派遣健保(はけんけんぽ)の解散なぜ?協会けんぽとの違いは?

なぜ2019年4月1日付で派遣健保が解散するのでしょうか。派遣健保の医療費負担の増加が原因とされていますが、保険が切り替わると健康診断予約等が変わります。従来の派遣健保と切替後の協会けんぽの違いは?健康診断予約や、医療費通知、傷病手当はどうなるのでしょうか。

派遣健保の解散なぜ?派遣健保と協会けんぽとの違い

2019年3月をもって多くの派遣社員が加入していた「はけんぽ」、正式名称「人材派遣健康保険組合(以下派遣けんぽ)」が解散しましたね。


派遣けんぽの解散後は、ほとんどの人が協会けんぽへと移行となりました。


しかし、「切替はしたけど何が変わったのか正直よく分からない」という人も多いと思います。


この記事では、派遣けんぽ(はけんけんぽ)について

  • 解散理由
  • 協会けんぽとの違い
  • 協会けんぽへ切替に伴う手続き
  • 協会けんぽ切替後の変更点
についてを中心に解説していきます。


既に派遣けんぽから協会けんぽへ切替したけど内容がよく分からないという人や、転職してこれから協会けんぽへ加入予定の方も参考になると思いますので、ぜひ最後までご覧下さい。

理由は派遣健保の負担が増加!協会けんぽでは保険料率が増加!

派遣健保が解散した最大の理由は、納められている保険料に対して支払う保険料が多くなっしまったことです。


派遣健保の加入者は約51万人ほどいましたが、高齢化が進んだことも要因となり支出額が増加。その結果、派遣簡保加入者の保険料を賄うことが難しくなってしまいました。


今まで派遣健保へ加入していた人の大多数は「全国健康保険協会」いわゆる協会けんぽへ移行しました。


協会けんぽは、主に中小企業の従業員およびその家族が加入している健康保険で、国民の約3分の1が加入している非常に大きな健康保険です。


移行にあたり気になるのが「保険料」ですよね。残念ながら保険料については上がってしまいました。


保険料は各健康保険組合が決める保険料率で決まります。ちなみに派遣健保の保険料率は一律9.7%でしたがそれを更に派遣健保と派遣社員で半分ずる負担していたので実質4.85%でした。


これが協会健保では各都道府県ごとに保険料率は異なるものの9.6%から10.6%になっているため負担額は増加することとなりました。

全国健康保険協会(協会けんぽ)などの健康保険とは?

健康保険は、全国民が産まれた時から加入する制度です。健康保険は「健康保険法」に基づき雇用者の福利厚生を目的とした社会保険の1つで、加入していることで医療費の負担が軽減されます。


病院へかかった際に保険証を忘れた時や、丁度切り替え中で持っていない時にお会計の金額が高額になったという経験がある人もいると思います。このように健康保険へ加入したいないと医療費が全額自己負担になります。健康保険へ加入していると気づきませんが、実は医療費は思っている以上に高いのです。


協会けんぽなどの健康保険では、保険料率に基づいて保険料を負担してくれます。見えないところで雇用者の生活を守ってくれているのです。

派遣健保と協会けんぽの違いは?

健康保険にはいくつか種類があり、大きく分けると3つに分けられます。

  1. 会社員、公務員が加入する健康保険
  2. 国民健康保険
  3. 後期高齢者医療制度
国民健康保険は主に自営業の人が加入する健康保険です。自営業の人の他に、医師や薬剤師等の同業種の人を組合員とした国保組合があります。後期高齢者医療制度は、一定の年齢になった高齢者が加入できる健康保険になります。


今回のテーマとなっている派遣健保と協会けんぽについては、上の1番に含まれます。1番の中に含まれる健康保険には以下の健康保険があります。

健康保険の種類内容
組合健保被保険者:大・中規模企業の従業員とその家族
(企業単独であれば社員700人以上、共同設立であれば3000人以上)
協会けんぽ被保険者:組合健保を設立しない企業の従業員とその家族
各種共済組合被保険者:国家公務員・地方公務員・私立学校職員とその家族
派遣けんぽ被保険者:派遣社員とその家族

派遣健保と協会けんぽの違いは運営機関と保険料率です。


まず運営機関ですが、派遣けんぽは、主に企業が独自で設立した健康組合なのに対して、協会けんぽは厚生労働省の所管で全国健康保険協会が運営しています。そして先ほども説明したように、保険料率が派遣けんぽは全国一律だったことに対して協会けんぽは都道府県ごとに保険料率が決められています。


この2点が両者で大きく異なるところです。

派遣健保(人材派遣健康保険組合)が解散したけどどうなるの?

派遣健保が解散した後は、派遣健保へ加入したいた人の大部分が協会けんぽへ移行したということは先ほど説明しました。


また、派遣健保に比べて協会けんぽ移行後は保険料率があがることについても説明しましたが、具体的に負担額はどのように変わってくるのかも気になるところですよね。


ここでは、協会けんぽへの移行に伴う手続きなど切り替えに伴い知っておくべき事項を詳しく説明していきますのでしっかりと把握しておきましょう。

保険証の切替が必要?自分でしないといけない手続きは?

今回、協会けんぽへ移行するにあたり現在派遣健保に加入しいている人が個人的に行わなくてはならない手続きは特になく、切替は派遣健保と協会けんぽで手続きが行われました。


ただし、以下の証明書をお持ちの方は手続きが必要です。

  1. 限度額適用認定証
  2. 標準負担額減額認定証
  3. 特定疾病療養受療証

上記の証明書が引続き必要な人は各都道府県の協会けんぽのHPから申請書をダウンロードし手続きが必要となっています。詳しくは協会けんぽのHPを参考にして下さい。


保険証については、新しい保険証が2019年4月中に各派遣会社より手元に届いたかと思います。既にお済みかと思いますが保険証が届いたら古い保険証は派遣会社のほうに返却が必要です。もし、返すべき派遣かんぽの保険証を紛失している場合には別途手続きが必要とのことですので派遣会社へ確認しておきましょう。


健康保険証には、被保険者番号が記載されています。保険証の切替で、この被保険者番号の「番号」とよばれる個人番号については原則変更なしですが「記号」と呼ばれる事業者番号については変更になっています。


また、ダブルワーク等で健康保険へ2重に加入している方につおては例外的に変更になっている場合もあるとのことですので確認しておきましょう。


協会けんぽ発行の健康保険証は以下サイトに乗っていますので参考にしてみてください。

参考:協会けんぽ 健康保険証

保険証切替後の健康保険料率と介護保険料率はどうなる?今後は?

保険証の切替が完了すると、当然保険料率は協会健保にものが採用されます。健康保険料率については、先ほど説明したように派遣けんぽに比べると上がってしまます。全国の協会健保の保険料率の平均が大体10%となっていますので、派遣健保時と比べた場合、単純に考えて負担額は増加します。 


各都道府県ごとに違いがある理由としては都道府県ごとの年齢層の違いによって医療費に差があることや、所得水準に違いがあり調整しているからです。



今後の見通しとしても、派遣健保の加入者が以降したことで協会健保の加入者が増加しその分支払いが増えること、また引き続き少子高齢化が加速していくことで下がることはまずなく、増える可能性が高いです。


介護保険料率に関しては逆に少しではありますが低くなりました。派遣けんぽでの介護保険料率は1.94%でしたが、協会けんぽの介護保険料率は1.73%となっています。2020年4月分からは1.79%となるため若干上がりますが介護保険料率に関しては全国一律となっています。


各都道府県ごとの保険料率は、協会けんぽの公式HPに一覧が記載されていますので確認してみてください。

参考:協会けんぽ 保険料額表

移行後の健診や保険指導、保険給付については今まで同じ?

派遣健保から協会けんぽへ移行後も保健指導、保険給付については派遣健保は加入時同様に受けることができます


ただし、派遣けんぽで契約していた電話での健康相談やスポーツクラブの法人会員などは利用できなくなります。


健康診断ももちろん受けることができますが受けることの出来る健診種別に少し違いがあります。以下は、被保険者が受けることのできる健診を比べてみました。


<人材派遣健保(被保険者)>

35歳未満35歳~39歳40歳以上
基本健診A基本健診B
生活習慣病健診
生活習慣病総合健診
基本健診B
生活習慣病健診
生活習慣病総合健診


<協会けんぽ(被保険者)>

35歳未満35歳~
独自健診なし生活習慣病予防検診
人間ドック相当不可健診追加可能…40歳・50歳
乳がん検診…40歳以上偶数年齢
子宮頸がん検診…偶数年齢

このように、健診に関しては人材派遣健保の方が手厚かったことが分かります。特に乳がん検診については人材派遣けんぽでは35歳未満でも受診できましたが、協会けんぽ移行後は40歳以上かつ、2年に一度からしか対象でなくなってしまいました。


乳がん検診については若いうちから受診しておくべき健診であるので、できれば毎年ジェンさしたところですよね。その点では女性にとっては少し厳しい内容といえるでしょう。

派遣健保から協会けんぽに切替後のその他の変更点

ここまでは、派遣けんぽと協会けんぽの違いや変更点について説明してきました。


ここでは、その他の変更点やよくある疑問について説明していきます。医療費控除申請や貰える手当金や補助金など気になっている人も多いかと思いますのでぜひ参考にしてみてください。

協会けんぽの医療費通知はいつ届く?

協会けんぽでは、医療機関を受診しかかった医療費を年1回「医療費のおしらせ」として発行されます。


このお知らせは、医療費控除を申請する際にも使用できますので、控除を申請予定の人はなくさないようにとっておきましょう。


送付時期については、令和元年度分については令和1年下旬から2月上旬にかけて順次発送されているはずですので、まだ届いていないという人は協会けんぽへ問い合わせしてみてください。


また医療費通知についてはインターネットからでも通知書同様の内容を確認することができます。インターネットでの確認は、協会けんぽのHPでユーザーIDおよびパスワードの取得が必要になりますので詳しくは協会けんぽHPを確認してみてください。

出産手当金・傷病手当金については?

出産手当金、傷病手当金については引き続き給付を受ける権利が継続されます。ただし、協会けんぽへの移行に伴い申請用紙は変わりますので注意してください。


金額については、受給前の継続12か月間の月額の報酬平均額から日額を計算し、その3分の2の金額が支給されます。


派遣けんぽから協会けんぽへ移行する場合に、この継続12か月間には派遣けんぽ加入期間も含め算出されます。


移行時にすでに受給していた場合、改めて金額は再計算されることなく派遣けんぽにて算出されて金額を引き続き受給する形になります。


また、在籍が継続12ヶ月に満たない場合は、支給開始日によって給付額が異なります。

インフルエンザ予防接種に補助金はでない

派遣けんぽでは、インフルエンザ予防接種に対して1人あたり2,000円ほど補助金がでていました。しかし、残念ながら協会けんぽでは今のところ補助金はありません。


予防接種については保険診療外になりますので全額自己負担となります。


インフルエンザの予防接種については多くの人が毎年していると思います。家族全員ともなると、結構な出費となることもあります。特に子供の場合は自治体によっては補助が出るところもありますが、2回接種となるので負担が大きいです。


今後、補助金の対象になることに期待したいですね。

まとめ:派遣健保からの切替後に変わる点

以上のように派遣健保から協会けんぽへの切替に伴う変更点について説明してきましたがいかがだったでしょうか。


この記事のポイントをまとめると

  • 派遣健保の解散は高齢化のための財政難が理由
  • 派遣健保加入者はほとんどが協会けんぽへ自動的に切り替わる
  • 協会けんぽへの切替は一部の人を覗き特別な手続きは必要なく新しい保険証が自動的に送付されてくる
  • 派遣健保に比べて協会けんぽでは保険料率はあがるため負担は多くなる
  • 協会けんぽへの切替すると派遣けんぽ加入時に使うことができた健康相談サービスやスポーツクラブの法人会員などのサービスは利用できなくなる
  • 健診や保険給付は変わりなく受けられるが保険料率についてはあがること、健康診断の待遇には違いがある
  • 出産手当金、傷病手当に関しては派遣けんぽ加入期間も含め算出され受給が可能であるがインフルエンザ予防注射の補助金は出ない

このように派遣けんぽが解散し協会けんぽへ切り替わっても基本的には今まで同様に保険給付を受けることができます。


しかし、保険料率については残念ながら上がってしまうこと、また女性にとっては受けられる健康診断が少なくなってしまうという点で自己負担は増えてしまいますので必要に応じて他保険への加入も検討する必要があります。


派遣会社の中には協会けんぽへではなく、それぞれに独立した健康保険組合を持っている場合もあります。派遣での仕事を考えている人や転職を考えている人はその点も含めて会社の福利厚生の1つとして健康保険証についても確認しておくと安心ですね。


保険ROOMでは、この他にも税金にまつわる記事を多数掲載しておりますのでぜひご覧ください。

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