現役サラリーマンの収入が連動する、新たな介護保険の総報酬割制度

2017年8月からの介護保険料に、総報酬割が導入されます。今までとは違う仕組みの「総報酬割」に変わり、導入によってサラリーマンに影響が出ることも!新しく始まる介護保険料の仕組みについて、今までとどう変わるのか説明いたします。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険の総報酬割が導入されて介護保険料はどう変わっていくのか

現在、介護保険料の財源(給付)は

  • 半分を国・地方自治体が負担 
  • 残りの半分を第1号被保険者(65歳以上)の22%と第2号被保険者(40から64歳)の28%の保険料


でフォローし合って賄われています。

介護保険料は2000年に介護保険法と共にスタートし、スタート当初の介護保険の保険料は今よりも大変安かったです。


しかし、高齢化が進み給付等の増額に伴って保険料も上がり、負担の公平性を審議する中で各健康保険組合や協会けんぽに加入する第2号被保険者の報酬の負担割合に差があることが分かりました。


負担割合率差を是正するために、報酬が少ない所と、多い所とで負担割合が変わってきてしまう被保険者の数で算定される加入者割から被保険者の収入に応じた総報酬割に移行することが決定しました。

総報酬割とは

総報酬割は、国民健康保険以外の被保険者に適応されます。

医療費などの保険料負担の割合を、各健康保険組合に加入する人の支払い能力に応じたものにするため、その平均収入に応じて保険料負担割合を設定する方法です。


加入者の数に応じて算定される加入者割よりも、各健康保険組合の保険料率の差が縮まる効果が期待されています。


しかしその反面、加入者の所得が高い企業や従業員の健康保険組合ほど負担が重くなることになります。

介護保険の総報酬割でどう変わっていくのか

今までの介護保険の保険料の割合額は、第2号被保険者の加入数で算定・決められていました(加入者割)。

しかし、報酬の差が生まれたことから、第2号被保険者の収入の総額で決定する総報酬割に変えていくことで、保険料の格差を是正させ公正を保つことが今回の狙いになっています。

介護保険の総報酬割により、平均年収が高い人は介護保険料への負担能力が高いとみられ、保険料を増額する事により、国が行っていた協会けんぽへの国庫補助を無くしていく仕組みです。

平均収入が高い人の保険料負担が増える

介護保険の総報酬割により、平均年収が高い(多い)人が他の加入者より保険料増額の負担が可能と判断され、大手企業で働く従業員や公務員のように加入者の平均年収が高いと保険料も負担が上げられます、より多くの介護保険料を支払うと言うことになります。


経済的な負担能力に応じることで、今までの介護保険制度を崩すことなく国の歳出も削減でき、公平を保つことが出来るメリットがあります。

協会けんぽへの国庫補助がなくなる

収入連動型の総報酬割を導入することで、国が協会けんぽに拠出していた国庫補助が無くなります。


加入者割から総報酬割への移行によって、介護保険料の負担が減少するとされているほとんどが、協会けんぽに加入している被保険者だからです。この国庫補助が不要になることで、国は年1450億円の歳出を削減できることになります。


しかし、国庫補助が無くなり、健康保険組合が保険料負担の増額を強いられることで、「協会けんぽへの国庫補助の肩代わりをしているのではないか」との反発の声も上がっているのも事実です。

負担が増える人、負担が減る人の数

総報酬割が全面的に導入されると、介護保険料の負担が増える人は、大企業に勤める従業員や公務員が加入する1030の健康保険組合と84の共済組合で、第2号被保険者の数では1272万人です。


逆に介護保険料の負担が減る人は、中小企業に勤める従業員等が加入する協会けんぽ、加えて379の健康保険組合と1の共済組合で、第2号被保険者の数では1653万人だと試算されています。

介護保険の総報酬割合は徐々に導入されて行く


2017年8月より総報酬割が適応されることになりましたが、急激な経済的負担を避けるために、3年かけて2020年の完全移行に向けて段階的に導入されることになりました。

介護保険の負担が増える各健康保険組合からは反対の声が上がっていますが、報酬額に高い各健康保険組合と報酬額の低い協会けんぽとの保険料率を公平にする為に徐々に総報酬割を導入することで世間に浸透させ、理解を求めていく方向です。


また、併せて負担が増える各健康保険組合への補助も検討していると厚生労働相は発表しています。

総報酬割合導入のスケジュール

総報酬割は、2017年8月から約3年かけて徐々に導入されます。

  • 2017年8月から12月までに年度全体で3分の1を引き上げ 
  • 2018年度には総額の2分の1を引き上げ 
  • 2019年度には総額の4分の3を引き上げ
  • 2020年度には全面的な完全移行

上記のステップを踏んで、2020年度の完全移行にこぎ着けたい考えです。


段階を踏んでも、報酬の大きな各健康保険組合に増額は経済的負担のようです。

総報酬割が全面導入された後の一人あたりの負担額

総報酬割が全面導入されると、健康保険組合間の負担能力差も大きくなり、組合によって負担能力は様々です。


1人あたりの負担割は1.54%となり、負担額が(労使を含めた)月額5,125円から、5,668円増の1万793円と2倍以上に増える組合もあれば、1,660円減の3,465円と約7割に負担額が減るところもあります。


協会けんぽでは、4,284円から4,043円と下がり、実際の負担額との差が241円減ることになります。


また同じ組合内でも加入者の一人あたりの報酬額が、上位10組合と下位10組合とで570万円もの差があります。

健保組合上位10組合の平均

健康保険組合上位10組合の介護保険の第2号被保険者の年額平均が825万円と健康保険組合内でも所得水準も高く、他の健康保険組合との平均報酬額差が大きいことが分かります。


この差を是正するために収入連動型の総報酬割を、適応することでこの

報酬額に見合った保険料を支払うことになります。


現行は医療保険と同額の5,125円でしたが、総報酬割完全移行後は5,668円増の1万793円となります。

健保組合の下位10組合の平均

健康保険組合下位10組合の年額平均は279万円と、組合内では所得水準も低い状態です。


平均報酬額に差があるのになぜ負担する保険料が高水準の組合と同じなのかと、組合間での公平性を維持するためにも着目されました。


医療保険と同額の5,125円ですが、総報酬割移行後は1,660円減り、3,465円が介護保険料となります。

まとめ

個人個人の報酬額に見合った介護保険料を負担することで、国は公正を保とうとしています。

しかし、現役世代で増額を強いられる被保険者は「子供の教育費や家のローンもあるのに、これでは家計が苦しくなってしまう」との意見も出ています。


また、増額させられる各健康保険組合も同様で、協会けんぽに対する国庫負担の肩代わりをさせられているのではないかとの反対の声も上がっています。


逆に、所得の低い被保険者は収入増につながり、国も協会けんぽへの国庫負担が不要になったことで、赤字続きだった国民健康保険料への負債を埋めることが出来ます。


高齢者人口が増加するに従って、これから介護保険料も右肩上がりとなることは明らかです。


収入が多い人でも、やがては保険料が高額になりすぎて所得水準が低い人と同じレベルになってしまう時代がやって来るのかもしれません。


そうならない為にも、国は将来的な高水準の被保険者の保険料への補助を検討しています。


お互いにメリットになる時代が来るのか、政府はもっと話を詰めていく必要がある現状に追い込まれています。

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