更新日:2020/06/07
夫婦で共有名義の建物の火災保険の契約者・被保険者はどうなる?
共有名義の建物で火災保険に加入する場合は契約者は共有名義にならず、一人が契約するので、地震保険料控除を考慮して契約するのがおすすめです。また、被保険者の記入欄には複数の名前を記入できます。共有名義の建物でも、両親の死亡による相続で名義変更が必要な場合があります。
目次を使って気になるところから読みましょう!
夫婦・親子で共有名義の建物の火災保険の契約者・被保険者はどうなる?
建物の名義が親・子、夫・妻といった共有名義しているなら、火災保険契約はどうなるのか。いまいちピンと来ない方々も多いことでしょう。
共有名義だと、もしかしたら火災が起きた時、満足な補償が得られないのではないか、と不安を覚える人もいるかもしれません。
建物が共有名義であっても、火災保険の補償を受けることは可能です。とはいえ、その際に注意すべき点がいくつかあります。
そこで今回は、「共有名義の建物に付保された火災保険の仕組みと名義変更」について、
- 共有名義の場合でも火災保険の契約者は1人だけ
- 火災保険の被保険者は建物所有者全員が該当
- 共有名義の住宅で名義変更が必要なケースとは
共有名義でも火災保険の契約者は1人のみ
建物が共有名義の場合、契約者が2人になるのかと言えばそうではありません。契約者はあくまで1人です。そのため、共有名義のどなたかを契約者とする必要があります。
選ぶコツとしては所得が高い人を契約者とするべきです。そのメリットとしては地震保険をセットした場合、地震保険料控除を利用すると、所得の高い人の方が所得税・住民税の負担をより軽減できるからです。
次項では、この地震保険料控除について解説しましょう。
参考:契約者を決める際は地震保険料控除の検討をする
地震保険料控除は、自営業者・自由業者の人なら確定申告、事業所の従業員ならば年末調整で申告し所得控除を受ける制度です。
この制度を利用すれば、1年間で払い込んだ保険料に応じた金額を、所得から差し引くことが可能です。
所得税は所得が高くなるほど税率も上がります。そのため、この控除制度を利用すれば所得税、そして住民税も軽くなるのです。
地震保険料控除額でどれ位の金額が軽減されるかは下表をご覧ください。
年間保険料 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
50,000円以下 | 払い込んだ保険料全額控除 | 地震保険料の全額×1/2(最高25.000円) |
50,000円超 | 一律50,000円控除 | 地震保険料の全額×1/2(最高25.000円) |
なお、控除対象になっても、税務署が自動的に控除してくれるわけでは無く、前述した申告方法で手続きを行う必要があります。
申告期限内になるべく手続きを行いましょう(確定申告:毎年2月中旬~3月中旬、年末調整:事業所に要確認)。
ただし、何らかの理由で地震保険料控除が申告できなかった場合は、還付申告も可能です。こちらは、還付申告をする年分の翌年1月1日から5年間にわたり行うことができます。
火災保険の被保険者は建物所有者全員
火災保険の被保険者(保険金の支払いを受ける人。保険金受取人と同じ)は、共有名義となっている建物の所有者全員です。
被保険者は保険の目的が事故によって損害を受けた時、その損害を補てんしてもらう権利をもつ人が該当します。
ちなみに、被保険者がもつ経済的利益のことを被保険利益と呼びます。そのため、火災保険の場合には、保険の目的となる建物の所有者が被保険者となるのです。
建物が共有名義の場合、法律上、その建物は所有者全員の共有とされ、それぞれがもつ持ち分割合に応じて共同で所有している状態となります。
火災保険では、建物の所有者が被保険者になるとされているので、所有者全員が被保険者となるわけです。
共有名義の場合でも被保険者は複数人記入できる
共有名義の場合の火災保険の共有割合
火災による保険金の支払いがなされる時は、共有名義の人たちが建物に対してもっている共有割合が関係します。
ちなみに共有割合とは共有名義の人たちが、その建物に対して有している権利の割合のことです。たとえば、父親が50%、母親が30%、長男が20%といった具合ですね。
火災保険の保険金はこの共有割合に応じ、共有名義人に対して支払われます。
保険金請求の手続きは、被保険者の中で代表者を決めて行ないます。その際には、保険会社から他の被保険者からの委任状を取り付けるように求められます。
また、保険金が多額となる場合、持ち分割合を確認するため、建物の登記事項証明書の提出を求められることもあります。
建物が共有名義の場合火災保険の保険金に税金はかかる?
保険料を支払うことになった火災保険の契約者は1人ですが、建物が焼損する等した場合、もちろん保険金は契約者に下ります。
建物が共有名義の場合なら、契約者の他、保険料を払っていない契約者以外の被保険者へも保険金は下りることになります。
そのため、契約者以外の被保険者に、贈与税をはじめとした何らかの税金がかかるのでは?と心配な人もいることでしょう。
この場合、契約者はもとより、契約者以外の被保険者にも税金はかかりません。なぜなら、火災保険で下りる保険金は生じた損害を補填する目的に使うお金であり、建物所有者の利益のためではないからです。
共有名義の住宅でも名義変更が必要な場合
相続や離婚によって、建物の所有者が変更したなら速やかに変更の手続きを行いましょう。
相続や離婚を理由とする所有者の変更は、保険契約者の変更を伴うことがあり、そのことでいざという時の保険金の支払いに、影響のでる可能性があります。
とはいえ、名義変更手続きを行われていないことを理由に、火災保険が支払われないことはありません。
一方、保険契約者が変更したことで保険料の支払いをストップすると、契約が失効し、いざという時に保険金が支払われないおそれもあるのです。
また、保険金が支払われる場合でも、保険金請求手続きの際に、所有者の変更の手続きも行なう必要があるため、保険金支払いは遅くなるリスクがあります。
実家の相続・贈与により名義変更する場合
火災保険の契約者(被保険者)が死亡した場合は、いざという時スムーズに保険金が受け取れるよう名義変更を行いましょう。
実家の相続・贈与で建物を所有することになったら、「火災保険契約内容変更届出書」を保険会社に提出します。
届出書に必要事項を記載し、ケースごとに必要な添付書類を集めて提出すれば、概ね手続きは完了します。
しかし、次に説明するケースでは、やや慎重に手続きを進める必要があります。
離婚により名義変更する場合
離婚する場合は、まず夫と妻で財産分与をする必要があります。例えば、建物を夫と妻の共有名義として各1/2の割合で所有していた場合、この財産分与によってどちらの名義にするか決めます。
仮に、名義変更しなくても罰則を受けるわけではないですし、期間制限もありません。また、保険金を受け取れなくなるわけでもないです。
ただし、話し合いの最中に夫と妻がエキサイトしてしまうことはあるでしょう。
建物所有や保険料の支払いをどうするかを決めないまま、どちらかが家を出て別居状態となれば、後々夫婦間でトラブルに発展する可能性もあります。
そのため、建物所有と保険の名義変更についてはしっかり決めておきましょう。
契約者だった方から建物の所有権を譲渡があった場合は、主に次の書類を提出します。
- 火災保険契約内容変更届出書
- 保険証券
- 実印:夫婦それぞれ用意
- 建物を譲渡した人の印鑑登録証明書
- 建物を譲り受けた人の本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
参考:火災保険の名義変更の方法
名義変更に必要となるのは、前述した通り火災保険契約内容変更届出書です。特に相続の名義変更のケースで、被相続人(死亡した契約者)が積立型火災保険へ入っていた場合は注意しましょう。
なぜなら、積立型火災保険も相続財産となるからです。積立型の場合は、いざという時に下りる保険金だけではなく、契約満期になれば満期返戻金が、解約すれば解約返戻金が受け取れます。
そのため、これら満期返戻金・解約返戻金は、契約者(被保険者)の利益となります。この火災保険の名義変更には、各相続人で後々トラブルが起きないよう、原則として相続人全員の承諾が必要となります。
こちらの名義変更には、主に次の書類が必要です。
- 火災保険契約内容変更届出書
- 保険証券
- 実印・印鑑登録証明書:相続人全員
- 戸籍謄本
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
まとめ:共有名義の建物に火災保険をかける場合契約者は1人
共有名義の建物に付保された火災保険の仕組みと名義変更について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回のこの記事のポイントは、
- 共有名義でも火災保険の契約者は1人のみ
- 契約者は地震保険料控除を利用し節税が可能
- 共有名義の場合、被保険者は複数人記入できる
- 建物が共有名義の場合でも、火災保険の保険金に税金はかからない
- 実家の相続・贈与により名義変更する場合、火災保険契約内容変更届出書が基本
- 積立型火災保険、相続財産となるので取扱いに注意