共働き夫婦は配偶者控除でお得になるかも!税金対策のコツをご紹介

共働き夫婦は配偶者控除が受けやすくなりました。法改正のポイントをおさえれば配偶者控除を活用して税金対策ができるかもしれません。両方が正社員の共働き夫婦でも、配偶者控除・配偶者特別控除の適用となる可能性が高くなったので、詳しく解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

共働き夫婦は配偶者控除で税金対策ができるのか

かつての日本で多くを占めていた、結婚したら夫が外で働き妻が専業主婦として家庭を守るという形態は、今や少数派になりつつあります。


共働きをして、家事・育児も不公平のないよう夫婦両方で分担していくというのが現代のスタンダードと言えるでしょう。


このような共働きの家庭において、気になるのが税金の配偶者控除・配偶者特別控除ですね。


配偶者控除とは、もともと専業主婦家庭にメリットをもたらす制度でしたが、時代の流れに合わせる形で、平成30年に改正されました。


この記事では

  • 平成30年の法改正において、配偶者控除・配偶者特別控除はどのように変わったか
  • 配偶者控除・配偶者特別控除の適用基準とは
  • 共働き家庭における配偶者控除の注意点
などについて詳しく解説します。

この記事を読めば、配偶者控除と配偶者特別控除について理解でき、共働き家庭の税金対策を考えるのに役立ちます。

ぜひ最後までお読みください。

平成30年の法改正におけるポイント

一言に「配偶者控除」と呼ばれることもありますが、正確には「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の2つから成り立っています。


まず、混同されがちなこの2つの違いについて押さえておきましょう。

  • 配偶者控除:配偶者の所得がない、もしくは低い人の税金を低くする制度
  • 配偶者特別控除:配偶者の所得がある程度あり、配偶者控除の枠を超える場合にも、段階的に適用される減税制度

つまり、基礎としては配偶者控除があり、その範囲に収まらない場合に一気に税金が増えることのないように設けられているのが配偶者特別控除なのです。


共働きといえど、夫婦対等にバリバリというよりは、どちらかがパートなど、あるいは正社員やフルタイムであっても収入を抑える形で働くことを想定されていると考えられます。


では、これらの制度について平成30年の法改正で変更されたポイントを確認していきましょう。

ポイント①:高収入者の税負担が増えた

ポイントの1つ目は、配偶者控除・配偶者特別控除の適用条件として、年収の制限が設けられた点です。


これまで焦点となるのは配偶者の所得のみでしたが、今回の改正で、年収1,220万円(給与収入のみの場合)を超える人は配偶者控除・配偶者特別控除が受けられなくなりました。


つまり、すでに「年収1,220万円」かつ「配偶者控除・配偶者特別控除を受けている」という状態の人であれば、この時点で平成30年からは実質的に増税されるということになります。

ポイント②:配偶者特別控除の適用条件緩和

一方で配偶者特別控除の適用範囲は拡大されていることが、ポイントの2つ目となります。


「配偶者控除の条件緩和」と言われることがありますが、正確には配偶者控除は変わっておらず、配偶者特別控除によって全体の枠が広げられているイメージです。


103万円の壁」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。


これはつまり、共働きで配偶者が給与所得者である場合、103万円を超えた給与収入を得ると、配偶者控除の枠から出るため控除額が少なくなるということを意味していました。


しかし配偶者特別控除の改正によって、配偶者の給与収入が150万円までは、配偶者控除と同額の控除が得られることになりました。


ちなみに適用される収入の上限額も、従来の141万円から201万円と、大幅に拡充されています。

配偶者控除・配偶者特別控除の適用基準とは

配偶者控除・配偶者特別控除はその名の通り、適用される基準は配偶者の収入・所得に関わるものとなります。


ここから、この収入・所得の詳しい金額について、また「配偶者」という言葉が指す、具体的な範囲について解説していきます。

配偶者控除の適用基準

配偶者控除・配偶者特別控除の「配偶者」とは、下記の両方を満たすことと定義されます。

  1. 民法上の配偶者である(内縁関係は該当しない)
  2. 12月31日時点で納税者本人と配偶者が生計を共にしている

その上で、配偶者が他の人の扶養親族になっていないことを前提として、配偶者の給与収入103万円以下(合計所得金額が38万円以下)の方が対象となります。


控除額は納税者本人の合計所得金額から次の表のように定められています。

納税者本人の合計所得金額控除額
(配偶者が70歳未満)
控除額
(配偶者が70歳以上)
900万円以下38万円48万円
900万円を超え950万円以下26万円32万円
950万円を超え1,000万円以下13万円16万円

納税者本人の合計所得金額900万円というのは給与収入に直すと1,120万円、所得1,000万円とは収入1,220万円にあたります。


また、配偶者が70歳以上の場合には、老人加算により、控除額が大きくなります。

配偶者特別控除の適用基準

続いて、配偶者特別控除の控除額を以下の表に示します。


配偶者控除の枠を超え配偶者特別控除が適用されているということは、多くの場合、共働きの家庭であるということを意味しています。


配偶者特別控除の場合は、納税者本人に加え、配偶者の所得額も加味の上で算出されます。

配偶者の合計所得金額納税者の合計所得
900万円以下
納税者の合計所得
900万円超950万円以下
納税者の合計所得
950万円超1,000万円以下
38万円超85万円以下38万円26万円13万円
85万円超90万円以下36万円24万円12万円
90万円超95万円以下31万円21万円11万円
95万円超100万円以下26万円18万円9万円
100万円超105万円以下21万円14万円7万円
105万円超110万円以下16万円11万円6万円
110万円超115万円以下11万円8万円4万円
115万円超120万円以下6万円4万円2万円
120万円超123万円以下3万円2万円1万円

配偶者の合計所得金額38万円とは給与収入103万円、123万円とは収入201.6万円にあたります。


共働きの中でも、主に配偶者がパートなどで「103万円の壁」を気にしている家庭にとって、今回の法改正は、より積極的に働くことを後押しするものと言えそうです。

共働き世帯における配偶者控除の注意点

配偶者控除・配偶者特別控除には、手続き面などにおいて注意すべきポイントがあります。


これから、以下3つのポイントについて解説していきます。

  • 年末調整で申告漏れがあった場合、確定申告で手続きできる
  • 配偶者控除の申告は夫・妻のどちらでも可能
  • 給与収入以外の収入がある場合には計算方法が異なる

年末調整の申告漏れは確定申告で手続き可能

配偶者控除・配偶者特別控除は、条件を満たしているだけで自動的に適用されるわけではなく、申告が必要になります。


会社員であれば年末調整の際に配られる「配偶者控除等申告書」を記入、提出することになりますので、書き方をよく確認し、忘れずに申告しましょう。


ただ、うっかり申告を忘れてしまったり、年末調整を提出した後で修正点に気が付くことがあるかもしれません。


そのような際には、確定申告で手続きをすることも可能です。


確定申告は「ふるさと納税を利用している」「住宅ローン控除の適用を受けるため」などの理由で、すでに利用している方もいるかもしれません。


オンラインから申告が行えるe-Tax(国税電子申告・納税システム)もありますので、ご都合に合わせて利用を検討してみてください。


なお確定申告で配偶者控除を申請する場合、書類などは提出不要です。

配偶者控除の申告は性別を問われない

意外と見落とされがちなのですが、配偶者控除は「妻に扶養されている夫」も受けることができます。


結婚・家庭生活のあり方が多様化した現代、必ずしも夫が主として働いているケースばかりではなく、共働きでも夫が仕事量をセーブし、家事や子供の世話を担っていることもあるでしょう。


そのような場合には、妻を納税者本人・夫を扶養家族である配偶者とすることに何の問題もありませんのでご安心ください。

給与収入以外の収入がある場合

前章までの内容で、所得金額のいくらが収入金額のいくらにあたるかについて触れましたが、これはあくまでも給与所得者の場合です。


共働きでも片働きでも、収入が給与のみであれば、そこに課される税金は所得税なので、自動的に計算ができるようになっています。


しかし、配偶者控除の基準になるのは「合計所得金額」となり、給与以外の収入(ネットビジネスや株式取引など)があった場合にはその分も含めなくてはなりません。


そのような場合には計算が複雑になりますので、税務署や税理士、ファイナンシャルプランナーなどに相談することをおすすめします。

配偶者控除の適用可否を確認する方法

配偶者控除の適用基準については前述しましたが、申告する際、判断に迷うこともあるかと思います。


特に年末調整で申告する場合には、まだ確定していないその年の給与金額について、共働きであれば自分だけでなく配偶者の分も正確に予測しなくてはなりません。


このような時に適用可否を確認する方法として、下記の2つがあります。

  • 勤務先の給与計算担当者へ問い合わせ
  • 源泉徴収票を参照する

給与計算の担当者へ確認する

毎年11月から12月頃になると、年末調整に必要な書類を勤務先から渡されるかと思います。


この時期に給与計算の担当者へ問い合わせをすれば、1年間の給与収入がいくらになるかを確認できるケースがあります。


共働きであれば、控除の申請のために配偶者の収入も把握する必要があるので、配偶者にも同様に確認してもらうのが確実です。

源泉徴収票を確認する

共働きで配偶者も給与所得者であれば、源泉徴収票を確認する方法もあります。


源泉徴収票の上の方に「支払金額」の欄があり、これがすなわち年収を意味しています。


この額が「納税者本人は1,220万円以下」かつ「配偶者は201.6万円」となっていれば配偶者控除もしくは配偶者特別控除の適用対象です。

共働き夫婦の配偶者控除における税金対策のまとめ

共働き夫婦における配偶者控除・配偶者特別控除について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは

  • 平成30年の法改正における、配偶者控除・配偶者特別控除の大きな変更点は「納税者本人の年収制限が設けられた」ことと「配偶者特別控除枠が拡充された」こと
  • この改正により「103万円の壁」が引き上げられ、共働きで配偶者がパート勤務などの家庭は、より積極的に働くことが後押しされる形となった
  • 配偶者控除・配偶者特別控除の申請は夫・妻どちらでも可能
  • 控除の適用基準に当てはまっているかを知る手段として、共働きで夫婦とも給与所得者であれば源泉徴収票で確認が可能
でした。

配偶者控除・配偶者特別控除は満額で38万円と、とても大きな額です。

共働きの家庭では今回の改正点を踏まえて働き方(主に配偶者の)を考えることで、家庭の税金対策としたいですね。

最後に補足として、少し特別なケースを紹介しておきます。


それは、妻が出産をして産休・育休(育児休暇)を取るなどし、一時的に年収が下がる場合です。


仮にこの妻が正社員で年収が201.6万円以上なら、通常時は控除が受けられませんが、産休・育休中は無収入となる場合が多く、また育休が明けた後も、時短勤務となればフルタイム時と比較して給与は減額されるのが一般的です。


ちなみに、出産育児一時金や出産手当金を受け取っている場合、判断に迷われるかもしれませんが、これらの手当ては課税対象ではないので、合計所得額には含まれません。


このように、通常は配偶者控除・配偶者特別控除の対象外であってもその期間のみ控除が受けられるケースがあります。


控除のあるとなしとでは大きな違いが出ますので、ぜひ覚えておいてください。


保険ROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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