受給資格が25年から10年に短縮?年金10年で受給額はいくら貰える?

年金の受給資格が25年から10年になりました。受給しやすくなった一方で、注意点などははないのか気になるも多いと思います。そこで今回の記事では、年金10年の注意点や不足する場合の対処方法、将来受け取れる年金額をできるだけ増やす対策などについて解説していきます。

年金の受給資格に必要な納付期間が10年に短縮された?

年金の保険料納付が中断した期間があると、自分が年金を受け取れるのか不安に思うかもしれません。


「受け取れないなら支払っても仕方ない」などと考えてしまっていませんか?


年金の受給に必要な支払い期間は、25年から10年に短縮されました。


これによって、いままでより大幅に、年金を受給できる人が増えたことになります。


しかし、年金10年は、単純に喜ぶことができない側面もあるのです。


この記事では、年金10年の受給資格期間について、

  • 25年から10年になった理由
  • 10年で受け取るための条件・資格と給付額
  • 年金10年に潜む注意点
  • 年金受給のための手続き
  • 年金保険料免除・猶予制度について
  • 年金を増やす方法

以上のことを中心に説明します。


この記事を読んでいただけたら、年金の受給資格期間について理解し、老後の生活費の不安を解消する方法について知ることが出来ます。


ぜひ最後までご覧ください。 

今までの年金受給に必要な資格期間は25年だった!

今までは、年金受給には25年の支払い期間が必要でした。


25年というのは、大学を23歳で卒業したとして、48歳まで年金保険料を休まず払い続けられればクリアする期間です。


しかし、途中で病気やケガで働けない期間があったり、海外に行っていたり、失業したりしていた期間が発生すると、途端に厳しい条件になってしまいます。


支払い免除の手続きを取っていれば良かったのですが、「手続きが必要なことを知らなかった」「手続きを忘れていた」「手続きが面倒でしなかった」「手続きが出来ない状況だった」など、何らかの理由があり、「未納」になってしまった人も少なくありません。


そこで生じていたのが、25年には満たないけれど10年以上は保険料を支払っているのに、年金が受給できず、結果的に払った保険料が無駄になったという問題です。


国の年金が受給できないため、生活保護を受給するケースが増え、市町村の財政に影響が出てきました。


このような問題があり、2017年8月より年金受給の資格期間が10年に短縮されたという経緯があります。

10年で年金を受け取るための条件・資格と給付金額

10年で年金を受け取るための条件や資格はあるのでしょうか?


年金の受給がスタートするまでに、10年以上の年金を納められていれば受給資格を満たしているので年金を受け取る資格があります。


年金の給付金額は1年で約20万円。国民年金の加入期間によって給付金額は上がります。年金の給付金額を少しでも上げたい場合は、なるべく未納にせず年金を納めると将来の自分のためになりますよ・


もし、厚生年金の受給資格があと少し足りない……という方は70歳で原則終了する厚生年金の支払いを延長することも可能です。これを、「高齢任意加入被保険者」といいます。


遺族年金は、25年以上の期間年金を納めないと遺せません。

10年の受給資格期間の他に条件や資格は必要?

では、10年で年金を受け取るために、支払い期間以外の条件や資格はあるのでしょうか?


特に条件はありません。


年金の加入期間が10年あれば、老齢年金の受給資格が発生します。


ひとつ安心材料と言えるでしょう。


もちろん、年齢は65歳からです。10年払ったからといって、いつでも受給スタートできるわけではありません。


また、2017年8月より前の期間に遡って受給することもできません。


この「年金を受給できる資格が発生する年金加入期間」は、受給資格期間と言われます。


受給資格期間は、必ずしも保険料を納付していた期間だけではありません。


いくつか合計した期間になりますから、保険料を納めていた期間が少なくて不安な場合でも確認してみましょう。


受給資格期間に加えられる期間とは、

  • 国民年金保険料を納付した期間
  • 国民年金保険料を免除された期間(保険料の負担が困難な時に保険料を免除された期間)
  • 船員保険を含む厚生年金保険や共済組合等の加入期間

です。


保険料の免除を受けた期間も合算されるので、自分で年数が足りないと思っても、本当は足りている可能性があります。


さらに、合算対象期間(カラ期間)も含めることができます。


合算対象期間(カラ期間)は、加入していなかったことの責任が個人ではなく制度上の問題にあるため、受給資格期間に合算するという趣旨のものです。


具体的には、

  • 昭和61年3月以前に、サラリーマンの配偶者だった期間
  • 平成3年3月以前に、学生だった期間
  • 海外に住んでいた期間
  • 脱退手当金の支給対象となった期間(昭和61年の年金改正前に厚生年金保険の被保険者資格を喪失した人で、その被保険者期間分を一時金としてもらった期間)  

があります。


海外居住以外は過去の制度上の問題と言えそうです。


こちらも該当しないか、確認してみてください。


10年であれば、クリアする人が多くなるのではないでしょうか。

受給資格期間10年で実際に年金はいくらもらえるの?

老齢年金の受給資格期間10年で老後の年金はいくら受け取れるのでしょうか?


年金が給付される加入期間である10年ギリギリで年金を納めた場合、支給額は約19万円となります。1カ月あたり約1万5千円ほどの金額です。


もし、満期にあたる40年間年金を支払い続けていたら支給額は約80万円の年金が受け取れるので差は歴然ですね。


今までは受け取ることができなかった年金を受け取れる方が増えるのは事実。


受給資格期間が25年未満だから年金は貰えない……と諦めるのではなく、少しでも年金の支払い期間をのばして貰える老齢年金の金額を上げるという考えにするといいですね。

必要納付期間が10年になったからこその注意点

「25年も保険料を払わなくても10年だけ保険料を払えば年金がもらえる」と聞けば、お得な話に思うかもしれません。


しかし、そう単純に喜べるものでもないのです。


この年金10年には、注意点があります。


それは、

  • 遺族年金は25年加入が条件
  • 年金10年だと貰える年金が少ない

ということです。


重要な注意点ですので、それぞれ詳しく解説します。

年金10年の注意点①:遺族年金は25年加入しないと貰えない

実は、年金が10年で受け取れるのは、加入者本人の老齢年金の話です。


自分に万が一のことがあった場合の「遺族年金」は、25年の受給資格期間が必要だということを知っておいてください。


これは、にわかに喜ぶことができない情報ではないでしょうか?


遺族年金の支給要件は、

  • 保険料免除期間を含む保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上ある
  • 被保険者や資格期間が25年以上である老齢基礎年金受給者

です。


この支給要件は、以前から同じ。年金10年に変わった今でも変更されていません。


遺族のことを考えると、25年の期間は必要不可欠。「加入期間が短くて不安…」ということに変わりはないかもしれません。

年金10年の注意点②:貰える年金額が少ない

次に注意が必要なのは、貰える年金額が少ないということです。


加入している期間が10年ということは、25年と比較して5分の2。


単純に考えて、貰える額も、5分の2に相当する程度になるとイメージすると良いでしょう。


10年払った人と25年払った人が同じ額を貰えると逆に不公平ですから、当たり前のことかもしれません。


10年では貰える額は少額だということを覚悟しておく必要があります。


10年に限らず、年金は、加入期間に応じて満額から目減りします。


ただ、全くなかった年金「0円」が、いくらかでも定期的に入ってくるのは心強いです。


年金は、貰い始めると一生涯定期的に入ってくる収入。額がどうであれ、この安心感は大きなものと言えるでしょう。

必要な各種年金手続き方法について解説!


年金受給資格期間が10年になったことで、今まで受給できなかった人が受給できるようになりました。


それに伴い、年金受給をスタートするために手続きが必要です。


また、支払い期間が10年未満のケースでも手続きを取ることで救済措置が用意されています。


ここでは、

  • 年金受給できる年齢の方が受給するための手続き
  • 60歳になって加入期間が10年に満たない場合の手続き

について、それぞれ解説します。

年金受給対象の方の手続き方法

年金が受給できる年齢の方には、役所から、「短縮」と書かれた黄色の封筒で「年金請求書」が送られてきます。


最初のアクションは役所からになりますので、自分から動く必要はありません。


書類が届いたら、近くの年金事務所へ行き、手続きを行います。


この段階で、自分のアクションが必要となります。


役所の事務手続きが終わったら、「年金証書・年金決定通知書」が届くので内容を確認しましょう。


受給のための手続きは以上です。


もし、この郵便物に気づかなかった場合は、「年金加入期間の確認のお知らせ(案内)」が届くため、このタイミングで問い合わせることも可能です。


そんなに複雑な手続きではありませんね。


万が一、自分も受給できるはずなのに、何も送られてこない場合は、問い合わせてください。


役所の記録に不備があり、自分の加入期間が少なくなっている可能性もあるからです。この点は、のちほど、詳しくお伝えします。  


(参照元:日本年金機構

60歳になって加入期間が10年に満たない場合は?

問題は、60歳になって加入期間が10年未満の場合です。

このままでは、せっかく受給資格期間が短縮されても、その恩恵を受けられません。

できる対策は、
  • 任意加入で支払い期間を延ばす
  • 年金記録を確認する
です。

それぞれ、どのような方法なのかお伝えします。

任意加入で支払い期間を延ばす

国民年金は60歳までの納付期間ですが、60歳までで10年に満たない場合は、支払い期間を延長することができます。

これを任意加入と言います。

60歳以上70歳未満の期間に国民年金保険料を納めることで、受給資格期間を満たせる場合は、活用したい制度です。

自己申告での手続きになるため、希望する場合は、役所で手続きをおこないましょう。

加入は申出のあった日からです。

任意加入するためには、以下の条件があります。

【60歳以上65歳未満の方】
  • 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない方
  • 現在、厚生年金保険に加入していない方

【65歳以上70歳未満の方】
  • 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない方
  • 現在、厚生年金保険に加入していない方

また、現在厚生年金に加入している場合で、受給資格期間が満たせないときは、厚生年金保険の高齢任意加入制度があります。

厚生年金保険は、原則として、70歳までで納付終了です。

仮に会社に勤めていても、70歳になると加入者の資格を失います。

しかし、70歳になっても老齢年金の受給資格期間を満たせない場合で、在職中であれば、受給資格期間を満たすまでの間、任意加入ができます。

希望する場合は、会社に申し出が必要です。

通常、厚生年金保険料は会社と折半ですが、任意加入の保険料は全額本人が負担。ただし、事業主が同意すれば折半にすることもできます。

当てはまる場合は、会社に相談してみると良いでしょう。


年金記録を確認する

年金には、持ち主のわからない年金記録があります。


一時期、ニュースでもよく取り上げられていたため、ご存じの方も多いのではないでしょうか。


なぜこのようなことが起こっているかというと、旧姓やよく読み間違えられる名前の読み方、本来とは異なる生年月日や名前で届出をされた場合などに、その情報が現在の年金記録と紐づいていない可能性があるからなのです。


いわゆる「未統合記録」と呼ばれるもので、「ねんきん特別便」や「ねんきん定期便」などで確認を促されていますから、一度しっかり確認してみてください。


いまだに未統合の記録が多数あります。


心当たりがある場合は、どのような届け出をした可能性があるかを伝えて確認してもらいましょう。


年金記録は「ねんきんネット」でも確認することができます。


(日本年金機構:ねんきんネット

年金保険料の免除・猶予制度とは?

生活をするのに必死で、年金を納められない……と悩んでいる方はいませんか?年金は過去10年以内の年金の追納が可能です。


もし、現在生活が苦しくて年金を支払えない・追納も難しいという方がいたら「国民年金保険料の免除・猶予制度」の利用をお勧めします。


「国民年金保険料の免除・猶予制度」を申し込み、免除や猶予が認められれば国民年金を支払いは無し、または決められた期間支払いが発生しません。


その方の収入によって決まるので、まずは年金事務所に行って相談してみましょう。


この免除や猶予の機関は、受給資格期間に入らないのでは……?と不安に思う方もいると思いますが、免除や猶予の期間であっても受給資格期間に算入されますので、ご安心ください。


猶予になった場合、追納の義務が生じますので、計画を立てておきましょう。

公的年金だけでは老後の生活が不安?年金を増やす方法を紹介


年金の受給資格が加入期間25年から10年に短縮されたことについてみてきましたが、それでもやはり、不安要素が残されていることが理解できたのではないかと思います。


特に「受給額」について、公的年金だけでは老後の生活が不安に感じている人が増えています。


「老後にお金がなくてみじめな思いをしたくない!」と考える人にとって、どうにか年金額を増やせないかということは感心事の一つかもしれません。


実は、年金を増やす方法はたくさんあるのです。


具体的に、

  • 国民年金の受給額を増やす方法
  • 私的年金で受け取れる年金を増やす方法

の2つの対策が考えられます。


それぞれどのようにすれば良いのか、解説いたします。

国民年金の受給額を増やす方法

まずは、公的年金の制度内で、受給額を増やしたいときの方法をお伝えします。


公的年金の受給額を増やす方法は、4つあります。

  • 国民年金基金
  • 付加年金
  • 任意加入
  • 年金受給を繰り下る

それぞれの制度の仕組みについて、簡単に紹介いたします。


国民年金基金

国民年金基金は、TVCMなども放送されているため、聞いたことがある人も多いでしょう。


国民年金法の規定に基づく公的な年金です。


会社員であれば「国民年金+厚生年金」と2本立ての年金が構築できますが、自営業だと厚生年金に加入できません。


その場合に「国民年金+国民年金基金」として、国民年金にプラスして加入できる年金制度です。


国民年金の第1号被保険者を対象としています。


国民年金基金のみに加入することはできません。


付加年金

国民年金基金と似たイメージで、国民年金にプラスして年金を増やす制度です。


「国民年金+付加年金」になります。


国民年金基金と比較して、額が小さいという特徴があります。


具体的には、

  • 保険料:月々400円
  • 受給額:年「200円×付加保険料納付済期間の月数」

になります。


実際にいくら納めて、いくら返ってくるかを知りたいですよね。


例えば、30年間(360月)納付した場合、

  • 保険料の総額:400円×360月=144,000円。 
  • 受給額:200円×360月=72,000円

です。


2年受給すれば元を取る計算になります。


任意加入

任意加入は、先ほどお伝えした通りで、受給資格期間を満たすために支払い期間を延長する制度です。


受給額を増やすのではなく、受給資格を得るために加入期間を増やす方法になります。


年金受給を繰り下げる

年金は、繰り下げ受給ができます。


例えば、65歳から受け取れるところを、5年繰り下げ70歳から受給するなどです。


繰り下げて受給すれば、受け取り始めてからの年金額が少し多くなります。


増えた年金額は、一生涯続くため、メリットが大きいと考える人も多いです。

iDeCoなどの私的年金への加入

上記は、公的年金で受給額を増やす方法でした。

ここでは、もうひとつの年金受給額の増やし方である「私的年金」について考えたいと思います。

公的年金では不安と考えるなら、私的年金を構築しておくことで、老後の生活費に対する不安を解消できます。

私的年金とは、金融機関に年金保険料を積み立てる制度です。

この積み立てのことを「拠出」といいます。

私的年金では、自分で運用先を指定して拠出したお金を運用してもらい年金として受け取る仕組みになっています。

運用状況によっては、年金で受け取れるお金が大きくなるため、資産運用としての役割もあります。

「拠出したとき」「運用期間中」「年金を受け取る時」それぞれに、税制のメリットがあるため、節税の視点でも注目されています。

私的年金で有名なものに「iDeCo」があります。

iDeCoでは、原則として60歳までは引き出せないという決まりがあるため、定期預金や保険の感覚で取り組むと不都合が生じるかもしれません。

あくまでも、老後の生活費として年金と同様に考えると活用できる制度です。

公的年金だけに頼らず、自分でもしっかりと資産を構築しておきたい人には向いているでしょう。

私的年金については、自力で年金を構築する必要がありますが、知識がないなどの不安要素があるかと思います。

ほけんROOMでは、私的年金についての無料相談も受付していますから、ぜひご活用ください。(ほけんROOM無料相談室

まとめ:年金をしっかりと受け取れるように納付は心掛けて!


年金10年の資格期間について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。


この記事のポイントは、 

  • 支払い期間が10年だと、受け取れる年金額は少ない。
  • 年金10年は、老齢年金のみ。遺族年金は25年必要。
  • 受給資格期間には、保険料を納付していなくても合算される期間がある。
  • 受給資格期間が足りない場合は、任意加入が可能なこともある。
  • 紐づいていない年金記録がないか確認する。
  • 公的年金を増やすには「国民年金基金」「付加年金」「繰り下げ受給」という方法がある。
  • iDeCoなど、私的年金の構築も検討しよう。

でした。 


加入期間が長すぎて諦めていた人でも、10年で年金の受給が可能になったことは朗報です。


年金は受け取り始めると一生涯の固定収入になる心強い制度。


この機会に自分の年金の加入期間について確認し、不足しそうな場合はどのような対策を選ぶか考えてみると良いのではないでしょうか。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、是非ご覧ください。 

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