医療保険の保険料を全期前納するメリット・デメリットを一括払いと比較

医療保険や生命保険、個人年金保険に加入する際に保険料を全期前納にしようか迷う方も多いでしょう。今回、医療保険などの保険料を全期前納(前払い)にするメリット・デメリットを一括払い(一時払い)と比較して解説します。また、相続対策になる全期前納の方法も解説します。

医療保険の全期前納や一括払いのメリット・デメリットを比較


医療保険への加入を検討する際には、保険料の払込方法も選ばなければいけません。


医療保険には毎月コツコツ支払う「月払い」しか選べない商品もありますが、中には「全期前納」や「一括払い」という方法で払い込めるケースがあります。


貯蓄に余裕がある方々なら、全期前納や一括払いで支払った方が、払い込む保険料総額はかなり抑えられます。


全期前納と一括払いは、どちらもまとめて保険料を払い込む方法ですが、特徴が異ります。


良く特徴を理解していないと、いずれかの方法を選んだ際に「こんなはずではなかった」と、後悔するかもしれません。


この記事では「医療保険の全期前納と一括払いの特徴と注意点」について

  • 保険料の全期前納の特徴
  • 保険料の一括払いの特徴
  • 全期前納と一括払いのメリット・デメリット
  • 前納払いや一時払いは、相続対策としてならおすすめ
以上の点を詳しく解説していきます。


記事を読んでいただければ、医療保険の全期前納と一括払いのメリット・デメリットについて良くご理解いただけると思います。


ぜひ最後までご覧ください。

医療保険や生命保険の保険料の「支払い方」と「保険料」の違い

医療保険や生命保険(死亡保険)の保険料払込方法で、圧倒的に多いのは「月払い」です。


月払いは、ほぼ全ての商品に共通する払込方法となります。


月払いの他に、年2回支払う「半年払い」、年1回支払う「年払い」も選べるケースが多い払込方法です。


年払いや半年払いの方が、月払いよりも支払う保険料の総額を少なく抑えられます。そのため、お金に余裕があり、払い込む保険料総額を抑えたい人は、半年払いか年払いのいずれかを選択することが多いです。


しかし、選択できる商品数は少ないものの、「全期前納」「一括払い」という「保険料払込期間分のお金を、一回で保険会社へ払い込む方法」が存在します。


支払う保険料の総額は、「一時払い < 全期前納払い < 年払い < 半年払い < 月払い」となります。


なお、生命保険(死亡保険)では、「一時払終身保険」と呼ばれる、一括払いでお金を支払う方法のみの商品も販売されています。

全期前納(前払い)は保険会社に保険料を「預けている」状態

全期前納は、契約の際「保険料払込期間分のお金を預ける形」で保険会社へ払い込む方法です。


保険料払込期間分を預ける形とはいえ、数百万円単位のお金が動くことになります。


こちらでは前期前納の特徴である、

  • 途中解約時・死亡時に未経過分の保険料が返還される
  • 全期前納は、毎年の生命保険料控除の対象
について解説します。

途中解約時や死亡時に「未経過分の保険料」が戻ってくる

全期前納は、保険料払込期間分のお金を保険会社へ預け、保険会社は毎月または毎年、一定の金額を保険料として充当していく仕組みです。


つまり、保険会社に渡した多額に上るお金は、その全てがすぐに保険会社の物となるわけではありません。


中途解約すれば、保険料に未だ充当されていない分のお金は戻ってきます。


また、保険期間中に被保険者が亡くなれば、

  • 医療保険で「死亡給付金」が設定されているのならその金額
  • 保険料に未充当のお金

が返還されます。

「毎年」生命保険料控除の対象となる

全期前納は一回で支払いが完了する仕組みではなく、保険会社が預かった一定額を翌年以降も差し引いていくため、毎年生命保険料控除が活用できます。


生命保険料控除とは所得税・住民税の負担軽減になる制度です。


会社員の方々なら「年末調整」、自営業者・自由業者なら「確定申告」で手続きを行います。


保険料を払っているからと言って、生命保険会社が税務署へ保険料を受けとっている旨の報告はしてくれません。ご自分で申告する必要があります。


もしも申告方法でわからない点があれば、会社員の方々はお勤め先の総務課等へ、自営業者は税務署の窓口で質問してみましょう。


生命保険料控除を利用すれば、次のような税制上の優遇装置が受けられます(新契約)。


①所得税

  • 年間支払保険料20,000円以下→全額控除
  • 年間支払保険料20,001円~40,000円→年間支払保険料×1/2+10,000円
  • 年間支払保険料40,001円~80,000円→年間支払保険料×1/4+20,000円
  • 年間支払保険料80,001円以上→一律40,000円

②住民税
  • 年間支払保険料12,000円以下→全額控除
  • 年間支払保険料12,001円~32,000円→年間支払保険料×1/2+6,000円
  • 年間支払保険料32,001円~56,000円→年間支払保険料×1/4+14,000円
  • 年間支払保険料56,001円以上→一律28,000円
なお、住民税は年末調整または確定申告を行えば、改めて申告手続きをする必要はありません。

一括払い(一時払い)は保険会社に保険料を全て「支払った」状態

一括払いは契約の際、保険料払込期間分のお金を完全に保険会社へ支払う仕組みです。保険料払込期間分を一挙に支払うので、払い込む保険料総額は全期前納よりも軽減されます。


一見、一括払いを選んだ方が、全期前納よりも断然お得な払込方法と思えることでしょう。


こちらでは、

  • 一括で完全に支払うため、途中解約時や死亡時に保険料は返還不可
  • 一括払いは、一括払いした年だけ生命保険料控除の対象

について解説します。

途中解約時や死亡時に保険料は戻ってこない

一括払いは保険料払込期間分を、一挙に全額保険会社へ支払う仕組みです。そのため、まとめて払い込んだ以上そのお金は保険会社の物となります。


つまり、保険期間中に中途解約しても、被保険者が亡くなったとしても、医療保険料の返還はありません。


ただし、終身保険(死亡保険)や、ごく一部の医療保険には「解約返戻金」制度が設けられています。


解約返戻金が設定されているなら、ある程度のお金は戻ってきます。


また、医療保険で死亡給付金が設定されているのなら、その設定されている金額分が受け取れます。

「毎年」は生命保険料控除を受けられない

一括払いは1度にまとめて保険料を払い終える方法ですので、前述した生命保険料控除は、その保険料を払い込んだ年しか活用できません。


一括払いは保険料総額が全期前納より軽減されるものの、税制上の優遇措置が限定的にしか利用できない点に注意しましょう。


とはいえ、1度にまとめて保険料を払い終えるので、保険料負担の義務からすぐに解放されます。心理的にも安心してまさかの事態へ備えられることでしょう。

全期前納(前払い)と一括払いの違いを一覧表で比較

こちらでは全期前納と一括払いの特徴を下表で比較してみましょう。

比較全期前納一括払い
特徴預けるという払込方法支払いを1回で終わらせる方法
長所・解約すれば未経過分の保険料が返還される
・毎年、生命保険料控除が利用でき節税対策になる
・保険料総額が大幅に軽減
短所・一括払いよりも保険料総額が軽減されない・生命保険料控除は支払った年しか適用されない
・1回で支払いを終えたことになるので、保険料は返還されない

それぞれに一長一短が存在します。


ご自分がより大きな税制上の優遇措置を受けたいか、それとも大幅な保険料削減をしたいかで、払込方法を選びましょう。


大きな節税効果、解約するかもしれないと思っていた場合には全期前納、とにかく保険料総額を大幅に軽減したいと思っているなら、一括払いを選ぶべきです。


とはいえ、いずれの場合も大きなお金が動くので、ご家族と十分相談して決めることも考えた方が良いでしょう。

全期前納と一括払いのメリット・デメリットを比較

全期前納と一括払いは、いずれの場合も大きなお金が動きます。しかし、保険会社に預けるか、支払いを1回で終わらせるかという方法の違いで、一長一短が存在します。


こちらでは

  • 全期前納にはこんなメリット・デメリットがある
  • 一括払いにはこんなメリット・デメリットがある
について解説します。

全期前納(前払い)のメリット・デメリット

全期前納のメリットは次の通りです。

  • 解約すれば未経過分の保険料が返還
  • 毎年、生命保険料控除が利用でき、高い節税対策

もしかしたら事情の変化で解約するかもしれないとき、また、高い節税効果に期待するなら全期前納で契約した方がお得と言えます。


全期前納のデメリットは次の通りです。

  • 一括払いよりも保険料総額が軽減されない
結局、保険料を保険会社に預けている形なので、年払いよりもやや保険料が軽減されるにとどまります。

しかし、間違いなく払い込みは行われ、保障が継続されるという点は安心できます。

一括払い(一時払い)のメリット・デメリット

一括払いのメリットは次の通りです。

  • 保険料総額が大幅に軽減
一回で保険料を保険会社に払い終える形なので、保険料総額は大幅に軽減されます。

とはいえ、1回で数百万円のお金が動くので、慎重に考慮して契約しましょう。

一括払いのデメリットは次の通りです。
  • 生命保険料控除は支払った年しか適用されない
  • 1回で支払いを終えたことになるので、保険料は返還されない
支払額は大きいものの、毎年払い込む形になっていない以上、生命保険料控除が利用できるのは1回きりです。

また、一度に保険料を払い終える形なので、未経過分の保険料は存在しません。

そのため、解約すれば解約返戻金制度が設定されていた場合、解約返戻金しか戻らないことになります。

全期前納(前払い)と一括払い(一時払い)、どちらがおすすめ?

それぞれ一長一短のある全期前納と一括払いですが、実のところどちらがおすすめなのでしょうか?どうやら申込希望者のニーズによって、選ぶべき払込方法は異なるようです。


こちらでは

  • 総支払保険料が安く済む順番とは?
  • 全期前納がおすすめな人
  • 一括払いがおすすめな人

について解説します。

総支払保険料額はどれくらいか

総支払保険料が安く済む順番は次の通りです。


【一時払い→全期前納払い→年払い→月払い】


商品によって異なりますが、「一時払い」にすると約7%くらいの割引率になります。


しかし、現在は月払いを「一時払い」にできる保険は少なく、一時払い専用の保険が主流となってきています。


「前納払い」についても『終身払いの契約を前納することはできず、55歳払いの設定なら全期前納ならできる』のように商品ごとに前納払いのルールが異なっています


保険を検討する際に、商品と補償内容が決まったら、それをいろいろな払込み方法で試算をしてもらうことで比較できます。


医療保険の終身払いについてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

保険料を全期前納払いするのがおすすめな人

全期前納で支払った方が良い人は次のような方々です。

  • 解約する可能性があるので、保険料を預ける形で契約をしたい方々
  • 毎年、生命保険料控除を利用し、税制上の優遇措置を受けたい方々
契約が有効に成立しても、何らかの理由で解約しなければいけない事態も想定されます。そんな時のために、保険料を預ける形で契約した方が都合の良い人もいます。

また高所得の人は、税金がより多く徴収されてしまいます。そのため、生命保険料控除を活用し、節税を図りたい人には最適の払込方法と言えます。

保険料を一括払いするのがおすすめな人

一括払いで支払った方が良い人は次のような方々です。

  • とにかく保険料総額を安く抑えたい方々
  • いっきに保険料を払い終えて安心したい方々
1回で払い終える方法なので、保険料総額はかなり抑えられます。

また、保険料未納で保障が受けられないといったトラブルが無いよう、いっきに保険料を払い終えたい方々へ最適の払込方法と言えます。

医療保険やがん保険の保険料を全期前納するのはおすすめしません

医療保険やがん保険の場合、前納払いはおすすめできません


理由は

  • 掛け捨ての商品が一般的であり、解約返戻金がない
  • ライフプランの変化により、途中で見直す可能性がある
の2つです。


途中で保険を見直すと、前納をする意味がなくなってしまいますよね。


以下では、医療保険やがん保険の前納払いをおすすめしないことについて

  • 医療技術の進歩により入院日数の短縮傾向にある
  • 相続対策であれば前納はおすすめできる
の2つの観点から解説させていただきます。

医療技術は毎年進歩しており、また入院日数が年々短縮している

現在の医療は進歩し、例えばガンを患っても入院日数は昔より短縮され、通院で治療できることも多くなりました。


同じように医療保険もどんどん改良され、魅力的な特約ができたり、全く新しいタイプの医療保険が発売されたりします。


加入中の医療保険に新しい特約を追加したいと思ったり、入院日数が減ったことで入院給付金を減額し、他を手厚くしたいと思ったりした場合、「前納払い」は契約内容の変更に制限がかかってきます


その場合、医療保険の解約を一度して加入し直さなければならなくなります


新しく医療保険に加入し直すということは、現在の年齢で試算することになりますので、当然保険料も上がります。


またその時に持病を抱えてしまっていたら、医療保険に加入できない場合もあります。


月払いや年払いよりも支払い総額は少なくて済むので、お得に感じる「前納払い」ですが、医療保険やがん保険ではあまりおすすめできません。

相続対策の場合なら、前納払いや一時払いはおすすめ

相続対策としては「一時払い」「前納払い」はおすすめです

例えば法定相続人の数が3人いる場合で説明します。


相続税の非課税枠

基礎控除3000万円+(600万円×法定相続人の数)

この時、相続税の非課税枠は4800万円となりますので、不動産や現金など資産の評価額がそれを上回る場合、その上回った額に税率を掛けた相続税がかかってきます。


死亡保険金の非課税

500万円×法定相続人の数

しかし死亡保険金をして受けとる場合、1500万円まで非課税になるのです。


さらに、契約者が亡くなり「前納払い」の未経過分の保険料が返還されたものを相続した場合、この保険料も死亡保険金と同じ扱いとなります


同じ現金を相続するなら、まとまった金額を「一時払い」「前納払い」で払い込んでしまい、死亡保険金として受け取って相続するほうが相続税対策になるのです。


参考:保険料の全期前納払いは相続対策にもなる?

終身医療保険では「貯蓄型」の商品があります。


この商品は被保険者が一定の年齢になれば「生存還付給付金」を受け取れる仕組みとなっています。この貯蓄型終身医療保険へ加入し、相続対策に活用することができます。


①相続発生前に契約者、被保険者、受取人を誰にするか決める


この貯蓄型終身医療保険へ加入し相続対策に活用する場合、まず以下のように契約者、被保険者、受取人を決めます。

  • 契約者(保険料を払い込む人):ご自分(被相続人)
  • 被保険者:相続人(配偶者や子等)
  • 受取人:ご自分(被相続人)
この際、契約者が途中で亡くなり保険料の支払いが滞ることを避けるため、全期前納で保険料全額を払い込みます。

こうすれば契約者(被相続人)の資産は順当に減り、税制上の優遇措置が受けられ、被保険者の万一も保障されます。

②相続が発生前したら契約者、受取人を変更する

その後ご自分(被相続人)が亡くなり、相続が発生した場合、次のように契約者、受取人を変更します。
  • 契約者:ご自分(被相続人)→相続人(配偶者や子等)
  • 被保険者:相続人(配偶者や子等)
  • 受取人:ご自分(被相続人)→相続人(配偶者や子等)
相続発生時、未経過分の保険料は解約返戻金相当額として相続財産にカウントされます。しかし、未経過期間の保険料が少なくなればなるほど、相続税に加算される額は少なくなります。

そして被保険者が、一定の年齢になれば生存還付給付金を受け取ることができます。

もちろん相続発生時、解約返戻金額分が相続税にカウントされているので、生存還付給付金には相続税がかかりません。

ただし、未経過分の保険料がかなり残っている状況で相続開始となれば、解約返戻金額がその分大きくなるので、節税効果はかなり薄くなります。

また、生存還付給付金を受け取れる年齢になる前、不運にも被保険者である相続人が亡くなれば、保険契約が終了し生存還付給付金も受け取れなくなる点に注意しましょう。

まとめ:医療保険の保険料、全期前納と一括払いのメリットデメリット

この記事では、医療保険の全期前納と一括払いの特徴と注意点について解説してきましたが、いかがでしたか。


この記事のポイントは

  • 全期前納は、保険料払込期間分のお金を保険会社へ預ける形で払い込む方法
  • 一括払いは契約の際、保険料払込期間分のお金を完全に保険会社へ支払う仕組み
  • 医療保険やがん保険の保険料を全期前納するのはおすすめしない
  • 全期前納と一括払いは相続対策には有効である
でした。

医療保険やがん保険で全期前納や一括払いの方法をとるのは、保険の見直しを難しくすることになるのであまりおすすめできません。

しかし、相続対策には役立つ一面があります。そのため、ご自分のみならず家族とも話し合って、どのような払込方法をとるか慎重に検討しましょう。

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