介護保険を利用して電動車いすを利用するために、知っておきたい知識

少ない力で駆動することのできる電動車いす。介護保険でレンタルできる移動に関する福祉用具はたくさんありますが、電動のものはあまりありません。高額な電動車いすですが、介護保険も適用となるのでレンタルすることも可能です。レンタルの条件などを詳しく見ていきましょう。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

電動車いすは介護保険でレンタルできる

電動車いすは、介護保険を利用してレンタルすることのできる福祉用具の一つです。

電動ということから利用する際にかかる金額が高額となるのではないか、操作が難しいのではないか等と不安に感じている人もいるのではないでしょうか。


電動車いすと通常の車椅子の違いや、購入するにはどのくらいの費用がかかるのか、介護保険でレンタルするとどれくらいの金額で利用することができるのか、どのような方が対象になるのかなどをご紹介します。


電動車いすとは

電動車いすは、搭載したバッテリーの電気によってモーターが駆動することで走行する車椅子のことを言います。

手元にあるレバー又はハンドルを動かすことで移動をすることができるため、通常の車椅子と違い腕の筋力や握力が少ない高齢者でも車椅子駆動をすることができます。




介護保険で電動車いすをレンタルできる条件

介護保険を利用してレンタルをしても通常の車椅子よりレンタル料金はかかりますが、購入をするよりもはるかに安い料金で利用をすることができるため、電動車いすを使いながら日常生活を送る高齢者は多くいます。


通常の車椅子では自走が困難であった方が、電動車いすで自走できるようになることで、生活の幅を広げることも期待できます。


しかし、誰でも介護保険を申請していれば利用が可能というわけではありません。


利用条件に該当していなければ、介護保険の対象にはならないのです。


では、利用条件について見ていきましょう。

要介護度が2以上である

原則として、介護保険を申請しており、なおかつ要介護度が2以上であることが利用条件とされています。

要介護2となると、歩行に困難さが生じることが理由として挙げられます。


杖や歩行器を使用して歩行が可能な場合、電動車いすを利用してしまうことで更なる筋力低下を招いてしまうということも考えられます。


そのため、ベッドのレンタル等と同様に必要な状態と認められる介護度でなければ利用することができないのです。


その意味から、杖や歩行器を使用しても長距離の移動が困難となりやすい要介護2以上という条件が定められています。

条件によっては要介護1以下でもレンタルできる

電動車いすの介護保険適用条件は原則として要介護2以上の方と定められていますが、例外もあります。

「日常的に歩行が困難」「日常生活における移動の介助が特に必要」と認められた場合には、要介護1以下でもレンタルすることが可能です。


そのような場合は、なぜ歩行が困難なのかという理由の記載された医師の意見書が必要となります。


担当のケアマネージャーに相談をしてみましょう。

電動車いすには自走用と介助用の二つがある

電動車いすは、大きく2種類に分けられます。

利用者自身が操作をする「自走用」と、介助者の駆動を補助する「介助用」です。


利用する人の身体機能によって、自走型か介助型を選択しますが、ここからは詳しい違いをご説明していきます。

自操用の電動車いす

自走用の車椅子は、スティック又はハンドルを操作して自身で車椅子の移動を行うものです。



通常の車椅子ですとハンドリムを腕で前後に動かすことで車輪が動きますが、そのためには腕の筋力が十分にないと操作することが難しくなります。


そのため移動の際に腕の筋力が足りない場合に、電動車いすを検討することが多いです。

ハンドリムを押す筋力はなくてもハンドルを回す筋力がある場合はハンドルタイプでも良いですが、腕の筋力低下が顕著な場合はより少ない力で操作が可能なスティックタイプの電動車いすが適しています。


また、自宅内で使用する場合には、小回り操作のしやすい電動車いすを選択すると良いでしょう。


検討の際には、ケアマネージャーや福祉用具専門相談員によく相談をして決めましょう。

介助型の電動車いす

介助型の電動車いすは、介助者が車椅子を押す時の負担を軽減する目的で作られたものです。


介助用の電動車いすでは、登り坂で車椅子を押す時にかかる介護者の腕や腰への負担を考え、パワーアシスト機能が付いています。


また、下り坂でも車椅子のスピードを抑えるために支えながら移動することで、介護者の腕や腰にはやはり負担がかかります。


そのため、下り坂ではブレーキがかかるようになっており、負担なく車椅子を押すことが可能です。


介護者が高齢者という場合も最近では多く、少ない力で車椅子介助ができることはとても大きなメリットとなっています。


介助用の電動車いすのなかには、自走用と介助用を兼ね備えているタイプもあります。


そのため、短距離であれば自走は可能な人な場合には、自走用と介助用を兼ね備えている電動車いすが良いでしょう。

電動車いすは介護保険でレンタルすべきか購入すべきか

電動車いすは、決して低額な福祉用具ではありません


介護保険を利用して1割負担で使用することができるとはいえ、通常の車椅子をレンタルしたときと比較しても、やはり電動車いすのほうが費用はかかります。


また、介護保険の購入補助の対象となっている福祉用具を購入する場合には10万円の補助がでますが、車椅子は対象外のため補助が出ません。


それを踏まえた上で、電動車いすを介護保険でレンタルをするのか、購入するのか、どちらが費用の負担が抑えられるのかという点に注目してみましょう。

使う期間によって変わる

介護保険でレンタルをするのか、購入するのかを検討する時にポイントとなることは、「使う期間」を考えて検討するということです。

介護保険でレンタルする場合には月に2,000~3,000円の費用がかかります。


電動車いすを購入する場合には、20~40万円です。


例えば、レンタル料金が2,000円の電動車いすを1年間レンタルすると、年間で利用料金は24,000円です。


10年間で24万円となります。


レンタル料金が3,000円の電動車いすを1年間レンタルすると、年間で利用料金は36,000円です。


10年間で36万円となります。


そのため、10年以上と長期間にわたり利用することが考えられる場合には、購入したほうが良いと言えるでしょう。


ただし、レンタルの場合は途中で身体機能が低下して座位保持が不安定となった場合に、途中で介助用に変更する等の対応が取れることがメリットでもあります。


購入した後に身体機能が低下して、電動車いすの自走が困難となった場合には再度購入をするか介助用をレンタルするかといった対処となりますので、どのタイプを購入するかよく考える必要があります。


現在治療中の病気が進行性の場合には、購入する際に進行したときのことを考えて自走用・介助用を兼ね備えているタイプの電動車いすを購入することをお勧めします。

まとめ

電動車いすは、介護保険でレンタルすることのできる福祉用具です。

通常の車椅子では自力で駆動することが困難な方でも、少ない力で駆動することのできる電動車いすを利用することで、移動が可能になる方もたくさんいます


介護保険を申請していて、要介護度が2以上であればレンタルすることが可能です。


長期間利用する場合は購入するほうが望ましいですが、介護保険を利用することで金額の1割負担で使用することができるので、電動車いすを利用している人は多くいます。


電動車いすは料金も高額なので、購入した方が良いのか又はレンタルのほうが適しているのかを本人・ご家族だけで検討するのではなく、ケアマネージャーとよく相談して意見も聞きながら検討してみましょう。

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