人材確保等支援助成金とは?2021年度の大きな変更に注意!

魅力のある職場づくりのため、労働環境の向上等を図る事業主・事業協同組合等に対し、助成を行うのが「人材確保等支援助成金」制度です。この助成金制度は様々なコースがあり、自社のニーズに応じて申請が可能です。今回は本制度の受給条件、活用法等を解説します。





▼この記事を読んで欲しい人
  • 雇用管理の改善を図りたい事業所
  • 生産性向上を図りたい事業所
  • 離職率低下を図りたい事業所
  • 賃金制度等を整備することで国に助成してもらいたい事業所


▼2021年度の人材確保等支援助成金の主な変更内容

  • テレワークコース新設
  • 人事評価改善等助成・介護福祉機器助成コース一部廃止
  • 設備改善等支援・働き方改革支援コース廃止
  • 介護・保育労働者雇用管理制度助成コース廃止

内容をまとめると

  • 人材確保等支援助成金は労働環境の向上等を図る事業主への助成する制度
  • どのコースを申請するかは各事業所の自由
  • 助成金を受け取るためには、各事業所で目標を達成しなければいけない
  • 新たな雇用環境であるテレワークを助成するテレワークコースが新設された
  • 新設されたコースがある一方で廃止されたコースもある
  • 申請する場合には、希望のコースがあるか良く確認する

人材確保等支援助成金とは?

人材確保等支援助成金は、労働環境の向上等を図ることに積極的な事業主、事業協同組合等に対して助成される制度です。


労働環境が向上せず働き難い環境のままだと、なかなか従業員の離職率は下がりません。しかし、資金的な面で働きやすい環境を整えるのが難し場合もあるはずです。


そこで労働環境の向上に進んで取り組み、一定の目標を達成した事業所等に、その支援を約束するのが本制度の目的です。


つまり、申請しただけでは助成金の全額を受け取ることができず、目に見える形で働きやすい環境を整えたことをアピールする必要があります。


こちらでは

  • 申請の流れ
  • 生産性要件とは何か

について解説します。

人材確保等支援助成金を申請する流れ

人材確保等支援助成金の申請は計画書を作成し、各都道府県労働局の職業安定部職業対策課へ提出するところから始まります。申請の流れを見ていきましょう。


  1. 人材確保等支援助成金計画書の作成・提出
  2. 就業規則等に人材確保等支援助成金制度を規定する
  3. 制度整備・計画実施期間で労働環境を整える
  4. 助成金の支給を申請する
  5. 厚生労働省側が審査し、支給決定の有無を判断する
  6. 助成金の一部を受給する
  7. 目標達成・計画実施期間で労働環境の向上に注力する
  8. 離職率算定期間で離職率等の目標要件をチェックする
  9. 助成金の支給を申請する
  10. 厚生労働省側が審査し、支給決定の有無を判断する
  11. 助成金を受給する
上記を見てもわかる通り、単に申請すれば、短期間で助成金が一括で受け取れるわけではありません。各コースで設定された目標が達成できなければ不支給となる場合もあるのです。

この目標はコースごとに異なるので、どんな要件をクリアすれば助成金が受け取れるのか、計画書の作成・提出前によく内容を確認しておきましょう。

生産性要件とは?

生産性要件とは、生産性の向上に成功した事業所が助成金を利用したい時、助成額または助成率の割増等を判断する要件です。


申請を行う直近の会計年度で、その3年度前に比べて

  • 6%以上伸びている
  • 1%以上(6%未満)伸びたと、金融機関から事業性評価をうけている

いずれかの成果を出していることが要件です。


「事業性評価」とは、各都道府県労働局が助成金申請をしたい事業所の承諾により、与信取引等のある金融機関へ事業の見立て(市場での成長性等)を照会、その評価を求めることです。こちらを割増支給の判断に活用します。


この仕組みで各事業所の取り組みの永続性を図り、更なる生産性の向上に資する効果が期待されます。なお、助成額または助成率はコースごとに異なります。


労働生産性を高めていくことは、経済成長を図るために必要不可欠な要素です。この生産性の向上へ真摯に取り組み、それに成功した事業所へ厚い支援を約束します。詳細はこちらを参考にしてください。

テレワークコース

テレワークコースは令和3年4月1日に新設された人材確保等支援助成金制度です。テレワークを新規で実施し、従業員の人材確保・雇用管理改善に効果があった事業所を助成します。


以前は従業員が事業所に出社し、仕事をして帰宅するというスタイルが主流でした。しかし、労働者の働き方は多様化してきています。


自宅で仕事をしてもインターネット回線がつながり、オフィスで行うような作業が十分できるなら、出社せず在宅のまま仕事をした方が効率的です。


テレワークコースは、そんなテレワークの整備を積極に進める事業所へ、助成する役割を担います。


こちらでは

  • 受給条件とは?
  • 受給金額とは?

について解説します。

受給条件

「機器等導入助成」「目標達成助成」に分かれます。まず機器等導入助成では、評価期間内に対象者のテレワークを実施の有無が判断されます。対象者全員1回以上実施または対象者の週平均1回以上の実施が条件です。


一方、目標達成助成ではテレワークを導入したら評価時離職率が計画時離職率以下で、評価時離職率が30%以下になることが求められます。そして、機器等導入助成の初日から1年を経過した日の更に3か月間の成果もチェックします。


対象数が、労働者総数とテレワーク実施対象者の割合を掛け合わせた人数以上であることも必要です。

つまり、この助成が受けられるためには、1年以上をかけてじっくりとテレワークが対象事業所・従業員に浸透したか評価されることになります。すぐに金銭的支援は受けられないので注意が必要です。

そのため、事業主がテレワークを一時期導入し、助成金を受け取れば元の職場環境へ戻すという方法は、取り難いこととなるでしょう。

この制度は、各事業所にテレワークを十分根付かせることが目的なので、継続的な環境整備と利用が求められているのです。

受給金額

機器等導入助成ではテレワークに要した経費の3割が支給対象です。一方、目標達成助成ではテレワークに要した経費の2割です。なお、目標達成助成では生産性要件を満たしたならば35%に支援金がUPします。


ただし、双方とも1企業100万円テレワーク対象者1人20万円が上限です。つまり、どんなに大きな成果をあげても、助成金に関する制約は存在します。


また、各段階の要件をクリアしなければ、それぞれの助成金は受け取れないことになっています。機器等導入助成が受けられたらと言って安心するのは禁物です。目標達成助成でも支援を受けるためには、更なるテレワーク環境の充実に努める必要があるのです。

雇用管理制度助成コース

雇用管理制度助成コースは、雇用管理の改善に効果があった事業所を助成する人材確保等支援助成金制度です。


さまざまな従業員のための研修、健康づくりのシステムを整備することで、従業員の離職率を下げる効果が期待できます。雇用管理の改善を試みたいが、その成果に見合った支援を希望する事業主へ最適なコースです。


こちらは前述したテレワークコースと異なり、目標を達成した場合のみ助成されます。そのため、雇用管理制度の整備の結果、どれほど成果を上げたかが支援のポイントとなります。こちらを参考にしてください。


こちらでは

  • 受給条件について
  • 受給金額について

以上を解説します。

受給条件

まずは、こちらに該当する雇用管理改善のための制度整備計画を、労働局から認定されることが必要です。

  • 諸手当等制度
  • 研修制度
  • 健康づくり制度
  • メンター制度
  • 短時間正社員制度:保育事業主のみ

認定されるだけで助成金は受け取れません。計画した制度を導入し実行します。


そして、計画期間終了から1年経過するまで間、離職率を提出前の1年間の離職率を、下表の目標値以上に低下させることが求められます。

雇用保険一般被保険者人数目標値
1~915%
10~2910%
30~997%
100~2995%
300~3%

雇用管理を改善しても、やはり離職者が出てくることもあります。事業主には雇用管理だけを改善するのではなく、従業員の身になって報酬の面や職場環境を改善していく必要があります。

受給金額

目標を達成すれば助成金が57万円、生産性要件を満たしたなら72万円が支給されます。本コースでは指定された制度を計画・導入しただけで、助成金は受け取れません。


計画に従い雇用管理を改善する施策が実施され、目標値以上に離職率を低下させることが必要です。目標を達成した時、ようやく助成金が下りることになります。


まずは事業所で雇用保険の一般被保険者人数を把握し、どの位の目標値をクリアすれば良いか、良く検討しておきましょう。

中小企業団体助成コース

本コースは、事業主団体が構成中小企業者の労働環境向上を図るための支援を行う人材確保等支援助成金制度です。


本コースが最も助成金額が高くなる制度と言えます。こちらはいわゆる「同業組合」「協同組合」のような団体が、その団体に加わっている中小企業の方々の労働・雇用環境の向上に資する取り組みを支援する仕組みです。


つまり、中小企業の事業主が助成金を受け取れるわけでは無いので注意しましょう。助成金はあくまで事業協同組合等に支給されます。


こちらも計画を作成しただけでは助成金が下りません。事業協同組合等が受給するためには、計画した事業を実施することが必要です。


こちらでは中小企業団体助成コースの

  • 受給条件
  • 受給金額
を解説します。

受給条件

こちらの人材確保等支援助成金制度は改善計画を策定し、まず都道府県知事の認定を受けます。その後、次の内容で1年間の計画を策定し、労働局長の認定も受ける必要があります。

  • 計画策定・調査事業
  • 安定的雇用確保事業
  • 職場定着事業
  • モデル事業普及活動事業

この計画をもとに、上記の事業を実施すれば助成金が受け取れます。


中小企業団体助成コースではこの取り組みの実施によって、組合員である各中小企業者の労働環境や雇用環境がどう変化したかは、数値で評価する必要は無いです。


しかし、都道府県知事や労働局長の認定を受ける必要があり、申請書類を労働局だけではなく都道府県にも提出する必要があります。この点は注意しましょう。

受給金額

事業を実施すれば1年間の実施に要した経費の2/3の額が支給されます。しかし、上限額は下表のように定められています。

組合大規模認定組合中規模認定組合小規模認定組合
構成中小企業者数500~100~499~99
上限額1,000万円800万円600万円

構成中小企業者数によって、それぞれ200万円ほど差が出てきます。経費の2/3の額が上限額を上回っても、この枠内で助成金が支給されるので注意しましょう。


各組合では構成中小企業者数がどの位なのかよく検討して上で、申請後に取り組みを実施すれば、どれ位の助成金額が受け取れるのか検討してみましょう。

人事評価改善等助成コース

人事評価改善等助成コースは人事評価制度を整備し、柔軟な賃金制度を設けた事業主に対して助成する人材確保等支援助成金制度です。


定期昇給等だけにとどまらない賃金の仕組みづくりで、生産性を向上させたり、賃金アップや離職率の軽減を図ったりして、人材不足を解消することが目的です。


つまり、この制度は全部または一部の従業員の賃金をあげたからといって、助成金が必ずしも給付されるわけではありません。


なお、本制度では制度整備助成が廃止され、目標値を達成しないと助成金が受け取れないことになりました。詳しくはこちらをご覧ください。


こちらでは、

  • 受給条件の内容
  • 受給金額の内容
を解説します。

受給条件

人事評価改善等助成コースは整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受け、生産性の向上や賃金の引き下げを行わず、計画を実施していくことが必要です。


人事評価制度等の適用をうけた従業員の賃金額が実施前の月等と比較し2%以、更に実施から1年経過した場合等でも2%以上増加していることが求められます。


それに加え離職率の低下も助成金支給の要件です。基本的に下表のポイント以上の成果を得ることが求められます。

雇用保険一般被保険者の人数規模低下させる離職率
1~300人維持
 301人以上1%ポイント以上

賃金がいくら上がっても、離職率が改善されなければ助成金は下りません。従業員を離職させない工夫が求められます。


従業員の身になった労働環境の改善で、離職のリスクは軽減することができるはずです。賃金だけではないその他の改善策も必要になります。


事業主は実施前の従業員の賃金額の正確な把握、そして離職率を詳しくチェックし、人事評価改善の計画を慎重に作成していきましょう。ただし、事業所の経営状態等も考慮し、無理のない計画の実施も大切です。

受給金額

「賃金の増加」「離職率の低下」この2つの条件のクリアすれば、80万円が事業主に支給されます。なお、制度整備助成が廃止されているので、本制度を整備しただけでは助成金は下りません。


あくまで目標達成という明確な成果が認められて、ようやく給付される点に注意が必要です。実施日の1年経過後の結果が大切なので、継続的な計画を実施が求められます。

介護福祉機器助成コース

本コースは、介護福祉機器の導入等で離職率の低下へ取り組んだ事業主を支援する人材確保等支援助成金制度です。


高齢者の増加により介護事業の需要が一段と高まっています。しかし、介護業界では人材の不足が目立ち始め、離職率の低下が求められています。


そこで、事業主が介護福祉機器を導入し、介護スタッフの負担軽減を積極的に図るため、このような人材確保等支援助成金制度が設けられています。この制度を活用すれば、事業主も新たな介護福祉機器の購入等が行い易くなるはずです。


ただし、本コースの機器導入助成が廃止され、目標値を達成しないと助成金が受け取れないことになりました。詳しくはこちらをご覧ください。


こちらでは

  • 受給条件について
  • 受給金額について
以上を解説します。

受給条件

まず介護福祉機器の運用計画を作成し管轄の労働局長の認定を受ける必要があります。そして介護福祉機器(移動・昇降用リフト、装着型移乗介助機器、体位変換支援機器、特殊浴槽)を導入します。


それだけではなく、計画期間の終了から1年経過するまでの期間の離職率を、次の目標値以上に低下させることが求められます。

雇用保険一般被保険者人数目標値
1~915%
10~2910%
30~997%
100~2995%
300~3%

そのため、単に介護福祉機器を充実させただけで助成金は受け取れず、それらの機器を導入し、実際に離職率が低下することも必要となります。


導入した介護福祉機器の積極的な利用はもとより、介護スタッフの労働環境の改善が数値で認められて、ようやく助成金が下りることになります。

受給金額

介護福祉機器の導入費用・保守契約費・研修費を含め、その総額の20%が支給されます。生産性要件を満たしたならば35%にアップします。ただし、上限150万円なのでそれを超えて助成金は受け取れません。


介護福祉機器の導入費用だけではなく、介護スタッフが安全に機器の使用が行えるよう、研修する費用も含まれるのはありがたいです。介護スタッフの労働環境の改善はもとより、能力向上にも資することでしょう。

介護・保育労働者雇用管理制度助成コース

人材確保等支援助成金制度では、令和3年度に廃止されたコースもあります。介護・保育労働者雇用管理制度助成コースがその一つです。介護スタッフや保育従事者の離職率低下の措置を支援する制度でした。


条件は整備計画を作成し、次の離職率低下以上の達成が求められました。

雇用保険一般被保険者人数目標値
1~915%
10~2910%
30~997%
100~2995%
300~3%

この目標等を達成すれば制度整備助成で50万円、目標達成助成第1回で57万円(生産性要件を充足72万円)、第2回で85.5万円(生産性要件を充足108万円)が受けられました。


制度整備助成はもとより、目標達成助成が2回に分かれているのが特徴的なコースと言えます。助成金額もかなり充実している内容となっていました。


本コースが廃止されている以上、介護事業者・保育事業者は誤って申請しないように気を付ける必要があります。詳しい内容についてはこちらをご覧ください。

設備改善等支援コース

本コースも廃止された人材確保等支援助成金制度です。生産性向上に資する設備等の導入のを支援するコースでした。


こちらは計画達成で助成金が受け取れ1年コース・3年コースと、計画期間も選べました。助成金額は50万円~200万円とやや差が大きくなっています。


(1)1年コース

期間1年コース
計画達成50万
目標達成 80万(上乗せ)
  総額 130万
備考 設備導入費用は175万円~1,000万円未満


(2) 3年コース

期間/設備導入費用240万円~5,000万円未満 5,000万円~1億円未満  1億円~
計画達成1回目50万50万100万
計画達成2回目50万75万150万
目標達成80万100万200万
総額180万 225万450万

なお、医療業・建設業・製造業・食品製造業・その他で導入する条件となっている設備はそれぞれ異なっています。ほとんどが大掛かりで、多額の設備費用のかかる機器が対象でした。


目標まで達成すれば、最高で総額450万円もの助成金が受け取れる仕組みとなっていました。


廃止されている以上、各業種の事業主の方々は誤って申請しないように注意しましょう。詳しい内容についてはこちらをご覧ください。

働き方改革支援コース

働き方改革支援コースも既に廃止された人材確保等支援助成金制度です。新たに労働者を雇い入れた事業主へ支援する制度です。こちらは改善計画が労働局の認定を受け、人員増につながっていることが給付条件でした。


本助成金は計画達成すれば、雇い入れた労働者1人60万円(短時間労働者:40万円)が受け取れ、目標達成で生産性要件を満たせば労働者1人15万円(短時間労働者:10万円)が受け取れました。


中小企業にとっては労働者確保をスムーズに行うため、頼りになる制度だったと言えます。ただし、技能実習生等は対象の労働者になっていませんでした。


廃止されている以上、事業主の方々は誤って申請しないように注意しましょう。詳しい内容についてはこちらをご覧ください。

まとめ

人材確保等支援助成金制度について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?


人材確保等支援助成金制度は頼もしい事業主のための支援制度と言えます。しかし、申請したからと言ってすぐに助成金を受け取れるわけではありません。


整備計画の作成に時間を要し、実施の際は1年以上にわたり取り組みを評価、しっかりとした成果があらわれているかどうか労働局からチェックされます。


本制度はバリエーション豊かなコースが用意されており、そのコースによって給付条件・助成金額は異なります。自社のニーズに合わせた取り組みへの支援が受けられるものの、特徴を冷静に把握し、申請するかどうかを判断しましょう。


なお、本制度では既に述べましたが、廃止または一部廃止になってしまったコースもあります。自社に廃止されたコースの申請用紙があるからといって、計画書等を作成し、労働局へ誤って提出しないように注意しましょう。


申請の際は、まずどのコースが現在利用できるのかをチェックし、取り組める分野の支援内容の把握が大切です。


ほけんROOMには保険に関するさまざまな記事が数多くあるのでぜひご覧ください。

この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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