関係無いではすまされない。介護保険料の引き上げで、大きく変わる!

2000年に介護保険制度がスタートし、年々少しずつですが介護保険料や自己負担割合が引き上げられています。自分には関係ないと思っていても、将来介護保険料が更に引き上げられている可能性も!若いうちから仕組みを理解しておくことで、自分の老後に備える力になります。

2017年から変わる介護保険料の引き上げの仕組みとは?

介護保険は、自治体の公費と40歳から支払われる保険料とで賄われています。

しかし、2025年に迎える団塊世代の高齢社会と、世代内の格差を公平にするために所得に余裕のある一部の対象者の介護保険料の引き上げが決定しました。

引き上げの対象や、どのくらい負担が増えるのかなど詳しく解説します。

2017年8月から自己負担分の一部が引き上げられる介護保険料

介護保険にて介護サービスを利用している場合、その費用の1割 または 2割を自己負担分として支払います。ただし、自己負担分には上限額があり、自己負担はその範囲内での支払いで良いことになっています。

この制度を「高額介護(介護予防)サービス費」と言い、自己負担分の上限は、収入に応じて15,000円〜44,400円の範囲で設定されています。

しかし今回の改正にて、この上限額が見直されました。

2017年8月より、「同一世帯内で市町村民税が課税されている人がいる世帯」の月額上限額が、今までの37,200円から44,400円に引き上げられることになります。

月に数千円の引き上げですが、施設等に入居している方など、毎月上限まで利用している家庭にとっては負担増となります。

3年限定で介護保険料の年間上限額を引き上げ設定される

急に介護保険料が引き上げられるからといって、急ぐ必要はありません。

なぜならば、自己負担額の上限の引き上げを緩和するための措置も用意されているからです。


その措置とは、世帯全員の利用者負担割合が1割の場合「446,400円」の年間上限額が設けられます。

この移行措置は、収入の少ない(自己負担割合が1割の)人が介護保険料の引き上げにより負担が急に増えないようにすることが目的であり、年間上限額は2017年8月から1年間分の自己負担額から適用されます。しかし、この措置も3年間限定です。 

この措置の適用を受けるには、「世帯全員の利用者負担割合が1割」が条件となります。

介護保険の自己負担分は2018年も上がる

介護保険は、高齢社会に伴い利用者の増加から給付が10兆円を超える規模になっています。

そのため、介護保険料の引き上げや自己負担割合の引き上げが予想されています。


2018年8月からは、介護保険料の一部負担割合について、年収が現役世代並みの「340万円以上」の場合は「3割」となることが決まっており、今後も引き上げなどで家計の負担が増えることが予想されます。

介護保険料引き上げで2017年以降に変更される社会保障制度

今回の改正では、介護保険料の引き上げが注目されました。

しかし、介護保険料の引き上げに伴って社会保障も変更になり、その中でもインパクトが非常に強かったのが、年金受給資格の短縮です。

条件が今までの半分以下に変更になりましたが、年金の納付期間が短い分、その支給される年金額も驚くほど少額です。

介護保険料の公務員と大手企業会社員の負担が上がる

介護保険は、40歳以上が被保険者として介護保険料を負担するほか、国や都道府県・市町村も費用の半分を支出しています。このうち、17年8月から第1号被保険者が支払う介護保険料に総報酬割制度が導入されました。

この制度は収入に応じて介護保険料を負担する仕組みで、2020年度の全面導入に向け、収入が多い被保険者の負担が段階的にアップしていくステップアップ方式で組み込まれます。

厚生労働省の試算によると、総報酬割を全面導入した場合、


  • 公務員が加入する共済組合の保険料負担は1972円増加の7097円 
  • 大手企業の会社員などが加入する健保組合は727円増加の5852円
となる見込みの一方、
  • 中小企業に勤める会社員で構成される協会けんぽは、負担額が241円減って4043円となる見込みです
この制度導入により、介護保険料の負担が増える被保険者は約1272万人。負担が減る被保険者は約1653万人と予想されます。所得の高い被保険者の負担がアップすることは間違いありません。

年金受給資格25年から10年に短縮変更される

社会保障制度見直しで、最も注目が大きいのが年金の受給資格期間の短縮です。

これまで年金を受け取る為には、保険料の納付期間と保険料免除期間を合わせて25年以上が条件でした。

しかし、17年8月からこの期間が半分以下の10年に短縮されることになったのです。


これまでは10年以上25年未満の期間保険料を支払っていても、25年の受給資格を満たさないため、年金が受け取れなかった無年金者の救済措置として決定しました。

国民年金は、40年間の納付に対し月額約6万5000円が支払われていますが、この年金額は納付期間に応じたもので、今後は10年以上の納付条件で年金が受け取れることになります。

10年以上納付すれば年金を受け取れますが、年金額は加入期間が10年で毎月約1万6000円、20年で毎月約3万2000円と低く、年金を生活を送るための収入とするのは難しいのが現状です。

この救済措置にて厚労省は、約40万人が初めて年金の受給資格を得ることができるほか、厚生年金対象者も含めると、約64万人に上る見込みであると試算しています。 


厚生年金保険料がアップされる

自営業の方が主に加入する国民年金は、自分自身で保険料の納付手続きを済ませるため、年金制度を身近に感じることができます。

しかし、サラリーマンが主に加入する厚生年金は、給与から天引きされるため、年金制度には疎くなりがちです。その厚生年金の保険料にも「保険料の引き上げ」という負担増加の見直しが控えています。

厚生年金の保険料は、標準報酬月収額に保険料率をかけた割合ですが、17年8月までは一般被保険者は18.182%となっています。


例えば、月収が30万円の場合、


300,000円 × 18.182% = 厚生年金の支払い額は5万4546円です。


労使折半の規定にて、半分を会社が負担するため、給与から差し引かれるのは2万7273円となります。

厚生年金の保険料率は、2004年の法改正で毎年9月に引き上げられることになっており、2017年9月には18.3%に引き上げられます。

これにより、先ほどの給与例では毎月の支払額が354円増額することになります。

2017年以前から介護保険料はどれくらい上げられたか

第2号被保険者(40〜64歳)の現役世代による介護保険料の支払いは、介護保険制度がスタートした2000年度には全国平均2,911円でした。

2014年には一気に全国平均4,972円へと上昇し、2015年以降は5,000円を突破することになり、2016年月額5,352円になります。15年程度の期間で、月額にして倍以上の負担になっています。

2017年度はさらに増額され、月額5,642円の試算がされています。

今までよりも毎月の自己負担額も上がる

第2号被保険者の介護保険料の引き上げによって、第1号被保険者も今までよりも自己負担額も上がることになります。

介護保険料は5,000円の負担がピークだと言われています。しかし、少子高齢化が進む中、保険料の引き上げはピークを過ぎました。

第2号被保険者の介護保険料の引き上げ以外で増額出来るのは、第1号被保険者の自己負担額の引き上げです。

特に、2割の対象に当たる一部所得のある方は毎月の自己負担額が上がります。

さらに、2018年8月からは現役世代並みの所得のある方は3割負担になるなど、自己負担額が今までよりも家庭に負担になってくることは明らかです。

2025年には多くの団塊世代が75歳以上になります。それに向けて、国もあれこれと対策を講じているようです。

第1号被保険者介護保険料の市町村格差の検討も始める

第1号被保険者(65歳以上)介護保険料の額は、市町村が定めることとなっているため、自治体によって保険料が異なります。 

一番安い保険料は、ある地域では月2,800円 、一番高い保険料は、ある地域では月8,686円です。 


保険料の差が、3.10倍も違います。

なぜこんなに差が出るのかというと、市町村の人口や高齢化率(人口に占める65歳以上の人の割合)、介護保険サービスを使っている人が利用数などの要素によって、自治体ごとに介護保険制度を維持していくために必要な金額が異なるためです。

上記の通り、介護保険料についてはあまりに地域格差がついているので、格差解消の検討が始まっています。

まとめ

年金や保険などは、安心した生活を送るための国政ですが、少子高齢化に歯止めがかからない今では、負担が増していくのは避けられない現実です。

給与から天引きされている社会保障の金額をしっかりと確認し、制度改正による影響をチェックしてみましょう。

各保障の負担増の話題が大きく取り沙汰され、マイナスなイメージがのしかかりますが、長年訴えてきた年金受給期間の短縮により、これまで年金を受け取ることができなかった人が受給対象となるなど、社会保障制度改革が具現化される一面もあります。

来たる自分の老後のためにも、若いうちから貯金し、後悔のない人生を送りたいものです。

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