ボーナスから引かれる厚生年金の計算方法!いつから?他の税金は?

ボーナスにかかる厚生年金はどのように計算されているのか疑問に思ったことはありませんか?また、以前は厚生年金が引かれていなかったのになぜ?と感じた方もいると思います。この記事では、厚生年金の計算方法や厚生年金以外にもボーナスにかかる税金について解説します!

ボーナスから引かれる厚生年金。計算方法やその他の税金は?

実際にボーナスをもらって金額を確認したとき、思っていたより金額が少ないと感じる人は多いはずです。 


それは毎月の給与からだけでなく、厚生年金の保険料はボーナスからも引かれるようになったためです。 


平成7年以降、特別保険料として1%が徴収され、企業と労働者で半分ずつの0.5%を負担していましたが平成15年に現在の制度に移行しました。     


そこで今回のこの記事では「ボーナスから引かれる厚生年金保険料」について

  • 厚生年金保険料が引かれる対象
  • 厚生年金保険料の計算方法
  • 厚生年金保険の制度の変遷
  • 引かれているその他の社会保険料や税金
以上のことを中心に説明します。

この記事を読んでいただけたら、ボーナスから引かれる厚生年金の保険料の計算方法や徴収額、他に引かれているも社会保険料などへの理解は深まります。

ぜひ最後までご覧ください。

厚生年金はいくら引かれるのか?計算方法を紹介

まずはボーナスから引かれている厚生年金保険料の計算方法について見てみましょう。


保険料の金額は標準賞与額保険料率を掛けることで計算できます。


標準賞与額とは賞与額(額面金額)から千円未満を切捨てた金額です。


この賞与額には1回あたりの上限があり、上限額は150万円す。(同じ月に2回以上支給されたときは合算)


上限額を超えるボーナスを受け取った場合は、その超えた部分に対しては保険料はかかりません。


そして保険料率は加入している健康保険制度や地域によって変わってきます。


例えば協会けんぽ加入者の場合であれば、平成31年度保険料額表で保険料率を確認・計算することができます。


この保険料率は労使折半(社会保険料を企業と労働者が半分ずつ負担すること)なので、ご自身の負担はその半分となります。


以上で求めた標準賞与額と保険料率を掛け合わせることで、厚生年金保険料を計算することができます。

ボーナスの厚生年金が将来の年金に反映されないことがあった!

現在は、厚生年金の保険料は、ボーナスから引かれてご自身が将来もらう年金額に反映されます。


しかし、現在の制度になる前の平成7年~平成15年には、保険料が将来の年金額に反映されていなかったのです。


以下では、反映されていなかった理由」現在の制度に変更された理由」について、順に確認していきたいと思います。

どうして反映されなかったのか

平成7年から徴収が始まった特別保険料は、高齢者世代への年金支給のための財源として使われていました。


そのため自分自身の将来の年金額に反映される訳ではなかったのです。


そもそも年金制度の考え方には2種類あります。現役世代が高齢者世代を支える賦課方式と、将来自分が受け取る年金を若いうちに自分で貯める積立方式です。


特別保険料は世代間扶養の考え方に基づく賦課方式の意味合いが強い制度だったのです。

今は反映されている!いつから反映された?

しかし、特別保険料を払っているのに自分の年金額に反映されないのはおかしいと感じる人も多くいました。


またボーナスからは社会保険料が引かれていなかったため、更に問題が起きました。


例えば以下のような2つの場合を比較してみましょう。

  1. 月収20万円×12ヶ月+ボーナス年1回100万円=年収340万円
  2. 月収25万円×12ヶ月+ボーナス年1回40万円=年収340万円


ここで仮に社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料)の負担合計を28%としましょう。


従来の決め方だと月収にのみ社会保険料がかかります。各々のケースに28%を掛けて社会保険料負担額を計算すると、以下のようになります。

  1. 月収20万円×12ヶ月×28%=67.2万円
  2. 月収25万円×12ヶ月×28%=84.0万円


年収が同じならば負担能力も変わらないはずなのに、社会保険料の金額に相当な差が出てしまいました。


これがおかしいことは一目瞭然ですが、ボーナスから社会保険料が引かれないことが原因でした。


そして賞与の比率が高い給与体系にして社会保険料が引かれないようにした会社も実際にあったようです。


またその場合には将来もらえる年金額が減ることにもなり、これも大きな問題でした。


そのためこの決め方はおかしいと批判が出た訳です。


そこで平成15年に制度が改正されて特別保険料は廃止され、月々の給与だけでなくボーナスも含めて社会保険料を計算する総報酬制に移行しました。


こうしてボーナスから引かれる厚生年金保険料が自分の将来の年金額に反映されるようになりました。

ボーナスにかかっている他の税金を紹介

ここまで厚生年金保険料についてみてきましたが、他にもどんな税金が、どのくらいの額かかっているのか知りたいと思う人も多いのではないでしょうか。


ここまで厚生年金保険料について見てきましたが、ボーナスからは他にも社会保険料や税金が引かれています。健康保険料雇用保険料所得税の3つです。


保険料率や税率はご自身の状況によって変わります。それぞれの具体的な計算方法を見ていきましょう。

ボーナスにかかる社会保険料

まずはボーナスにかかる健康保険料雇用保険料の計算方法についてです。


[健康保険料]

「賞与額(千円未満切捨)×保険料率」で求めます。


加入している健康保険制度や地域、そして年齢が40歳以上かどうかによって保険料率は変わります。


また賞与額には上限額があり、年間573万円までとなっています。上限額を超えるボーナスを受け取った場合は、超えた部分に対しては保険料はかかりません。


[雇用保険料]

「賞与額(額面金額)×保険料率」で求めます。


保険料率は事業の種類によって変わります。(厚生労働省HP:雇用保険料率について

ボーナスにかかる所得税

次に所得税について見ていきます。


ボーナスから引かれる所得税の金額のことを源泉徴収税額と言い、「(賞与額の額面金額から社会保険料を引いた金額)×算出率」で求めます。


ここで算出率「前月の社会保険料控除後の給与額」「扶養親族の人数」によって変わります。


「前月の社会保険料控除後の給与額」は前月の給与明細で、扶養親族の数え方は国税庁HPの資料(給与所得の源泉徴収税額の求め方)で確認できます。


そしてこの2つを確認したら、国税庁HPの表(賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表)に当てはめてみましょう。


該当する箇所を探して一番左の列に記載された「賞与の金額に乗ずべき率」が適用される算出率です。 


例えば扶養親族が1人、前月の社会保険料控除後の給与額が25万円の場合、算出率は4.084%となります。


なお前月の給与を基準にして計算されているため注意すべき点もあります。


それは例えば前月に残業が多くて給与額が高いと、ボーナスから引かれる源泉徴収税額も高くなる点です。


仮にそれ以外の項目が全て同じで額面金額も同じでも、前月の給与次第で算出率が変わって源泉徴収税額が変わることがあります。


ただしボーナスから引かれるこの金額は、あくまで概算であって仮払いのようなものです。


あなたが最終的に納税すべき所得税額は、毎月の給料やボーナスなど1年間の所得金額によって決まります。


所得税の納税額が分かる年末の段階で、もしもボーナスから引かれた金額が過大・過少だったということになれば、年末調整により精算されることになります。


なお給与所得が2,000万円を超える人など一部の場合を除いて、年末調整は基本的に会社が行ってくれます。


ご自分では必要書類に記入して会社に提出するだけで済みます。会社から年末調整の書類記入の依頼や連絡があったら忘れずに対応するようにしましょう。

扶養家族二人の時の例

それでは具体的な事例を使ってシミュレーションをしてみたいと思います。


ボーナスから引かれる社会保険料・所得税を計算して額面金額から手取額を計算してみましょう。

  • 賞与支給月:2019年6月
  • 賞与支給額:40万円
  • 年齢:33歳(40歳未満の区分)
  • 加入している健康保険:協会けんぽ
  • 勤務地:東京
  • 厚生年金保険の区分:一般の被保険者
  • 雇用保険の区分:一般の事業
  • 前月給与額(社会保険料控除後):25万円
  • 扶養親族:2人


[厚生年金保険料]

この事例では賞与額(千円未満切捨)は400,000円、保険料率は18.3%です。(協会けんぽ:平成31年度保険料額表


保険料率は労使折半(社会保険料を企業と労働者が半分ずつ負担すること)のため、ご自身の負担は9.15%となります。

賞与額:400,000円×保険料率(9.15%)=36,600円

[健康保険料]

この事例では賞与額(千円未満切捨)は400,000円、保険料率は9.90%です。


保険料率は労使折半のためご自身の負担は4.95%です。

賞与額:400,000円×保険料率(4.95%)=19,800円

[雇用保険料]

この事例では賞与額(額面金額)は400,000円、保険料率は0.3%です。(平成31年度の雇用保険料率

賞与額:400,000円×保険料率(0.3%)=1,200円

[社会保険料控除額]

厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料の合計額が社会保険料控除額になります。

厚生年金保険料:36,600円+健康保険料(19,800円)+雇用保険料(1,200円)=57,600円

[源泉徴収税額]

この事例では前月給与額(社会保険料控除後)は25万円、扶養親族は2人です。


「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を確認すると扶養親族2人の場合、算出率は以下の通りです。

前月給与額
(単位:千円)
算出率
133未満0.000%
 133以上~269未満 2.042%
 269以上~312未満 4.084%
 312以上~369未満 6.126%
・・・・・・


この事例では算出率は2.042%であると分かります。


賞与額(額面金額)は400,000円、社会保険料控除額は57,600円なので、源泉徴収税額は以下の通りです。

{(賞与額:400,000円)ー(社会保険料控除額:57,600円)}×2.042%=6,991.808円

1円未満は切り捨てるので源泉徴収税額は6,991円です。


[手取り額]

以上で計算した社会保険料控除額と源泉徴収税額を額面金額から引けば手取り額を求めることができます。

(額面金額:400,000円)ー(社会保険料控除額:57,600円)ー(源泉徴収税額:6,991円)=335,409円

額面金額40万円に対して手取り額は約33万円であることが分かります。


一般的に手取り額は額面金額の約8割と言われますが、シミュレーションをすることでその差を具体的な形で理解することができたことと思います。


ご自身の場合についてもシミュレーションをして是非計算をしてみて下さい。

まとめ:ボーナスから厚生年金は引かれる!

「ボーナスから引かれる厚生年金保険料」について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?


この記事のポイントは

  • ボーナスからは厚生年金保険料が引かれている
  • 厚生年金保険料は標準賞与額に保険料率を掛けて計算する
  • ボーナスが厚生年金額に反映されなかった時期と現行制度に移行した理由
  • ボーナスからは健康保険料・雇用保険料・所得税も引かれている

でした。


この記事を読んでいただけたことで、これまでよく分からなかった額面金額と手取り額の差が一体何なのか、理解することができたことと思います。


そして具体的には以下の社会保険料や税金がボーナスから引かれていることも理解できたことと思います。

  • 厚生年金保険料
  • 健康保険料
  • 雇用保険料
  • 所得税

また過去の経緯など厚生年金保険の制度自体への理解も深めたことで、今後は手取り額を確認した時でも納得できて気持ちよくボーナスを受け取れるはずです。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、是非ご覧ください。

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