末期がんの方は介護保険と医療保険の併用が可能!併用の注意点を解説

介護保険と医療保険の併用というのは原則禁止されているものの禁止理由は公開されていません。ただし末期がん患者は介護サービスと治療のための医療サービスの両方を必要とされるため介護保険と医療保険の併用が認められます。末期がんの方が保険を併用する注意点をご紹介します。

原則として医療保険と介護保険は同時に使えない?

医療保険と介護保険には、同種のサービスがたくさんあります。 


訪問看護・訪問診療・リハビリなどは、どちらからも提供されているのです。 


サービスの目的が同じであるなら、「基本的に医療保険よりも介護保険を優先する」というルールがあります。 


さまざまな理由から介護保険の適用外であるときに限って、医療保険サービスを使うことができます。


 例えば介護保険は40歳で加入する決まりですが、医療保険の加入に年齢は問われません。 


つまり40歳未満の方は、当然ながら介護保険ではなく医療保険を使うしかないでしょう。



そもそも介護保険をスタートさせることには、 


高齢化社会の本格化に向け、医療費を削減する」 


というねらいがありました。

  

かつて日本では、高齢者の社会的入院・寂しいお年寄りによる病院のサロン化などが国の医療費を圧迫していました。


そこで国は「医療」よりも比較的安価な「介護」というジャンルを作り、


状態が安定している高齢者は医療ではなく介護へ」 


というルールを設けたのです。 


状態が安定している高齢者に医療保険をどんどん使わせるわけにはいかない。 


安定しているのだから、二つを併用する必要もない。 


というのが政府の方針なのです。 


状態が安定しているお年寄りは介護保険へ、という大原則。 


では「状態が安定していないお年寄り」はどうなるのでしょうか? 


実は、末期がんなど状態がきわめて不安定な高齢者は、二つの保険を併用できるのです。 


末期がん患者の場合は特例として介護保険と医療保険の併用が可能!

ここで、標準的な「状態が安定した高齢者」であるAさん(85歳・女性・独居)のサービス利用状況をご紹介しましょう。  

  • 週2回のデイサービスで、友人と楽しくおしゃべりして過ごす。お風呂にも入る。 
  • 週3回の訪問介護で、家事と身体介助(更衣や排泄)。 
  • 週1回の訪問看護で、服薬状況のチェックや血圧や体温の測定。 


すべて介護保険で賄えています。 


介護に通う家族の負担も減り、Aさん自身も充実した生活を送れています。 



一方、現在入院中のBさん(83歳・男性・妻と二人暮らし)についてご紹介します。 


肺がんが骨転移し、医師に末期がんと診断されたBさん。 


がんにはステージがあります。 


「がんの大きさ(T因子)」「周辺のリンパ節への転移(N因子)」「別の臓器への転移(M因子)」の3つの要因から0~Ⅳの5段階のステージが決まります。 


ステージ Ⅳ=末期がんというわけではありません。 


末期がんは、手術や治療のいずれからも回復が望めないと医師が判断した状態。 


あとはできる限り苦痛を取り除き、穏やかに余生を過ごすことが目的となります。 


Bさんはもう積極的治療ができないため、医師からホスピスへの転院か自宅での療養を勧められました。 


そしてBさんは、自宅で妻と一緒に過ごすことを選びました。 


さて、Bさんが自宅に戻ったときの利用サービスについて考えてみましょう。 


果たして先ほどのAさんのようなサービス内容は、Bさんにとって適切でしょうか。 


  • デイサービスで友人とおしゃべり→不要。 
  • デイサービスで入浴→訪問入浴が適当。 
  • 訪問介護による家事と身体介助→主介護者の妻が高齢であるため身体介助は必須。 
  • 訪問看護は血圧と体温の管理のみ→まったく足りない。  


末期がんの患者さんに何より必要なのは、痛みと苦しみの軽減です。 


モルヒネ・麻薬・ステロイド・気管支拡張薬の内服や貼用、注射と点滴。 


在宅酸素が必要なこともあるでしょう。 


これはかなり医療依存度が高い状態といえます。 


そこで末期がんのような状態が安定しない介護保険被保険者は、特例として医療保険の訪問看護を使うように定められているのです。 


Bさんは、 


  • 訪問入浴・訪問介護→介護保険
  • 訪問看護・往診→医療保険 


という、二つの保険の併用が認められることとなります。 

もし万が一末期がんになったら!入院中に要介護認定を受けるべき

介護保険が適用されるためには要介護認定を受け、どのような状態であるかを判断する必要があります。 


末期がんと診断され入院中の方は、早急にこの要介護認定を受けるための手続きをしておく必要があります。 


入院中にこの手続きを済ませておくことで、帰宅してからスムーズに介護保険サービスを使うことができるからです。

要介護度認定とは

利用者の心身の状況を調べ、必要な介護量を判断するために要介護認定はあります。 


これはコンピューターによる一次判定と、専門家の判断による二次判定に分かれています。 


まずは認定調査と主治医意見書のチェック項目をコンピューターに入力し、仮の介護度である1次判定が決まります。 


そして保健・医療・福祉などの学識経験者による介護認定審査会が、一次判定と認定調査・主治医意見書の詳細を吟味し、最終となる2次判定を確定させるのです。 


 認定区分(介護度)は、 


要支援1・要支援2・要介護1・要介護2・要介護3・要介護4・要介護5 


の7段階です。 


主な判断要因は、以下の6項目です。 


  • 身体機能・起居動作
  • 生活機能 
  • 認知機能
  • 精神・行動障害
  • 社会生活への適応
  • 特別な医療 

通常要介護認定には1ヶ月かかる

要介護認定においては、利用者の申請から1ヶ月以内に結果を通知することが自治体に義務付けられています。 

申請→認定調査→審査会の流れで、どうしてもその程度は時間がかかるのです。 


さらに自治体によっては遅延が常態化し、1ヶ月半から2ヶ月かかることもあります。 


要介護認定を受ける事によって利用できる介護保険サービス

要介護・要支援と認定された方は、介護保険サービスを利用することができます。 


介護保険サービスの内容は大きく分けて次の6つがあります。 


  1. 自宅で受けるサービス
  2. 通所似寄り受けるサービス
  3. 短期入所により受けるサービス
  4. 施設入居により受けるサービス
  5. 介護用具の購入補助や貸与
  6. ケアマネジメント 

末期がん患者がよく必要になる介護保険サービス

末期がんの方が最もよく使うサービスとは何なのでしょうか。 

先ほどのBさんも必ず使うであろうサービスについて触れたいと思います。   

介護用ベッドのレンタル

末期がん患者の方が最もよく使うサービス。 

それは「介護用ベッドのレンタル」です。 


ベッドの高さが変えられることにより、立ち上がりが楽になります。 


また車イスに移る介助も容易になります。 


さらに背上げができることで、ベッド上で食事がとれるようになります。 


そして辛いことですが、末期がんの方は長く生きられません。 


高価で大きな介護用ベッドを買っても、ほどなくして不要となるのです。 


そういった事情から、購入ではなくレンタルが適当といえるのです。 

介護認定を受けるための手続きの一般的な流れについて

ここで介護認定を受けるための流れをご説明します。 

介護保険の申請場所は、市区町村の介護保険担当窓口です。 


地域包括支援センターに申請を代行してもらうこともできます。 


以下のものを持っていきましょう。 


  • 本人のマイナンバーカード 
  • 身分証明書(本人・代理人両方) 
  • 介護保険被保険者証健康保険被保険者証(第2号被保険者のみ) 


この他、印鑑や委任状が必要となる場合もあります。


続いて申請までに調べておくことです。 


  • 本人の住民票上の住所
  • 認定調査を受ける場所(病院など) 
  • 主治医の氏名・診療科・医療機関の所在地・電話番号など 
  • 過去6ヶ月以内の入院歴・施設入所歴 
  • 特定疾病名(第2号被保険者のみ)  


窓口にある申請書に必要事項を記載して提出します。 


そこで認定調査の日にちを予約します。 


(末期がんであることは必ず伝えてください。優先的に調査を受けることができます) 


その後自宅に(入院中であるなら病院に)認定調査員が出向き、認定調査を行います。 


急ぎであるならば、調査結果が出る前に地域包括センターに相談してケアマネジャーを決めてください。 


特に末期がんであるならば、結果を待っている暇はありません。


 原則として申請から1ヶ月以内に、認定通知と新しい介護保険証が自宅に届きます。 

末期がん罹患者は申請が優先される

末期がん患者は、短期間で急激に状態が悪化することもあります。 

認定通知を待っている間に亡くなってしまう、ということも起こり得るのです。 


厚労省は各自治体に「末期がん患者の認定を優先すること」という通達を出しています。 

末期がん罹患者は認定のスピードが大切

とはいえ、できる限り早く申請するに越したことはありません。 


たとえ退院できるかどうかが決まっていなくても、すぐに申請だけはしておきましょう。 


また認定される前でも、申請したその日からサービスを使うことは可能です。 


その場合はケアマネジャーが利用者の介護度を推測した上でケアプランを組む「暫定利用」となります。 


ただし、もしその結果限度額をオーバーしてしまったら、残念ながら超過分は全額が自己負担となります。

まとめ

かつて末期がんの方は、病院で終末期を迎えることがほとんどでした。

しかし、自宅で最後を迎えたいという本人の希望や介護保険の浸透により、在宅での看取りケースは確実に増えています。


また、入院療養より経済的負担が軽いというメリットもあります。


末期がんの在宅療養では、介護保険と医療保険をうまく併用しましょう。


そしてどうかご本人とご家族が、大切な時を穏やかに過ごせますように。


心からお祈りいたします。

この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

ランキング