養子縁組をすると戸籍上の苗字(名字)はどうなる?変更時の記載方法

養子縁組をする際の苗字(名字)記載方法は、変更する場合と変えない場合(そのままにする場合)があります。一口に養子縁組と言っても、養子が既婚者か否かで変わるなど細かく法律で定められてます。今回は養子縁組の戸籍上の苗字(名字)の変更について、ケースごとに詳しく解説します。

養子縁組をすると戸籍上の苗字(名字)はどうなる?変更時の記載方法

養子縁組は、子どもを授かれない夫婦や後継ぎがいない会社などの経営を存続させたい場合などに、行なうことを検討するものです。


その方法は一般的に知られているものではなく、難しそうだと感じてしまいます。養子に入るということは苗字の変更も関わってくるでしょう。


苗字は必ず変えなくてはならないのか、気になりますね。


そこでこの記事では、

  • 養子縁組で苗字を変更するケース
  • 養子縁組で苗字を変更しないケース
  • 養子縁組で苗字を元に戻す方法
  • 養子縁組解消後、そのままの苗字を使えるか
  • 養子縁組は苗字を変えたいだけの場合もできる?

以上のことについてまとめています。


複雑で難しそうな養子縁組ですが、養子縁組を行なうためにも知っておかなければならないことがたくさんあります。


あとで困らないためにも、ぜひご覧ください。


養子縁組の手続きで苗字(名字)を変更するケース

養子縁組の手続きをする際に、苗字を変えるケースがあります。


苗字を変えるのは

  • 単身者が既婚者家庭の養子となる
  • 単身者が既婚者家庭以外の養子となる
  • 既婚者とその配偶者が養子となる

以上3つのケースがあります。


単身者とは、一人で暮らす人のことをいいます。独身者といわけではありません。


また、既婚者とは結婚している人のことをいいます。


それぞれのケースでどのような養子縁組になるのか、解説していきます。

苗字(名字)を変更するケース①単身者が既婚者家庭の養子となる場合

単身者が既婚者家庭の養子となる場合は、基本的なケースでいうと養親の戸籍に入ることです。そのとき、単身者は現在の戸籍を出ることになります。


戸籍を出て養親の戸籍に入るので、苗字が変わります。このケースでは、筆頭者やその配偶者が養親となる場合に該当します。


養親が筆頭者やその配偶者以外のものである場合は、その養親と養子縁組をすることにより新しく戸籍を編成します。


筆頭者やその配偶者以外のものというのは、その戸籍に入っている独身の子どもなどが該当します。


養親が筆頭者やその配偶者の場合はその戸籍に入るだけですが、それ以外のものの場合は新たに戸籍が編製され、その戸籍に入るということです。

苗字(名字)を変更するケース②単身者が既婚者家庭以外の養子となる場合

単身者が既婚者家庭以外の養子となる場合も、苗字が変わります。


親子同氏の原則というものがあり、養親の苗字を養子は使わなければなりません。その原則は、養子が成人しているか、未成年かによって変わることはありません。


養子縁組をしたからといって、元の親との実親子関係がなくなるわけではありません。しかし、養子縁組をすることにより実親と苗字は変わります。


実親との関係をなくす養子縁組もあります。


養子縁組には

  • 普通養子縁組
  • 特別養子縁組

の2つがあります。


普通養子縁組の場合は実親子との関係はなくなりませんが、特別養子縁組の場合は実親子との関係はなくなります。


ですので、普通養子縁組実親と養親の両方があり、相続関係等が双方あることになります。


反対に特別養子縁組の場合、実親子関係がないので、相続関係等は養親にしか発生しません。

苗字(名字)を変更するケース③既婚者とその配偶者が養子となる場合

既婚者とその配偶者が養子となる場合ですが、養親が戸籍の筆頭者またはその配偶者の場合はその戸籍に入ります。


しかし、養親が戸籍の筆頭者またはその配偶者以外の場合は、新戸籍が編製されます。どちらの場合も養子は養親の苗字になります。


旦那が戸籍の筆頭者であり養子となる場合は、その配偶者も同じ苗字になり、戸籍に入ることになるのです。


ここで気になるのが旦那とその配偶者の間に子どもがいる場合です。子どもも養親と同じ苗字になるのかと疑問に思いますが、養子縁組時点で養子に子がいた場合は、その子は養親と同じ苗字にならなくてもいいです。


養子の子が、養親の苗字になった養子と同じ苗字になりたいと望めば、苗字の変更手続きを行うことができます。

養子縁組の手続きで苗字(名字)を変更しないケース

養子縁組の手続きにおいて、苗字を変えるケースについて見てきました。単身者の場合も、既婚者の場合も、養子縁組をしたら養親の苗字にならなければならないことが分かりましたね。


では、苗字を変えないケースというのもあるのでしょうか。


苗字を変えないケースは

  • 結婚時苗字の変更をしたものが養子となる
  • 養親夫婦どちらかと既に同戸籍である
  • 養子の国籍が日本以外

以上3つになります。


苗字を変えるケースや変えないケースがあり複雑ですが、詳しく解説していきますのでぜひご覧ください。

①結婚した際に苗字(名字)の変更手続きを行った者のみが養子となる場合

結婚した際に、苗字の変更手続きを行う人が多いです。苗字を変更した人のみが養子となる場合には、苗字を変えなくてもいいです。


結婚後、離婚した場合には元配偶者の苗字から旧姓に戻るでしょう。しかし、子どもがいる場合はその子どもの苗字を変更する手続きをしないと戻りません。


また、連れ子がいる人が再婚する場合には、再婚相手との養子縁組手続きを行なってください。養子縁組手続きを行わないと、再婚相手と子どもが親子関係を結ぶことができません。


養子縁組をすると養子は養親の苗字になります。

②養親の夫婦どちらかと既に同じ戸籍に入っている場合

養親の夫婦のどちらかと既に同じ戸籍に入っている場合は、苗字の変更をしなくても問題ありません。


戸籍には身分事項欄という欄があるのですが、そこに養子縁組した旨が記録されるだけです。


また、別のケースですが夫婦どちらかが養子縁組をする場合には、結婚時に苗字を変えた配偶者を養子にすると、夫婦同氏の規定があるため養親と同じ苗字に変更しなくても大丈夫です。

③養子の国籍が日本以外の場合

養子の国籍が日本以外の場合も、養子縁組による苗字の変更は行なわなくても大丈夫です。なぜなら、外国人には日本戸籍が存在しないからです。


ですので、養子と養親は別姓になります。


国籍を取得するために養子縁組や国際結婚を考える人もいますが、それをしたとしても日本国籍を取得できるわけではありません


また、国際結婚の場合ですが、外国人の苗字を日本人の苗字に変更することはできませんが、日本人の苗字を外国人の苗字に変更することはできます。


養子縁組をする際、養親となる夫婦の国籍が異なる場合は注意が必要です。本国法という法律がありますが、夫婦それぞれがその本国法の要件を満たしている必要があります。

離縁して養子縁組を解消した後もそのままの苗字(名字)を使いたい場合

養子縁組を離縁して解消した後も、そのままの苗字を使いたい場合があるかもしれません。


その場合は、離縁してから3か月以内または養子離縁届提出時に、「離縁の際に称した氏を証する届」を行なってください。


しかし、これを行うには条件があります。それは、養子縁組をしてから7年が経過していることです。


7年経過していないのに離縁した場合、養親の苗字をそのまま使うことはできません。


「離縁の際に称した氏を証する届」を行い、そのまま養子縁組時の苗字を名乗った場合、その後旧姓に戻すにはやむを得ない理由が必要になります。


離婚の場合はそのまま配偶者の苗字を名乗り、子どもが独立したことなどをきっかけに旧姓に戻すことは可能です。


その場合、同じ戸籍内に子どもがいると、親が旧姓に戻ると同時に子どもの苗字も旧姓に変更されます。

特別養子縁組をした場合の戸籍はどう変更される?

特別養子縁組をした場合に戸籍は4つの選択肢の中から選ばれる様になっており

  • 養親の現在の戸籍に移る
  • 養子夫婦で新しい戸籍を作成
  • 養親の新しい戸籍に移る
  • 養子の戸籍を変えない 
この様なパターンがあります。

養子縁組の届出申請書には自ら記入する欄があるためご自身で決められると思ってしまいます。しかし実は最初から決められています。

養子縁組前の養親と養子の戸籍を考慮して、養子縁組した後の戸籍は決められます。

普通養子縁組と特別養子縁組の戸籍の記載方法

普通養子縁組の記載方法


続柄は養子が男の場合『養子』と、養子が女の場合『養女』となります。

子供側は養子縁組と扱われ戸籍には
  • 締結した日
  • 養子先の父親と母親の名前
  • 代諾者
  • これまでの戸籍
が記されます。

さらに養子先の戸籍には『養子縁組』と書かれ、以下の項目も追記します。
  • 締結した日
  • 共同縁組者
  • 養子の名前

特別養子縁組の記載方法


続柄が『長男・長女』となり実の子共と同じです。

子供側の戸籍には『民法817条の2』と書かれ、以下の項目も追記します。
  • 民法817条の2による裁判の確定した日
  • 届け出た日
  • 届出人
  • これまでの戸籍
実の親の戸籍には『除籍』と書かれ『特別養子縁組』とも記載します。

また養子の新しい本籍には、養子縁組先の本籍ではなく養子だけの戸籍が記載されます。これには養子の追跡を困難にさせる目的があります。

この様な違いがあります。主に普通要支援組は成人などにもよく使われる制度、そして特別養子縁組は特に保護が必要な子供に対して、実の子供の様にきちんとした家族として生活できる様な制度です。

参考:苗字(名字)を変更したい・変えたいだけの人は養子縁組を行えるのか

会社の存続のため、子どもが欲しいため、お墓の管理のためなど、養子縁組をする理由は多岐にわたります。


養子縁組をする人は、何かしらの大きな理由があって行いますが、ただ苗字を変えたいという人が養子縁組をすることは可能なのでしょうか。


自分の苗字が気に入らない、嫌いだという人もいるかもしれませんが、苗字の変更はとても大きなことで、養子縁組を使わない通常の苗字の変更の場合は、やむを得ない理由がないと許可は下りません。


やむを得ない理由とは、苗字の変更をしないとその人の社会生活に著しく支障をきたす場合のことを指します。


例えば珍しい苗字でからかいの対象とされ、社会生活に支障をきたした場合や、暴力団員だったものが更生するために変更する場合などが対象となります。


また、先述しましたように養子縁組を7年以上続けていれば、離縁した後もそのままの苗字を使用することが可能です。


注意したいのが、離縁後3か月以内または養子離縁届提出時に、「離縁の際に称した氏を証する届」を提出することです。


苗字を変えたいからといって養子縁組をしても、7年はその関係を続けなければならないので、「養子縁組してすぐ離縁すればいいや」という考えでは苗字を変更することができません。


苗字は代々継がれてきた個人を特定する大切なものなので、社会的に著しく支障をきたす苗字である場合を除き、むやみに変更を考えていいものではないでしょう。

まとめ:養子縁組の苗字(名字)は変更できる場合とできない場合がある

養子縁組で苗字の変更について

  • 養子縁組をすると養親の苗字になる
  • 養親と同戸籍の場合は変更しない
  • 離縁すると旧姓に戻る
  • 離縁後もそのままの苗字を名乗ることは可能
  • 苗字はやむを得ない理由がある場合にのみ変更可能

以上のようにまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか。


養子縁組をすると苗字が変わるケース、変わらないケースが細かくあり、覚えるのが大変です。連れ子がいる場合は、子どもの苗字のことも考えなくてはなりません。


苗字の変更は難しく、頻繁にできるものではないので、養子縁組の話が出たときにはどのような手続きをするのがベストかきちんと確認したいですね。


養子縁組をする理由は人それぞれですが、苗字を変えたいからという理由で手続きをすることは、おすすめできません。


養子縁組の手続きも、離縁の手続きも、複雑ですので困ったら専門家を頼ることも大切ですよ。


ほけんROOMでは、他にもマネーライフに関する記事を多数掲載していますので、ぜひご覧ください。

ランキング