介護保険に総報酬制が導入される理由とそれによって生じる影響

介護保険に新たに導入される総報酬制ですが、一定の合理性と反発の両方を生んでいます。健康保険組合に加入していれば平均負担額は上がり、協会けんぽに加入していれば平均負担額が下がることから介護保険に総報酬制が導入されることは、所得格差是正に繋がる可能性があります。

総報酬制を介護保険にも適用することによる影響とポイント

昨今の日本では高齢者の人口が増大しており、介護保険の重要性が高まっていることは言うまでもありません。


介護保険の費用は2000年から2016年にかけて約3倍にも膨らんでいます。早急に何らかの手を打たなければ、介護保険料をカバーすることが非常に難しくなっています。

介護保険料の上昇に対する政策

その介護保険料の高騰への対処法として検討されているのが総報酬制です。これは介護保険料の負担額を所得に応じて振り分けるというものです。


現行の仕組みでは医療保険者の所得を問わず一定額になっていたので、所得の大きい方と小さい方では所得に占める負担の割合が異なっていました。

総報酬制による所得格差の是正

介護保険料を含む保険料や税金などは所得に占める負担の割合を均等にすることで、所得を再分配するという狙いがあります


所得税が所得に応じて税率が異なるのはこのためです。昨今では所得格差の問題も発生しており、介護保険料の高騰と格差是正の両方に対策できることが期待されています。

総報酬制が介護保険に導入されると実際にはどんな影響があるのか

介護保険は大企業の従業員が加入する健康保険組合と、中小企業の従業員が加入する協会けんぽの2つに分かれています。


総報酬制が導入されると一般に所得が多いとされる大企業の従業員が加入している健康保険組合の保険料が上昇します。そもそも健康保険組合と協会けんぽでは平均の負担額が健康保険組合の方が大きいので、さらに差が大きくなることになります。

総報酬制での具体的な負担額の変化

具体的な負担額の変化としては健康保険組合の平均負担額は現状の5125円から、5852円に上昇します。


協会けんぽの平均負担額は4284円から4043円へと下降します。介護保険料は給料から天引きされるので、給料が減っていると錯覚する恐れがあるので注意しておきましょう。

総報酬制の影響を緩和するために

介護保険において総報酬制が急に導入されると、その影響が大きくなりすぎることを考慮して毎年段階的に導入されるようになっています。


2018年度は全体の増加額に比べるとその半分のみが適用されます。所得の少ない方に対する負担減も同様です。

総報酬制を介護保険に適用することによるメリットとデメリット

総報酬制が介護保険に導入されることには賛否両論あります。日本では年々所得格差が広がっており、中小企業の従業員の方々の負担を減らすべきだという考え方もあります。


所得格差が広がっていることは単に裕福かどうかという問題に留まらず、少子化などにも影響を及ぼしているのでその対策は急務です。

これまでは人数割りで費用を計算

介護保険料はそれぞれに加入している人数で割られるのが一般的でした。日本にはたくさんの中小企業と少数の大企業がありますが、トータルの従業員の人数ではあまり差がありません。


それゆえにこれまでの制度では健康保険組合と協会けんぽの保険料の負担額差が少なくなっていました。

総報酬制を導入することに関する狙い

介護保険料に総報酬制を導入することは単純に保険料を多く確保するという狙いがあります。


総報酬制が導入されることによる平均負担額では健康保険組合の上昇分よりも、協会けんぽの負担額減少分の方が明らかに小さくなっています。つまり、全体としては負担が増すという認識になります。

生活に余裕のある方の保険料負担が上昇

介護保険料を引き上げたいものの、唐突に引き上げると様々な反発を生んでしまいます。そこで総報酬制という新たな仕組みを導入しつつ、確保できる保険料を増やすという狙いもあります。


やはり生活に余裕のある方から多く徴収することが高い確実性を持っていることは言うまでもありません。

大企業の健康保険組合から反発が予想される

総報酬制に対しては反対意見もあります。当然ながら健康保険組合に加入している方にとっては負担が大きく増すからです。


健康保険組合は大企業の従業員が加入していることもあり、それなりの影響力を持っています。これまでも医療保険に総報酬制が導入される際には大きな反発を招いてきました。

総報酬制でも極端な割合は労働意欲の低下に

総報酬制などの所得が多い方ほど、負担の割合が増えるという仕組みは所得税と似ています。所得税も所得が増えるほど大きな割合で負担しなければならなくなります。


総報酬制は1つ間違えると労働意欲の低下に繋がってしまう恐れがあるので、その点は慎重に考慮がなされなければなりません。

まとめ

介護保険に導入される総報酬制ですが、この仕組みには一定の合理性があります。しかし、誰かの負担が大きくなるということから反発を招くのは必須です。この総報酬制に限らず、介護保険料の負担の問題はしっかりと議論が行われる必要があります。


しかし、介護保険料における財源が不足しているのは明白なので、あまりゆっくりと決めている時間もありません。

この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

ランキング