介護保険でのモニタリングってどんなもの?どう行えばいいの?

介護保険のサービス提供を行うにはケアプランの作成が必要であり、その作成にあたり大切な作業がモニタリングです。また、サービス開始後のケアマネージャーによるモニタリングは、利用者やその家族が安心して適切な介護保険のサービスを受けることが出来る大切な要となります。

介護保険のモニタリングに関する基礎知識

介護保険サービスの利用者の心身の状態や生活状況は日々変化しています。なのでこれまでと同じケアプランどおりに介護サービスを提供していいのかを確認していくために、ケアマネージャーによって『モニタリング』というものが行われます。
モニタリングを行い、利用者やその家族がどのようなサービスを希望しているか?という必要な情報を得て(アセスメント)、ケアプランの作成が出来ます。
介護保険のモニタリングについて詳しく見ていきましょう。

介護保険のモニタリングで意識すべき基本事項

介護保険のサービスを提供する際には利用者ごとにケアプランが作成されます。モニタリングを行う時に意識すべきことは、このケアプランに沿って見ていきましょう。

まずは、前回の課題分析は適切だったか、設定した短期目標・長期目標はどれくらい達成出来たかなどです。介護保険サービスの提供を受けるにあたり、どのように生活の質を上げていくかなどの課題と、改善策として1~3カ月を目安に考えられた短期目標と、半年~1年を目安に考えられた長期目標がケアプランには記載されています。今回のモニタリングでは進歩状況を確認するようにしましょう。
新しい課題や目標があれば、それらも新しいケアプランに記載します。

次に、サービス提供者からのサービス内容はどうだったか?内容は適切であったか?また、これらのサービスに利用者や家族は満足しているか?などをモニタリングでは意識しておきます。利用者や家族の状況の変化も汲みつつ、前回から今回までのモニタリングの間のサービス提供はどうであったかを利用者や家族に丁寧に確認しましょう。
この定期的なサービス内容の確認が適切なサービス提供、また利用者や家族との信頼関係に結びつきます。

サービスが始まってからの変化を見逃さない

介護保険のモニタリングで最も重要なのは、前回の訪問から今回の訪問までの間に何か変化はないか?本人の健康状態に変わりないか?また、家族など介護者の体調や生活の変化はないかなど、利用者の心身の状態や生活環境が変化していないかを確認することです。

利用者のニーズの変化を確認する

利用者の現在の状態を把握することも大切なことですが、利用者がどのような介護サービスを必要としているか、アセスメントで把握していたニーズが現在も同じものであるのか、または変化しているのかを確認することもモニタリングでは重要なプロセスの一つです。

高齢である利用者の心身の状態は急に変化が起きることもあります。
もし現在のニーズがケアプランを作成した時のニーズと異なっているようであれば、介護サービスの内容が適切ではありません。そのような場合には、ケアプランの修正が必要となります。

モニタリングの継続で信頼関係を築く

モニタリングを継続的に行い、利用者やその家族、また介護サービス提供者との信頼関係を築いていくことも大切なことです。ケアマネージャーが利用者の心身の状態や生状況、また家族の状況などをきめ細かく気配りし、利用者の変化に適切に対応し支援を行うことが出来れば、利用者や家族からの信頼は増していきます。
そしてサービス提供者の意見や相談にしっかり耳を傾け、きちんと対応し、適切な支援に結びつけることが出来れば、サービス提供者や事業所からも信頼を得ることが出来ます。


モニタリングの注意点

介護保険のモニタリングを行うケアマネージャーは利用者の細かな生活の変化などを把握し、また利用者や家族のサービスに対する想いを汲まなければなりません。
介護保険サービスは利用者がいてこそ行われるものです。利用者や家族はどのような介護が必要か?生活の質はどうか?
利用者側とのコミュニケーションが大変重要なポイントとなります。

そしてサービス担当者との信頼関係も大切で、普段から利用者や家族と接する機会が多いサービス担当者からの情報提供は、ケアマネージャーだけでは取得出来ないものもあります。利用者や家族とはもちろんですが、サービス担当者ともいい関係を築いていくことが大切です。

利用者・家族の視点を中心に置く

ケアプランに基づいた介護サービスの実施状況を把握することが、モニタリングでの主となる業務です。これと同様に把握しなければいけないことは、利用者や家族がサービスに満足しているかということです。
ケアマネジメントを行う際は、利用者やその家族の主体的な参加が必要となりますので、モニタリングを行う時に心がけておきたいのは、利用者と家族の視点を中心に置くということです。

サービス担当者からの情報を活用する

介護サービスの担当者は、ケアマネージャーよりも長い時間利用者や家族と関わっていますので、モニタリングの際に役に立つ情報を持っていることが多いです。
担当者から情報をもらった時には、その情報に対して素早く行動に移したり、担当者に詳しく話を聞いたり、また利用者の状況を確認しその報告を担当者に行うなど、きちんとサービス担当者からの情報を活用するようにしてください。必要がありケアプランを見直したりした際にはその旨も担当者に報告することによって、担当者はケアマネージャーを信頼し、さらにモニタリングの良きパートナーとなってくれるでしょう。情報を受け取った際には感謝の言葉を伝えることも大切です。

サービス提供の現場に出向く

担当者からの情報ももちろん有益で重要なものですが、その情報のみに頼るのではなく、自分も現場に出向き、実際にどのように介護サービスが提供されているかを確認してください。サービス提供現場でのサービス提供時における利用者の気持ちもモニタリングでの大切なポイントとなります。どのような表情で過ごしているか、また通所施設での面会の際には自宅での様子とどう違うかなども自分の目で確認することも大切です。

訪問系サービスにおけるモニタリング

介護保険での訪問介護サービスでモニタリングを行うのは、事業所のサービス提供責任者となります。サービスが提供される毎に行われたり、定期的に月に1度利用者の自宅に訪問してモニタリングを行います。
モニタリングの対象は利用者とその家族です。サービス提供中の利用者の状態の確認や利用者と接していて何か気になることや変化が見られることを記録していきます。

定期的にモニタリングを行い、利用者や家族の状況を把握しておくことで、何か変化が見られた時にすぐに対応することが出来ます。

モニタリングを行うにあたって、アセスメント(情報収集)を行い、訪問介護計画書を作成の後、1カ月に一度程度利用者の自宅に訪問して面談を行います。サービスの提供がスムーズに行われているか?利用者や家族の心身の状態、生活の状況はどうか?また、前回からの目標の達成度や満足度はどうであったかなどから情報収集し、評価を行います。
モニタリングを行ったら、ケアマネージャーに書面で報告しなければなりません。そこで目標やサービス内容に見直しがあるかないか、利用者の希望などきちんとケアマネージャーに報告することで、適切な支援を行っていくことが出来ます。

事前に利用者や家族の了承を得る

通所施設などと違い、利用者の自宅へ訪問する際にはいくつか注意点があります。
まずは利用者や家族にモニタリングのために自宅訪問をしてもいいか、この日は大丈夫かなど確認し了承を得なければなりません。突然自宅にケアマネージャーが訪れ話を聞きたいと言っても、利用者や家族には予定があったり驚かれてしまいますね。
例えば、明日のヘルパーがサービス提供時に訪問する際に一緒に伺ってもいいか?など、利用者側が負担とならない日程を提示しましょう。

基本的にはサービス事業所に事前に連絡する

サービス提供中に訪問する際には、事前にサービス事業所へ訪問する旨を連絡しておきます。サービスによっては提供時間いっぱいまでサービスを行っている場合もあり、サービス提供中のどの時間帯に訪問すれば話が聞きやすいかを確認しておくことも大切です。

もし何も確認せずサービス提供中に訪問し、利用者が入浴介助中や食事中であった場合にはモニタリングを行うことが出来ません。また、ケアマネージャーが訪問したからと、ヘルパーがサービスの手を止めなければならないようなことがあってはいけません。
なのでサービス提供時に訪問する際には利用者やサービス提供者の迷惑にならないよう、十分に配慮しておきましょう。

しかし、利用者や家族からサービスについての苦情や意見などがあった場合には、抜き打ちで訪問し、サービス内容のチェックを行うことは認められますので、このような場合には事業所に事前に連絡する必要はありません。

見せてほしいケア内容があれば、その旨を告げておく

介護保険のモニタリングやケアプラン作成に必要であれば、サービス提供中のケア内容を自分の目で確認することも大切です。入浴時にはどのように介助を受けているか?食事は自分で食べれているか?など、どのようなケア内容を、どのような理由で見せて欲しいかを事前に事業所に伝えてから訪問するといいでしょう。
ケア内容はスケジュールが決められているので、何時頃に訪問すればそのケアの時間帯かを確認しておくことをおすすめします。

サービス担当者・利用者の双方と話をしたいときは、サービスの終了直前に訪ねる

サービス提供中、ヘルパーはどうしても時間に追われがちです。なので、サービス担当者と利用者の両方から話を聞きたい場合には、サービス提供の終了直前に訪問することも一つの手です。
サービス終了直前であれば、ヘルパーも片づけなどをしながら話を出来る可能性がありますし、そのままサービス終了後に利用者から意見を聞くことも出来ます。
そしてヘルパーは決められた移動時間で次の利用者宅へ訪問することもありますので、無理に引き止めるようなことはしないようにしましょう。

介護保険モニタリングにかかる特段の事情の取り扱い

介護保険でのモニタリングを行う際、特段の事情ということが発生することがあります。『モニタリングにおける特段の事情』とは、利用者側の何らかの事情により自宅を訪問してモニタリングが行えない状況のことです。
例えば、利用者が突然入院することになったり、利用者家族が自宅での生活が出来なくなったり、または災害が起き避難を余儀なくされた時などです。このような状況では自宅に訪問しモニタリングを行うことは困難となります。
このようなことが起きた場合には自己判断せず、かならず各自治体へ相談し、指示を仰ぐようにしましょう。指示を仰いだ後、各自治体から「特段の事情による申立書」や「居宅サービス計画書」などの書類の提出が求められますので、必要な書類はきちんと揃え、また普段から利用者や家族の記録は残しておき、以降は各自治体の指示に従います。

また、特段の事情として利用者の急な入院の場合、月の途中で入院し、その月のうちに退院することが難しい状況であれば自宅に訪問してモニタリングを行うことは出来ません。しかし、可能であれば利用者の入院先を訪問し、面接を行う必要がある場合もありますので、その際にはきちんと記録を残しておいてください。

この介護保険モニタリングにおける特段の事情に該当する事情とは、必ず利用者側の起因によるものであって、ケアマネージャー側に起因する事情は含まれません。

まとめ

介護保険でのモニタリングとは、1カ月に1度など期間を定めて行うもので、必ず行わなければなりません。利用者や家族に何か変化が起きた時に、素早く対応し適切な介護サービスを受けられるようにするためです。
また、定期的に担当者と利用者や家族が顔を合わせていることで、信頼関係も築くことが出来、利用者側からの希望や情報など伝えやすくなります。介護保険でのサービスを行う際は、信頼関係がきちんと出来ていることは、とても大切なこととなります。

また、事業所がきちんと運営されているかの判断として介護保険では実地指導というものが行われます。実地指導とは、都道府県及び市町村の担当者が介護サービス事業所へ出向き、その事業所が適正な事業運営を行っているかを確認するものです。
その際、モニタリングを行っていなかったり、定期的に利用者の自宅に訪問していない場合には、最悪の場合、著しい運営基準違反として事業所の指定取り消し処分を受けることもあります。

このように、モニタリングは利用者のケアプランを作成するためだけではなく、事業所がきちんと運営されているかの判断にも用いられる
大切な作業です。利用者や家族、サービス提供者が連携して介護サービスを行っていけるよう、モニタリングはきちんと行うようにしましょう。

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