あなたの介護保険料はいくら?気になる計算方法と軽減措置について

いくら利用の予定がなかったとしても、40歳以上が強制的に徴収される介護保険料。最近はその増額も話題になっていますね。介護保険料の金額がいくらなのかは、人によって異なります。その計算方法と減免の基準について、各パターンに分けてご説明します。

介護保険料はいくら引かれているのか?介護保険料の計算方法まとめ

40歳以上になると、ほとんどの方が自動的に加入となる介護保険。

利用する予定はなくとも、介護保険料は容赦なく徴収されます。


給与や年金から天引きされているため「自分がいくら介護保険料を払っているのか」と意識することは、あまりないかもしれません。


果たして私たちは、そして周りの人たちは、介護保険料をいくら払っているのでしょう。


そしてその金額はどのように決まっているのでしょうか。


計算方法から減免や軽減の基準まで、介護保険料の疑問にお答えします。


介護保険料の仕組み

介護保険の予算は、公費50%・介護保険料50%でまかなわれています。 

介護保険料50%のうち、 


  • 第1号被保険者(65歳以上)の保険料は22%
  • 第2号被保険者(40~64歳)の保険料は28%

という割合になっています。 


つまり初めに予算はいくらと決めてしまい、その後に被保険者に負担を振り分ける形となっているのです。

介護保険料はいくらくらいが平均か

被保険者の皆さんは、介護保険料をいくら払っているのでしょうか。


第1号被保険者の2015~17年度の全国平均は、月額5,514円。

第2号被保険者の2016年度の全国平均は、月額5,352円です。 


(ただし国民健康保険以外の公的医療保険に加入する方は労使折半があるため、実際には半額の負担となります) 



介護保険制度がスタートした当時はいくらだったのでしょう。


制度開始の2000年には、全国の平均額は2,911円でした。 


2014年には4,972円へと上昇し、2015年以降は5,000円超えをキープしています。 


高齢者の増加にともない、介護保険の費用は上昇し続けています。 


2025年には平均8,000円を越えるという試算も出ています。

介護保険料はいくら払う必要があるのか

シンプルに「年収がいくらの人は介護保険料はいくら」と決まっていれば話は簡単なのですが、介護保険料には複雑な計算方法があります。


第1号被保険者は、居住する自治体によって計算方法が異なります。

第2号被保険者は、加入する医療保険によって計算方法が異なります。 


それぞれどのように計算し、あなたはいくらになるのでしょうか。

第1号被保険者の介護保険料の計算方法と徴収方法

65歳以上である第1号被保険者の介護保険料は、各市区町村の基準で決められています。

 

それぞれの市区町村では、どうやって保険料を算出しているのでしょうか。 



各市区町村では、まず介護保険サービス給付の見込みから3年ごとに予算を決めます。 


その予算総額の22%が第1号被保険者の保険料総額になります。 


その総額を各市区町村に居住する第1号被保険者の頭数で割って、1人あたりの介護保険料1年分がいくらになるかを仮に算出します。 


これが、その市区町村の中流とでもいうべき介護保険料の基準額(年額)となります。


第1号被保険者全員から基準額を徴収できれば簡単なのですが、それぞれの所得に差があるためそういうわけにもいきません。 


そこで所得を段階分けし、それぞれの保険料率を決めます。 


基準額×保険料率=各被保険者の年間保険料 


ということになります。 



段階の区分は、市区町村によって6段階のところもあれば17段階というところもあります。 


以下は、第1号被保険者を所得別11段階に分けた和歌山市の介護保険料率です。


  • 第1段階:生活保護を受給している…0.45
  • 第1段階:老齢福祉年金を受給している…0.45 
  • 第1段階:前年の合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下…0.45
  • 第2段階:前年の合計所得金額+課税年金収入額が80万円を超えて120万円以下…0.625
  • 第3段階:前年の合計所得金額+課税年金収入額が120万円を超える…0.75
  • 第4段階:前年の合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下…0.90
  • 第5段階:前年の合計所得金額+課税年金収入額が80万円を超える方…1.0(基準額)
  • 第6段階:前年の合計所得金額が120万円未満の方…1.20
  • 第7段階:前年の合計所得金額が120万円以上190万円未満…1.30
  • 第8段階:前年の合計所得金額が190万円以上290万円未満…1.50
  • 第9段階:前年の合計所得金額が290万円以上400万円未満…1.70
  • 第10段階:前年の合計所得金額が400万円以上800万円未満…2.00
  • 第11段階:前年の合計所得金額が800万円以上…2.10

和歌山市在住のAさん(前年の合計所得金額が110万円)の場合、介護保険料はいくらになるのでしょうか。


Aさんの所得区分は第6段階となりますので、保険料率は1.20です。 


基準額79,200円×1.20 =95,040円 


これがAさんの介護保険料(年額)となります。


第2号被保険者の介護保険料の計算方法と徴収方法

40~64歳である第2号被保険者の介護保険料はいくらくらいになるのでしょうか。


加入している公的医療保険により、計算方法は異なります。



第2号被保険者で国民健康保険以外の医療保険に加入している場合


国民健康保険ではなく協会けんぽや組合健保などの医療保険に加入する第2号被保険者は、


介護保険料=標準報酬月額(標準賞与額)×介護保険料率


で計算されます。 



標準報酬月額とは、給与などの報酬を区切りのよいところで段階分けしたものです。


通勤代や残業代も含まれ、5万8,000円から139万円までの50段階に分かれています。 


標準賞与額とは、3ヶ月を超える期間の賞与から千円未満を切り捨てたものです。 


介護保険料率は健康保険組合によって異なり、一例として協会けんぽの場合は平成29年3月から1.65%となっています。 



たとえば、Bさん(月額報酬が23万5000円・賞与が42万4500円・協会けんぽ加入)の場合、介護保険料はいくらになるのでしょうか。 


標準報酬月額は24万円・標準賞与額は42万4000円となります。


つまり計算式は以下の通りです。 


240,000×1.65%=3,960 

424,000×1.65%=6,996 


これらの金額を会社と折半するため、Bさんの1ヶ月の介護保険料は1,980円・賞与からの介護保険料は3,498円となります。 


ちなみに、 平成30年3月分(5月1日納付期限分)からの協会けんぽにおける介護保険料率は1.57%となっています。 



第2号被保険者で国民健康保険に加入している場合


加入している公的医療保険が国民健康保険である場合には、介護保険料は前年度の所得によって算出されます。


所得割 + 均等割 + 平等割 + 資産割 = 介護保険料 


という式によって求めることができます。 


計算式中の項目は以下のようになっています。  


  • 所得割:所得に保険料率をかけて算出します。 
  • 均等割:所得の有無にかかわらず、加入者1人ごとにかかる額。世帯の人数で算出します。 
  • 平等割:所得の有無にかかわらず、一世帯ごとにかかる額です。 
  • 資産割:土地家屋にかかる固定資産税相当額に、保険料率をかけて算出します。  

ただし、資産割・平等割を採用していない自治体もあります。 


国保の方には労使折半がないため、被雇用者の倍程度の負担になります。 


算出方法や保険料率は市区町村によって異なるため、正確な保険料かいくらなのかは市区町村の窓口で確認しましょう。  

介護保険料の支払いが厳しい場合、介護保険料はいくらくらい減免されるのか

原則として介護保険料が免除されることはありませんが、一定の条件を満たした場合には減免措置があります。

どんな条件により、いくらくらい減免されるのでしょうか。


これも第1号・第2号で異なっています。

介護保険料の減免措置を受けられる条件

介護保険第1号被保険者の減免制度


65歳以上の第1号被保険者は減免の条件が市区町村によって異なりますが、主に以下のような場合が対象となります。 


  • 災害により住宅等に著しい損害を受けた場合 
  • 失業等の事情により主たる生計維持者の収入が著しく減少した場合 
  • 生活が著しく苦しい場合 

上記の「生活が著しく苦しい場合」については、以下の条件を満たす必要があります。 


※市区町村によって要件は異なります


世帯全員の前年の年間収入合計額が次の額以下である 


 単身世帯:120万円 

 2人世帯:160万円 

 3人世帯:210万円 

 4人世帯:260万円 


世帯全員の預貯金の合計額が350万円以下である 


世帯全員が居住用もしくは事業用以外の不動産を所有していない 


別世帯の市町村民税課税者に扶養されていない 


自動的に減免されるわけではなく、必ず申請が必要となりますのでご注意ください。 



介護保険第2号被保険者の軽減措置 


40~64歳の国民健康保険加入者は、市区町村の条例ではなく国民健康保険法施行令による軽減措置があります。 


前年の総所得が世帯の軽減基準額を超えない世帯が該当します。 


介護保険料は国民健康保険料と一緒に徴収されるため、軽減措置に該当する場合は医療分などの均等割・平等割なども一緒に軽減されます。 


軽減そのものの申請は必要ありませんが、所得未申告の世帯は軽減が適用されません。 


申告を忘れないようにしましょう。


介護保険料のはいくら減免されるのか

第1号被保険者


第1号被保険者についての減免額は市区町村により異なりますが、一例として前出の和歌山市の制度を見ていきたいと思います。 



  • 災害により住宅等に著しい損害を受けた場合

震災・風水害・火災等の災害により住宅・家財その他の財産について著しい被害を受けた場合、損害の程度により次のとおり減免します。  


  1. 全壊・全焼・全流出に相当する場合…災害発生の翌月から12か月の保険料の全額 
  2. 半壊・半焼・床上浸水に相当する場合…災害発生の翌月から12か月の保険料の半額 


  • 失業等の事情により主たる生計維持者の収入が著しく減少した場合 

失業・干ばつ等による農作物の不作などで収入が著しく減少し、次の二つの条件ともに当てはまる場合に当該年度の保険料を(翌年度の保険料額を限度として)本人の所得段階により以下の通り減額します。 


  1. 第1号被保険者本人(本人が第4段階または第5段階の場合は本人以外の主たる家計の支持者)の当該年の合計所得金額が、前年の2分の1以下となるとき 
  2. 翌年度の市民税が非課税と見込まれるとき 

第6~11段階:第5段階(基準額)を適用した場合との差額


第5段階:第3段階を適用した場合との差額 


第4段階:第2段階を適用した場合との差額 


急に収入が減ったため、前年度収入により計算された額が払えない方のための救済措置ですね。 



  • 生活が著しく苦しい場合  

所得段階が第2段階または第3段階で、次の4つの条件すべてに該当する場合に適用されます。


当該年度の保険料のうち(翌年度の保険料の額を限度として)第1段階を適用した場合との差額を減額します。 


  1. 世帯人数が2人以上であり、世帯の年間見込み収入が2人世帯で120万円(1人増すごとに40万円を加算)以下であること 
  2. 市民税が課税となっている者の扶養をうけていないこと 
  3. 市民税が課税となっている者と生計を一にしていないこと 
  4. 活用できる資産を有さず、世帯の預貯金額等が1人当たり80万円を超えないこと 

最低額ラインまでは下げますよ、ということですね。 



第2号被保険者


続いて第2号被保険者かつ国民健康保険加入者である方の軽減額です。 


  • 7割軽減:世帯の中で国保加入者全員(擬制世帯主を含む)の総所得金額等が33万円以下
  • 5割軽減:世帯の中で国保加入者全員(擬制世帯主を含む)の総所得金額等から、国保加入者数に24万5千円をかけた金額を引いた額が33万円以下  
  • 2割軽減:世帯の中で国保加入者全員(擬制世帯主を含む)の総所得金額等から、国保加入者数に45万円をかけた金額を引いた額が33万円以下 

※擬似世帯主とは、家族に国保加入者がいる、国保加入者ではない世帯主のこと。

 納付義務者は世帯主となります


たとえば40代の夫婦+子供の世帯(全員国保加入)で、夫の年収が110万円、妻の年収が50万円である場合はいくらくらい軽減されるのでしょうか。


 (1100,000+500,000)-(450,000×3)=250,000 


33万円以下なので2割軽減となります。 

まとめ

このように、介護保険料はかなり複雑な基準で計算されています。


介護保険料は、特に国保の方や年金生活の方にとっては負担が重いもの。


すべての軽減措置を使っても、払うことが難しい場合もあるでしょう。


とはいえ、いくら納付困難でも滞納のまま放置するのは厳禁です。


いざというときに介護保険が使えないなど、大きな不都合が発生する可能性があります。


そんなときには、まずは市区町村の担当窓口にご相談されることをおすすめします。

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