更新日:2020/06/12
高齢者にとって医療保険は必要か不要かをいろいろな角度から考える
高齢者は誰でも病院を利用することが多くなります。そのときに心配になるのが費用ですが、医療保険はその心配を和らげるためにあります。しかし、医療保険が本当に必要なのかを検証する必要があります。なぜなら高齢者には手厚い公的な医療制度があるからです。
目次を使って気になるところから読みましょう!
高齢者にとって、『医療保険』は有用か?
各保険会社が提供している『医療保険』は、突然の病気や怪我に備えるものであり、その際に発生する出費のリスクにあらかじめ備えておくことができます。
しかし医療保険は、加入する年齢によって、補償内容や保険料などの条件が変わってくるのも事実ですから、その必要性について考えることは大切です。
そこで今回は、「医療保険の必要性」というテーマで、
- 高齢者に「医療保険に加入するのは慎重であるべき」と言える5つの理由とは?
- 高齢で医療保険に加入するなら、注意するべきこととは?
入院日数は、それほど長くない?
このように疑問を投げかけますと、反対に「高齢者なんだから若い人よりも病気になる確率が高いのだから、入院する確率は高いに決まっている」と反論する人がいます。
しかし、この意見は表層的なものでしかありません。
もっと深く考える必要があります。
今の時代の医療は昔と違い、「入院期間をできるだけ短くする」方向に向かっています。
例えば、心臓の不正脈を治療する方法にカテーテルアブレーションという手術がありますが、この手術を行う際の平均的な入院日数はわずか3日~4日です。
これだけの大手術であっても入院日数は数日でしかありません。
つまり、将来的には入院日数というのは短くなっていく時代になり、こうした傾向は高齢者の入院になりますともっと顕著になっていくものと思われます。
高齢者の人数に対して、入院設備も少ないのです。
こうした状況を考えますと、高齢者が入院する頻度は高くなることがあっても、入院する日数は少なくなると考えるのが賢明です。
高齢者は医療保険に関して慎重であるべき、と言える5つの理由
病気や怪我のリスクがあるのは、高齢者に限ったことではありません。
若い人であっても、そのリスクはあります。
しかし、同じリスクがあるのにもかかわらず、「高齢者にとって医療保険が必要か?」を考えるべき、5つの主な理由があります。
その理由を、これから一つずつ取り上げていきます。
理由1:高齢になってから加入すると、保険料が高い
一般的に、高齢者の保険料は若い人よりも高く設定されています。
理由は、病気や怪我のリスクが年齢を重ねるほど高くなり、保険金を請求する可能性が高くなるからです。
ですから、どうしても保険料は若年層の保険料と比べて、高額になってしまいます。
高齢になってから万が一のことが起こったときに、「年齢が若いうちに加入しておけば良かった」…となるくらいなら、あらかじめ自分にとってベストと言える保険を選んでおく方が、懸命な選択であると言えます。
理由2:医療保険に加入していても、保障されない場合がある
医療保険は確かに病気や怪我で治療にかかる費用に対応しますが、それは「どんなときにも必ず保障する保険」ということではありません。
必ず「保険料を支払っているのに保障されないリスク」が存在します。
例えば、支払限度日数というものがあり、入院日数が「60日限度」で契約していると、それ以上は入院しても保険金を受け取ることはできません。
また、手術などをした場合でも、その手術の内容により、ほんのわずかだけ手術の内容が外れているだけも、保障されないことがあります。
このように、医療保険の必要性について考えるときは「保障されないケース」についても確認することが大切です。
理由3:前期・後期高齢者医療制度により、自己負担額が少ない
高齢者の公的医療制度には「前期」と「後期」の医療制度があり、年齢によって分類されています。
- 前期高齢者医療制度:65歳~74歳のために設けられた、両医療保険制度の不均衡を埋めるためのしくみ
- 後期高齢者医療制度:75歳以上を対象とした、保険料負担を軽減するためのしくみ
この制度により、年齢ごとに自己負担額が減るようになっています。
例えば、70才以上75才未満の人の自己負担は2割ですし、それ以上の年齢の方は1割負担です。
【年齢と負担割合】
対象 | 負担割合 | |
---|---|---|
前期高齢者 | 65~74歳 | 65~69歳:3割 70~74歳:2割 |
後期高齢者 | 75歳以上 ※ただし一定等級以上の障害が ある場合は65~74歳も対象 | 1割 |
理由4:年金収入がある、または一定の貯蓄がある
現役世代は働かなければ収入が入ってきませんが、高齢者は年金をもらえる年齢になっています。
ただし、年金があったとしても高齢者にとって病気や怪我等のリスクが高い、ということは認めなければなりません。
特にまとまった貯蓄がなくて、突然治療や手術が必要になったときに不安だ、という方は高齢になってからでも加入を考える方もおられます。
理由5:今後は少子高齢化により、入院ができない可能性も?
高齢者社会の到来はずいぶん前から指摘されていましたから、行政は早くから老人の在宅治療に舵を切っていました。
介護制度および介護保険はまさしくそのためにできた制度です。
これはつまり、当初から高齢者を全員入院設備に収容することが不可能であったことを認識していたことになります。
高齢者の割合が増えるのですから当然ですが、このような状況になってはせっかくの医療保険も無駄になる可能性もあります。
また、医療保険は入院や手術の費用を賄ってくれるというメリットがある反面、入院する必要すらなければ(本来はその方が良いのですが)無駄に保険料を支払い続けていくというリスクが生じてしまう、という点にも目を向ける必要があります。
加入する際に、注意しておきたいこと
1つ目は、先進医療特約は加入しておいた方がより良いということです。
先進医療とは読んで字のごとくで先進的な医療なのですが、技術料が公的な保険の対象になっておらず全額自己負担になってしまいます。
- 陽子線治療:陽子線という放射線をがん細胞(病巣)に照射する治療法
- 重粒子線治療:炭素イオン線をがん細胞(病巣)に照射する治療法
- 高周波切除器治療:子宮を摘出せずに高周波切除器を用いて子宮腺筋症を治療する方法
- 活性化自己リンパ球移入療法:がん細胞に有効なT細胞を増殖させ体に戻す治療法
- LDLアフェレシス療法:LDLコレステロール濃度が高い血液を浄化してから体に戻す治療法
2つ目は、対象の病気を絞る、ということです。
普通の感覚ではできるだけ保障範囲を広くしたほうが安心するように思いますが、保障を広くす
ることによって、それだけ保険料が高くなってしまいます。
保険料を安くすることによって、それだけ他のこと(現在の健康を促進すること)にお金を回せるかもしれません。
…これは一つ目に挙げた『先進医療特約』の点と矛盾しているでしょうか?
いいえ、「発症するリスクの高い病気」と、「もし発症したら経済的負担が非常に大きい病気」の両リスクに備えられているので、この2つは矛盾しません。
自分にとってベストな保険を見極めてから加入するということは、年齢にかかわらずとても重要なことなのです。
まとめ
- 保険料が他の年齢よりも高くなる
- どのような場合でも補償されるわけではない
- 公的な制度により自己負担額が少なくなっている
- (一般的に)収入が安定している
- 入院の問題や、必要が生じない限り無駄に経済的負担が大きくなる
- できるなら、先進医療特約は付帯しておく
- 補償内容と保険料のバランスを見極める
私達は誰も、「○○歳になった時自分はこんな病気にかかる!」と予言することはできませんから、いつ発生するか分からないリスクに備えることは非常に重要です。
高齢者を支えるための公的な制度も、いつどのように変更されるか分からないからです。
しかしその反面、保険は病気そのもののリスクを軽減してくれるわけではありません。
あくまで補償してくれるのは、そのときに「かかる費用」です。
ですから、私達は医療保険の必要性を考えると同時に、『今現在の健康を促進することにかける費用』と、未来に起こりうる病気に備えるための費用』を算出する点において、バランスを取った味方をするべきでしょう。
この記事をご覧の皆さんが、保険を選ぶうえで、そしてこれから自分自身の健康を守っていくという点で、良い選択ができますように。
ほけんROOMではこの記事の他にも、役に立つ様々な記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。
医療保険の必要性が知りたい方はこちらの記事もご覧ください