介護保険における都道府県、国、市町村の権限と役割について

介護保険制度において、国は制度の運営方針を決め、都道府県は国の指針に従い市町村を指導援助、市町村は都道府県の指導援助を受け、被保険者を管理し、給付を行う役割を担い、制度が安定化し、被保険者が問題なく介護保険サービスの恩恵を受けられるような仕組みになっています。

都道府県が介護保険に果たす役割

日本には、2000年から介護保険制度が実施されています。

介護保険制度は、公的な制度なので、国、都道府県、市町村の行政・自治体がその運営を担っています。

私たちは、日本という国の、○○県の△△市在住、という区別をしていますよね?

市と町と村では、それぞれ規模も人口も差があり、大きな都市と小さな村では、どうしても差が大きくなってしまいます。

でも実際は都市よりも村の方が高齢化による影響はとても大きかったりして、そんな格差がどうしても生じてしまうのが現状です。

介護保険制度は、いったいどんな仕組みでできていて、国、都道府県、市町村、それぞれにどんな役割が与えられているのか、見ていきましょう。

介護保険の方針を決めているのは国

日本が介護保険制度を施行してから、今年で17年になるのですが、この間、2005年、2011年、2014年、2015年、と何度か制度の改正を行っています。

そのときの日本の経済や高齢化の状況、世界情勢、その他諸々の理由を受けて、計画を立てたり修正したりしています。

来年2018年4月には医療保険と介護保険のダブル改正が行われることになっていますが、そのような改正の際には、保険点数の変更や、加算減算の基準を修正したり新設したり、ルールの見直しが行われているのです。このように、制度の大きな変更や介護保険法等法律の整備を行い、指針を打ち出し、制度の方針を決めているのが、国なのです。

国、都道府県、市区町村がそれぞれの役割を担っている

そんな風に国が立てた大きな道筋を受けて、都道府県は、国の方針に添って問題なく介護保険制度が運営されるように、市町村を指導したり、必要な援助を行う役割を担っています。

市町村は都道府県から指導や援助を受けながら、制度上の保険者として、被保険者(40歳以上の人は2号保険者、65歳以上の人を1号保険者と言います)の要介護・要支援認定等の管理や把握、保険給付を行ったり、サービス事業者の審査や事業計画を立てたり、財政運営をしたり、私たちの生活に密接に関わってくる部分を担っています。


国が介護保険に果たす役割

かつては老人福祉法のもと、措置として介護福祉が提供され、市民は、介護福祉のサービスを自由に選べませんでした。

国は、急速に進む超高齢化を受けて、これはいけないと、2000年に、ドイツの介護保険制度をモデルに、我が国独自の介護保険制度を導入しました。

介護保険を社会保険として確立し、費用も含めて家族の介護負担を減らし、専門のサービス産業として確立させ、医療と介護の役割分担を明確にし、高齢者が尊厳を保持し、自立した生活が送れるように、国民の共同連帯の理念に基いて、介護保険制度は始まりました。

共同連帯の理念は今も変わらないのですが、国が最初に立てた方針は、少しずつ変化してきています。何事も思うように行かないのが世の常ですが、国は、反省も踏まえて、より良い社会の実現を目指し、地域包括支援システムという、地域で高齢者を支えていく仕組みの構築を目指して、改正に取り組んでいるところです。

超高齢化は日本の国としての大きな問題です。それを支える大きな役目を担っている介護保険制度の方針や運営を、より時代に即した物に変化させ、修正や改正を適宜行い、打ち出し、かつ破綻させないように仕組みを検討し、先を見据えて管理していくのも、国の大きな役割なのです。


国が介護保険に果たす4つの役割

国が介護保険において果たしている役割は以下の4つにまとめられます。

①介護に関わる制度の運営に必要な基準などの設定。

②保険者の財源にかかる定率の負担、調整交付金の交付や財政安定化基金への拠出などの財政負担。

③介護サービス基盤の整備。

④介護保険事業の円滑な運営のための市町村・都道府県などに対する助言・監督・指導。

①は、施設や事業者の規程や基準を設けたり、制度を利用できる人(被保険者)の条件を設けること。

②は、介護保険制度の財源は、被保険者から徴収した保険料が50%、残り50%は公費で賄うこととなっていて、その内訳として、国が25%を負担することが決まっているので、その分を負担すること。

あとは、調整交付金とは、市町村の財政格差(大まかには75歳以上の後期高齢者から徴収する保険料の差)を是正したり、災害等で財政格差が生じたときにそれを埋めるための役割がある交付金なのですが、国は給付費等の9%(普通7%と特別2%)を負担する規定になっています。

財政安定化基金とは、保険料が見込みよりも少なかったときに赤字を補填するための資金のことなのですが、その額の3分の1を国が負担する決まりとなっています。

③は、施設の数やどこに何を作るのか、を策定したり、国の指針で決まった、市町村主体で運営する地域密着型サービスの整備にかかる交付金を整備すること。

④は、上位者として、都道府県や市町村に指導等管理をすること、です。

都道府県が介護保険に果たす役割

次に、都道府県は、介護保険法第5条に、「介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように、必要な指導及び援助をしなくてはならない」と謳われているように、実際の保険者である市町村に対して、指導と援助を行うべき立場となっています。

国から出されている指針に則り、保険者である市町村をかかえる都道府県は、ちょうど国と市町村の間にいる、中間管理職のような役割を持っています。

市町村だけでは困難な事例に対しては、市町村を超えて、必要な調整を行うこともあります。

都道府県が介護保険に果たす主な6つの役割

都道府県が介護保険において果たしている役割は、具体的に挙げると以下の6つです。

①要介護認定・要支援認定の支援に関する業務。

②保険者の財源にかかる定率負担、財政安定化基金の畝亥などの財政支援。

③事業者・施設に関する業務

④介護サービス情報の公表に関する業務。

⑤介護支援専門員に関する業務。

⑥介護サービス基盤の整備に関する業務。

①は、要介護・要支援の認定を受ける人たちのために窓口を公表したり、調査員に除法を提供すること。

②は、国は介護保険制度の財源の50%(公費分)のうちの25%を負担する決まりになっていて、都道府県は、残りの25%のうちの12.5%を負担することが決まっています。また、調整交付金では、給付費等の7%を負担と規定されています。財政安定化基金においては、都道府県も赤字の額の3分の1を負担することになっているのです。

③は、施設や事業者の指定を認めたり、守るべき基準を設定したりすること。

④は、被保険者がサービスを利用するのに参考となる情報を広く都道府県全域に公表すること。

⑤は、介護支援専門員の登録や証明書の交付、試験や現任研修や専門研修を実施することで、介護支援専門員の資格の交付や更新を行うこと。

⑥は、市町村の介護保険事業計画を支援する介護保険事業支援計画を策定したり、市町村に助言したり、市町村の介護保険審査会が行った要介護・要支援認定に不服があった場合に介護保険審査会を設置運営することがあります。

市区町村が介護保険に果たす役割

次に、市町村は、介護保険制度上、実際の保険者になるので、私たちの生活により密接な立場にいます。介護保険の実質的な運営を行う役割を負っているので、実に様々な業務があります。

市区町村が介護保険に果たす主な8つの役割

市町村が介護保険制度において果たしている役割は、具体的には以下の8つです。

①被保険者の資格管理に関する業務。

②要介護認定、要支援認定に関する業務。

③保険給付に関する業務。

④サービス事業者に関する業務。

⑤地域支援事業の実施。

⑥地域包括支援センターの設置と運営。

⑦市町村介護保険事業計画の策定を3年ごとに行う。

⑧保険料に関する業務、介護保険の財政運営。

①は、市町村に住む人が介護保険の加入条件を満たすのかの判断や、住所の確認、介護保険料の納付状況等の管理をすること。

②は、被保険者からの申請を受け、実際に要介護・要支援認定を行うこと。

③は、サービスを受ける被保険者に対して、実際の給付を行います。

④は、サービス事業者の指定、監督や報告命令、実地指導、監査、基準の設定を行うこと。

⑤は、要支援状態、もしくは要介護状態になる可能性のある高齢者を対象に、それを予防するためのサービスをしたり、住み慣れた土地で暮らせるように支援すること。

⑥は、今は長寿あんしん相談センターと名前は変わっていますが、市町村をエリアで分け、そのエリアごとに担当を決め、そこに住む高齢者の把握、必要に応じてサービスを組んだり、様子を見に行ったり、管理を行うセンターを設置すること。

⑦は、3年ごとに計画を策定することが義務付けられており、保険者として市町村が今後どのように地域の介護福祉を進めて行くのか、都道府県に、このような計画で介護保険事業を行います、と提示すること。

⑧は、介護保険制度の財源の公費で賄う50%のうちの、国の負担分25%、都道府県の負担分12.5%を引いた、残りの12.5%を負担すること。財政安定化基金においては、国や都道府県同様に3分の1を負担すること、になっています。

まとめ

このように、国の立てた理念に基き、方針が立てられ、私たちの住む都道府県、市町村が、そんな国の作る道筋に従って、実質的な運営をしていく仕組みで成り立っています。

都道府県は、国と市町村の間に立ち、必要な支援を行い、市町村は、実質的な運営をする。

我が国の介護保険制度は、国→都道府県→市町村、と規模がミニマムになるにつれて、私たちの生活に密接に関わっていく役割と構図になっているのです。

国と都道府県、市町村がそれぞれに役割を持ち、責任を持って役割を果たしているから、私たちは安定したサービスを、安心して受けられるのです。

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