更新日:2022/10/01
事業承継で株式を承継するには?税金を抑える事業承継税制も解説
自社株の承継は大きな悩み。本記事では、事業承継で株式を承継するときの株式の評価方法(贈与・相続時)や株価を引き下げるための方法をご紹介します。また、税金を抑えるために活用すべき事業承継税制について、必要な要件やメリット・デメリットもお伝えします。
- これから事業承継によって後継者に事業をバトンタッチすることを計画している人
- 自社株で承継をしたいものの、メリットやデメリットについて気になっている人
- 自分の会社の株式の価値はどのくらいか調べる方法を知りたい人
- 事業承継税制を活用できる要件について自分の会社は該当しているか確認したい人
- 事業承継税制を活用することのメリットやデメリットを知りたい人
- 株式の承継について複雑な手続をふまなければならない理由について
- 自分の会社の株を承継するにあたって株式の価値を知る計算方法
- 税金を抑えるために株式の価値を下げる方法について
- 事業承継税制を活用できる会社の要件
- 事業承継税制を活用することで得られるメリットとデメリット
- 自社株の承継や事業承継税制を活用したいと考えた場合に加入すべき保険や相談先について
内容をまとめると
- 自社株を承継することが複雑である理由として、後継者問題や財産権・経営権問題、財産的価値についての課題が挙げられる
- 自分の会社の株式の価値を知る方法として類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元法式の3パターンがあるため、自分の会社のあり方に合った方法を選択すべき
- 事業承継税制は活用するメリットがあるがそれと同時に手続や条件の厳しさなどといったデメリットもあるため、活用を検討する際はどちらも考慮する必要がある
- 事業承継税制で法人保険を活用していきたいと考えている際はマネーキャリアで納得できるまで無料で相談することがおすすめ
- マネーキャリアは法人相談のプロであり、経営者の悩みに寄り添ったアドバイスができることに加えて相談の予約から相談までオンラインで行えるという利便性もある
目次を使って気になるところから読みましょう!
株式(自社株)の承継が複雑な3つの理由
自分で会社を立ち上げて会社が大きくなるように、社員がいきいきと働くことができるようにと尽力してきたとしてもいつかは終わりが来てしまいます。
自分の手から事業を手放す、次の代を任せたいと思える後継者に事業を託すとなった場合、自分の会社の株式を譲り渡すという形で事業を承継するという方法があります。
自社株での承継は一般的な方法とも言えますが、方法が複雑であることから嫌厭されがちです。
自社株の承継が複雑であるポイントとしては
- 後継者の問題
- 財産権や経営権を考慮しなければならない
- 財産的な価値がわからない
理由①:後継者の問題
自社株による承継が複雑である理由として第一に後継者問題が挙げられます。
どこの会社にも言えることではありますが、後継者は会社のこれからを担う人材であることから非常に重要な立ち位置になる、会社の大黒柱にとなるにふさわしい人でなければいけません。
しかし今日は後継者不足に悩まされている会社が数多くあり、場合によっては赤の他人に売り渡すM&Aを必要とすることもあります。
また、後継者に事業を継がせるためには「今度はあなたが後継者だ」と名指しするのみではいけません。
後継者としてふさわしい人、周囲が納得するだけの働きをすることができる人になるまで育て上げていく必要があります。
後継者としてふさわしい人になるように自らの手で育てあげるということは想像以上に時間や労力がかかるのです。
また複雑であるポイントとして後継者=相続人とは限らないということがあります。
身内以外の人に事業を承継する社内承継やM&Aなど相続人=後継者にあてはまらないケースだとしても、もしも他に相続する人がいた場合はその相続については配慮した事業承継を考えていく必要があるのです。
理由②:財産権や経営権を考慮しなければならない
自社で保有する株については財産権と経営権の2つの意味を併せ持っている状態と言えます。
財産権とは配当や会社の精算を行う際に出た財産を貰うことができる権利ですが、財産権としての自社株については不動産や家屋などのように一般的な市場価値がない状態です。
一般的な市場価値がないために、財産としてどのくらいの価値があるのか一目では分からないので注意が必要です。
よくあるパターンとしては「事業主が想像していた以上の価値がある場合」です。
奨学の資本金で会社を立ち上げたという考えがあることからそれほど価値はないだろうと安易に考えていたため、現在ではその数十倍、数百倍の価値にまで膨れ上がっていたことに気づかないということもよくある話です。
ひと目で価値がわからないということは、言い換えるとその評価する方法、ものさしによっては価値の大小が大きく変わってきてしまうという不確実性が浮き彫りになってしまいます。
また、経営権とは会社の運営などについて支配することができる権利ですが株式を会社に渡すということは会社を他人に手渡すことと同義であるのです。
今後の会社の運命を左右することであることから、簡単に自社株を他人に手渡し、会社を手放すということは避けなければなりません。
株式とは会社の財産を貰える権利、経営権は会社の経営に携わることができる権利ということから会社の運営とは切っても切れない関係であることは明らかです。
一方のみではなく、どちらも考慮すべきことであることからも株式の承継は複雑となるのです。
理由③:財産的な価値がわからない
会社で保有している株式については財産的な価値がはっきりとは分からないという不透明性があるので注意が必要です。
先述した通り、事業を立ち上げた事業主からみて、株式の価値が想像以上に高くなっていて驚くということが往々にしてあります。
事業承継をしようと検討している人々は数十年前に少ない資本金で会社を立ち上げ己の力一本で会社を回してきたというケースがほとんどです。
がむしゃらに働き汗水たらしている間に、企業としての価値が少しずつ見えないところで高くなっていったということが言えます。
自分が会社を立ち上げた時の実感などから、自分の会社の株の価値なんて数百万円の価値くらいしかないだろうと簡単に考えていたが、実際に見てみたところ数億円というとんでもない金額の価値があったということもよくあるケースです。
不動産や家屋、機械などについては他と比べることができ、社会一般的な価値にあてはめて大体いくらくらいの価値があるのか見定めることができます。
しかし、会社の株式となると会社の規模や持っている財産も会社ごとに異なるという実態に加え、株式の価値を評価するための評価方法はまちまちであります。
株式の評価方法についてはどの方法を用いるのかということにによって、株式としての価値が大きく変わってしまうという特徴があります。
株式(自社株)の評価方法(贈与・相続時)とは
株式の評価方法は相続した非上場株式について株主の大きさ、会社の規模などについて総合的に見て判断することで評価の方法を決めていかなければなりません。
- 類似業種比準方式
- 純資産価額方式
- 配当還元方式
株式(自社株)の株価を引き下げる方法
自社の保有している株価が高い状態で放置しておいた場合、自社株の株価が高いことで事業承継を行う際に高額の納税が必要となるため、事業者にとって不利な状況になってしまう恐れがあります。
事業の承継には納税は付き物ではありますが、国に納めるべき納税額はその所有している株の価値によって決まるため、株価が高い大きな企業ほど納税額は大きくなる傾向にあります。
非上場株式の評価については「純資産」「利益」「配当」の3つの要素で非上場株式の評価が決まります。
つまり、評価についてはよく確認し、株価の引き下げができる要素やタイミングを見計らって価値を意図的に下げることをおすすめします。
「純資産」「利益」「配当」これら3つの要素が下がると連動して株価も下がりますが、さらに株価を下げたいという場合は「利益」を下げていきましょう。
会社利益を意図的に下げることで相続税評価額も下がり、それと同時に相続税や贈与税といった納税の税効果も高くなります。
また、この「利益」が下がるためにはここぞというタイミングも重要です。
- 損失性の高い生命保険への加入
- 含み損失を抱えた資産の売却
- 空港期のリース
- 役員の退職金や投資不動産の購入
- 事業がいくつかある場合は、儲けが多い高収益部門を譲渡
- 組織再編
- 持ち株会社方式の活用
事業承継の税金を抑える事業承継税制とは
事業承継税制とは簡単に言うと、「本来支払うはずの相続税や贈与税については100%免除する制度」です。
事業承継税制とは、先代の経営者から事業を受け継いだ後継者が仕事を行い、数十年という月日が流れ将来的にさらに次の後継者へと事業を承継させたいとなった場合には、本来支払いをしなければならない相続税や贈与税を納めなくても良いという扱いにしてくれます。
仕組みとしては、始めから免除というのではなく、「始めは猶予という扱いだったが、将来的な条件をクリアすることによって猶予扱いのものを納税免除に切り替える」ということです。
事業を先代の経営者から受け継いだ後継者が「今後も会社の事業は続けていきます」という条件のもと、相続税や贈与税の納税を免除、さらに将来後継者が次の代の後継者に事業を無事承継させることができた際には納税の猶予が免除になります。
事業承継における税金問題がネックと考えている事業主にとってはありがたい制度と言えるでしょう。
事業承継によって会社の規模によっては数百万円、数千万円という多額の納税が必要になるということから事業承継に対して悩みを抱えていた事業主にとっては渡りに船の制度ではあります。
しかし、誰でも無条件で使える制度ではありません。
要件については以下で説明しますが、この要件を満たさなければ事業承継税制は適用されないので気をつけて下さい。
事業承継税制を利用するための3つの要件
事業承継税制は納税について猶予、もしくは免除を受けることができるというメリットから、相続税や贈与税で多額の納税が必要となる会社にとっては助け舟となる制度であると言えます。
事業承継税制で納税についての悩みが軽減されながらも事業を後継者に承継し、自分が立ち上げた事業を守ってもらうことができるということから是非とも利用したいと考える人があとを絶ちません。
しかし、利用するためには3つの要件を満たさなければなりません。
- 会社についての要件
- 後継者についての要件
- 先代経営者についての要件
誰でも事業承税制を利用できるというわけではなく、3つの要件を満たしてはじめて利用することができる制度ということです。
そのため、事業承継税制を利用したいと考えている事業主と後継者については要件をしっかりと確認しておきましょう。
①会社に関する要件
事業承継税制を望む会社の全てが事業承継税制を利用できるとは限りません。
事業承継税制は中小企業を手助けするという意味合いがある制度であることから、会社の規模や事業内容に条件があることが言えます。
つまり、この制度を利用するためには、定められた条件をクリアする必要があります。
い第一条件としては「中小企業基本法で定められた中小企業」ということが言えます。
中小企業基本法で定められた中小企業とは業種ごとに資本金の額、従業員の数が細かく定められていることから、利用したい企業はこの条件に合致するかどうかをきちんとチェックして下さい。
業種 | 資本金 | 従業員数 |
---|---|---|
製造業・その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
さらに上記に加えて以下の条件があるため、この4つの条件を満たしているかどうかが重要になってきます。
- 上場会社ではない
- 風俗営業をしていない
- 資産管理会社ではない(一部例外あり)
- 従業員が1人以上
②後継者の要件
事業承継税制を利用するためには後継者側にも満たすべき要件があります。
- 先代の事業主からの贈与を受け取る前に会社の代表取締役になっている
- 贈与・相続を受けることで会社の筆頭株主になる
- 贈与:贈与を行う前の3年間
- 相続:①相続から5ヶ月までの間に代表取締役に就任②相続のタイミングで役員
③先代経営者の要件
事業承継税制については先代の経営者が満たさなければならない要件もあるため、先代経営者としては要件を満たしているのか注意が必要です。
先代経営者が満たさなければならない要件は3つあります。
- 会社の代表取締役を経験したことがある
- 贈与や相続を行う直前は会社の筆頭株主だった
- 贈与後は代表取締役に就いていない
事業承継税制の2つのデメリット
事業承継税制は納税が猶予される、条件や場合によっては免除されることもあるという利点からぜひとも活用したいという会社は非常に多く、納税問題に頭を悩ませている事業主にとっては願ってもない制度ではありますが、事業承継税制はデメリットも併せ持っています。
事業承継税制におけるデメリットとして取り上げられるものは
- 制度が複雑
- 猶予が打ち切りになってしまった場合は課税される
①制度が複雑である
事業承継税制は中小企業の納税の問題や課題点を解決すべく2008年に新しく創設されることになった制度ですが、15年近くたった現在においても積極的に活用する人がそれほど多くないという現状があります。
その理由として大きいものが「制度の複雑さ」です。
数百万円、数千万円の納税が猶予、場合によっては免除されるため是非とも活用したいという思いがある一方で、制度が複雑でわかりにくいため手を出せない、利用したいという気持ちにはなれないという人も跡を絶ちません。
クリアしなければならない要件や認定が多く、提供しなければならないものも細かく定められていることから誰でも簡単に手続ができるというものではないのです。
- 都道府県知事による認定を期限までに受けなければならない
- 先代経営者は相続において会社の代表権、承継直前においては議決権の半分以上を持っていること
- 先代経営者は贈与の場合、持っていた会社の代表権を手放し代表の座から退いていること
- 後継者が一定時期代表権を持ち、議決権の過半数を持っている
- 非上場の中小企業かつ総収入金額、従業員数は0ではないこと
- 風俗営業会社や資産管理会社ではない
- 猶予金額に見合うだけの担保の提供
②猶予が打ち切りになると課税される
事業承継税制を活用することによって納税が猶予される、条件を満たす場合には実質的に免除となるメリットが受けられることもありますが、それはあくまで「きちんと提示された要件を満たしている場合に限り」ということです。
万が一要件を満たさない場合や、要件を満たせない場合については納税猶予が打ち切られるばかりではなく、これまで猶予を受けていた分の税金を納めなければならなくなります。
猶予の打ち切りとなってしまう例としては以下のものが挙げられます。
- 承継後5年以内に後継者が代表者ではなくなる
- 後継者が取得した自社株を他人に譲渡する
- 会社が資産管理会社になった
- 会社の解散
- 会社の年間収入がなくなる
- 継続届出書の未提出
事業承継税制のメリット
事業承継税制についてデメリットを挙げてしまいましたが、デメリットばかりではありません。
事業承継税制は開始されてから15年ほどは経過していますが本来「中小企業の助け舟」という形で生まれたものであるため、十分に考えられたメリットは存在します。
事業承継税制を活用することで受けられるメリットとしては「税金の全額免除の可能性がある」という部分が非常に大きいでしょう。
企業にとって資金は命綱とも言えることから、資金繰りは苦労している部分があるでしょう。
事業を後継者に承継するだけで相続や贈与について数百万円から数千万円の納税が必要になってくるということは知って入るものの、納税額の用意は用意ではないと言えます。
株式の評価額は事業に携わっている人が考えている以上に価値が高いものであることが多いことから納税額は必然的に大きくなり、納税するための資金の確保は難しくなってきます。
特に中小企業にとって相続や贈与のために数百万円から数千万円の額を捻出するということは難しいことであるのは想像に難くありません。
事業承継において問題が納税額の多さにとどまるとは限らず、承継する候補となる人が複数いた場合、相続や贈与でのトラブルが起こる可能性も否定できません。
事業承継税制で可能な限り本来納めるべき税金の額を抑えることによってトラブルを回避することにも繋がると言えるでしょう。
まとめ:事業承継税制の活用も検討しよう
事業を後継者に託し自分は経営者としては引退するとなった場合、自分の会社の株式を譲り渡すことによって事業を承継するという方法もあります。
しかし、この方法は後継者の問題、財産権や経営権の問題、財産的な価値についての複雑性や課題があることから嫌厭する事業主もいます。
それに加えて事業を自分の手元から手放し、後継者に託すという手続についても多額の税金がかかることから納税面での不安や心配が跡を絶ちません。
このような中小企業者が多く直面することに成る課題や問題を解決すべく事業承継税制の制度がありますので活用を検討してみてもいいでしょう。
もちろん制度ですので、手続が複雑ということや該当する会社であるかどうかの確認が必要というデメリットも併せ持っています。
一方では税金が猶予される、場合によっては納税の免除が受けられるということで受けられる利点は非常に大きいと言えます。
デメリットも理解しながら、問題解決のため、納税額を抑えるという目的のため事業承継税制の活用を検討してみることをおすすめします。
そして、事業承継税制について納税額の多さから不安が生まれがちですが、法人保険に加入することで、解約返戻金などを活用し納税額や事業承継に必要な費用を長期的な視点で無理なく確保することもできます。
事業承継における金銭面の不安なことや心配事から、念の為に法人保険に加入し資金を準備しておきたいという場合についてはマネーキャリアにご相談下さい。
マネーキャリアでのご相談は予約から実際の相談まで納得できるまで無料、さらにオンライン上で簡単に完結するということから非常に利用しやすくなっております。
事業承継における法人保険の活用や保険を活用した事業承継のための資金準備について相談したいことがある場合は、法人保険についての相談のプロとも言えるマネーキャリアにお任せ下さい。
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