2017年に改正された制度で介護保険料はどれぐらい値上げされたのか?

高齢者の増加により、財源確保に苦しむ介護保険制度。今回改正された制度では、さらに介護保険料の値上げが行われました。この保険料の値上げの対象者はどのような人たちなのか?介護保険料はこれからも増加し続けるのか?これらを解説します。

2017年8月から介護保険料が値上げされた

介護保険の給付費は、半分は国や自治体が負担し、残り半分を40歳以上の被保険者が納める保険料で賄っています。


今回、介護保険制度の維持と介護保険サービスの費用負担の公平化を図るために介護保険制度が見直され、2017年8月から現役世代の40~64歳の第2号被保険者のうち、高中所得者の介護保険料が段階的に値上げされることとなります。

これは、介護保険料に「総報酬割制度」が導入されるためです。これまでは各医療保険者における第2号被保険者の加入割合に応じて介護保険料を算出していましたが、これでは加入者の多い組合の介護保険料負担が少なく、加入者の少ない組合では負担が大きかったのです。

しかしこの新しい報酬割合制度では、収入に応じて介護保険料を負担する仕組みで、2017年8月からは総額の1/3を、2018年度には総額の1/2、2019年度には総額の3/4と順次値上げしていき、2020年度には全面導入される予定です。

これからは収入が多い第2号被保険者の負担する介護保険料が段階的に値上げされていくことになります。

総報酬割を導入した場合の厚生労働省の試算を見てみます。

  1. 公務員が加入する共済組合の保険料負担は1972円の値上げ
  2. 大手企業の会社員が加入する健保組合では727円の値上げ
  3. 中小企業の会社員で構成される協会けんぽで241円値下げ

この措置により、介護保険料が値上げされる被保険者は1272万人、逆に介護保険料が値下げされる被保険者は1653万人と推計されており、相対的に所得の多い被保険者の介護保険料が値上げされます。

高額介護サービス費とは

公的介護保険を利用し、支払った自己負担額の合計が同じ月に一定金額を超えた場合に、申請すると超えた分のお金が戻ってくるという制度が「高額介護サービス費支給制度」です。これは国の制度に基づき、各市町村が実施するもので、個人の所得や世帯の所得によって支給額の上限が異なります。


この制度は健康保険の高額医療費と同じで、介護サービス利用者の金銭的負担を減らすためにつくられた制度です。
ただし、この高額サービス費の対象とならないものもあるので注意が必要です。介護保険施設での食費や居住費、特定福祉用具販売にかかった費用や住宅改修にかかった費用は対象となりません。

そして今回の改正では、この高額介護サービス費支給制度も見直しされ、値上げの対象となりました。

改正されたのは介護保険料の自己負担分の上限

介護サービスを利用した場合、その利用費の1割~2割を自己負担分として支払います。この自己負担分には上限があり、自己負担分が高額になったとしても、この上限内で支払えばいいという制度が先述した「高額介護サービス費支給制度」です。
この毎月の自己負担分の上限は収入によって決められており、15,000円から44,000円の範囲で設定されています。

今回の改正では、この自己負担の上限が見直され、値上げされることになります。

今回の改正は誰が対象なのか

介護保険には段階区分というものがあり、自己負担上限額で言うと第1段階は生活保護を受けていたり、老齢福祉年金受給者で世帯全員が市民税非課税の世帯は月15,000円(個人)。第2段階は世帯全員が市民税非課税、または前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円の世帯で月24,600円(世帯)と15,000円(個人)。第3段階は世帯の全員が市区町村民税を課税されていない世帯で月24,600円(世帯)。第4段階の同一世帯内で市町村民税が課税されている人がいる世帯で月37,200円(世帯)。第5段階は現役並みの所得者に相当する方がいる世帯で月44,400円(世帯)となります。
介護保険の所得区分は複雑ですので、自分や家族がどの区分にあたるのか、区役所などで確認しておくことをおすすめします。

今回の改正では、第4段階の「同一世帯内で市町村民税が課税されている人がいる世帯」の介護保険利用者のみが対象となり、月額上限額が値上げされます。

どれくらい介護保険料が値上げさたのか

これまでの自己負担分上限額の37,200円から「現役並み所得者に相当する方がいる世帯」と同額の44,400円にまで値上げされます。月に数千円の値上げとなりますが、現在上限額まで利用している家庭にとっては負担は大きいものとなります。

介護保険料の自己負担上限値上げに際しての移行措置

介護サービス利用者の自己負担分の値上げにより、家計の圧迫を和らげるための移行措置も用意されています。

世帯全員の利用者負担割合が1割の場合、年間上限額が設けられた

具体的には、世帯全員の利用者負担割合が1割の場合、「446,400円」の年間上限額(改正前の37,200円×12カ月)が設けられています。この移行措置は、収入が少ない「自己負担割合が1割の人」の負担が急激に増えないようにするためです。

ただしこの制度は2017年8月から3年間限定

この年間上限額は、2017年8月からの1年間分の自己負担額から適用されますが、3年間限定の措置です。
介護サービスを長期に利用している高齢者も多いため、年間の負担額が一気に増えないようするためです。この措置は2020年7月までとなります。

介護保険料の値上げはこれからも行われ続ける

高齢化が進み、医療・年金とともに介護費用も増加する一方です。日本は超高齢化社会へと進むスピードがとても速く、また少子化の問題もあり、社会福祉政策に必要な財源を確保することが難しくなっています。
どうにかして財源を確保するためには、現在介護サービスを利用している方の自己負担額を値上げする、そして収入もある現役世代の給料から天引きされる保険料を値上げさせることにより、今の介護保険制度は保たれています。
この方法で介護費用を確保していくようであれば、介護保険料の値上げはこれからも続きます。


2018年には一部の人の自己負担割合が3割になる

今回の改正では、現在介護サービスの自己負担割合2割の利用者のうち、現役並みに収入を得ているとされる年金等の収入が年間「340万円以上」の利用者は、自己負担割合が3割となります。これに該当し、負担が増えるのは約12万人で、受給者全体の3%程度と見込まれています。この自己負担割合引き揚げは2018年8月より行われる予定です。

以前は誰もが自己負担割合1割で介護サービスを利用することが出来ましたが、介護費用の増加により、2015年からは一定水準以上の収入がある利用者の負担割合が2割に引き上げられたのです。
2割負担導入時でさえ、自己負担増加により介護サービス利用を渋る利用者も出て、施設を退去した人たちもいます。3割負担となった時に必要なサービスが受けられない高齢者が増えるのではと懸念されています。

まとめ

介護保険は、高齢者が安心して老後を過ごすための大切な社会福祉政策ですが、急激な高齢化や財源を支える現役世代の減少により、年々介護保険料の負担額は値上げされています。


介護保険利用者の増加により、制度を運営していくためには仕方のない改正ではありますが、介護保険料の負担増や介護サービス費の自己負担増はこれからも無視できない問題となっていきます。

自分が第2被保険者で給料から社会保険料が引かれているのであれば、よく給料明細を確認し、保険料のこれからの動向をきちんと見ていかなければいけません。

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