介護保険と医療保険それぞれの特徴と違い、サービス併用の条件

いざというときに頼りになる、介護保険と医療保険。両方に「訪問看護」や「訪問リハビリ」などの同じサービスがあるようですが、どちらを使えばいいのでしょうか。介護保険と医療保険サそれぞれの特徴と違い、利用条件などについてご説明していきたいと思います。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険と医療保険の違いと併用できる場合に関する情報まとめ

よく病院の窓口で、健康保険証と介護保険証を一緒に出して


「こっちはいりませんよ」


と、介護保険証を返されているお年寄りを見かけます。


介護保険と公的医療保険、この二つは似ているようでまったく異なるものです。


しかし両方で被っているサービスがたくさんあるのも事実です。


いったいどちらを使えばいいのか。


両方を同時に使うことはできるのか。


二つの公的保険の違いと利用法、併用の条件について詳しくご説明します。

介護保険と医療保険の違い

介護保険は、お年寄りが使うもの。

公的医療保険(健康保険)は、国民みんなが加入するもの。


こういうイメージがありますよね。


それぞれのサービスを使えるのは、具体的にどんな人なのでしょうか。


そしてそれぞれの内容には、どんな違いがあるのでしょうか。

サービス利用者の条件による違い

ではまず、介護保険利用者の条件です。

介護保険を使えるのは、高齢者だけではありません。


  • 65歳以上の方(介護保険第1号被保険者) 
  • 40歳以上64歳(介護保険第2号被保険者)で特定16疾患の方

これらのうち、要支援または要介護と認定された方が介護保険を利用できます。 


第1号被保険者については、介護が必要になった原因は問われません。 


しかし第2号被保険者については、認定の条件として


「どんな病気で介護が必要になったのか」


という原因疾患が限られています。 


介護保険では、老化が原因とされる以下の「特定16疾病」が定められています。


がん末期

関節リウマチ

筋萎縮性側索硬化症

後縦靱帯骨化症

骨折を伴う骨粗鬆症

初老期における認知症

進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病

脊髄小脳変性症

脊柱管狭窄症

早老症

多系統萎縮症

糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症

脳血管疾患閉塞性動脈硬化症

慢性閉塞性肺疾患

両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 


第2号被保険者は、これらの患者以外はどんなに重い症状があっても介護保険を利用することができません。 



次に、公的な医療保険を利用できる方についてです。 


日本では、原則として全ての国民は何らかの形で公的医療保険に加入しています。


 (ただし生活保護の方は、医療費は保険ではなく保護費でまかなわれています。) 


その利用に年齢や原因疾患が問われることはなく、実質的に利用条件はありません。


保険料の納付方法の違い

保険料の納付方法については、どんな違いがあるのでしょうか。 

それぞれの納付方法を確認してみましょう。


  • 介護保険料の納付方法

65歳以上の方の介護保険料は、原則として年金から天引きされます。 


これを特別徴集といいます。


特別徴集は、年金が年額18万円以上の方に限ります。 


年金が年額18万円未満など、特別徴集の対象でない方は納付書払いとなります。


これを普通徴集といいます。 



 40~64歳の健康保険加入者は、健康保険料に上乗せされる形で介護保険料を払います。 


つまり、「給与から天引き」「口座振替」「納付書払い」ということになりますね。 


ただし健康保険上の扶養に入っている方は、その状況と健康保険の保険者により


・介護保険料も免除となる

・介護保険料は免除にならない


という両方のパターンがあります。 


  • 公的医療保険料の納付方法

75歳以上の後期高齢者医療制度の該当者は、介護保険料と同じく「年金から天引き」「口座振替」「納付書払い」という形になります。 


また74歳以下は、


・協会けんぽや共済組合のといった被用者保険

・国民健康保険や国民健康保険組合といった地域保険


に加入しています。 


保険料は「給与から天引き」「口座振替」「納付書払い」 ということになります。 


被扶養者は保険料が免除されています。 



ちなみに40~64歳の生活保護受給者は、医療保険にも介護保険にも加入していません。


特定16疾病により介護が必要になったときには、介護保険と同等のサービスが保護費からまかなわれます。     

保険からの支給限度額による違い

介護保険は、認定区分により支給限度額が異なります

限度額を超えて利用したときには、その分はすべて自己負担しなければなりません。


支給限度額は単位によって表されます。


1ヶ月あたりの各認定を区分における支給限度単位は、以下の通りです。


要支援1…5,003単位

要支援2…10,473単位

要介護1…16,692単位

要介護2…19,616単位

要介護3…26,931単位

要介護4…30,806単位

要介護5…36,065単位


1単位は原則10円として計算します(最高で11.4円)。


ただし居住する自治体や利用するサービスによって金額が多少増えることがあります。


1単位10円の地域に住む介護1の方が限度額いっぱいまでサービスを使ったときは、


1割負担の場合ならおおむね16,692円

2割負担の場合ならおおむね33,384円


という自己負担額になります。


一方で医療保険には支給限度額がありません。 


上限なしのまま、一定の負担割合で使うことができます。 

サービス利用時の自己負担による違い

小学生〜70歳未満の方の医療費自己負担割合は3割。


70歳以上の方は年齢や収入により1割~3割です。



そして介護保険の自己負担割合は、収入により1割または2割。


つまり、人によっては医療より介護のほうが自己負担割合が低いというメリットがあります。


しかし2018年8月の介護保険3割負担の導入にともない、そうともいえなくなってきました。


むしろ介護保険の方が、3割負担のハードルが低くなります。



しかし、介護サービス費に関しては「高額介護サービス費


医療費に関しては「高額療養費」 


という制度で、1ヶ月の支払いが一定の上限額を超えた部分が支給されます。 



また、医療費と介護費用の合計が一定の上限額を超えた場合には


高額医療・高額介護合算療養費」という制度を使うこともできます。  

利用時間や回数による違い

利用時間や回数の制限は、どう違うのでしょうか。


介護保険と医療保険の主だったサービスである、

「訪問看護」「訪問リハビリ」について考えてみましょう。


  • 訪問看護
医療保険の訪問看護は、原則として週に3回まで。

一回の利用時間は、30~90分です。


ただし一定の疾病の患者やがん末期の患者は、週4回以上の利用が可能です。 


また、病状の悪化により医師から「特別訪問看護指示書」が出されたときには、月に1回最長14日連続の利用も可能となっています。


さらに特別訪問看護指示書が交付された方のうち、気管カニューレを使用している人・真皮を超えるじょくそう(床ずれ)のある人は月に2回まで(つまり28日連続)利用できます。 


一方で介護保険の訪問看護は、20分・30分・60分・90分の4区分ですが、特に利用回数制限はありません。


  • 訪問リハビリ

介護保険では週6回が限度で、1回は20分の計算になります。


1時間で計画すれば週2回、40分であれば週3回可能ということですね。


医療保険の訪問リハビリも同じく、週6回が限度で1回は20分となります。


しかし例外として、がん末期の患者は回数制限がありません。


また退院から3ヶ月以内の方が入院先の医師の指示でリハビリを行うときには、20分×12まで利用できます。

利用手続きの方法による違い

介護保険を利用する場合には、申請手続きを行って認定を受ける必要があります

通常は申請から1ヶ月以内に認定結果が送られてきます。


そしてケアマネジャーがケアプランを作成して、ようやくサービスを開始できます。 


申請日からサービス利用自体は可能なのですが、その場合は認定区分を予測した「暫定利用」となります。


結果としてもし限度額をオーバーしたら、その分は10割自己負担となります。 


医療保険の訪問看護やリハビリを利用するときには、まず主治医へご相談下さい。


主治医から事業所に「訪問看護(リハビリ)指示書」が発行され次第、利用可能となります。 

介護保険と医療保険どちらを優先すべきか

介護保険の給付は、医療保険の給付より利用を優先することになっています。

つまり要介護・要支援認定がある方は、同じサービスなら介護保険を利用することになります。


ただしこれには例外もあるのです。


各サービスについて、どちらが優先されるのか見ていきましょう。

訪問介護の場合はどちらを優先すべきか

医療保険の訪問看護が優先されるのはどんな方なのでしょうか。

以下の4つのパターンがあります。 


  • 介護保険が使えない方

まず40歳未満はもちろん介護保険を使えないので、医療保険の対象者となります。 


40~64歳の介護保険特定疾患に該当しない方も同じですね。 


あとは65歳以上でも介護保険の認定を受けていない方や、介護保険の認定で非該当とされた方も医療保険適用となります。 


  • 介護保険被保険者のうち、特定の疾病に該当する方

要支援・要介護認定を受けた方でも以下の疾病に該当する場合は、訪問看護は医療保険適用となります。 



多発性硬化症

重症筋無力症

スモン

筋萎縮性側索硬化症

脊髄小脳変性症

ハンチントン病

進行性キンジストロフィー症

パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺•大脳皮質基底核変性症•及びパーキンソン病 )

  ※重症度分類がヤール3以上かつ生活機能障害がⅡ度またはⅢ度の者に限る

多系統萎縮(線条体黒質変性症•オリーブ橋小脳萎縮症•シャイドレガー症候群)

プリオン病

亜急性硬化性全脳炎

頚髄損傷

人工呼吸器を使用している場合


  • 介護保険被保険者のうち、がん末期の方

それまで介護保険の訪問看護を受けていたとしても、医療保険に変更されます。 


  • 介護保険被保険者のうち、「特別訪問看護指示書」が出されている方 

全ての訪問看護には医師による「訪問看護指示書」が必要です。


しかし病状の急性増悪などからより頻回な利用が必要となったときには、一時的にこの「特別訪問看護指示書」が出されます。 


特別指示書による訪問看護は、医療保険のみの対応となります。

リハビリの場合どちらを優先すべきか

介護保険の認定を受けていなければ、もちろんリハビリも医療保険を使います。


しかし認定を受けている場合、優先する保険は 


「リハビリの目的が病気の治療にあるかどうか」


で変わります。


疾患の治療目的で行われるリハビリは、原則として医療保険が適応されます。


例えば骨折した後に、機能回復を目的として行われるリハビリがこれにあたりますね。



逆にリハビリが治療の一環ではない場合は、介護保険が適応されます


例えば、現状の機能を維持するため歩行訓練などが該当します。

介護保険と医療保険は併用することができるのか

医療保険と介護保険の併用は、基本的には認められていません。

あくまで治療目的の場合のみに医療保険が適応され、目的が治療以外の場合には介護保険が適用されるので併用できないのです。 


ただし例外として、併用が認められるケースもあります 

別の診断名でサービスを受けるばいい介護保険と医療保険を併用できる

それぞれの保険において、対象となる疾病が異なれば併用は可能です。

ただし、併用には医師の明確な指示が必要です。



例えば脳梗塞後遺症で片麻痺のAさんが、拘縮予防のため介護保険の通所リハビリを受けているとしいます。


この場合、同じ診断名で医療保険のリハビリを受けることはできません。


しかしある日、Aさんは転倒して大腿骨頸部骨折と診断されました。


この別疾患名で治療目的のリハビリ指示が出たときには、介護リハビリとは別に医療でのリハビリを受けることができます。



また一定期間併用して利用することで医療リハビリから介護リハビリへのスムーズな移行が期待できる場合は、1ヶ月間に限り同じ疾患でも医療保険と介護保険が併用できます。 

介護保険と医療保険を利用する時期が違う場合、併用することができる

診断名が同じでも、月が変われば介護保険と医療保険の併用が認められることもあります

例えば医療保険の訪問介護が3月で終わった場合、4月以降なら介護保険の訪問介護を受けることができます。


同じ月での併用はできませんが、どちらかのサービスが終了して1ヶ月たてばもう一方の利用が認められるのです。 

末期がんのような難病に該当する場合、併用することができます

前出のとおり、末期がんなどの方はそれまで介護保険の訪問看護を使っていても医療保険の訪問看護に移行することとなります。

医療の訪問看護で算定されるリハビリを利用しても問題ありませんが、病院や老健が提供する介護の訪問リハビリを使うことも可能です。


もちろん介護保険の訪問介護やデイサービスを利用することも差し支えありません。


この場合、利用者は介護保険と医療保険を併用することとなります。

まとめ

現在政府は「医療と介護の連携」に積極的に乗り出しています。

今後も制度はどんどん見直されてゆくことでしょう。


「いざというとき」は、突然やってきます。


そのときに困らないよう、介護保険と医療保険それぞれの特徴や使い方をしっかり把握しておきましょう。

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