更新日:2024/03/07
夫婦で月30万円の年金をもらうには?共稼ぎで厚生年金ダブルが最強
老後にゆとりある生活を送るには月30万円程度がかかると言われています。夫婦世帯の平均だと月20万円と言われていますが、実際、共働きであれば厚生年金合わせて夫婦で月30万円も難しくありません。ただ、将来年金額が減ってしまう可能性や夫婦で厚生年金に加入した時には注意点があります。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 年金を月額30万円以上もらえるのはどんな人?
- 年金を月30万円もらう人の条件は?支給額の平均は?
- 年金360万円の法則を知ろう
- 国民年金・厚生年金でもらえる年金額を計算しよう
- 厚生年金の受給額の早見表
- 厚生年金の受給額の男女差
- 計算方法:平均標準報酬月額×一定乗率×加入期間
- 30万円もらうには?方法①:会社員が付加できる年金
- 厚生年金を加えた場合
- 企業年金を加えた場合
- 30万円もらうには?方法②:個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)を加えた場合を想定
- 自営業者は毎月の上限が6万8000円まで可能
- 月40万円以上の年金を積立する夫婦(共稼ぎ)の例
- 夫婦共働きで65歳からもらえる年金の合計は?
- まとめ:老後の生活費に備えて夫婦で年金の追加を検討しよう
目次
年金を月額30万円以上もらえるのはどんな人?
ある程度の年齢になってくると、気になってくるのが老後生活費の基礎となる「公的年金」ではないでしょうか?
一般的な考え方として、老後に旅行や趣味などにお金を使え、ゆとりのある生活を送るためには毎月の生活費として、約30万円程度が必要ともいわれています。
この話を聞いて、「自分の今の収入ではどれくらい年金がもらえるの?」「年金で不足する生活費を補うにはどんな方法があるの?」といった疑問を持った方も多いはず。
そこで、この記事では
- 年金30万円もらう人の条件と、平均支給額はどれくらい?
- 年金360万円の法則とは?
- 自分がもらえる年金額の計算の仕方は?
- 年金30万円もらうためにできる方法とは具体的にどんな事?
- 月40万以上の年金を積み立てる夫婦の例
年金を月30万円もらう人の条件は?支給額の平均は?
実際に総務省が発表した「家計調査年報」という報告によると、夫婦世帯の年金支給平均月額は191,880円(2017年)となっています。
ただし年金額のデータはいま年金をもらっている人の数字という点には注意しなければいけません。
現在年金を受給している人は、40年以上前社会人となり(年金の掛け金を支払いはじめ)、そしていま年金をもらっている人、例えば「入社から定年まで長年勤めつづけたサラリーマンの夫と、それを家で支えてきた専業主婦の妻」という形態が基本になっています。
上記データでは「昔ながらの良くある家庭では夫婦で20万円弱しか年金をもらうことができない」とも言えます。
つまり、老後の年金を30万円以上受け取れる世帯というのは、夫婦共働き世帯など、非常に限られていることがわかります。
現在の水準を知ることはもちろん大事です。しかし共働きが当たり前になっている現在と、40年前の「夫婦のかたち」が違うことは、頭のすみに置いておく必要があると思います。
年金360万円の法則を知ろう
ネットでは年金360万円の法則とか単に360の法則などと表現されているもので、要するに「360万円の貯蓄があれば毎月1万円取り崩していける」という意味です。
例えば65歳から95歳まで生きたと仮定して、30年×12ヶ月で360ヶ月となります。
「360万円を65歳までに準備できれば95歳までの30年間、年金以外に毎月1万円を取り崩しながら生活できる」これが年金360万円の法則になります。
これは別の表現をすれば「360万円あれば毎月年金プラス1万円使える」ことになります。
毎月プラス10万円にしたければ3,600万円準備しなければならず、話題になった「老後2,000万円問題」も観点は同じです。
公的年金だけでは足りない老後資金は、早いうちから自助努力で準備しておくこと必要があるとこのキーワードからわかります。
国民年金・厚生年金でもらえる年金額を計算しよう
老後、自分がいくらくらい年金を受け取れるかについては、多くの方が興味を持っていると思います。実際、将来設計をするにあたっても、老後の年金額がある程度明確になっていることは、重要な意味を持ってきます。自分が将来貰える年金を算出する公式がありますので、予想の年金受給額を計算してみましょう。
まずは国民年金です。日本年金機構によれば、満額の保険料を収めていた場合、受給額は年間で780,100円(平成31年4月〜)となっています。月額の受給額に換算すると、65,008円となっています。夫婦では2倍になるので13万円程度となります。国民年金保険料の金額は増えているため、昨年比では、月あたり67円増えています。(厚生労働省資料)
ここから、未納分や延滞分によって少なくなったり、一方で受給の際に据え置きしたり、増額したりすると増えたりします。実際の受給額は5.5万円と言われているので、実際よりも年間で2万円分ほど保険料を支払えていない状況になっています。
もちろん、20年後に国民年金の金額については不明ではありますが、おおよそ5〜8万円程度が積み立てられます。
月30万円もらうには、あと25万円ほど捻出する必要があるのです。そこで重要になるのが厚生年金。ここからは、厚生年金について、将来受け取れる年金額のおおよその目安や、計算方法について解説していきます。
年金の増額方法についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
厚生年金の受給額の早見表
会社員であれば、厚生年金の保険料は、給与から天引きされているのに加え、会社が半分だけ負担をしてくれています。当然ですが、厚生年金保険料は、平均月額給与によってその保険料が違っており、平均月額給与が高くなるほどその保険料は高くなります。年金保険料を多く支払うことになれば、それにほぼ比例して老後の年金額も多くなります。
また、厚生年金保険料を払い込む期間についても同様で、その期間が長いほど老後に受け取れる年金の額は高くなります。
月額の平均給与の額(年収/12)と加入期間から、老後受け取れる厚生年金年額の目安を示すと、次の表のようになります。
【給与額と加入年数に対応した年金受給額の早見表】
平均給与月額 (年収/12) | 加入期間5年 | 加入期間10年 | 加入期間20年 | 加入期間30年 | 加入期間40年 |
---|---|---|---|---|---|
10万円 | 4万円 | 7万円 | 14万円 | 20万円 | 27万円 |
20万円 | 7万円 | 14万円 | 27万円 | 40万円 | 53万円 |
30万円 | 10万円 | 20万円 | 40万円 | 60万円 | 79万円 |
40万円 | 14万円 | 27万円 | 53万円 | 93万円 | 105万円 |
50万円 | 19万円 | 33万円 | 66万円 | 99万円 | 132万円 |
厚生年金の受給額の男女差
厚生年金の受給額の男女差には2倍の開きがあります。
まず厚生労働省「女性と年金問題とは?」をご覧下さい。
全体の平均は144,903円 男子平均165,668円 女子平均103,026円
男子は、15~20万円が男子全体の39.3%を占めており、より詳細にみると18~19万円をピークとする山型となっている。女子は、5~10万円が45.1%と半数近くを占めており、より詳細にみると9~10万円をピークとする山型となっている。男子に比べ女子の分布は低い方に偏っている。」
繰り返しになりますが、現在年金を受給している人は「サラリーマンの夫と、それを家で支えてきた専業主婦の妻」という形態が多いのでこうした結果になっていると言えるでしょう。
男性は入社してから定年まで勤め上げる場合が多く(転職をしてもサラリーマン、つまり厚生年金保険者には変りがないので厚生年金は継続される。ただし脱サラした場合は国民年金となる)厚生年金もある程度の額が支給されます。
いっぽう女性の場合、自分自身が会社勤めで納めた厚生年金は、加入期間も金額も男性に比べと小さくなっていました。上記のように結婚して家庭に入り、専業主婦になる人が多かったからです。その結果厚生年金の受給額は当然少なくなり、2倍の開きがあるのです。
女性の社会進出が進んだ現在では、今後こうした受給額の男女差も変わってくることでしょう。
40年後の年金についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
計算方法:平均標準報酬月額×一定乗率×加入期間
前の項目で、平均給与額と加入年数から算出した、厚生年金のおおよその額をお示ししました。この額については、あくまでも目安であり、もう少し現実的に自分がいくら位の厚生年金を受け取れるかを知りたいという方もいらっしゃるかと思います。
厚生年金の受給額については、その計算式が決まっており、自分でも計算することが可能になっています。
その計算式は下記のようになります。
厚生年金の受給額(年額)=平均標準報酬月額×一定乗率×加入期間(月数)
ここに出てくる「平均標準報酬月額」というのは、月の給与にボーナスを合わせた、年間の総報酬額を12で割ったものになります。また、一定乗率に関しては、現在は5.481/1000という数字が使われています。
この式において、加入期間については給与所得者(会社員等)であった期間と同じになります。
仮に、厚生年金保険料を40年間納め続けた人で、ボーナスを含めた平均報酬月額が40万円であったとした場合の厚生年金受給額は
40万円×5.481/1000×480か月=1,052,352円
となり、年額約105万円を受け取ることができるという計算になります。
年金の受給額についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
30万円もらうには?方法①:会社員が付加できる年金
前項の計算式で求められる厚生年金の額を見て、かなり少ないと思われた方も多いかもしれません。
しかし、ここで計算された年金というのはあくまで厚生年金部分だけであり、これに加え基礎年金としての国民年金が受け取れることになります。
夫婦の場合はそれに加え、配偶者の基礎年金も受け取れることになりますので、夫婦世帯の年金支給平均月額は191,880円(2017年)となるのです。
しかし、この額についていえば、ゆとりある老後を過ごすために必要と考えられている年金額の30万円には遠く及びません。
ここからは、老後の年金を月額30万円うけとるために、今からできる工夫についてご紹介していきます。
厚生年金を加えた場合
老後の生活を支える年金ですが、わが国においては「国民皆年金制度」が取られており、一定時の条件を満たせば、すべての国民が年金を受け取りことができます。
この年金制度は、基礎年金と呼ばれる国民全員が加入している(国民年金保険料を納めている人に限る)部分に加え、給与所得者が受け取れる厚生年金に分けることができます。
給与所得者は、毎月の給与やボーナスの中から、厚生年金保険料を基礎年金である国民年金に上乗せして払っていることになります。
ちなみに、この厚生年金保険料は、被用者と同額を雇用主側もあわせて支払っています。
そのため、老齢年金の受給年齢に達した場合、老齢基礎年金に加え、老齢厚生年金が支給されることになります。
国民年金から支給される老齢基礎年金の額は、年額約78万円(2017年現在)となっており、これに老齢厚生年金が上乗せされることになります。
さらに、配偶者がいる場合、その配偶者が扶養に入っていれば、その配偶者の国民年金保険料も扶養者の厚生年金保険料から払われていることになっています。
そのため、年齢要件をクリアすれば、配偶者の老齢基礎年金も同時に支払われることになります。
とはいえ、厚生年金と基礎年金に配偶者の基礎年金を加えても、月額30万円に届くことはありません。
もし、夫婦合計で月額30万円を受け取ることを目標にするとすれば、夫婦共働きをし、それぞれが厚生年金加入者となることで、この金額をクリアできる可能性はあります。
企業年金を加えた場合
企業で働き給与をもらっている場合、いつかは定年を迎え、退職をすることになります。
その際、退職金として一定のまとまった金額を受け取れる制度をとっている企業は多く存在します。
この退職金については、賃金の後払いという意味があり、退職後の生活を支えるための制度として取り入れられてきました。
しかし、企業によっては、一括で受け取るのではなく、分割して受け取ることのできる「企業年金」という制度をとっている企業もあります。
この制度は企業にとっても、大きなお金を一括で払わなくてよいというメリットがあり、分割して支払う分、残りを運用し、年金に上乗せしてくれるケースもあります。
退職金を受け取る際に、一括で受け取るか、分割で受け取るかを選択できる場合、分割で受け取る「企業年金」を選択することにより、年金月額を30万円に近づけることが可能なケースもあります。
30万円もらうには?方法②:個人型確定拠出年金(iDeCo)
老後の年金月額を30万円にする方法としては、自分で年金を積み上げていくという方法もあります。
その方法の一つとして注目されているのが、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」です。
この個人型確定拠出年金(iDeCo)とは、掛け金を拠出した人が、自分自身で運用商品を選び、運用しながら積み立てていき、原則60歳以降に年金として受け取る仕組みをいいます。
国が後押しする制度であることから、掛け金が全額所得から控除できたり、運用益が非課税になる等の積立期間中の税制優遇を受けることができます。
また、受取時にも年金形式で受け取れば「公的年金等控除」、一時金で受け取れば「退職所得控除」が受けられるというメリットもあります。
掛け金は月額5000円から1000円単位で選択ができ、その金額も年一回変更可能となっています。
個人型確定拠出年金(iDeCo)では、運用する商品を自分で選ぶことになるのですが、資産運用の対象となる金融商品としてはいくつかのタイプがあります。
その金融商品の例としては、定期預金・投資信託・信託商品・保険商品などがあげられます。
これらの商品の中には、その運用成績によって、資産が増えることもあれば、運用がうまくいかず資産を減らしてしまう可能性もあります。
運用については、あくまで自己責任の面がありますので、それぞれ商品ごとの特性をよく確認し、選択する必要があります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)を加えた場合を想定
老後の年金を30万円にする手段として、厚生年金に加え、個人型確定拠出年金(iDeCo)を活用することは、有効な手段であるといえます。
先ほど、仮に厚生年金保険料を40年間納め続けた人で、ボーナスを含めた平均報酬月額が40万円であったとした場合の厚生年金受給額は、年額約105万円であることをお示ししました。
これに国民年金(基礎年金)として、年額約78万円を加えると年額約183万円となります。
さらに、配偶者の国民年金が満額支払われると仮定すると、年額78万円が加わり、年額約261万円となります。
ですので、年額360万円との差額である約99万円を個人型確定拠出年金(iDeCo)で準備するということになります。
しかし、この約99万円の差額はあくまで1年分ということになります。
もし、年金開始から20年間の年金年額30万円を考えるのであれば、約1980万円を個人型確定拠出年金(iDeCo)で準備する必要があるということになります。
しかし、個人型確定拠出年金(iDeCo)には掛け金の年額上限というものがあり、会社員の方は企業年金がない場合で、年額27万6000円という金額が最高金額となります。
例えば、30年間最高額で加入し、運用成績がプラスマイナス0であったとすると、その積立額は約552万円となります。
ですので、もし個人型確定拠出年金(iDeCo)を活用して年金月額30万円を目標とするのであれば、なるべく早くスタートし、上手に運用することが必要となります。
また、家計に余裕がある世帯であれば、配偶者もこの制度を活用し、ダブルで資産形成をしていくということも一つの方法といえます。
自営業者は毎月の上限が6万8000円まで可能
将来の年金については、会社勤めをしている人よりも、自営業者の方のほうがさらに不安を感じています。
なぜなら、自営業者の場合、厚生年金制度は適応されず、国民年金としての基礎年金しか準備されていないからです。
自営業者の場合、夫婦二人分の基礎年金を合わせても、満額で年間約156万円しか受け取れないことになります。
そういった点からすると、より自助努力として、公的年金に上乗せするための資産形成というものが必要になります。
そういった背景もあり、個人型確定拠出年金(iDeCo)においては、毎月の掛け金の上限額が、厚生年金加入者に比べ高く設定されています。
具体的には、自営業者の場合、毎月の掛け金の上限は、6万8000円まで拠出できるようになっています。
とはいえ、最高額の掛け金で30年間の加入期間があったとしても、その運用成績がプラスマイナス0であった場合、2448万円の積立となります。
これを20年間の年金受け取りとすると、年額約122万円ということになり、夫婦二人分の基礎年金約156万円と合わせると、年額約278万円となります。
自営業者で個人型確定拠出年金(iDeCo)を活用し、年金の年額を30万円に近づけると考えた場合、少しでも早くスタートし、上手に運用することが大切になります。
また、夫婦それぞれで加入することは、さらに効果的であるといえます。
月40万円以上の年金を積立する夫婦(共稼ぎ)の例
年金の計算が面倒なら、銀行HPなどで簡易シミュレーションができますので、参考にしても良いでしょう。(ただし前提条件や予想などの変動要素もありますので、あくまで参考程度と考えてださい)
月40万円以上の年金を積み立てする夫婦(共稼ぎ)を試算して見ると次のような結果になりました。
夫婦共働きで65歳からもらえる年金の合計は?
合計の受給額は36.7万円でした。
その内訳は
- 夫:老齢厚生年金12.7万円、老齢基礎年金6.4万円
- 妻:老齢厚生年金11.2万円、老齢基礎年金6.4万円
※共働き(共稼ぎ)、年齢22歳、年収400万円、22歳入社60歳定年、条件は夫婦すべて同じと仮定した場合のシミュレーションです。
22歳から年収400万円で、その後も順調に昇格昇給していく(夫婦で差が出るのは給与上昇の数値データや税額控除などが原因と思われますが、あくまで参考データとしてそのまま使用しました)と仮定してこの結果です。月額40万円はもらえません。
なお、このシミュレーションでは年収を夫婦とも500万円にしても月額計38.2万円で、年収が600万円、700万円に増えても結果は38.2万円と変わりませんでした。
これは収入に応じた掛け金の限度額(標準報酬というもの。興味がある人は厚生労働省HPなどにやさしい解説があります)があり、厚生年金ではどんなに年収が高くても、夫婦月額40万円以上はもらえない、というひとつの結果を示しています。
月40万円以上の収入を確保するには、公的年金以外の準備が必要になります。
簡易計算で使用したのは、SMBC三井住友銀行HP年金試算シミュレーション「将来もらえる年金額を試算より」
まとめ:老後の生活費に備えて夫婦で年金の追加を検討しよう
ここまで、「老後の生活費に備え、年金支給額を増やす方法」をテーマに解説してきましたが、いかがでしたか?
この記事のポイントは、
- 夫婦での年金支給平均月額は191,880円(2017年)となっており、年金年額30万円を超えるのは夫婦共働きの場合等、かなり限られている。
- 年金積立の際には年金360万円の法則を意識する。
- 自分がもらえる年金は、計算式があり、「平均標準報酬月額×一定乗率×加入期間(月数)」で求めることができる。
- 年金月30万円を受け取るためには、企業年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)などを上手に活用することが必要である。