠償責任保険
- 労働災害総合保険
- 個人情報漏洩保険
①事業総合賠償責任保険
最初は、事業総合賠償責任保険の紹介をしていきます。事業総合賠償責任保険とは、人材派遣業の事業を取り巻く賠償リスクをまとめて補償する保険です。
基本的な補償は以下の3つです。
- 業務遂行・施設リスク
- 純粋財物使用不能リスク
- 人格権侵害・宣伝障害リスク
派遣先に荷物を取りにきた配送業者に、台車をぶつけてケガをさせてしまったという事故に対しても保険金が支払われます。
行っていたところ、誤って電力をダウンさせ、全館停電させてしまった。
ビル全体のテナントが休業を余儀なくされ、休業損失を発生させてしまったという事故などを補償します。
- 不誠実行為危険担保特約
- 派遣先構内専用車危険担保特約
- 重複保険規定不適用特約
- 使用者賠償責任保険特約
- 個人情報漏洩危険担保特約
②労働災害総合保険
次は、労働災害総合保険の紹介をします。こちらの保険は、加入を義務付けられている「政府労災保険」に上乗せする形で給付や損害を補償する保険です。
こちらの保険は、法定外補償保険および使用者賠償責任保険の2つの補償を組み合わせた保険です。
法定外補償保険とは、被用者の労災事故について、被保険者(補償を受けることができる方)が政府労災保険等の上乗せ補償を行うことによって被る損害を補償する保険です。また使用者賠償責任保険とは、被用者の労災事故について、被保険者が使用者として法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害を補償する保険です。
③個人情報漏洩保険
最後は、個人情報漏洩保険の紹介です。個人情報漏洩保険とは、個人情報が漏洩した際に生じる、損害賠償や損害費用を補償する保険です。
個人情報漏洩保険の基本的な補償内容は以下の3つです。
- 損害賠償金の補償
- 対応費用
- 見舞金・見舞い品の購入費用

人材派遣業で倒産になると派遣社員はどうなる?
ここからは人材派遣業の経営で、実際に被害が発生し、経営を回復させることができず、倒産した場合に派遣社員がどうなるのかを解説していきます。
人材派遣業の場合倒産にも2種類が考えられます。
- 派遣会社が倒産した場合
- 派遣先の企業が倒産した場合
派遣会社が倒産した場合は、派遣社員の雇用契約が消滅します。派遣社員が雇用契約を結んでいる相手は派遣先企業ではなく、人材派遣業を経営している派遣会社だからです。
反対に派遣先企業が倒産した場合は、雇用契約が消滅することなく、給料を支払うことに加え、次の派遣先の紹介もすることになります。派遣先が見つからない場合は、休業手当として給料を支払う可能性があります。
まとめ~人材派遣業を取り巻くリスクと保険について~
ここまで人材派遣業の経営を取り巻くリスクと損害保険に関する解説と紹介をしてきました。以下が今回の記事の簡単なまとめになります。
- 人材派遣業は、個人情報の漏洩や労働災害に関するリスクなどがある
- このようなリスクを回避・軽減するためには損害保険に加入することをおすすめ
- 保険や事業のリスク対応に関する相談は「マネーキャリア」がおすすめ
- 人材派遣業での倒産は2種類あり、派遣会社と派遣先が倒産した場合で対応が違う
- 派遣会社が倒産した場合、社員との雇用契約が消滅
- 派遣先が盗難した場合、次の派遣先の紹介が必要