事実婚や内縁の妻、遺族年金の受給資格がある?証明方法と手続きは?

事実婚をしている内縁の妻にも、亡くなった夫の遺族年金受給資格はあるのでしょうか。この記事では内縁の妻が遺族年金を受け取るための条件や事実婚を証明するための必要書類などを解説し、様々なケース別の疑問にも答えていきます。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

内縁の妻(事実婚)にも遺族年金受給資格はある

遺族年金制度とは、年金に加入していた方の方が亡くなった場合に、被保険者の収入で生活していた親族に対して保険金が支払われる制度です。


家族は当然受け取れるものの、いわゆる事実婚をした配偶者(「内縁の妻・夫」とも言われる)も遺族年金の受給資格があることを知っていますか?


ただし、内縁の妻・夫が遺族年金を受給するのは、いくつか満たさなければならない条件があるのです。


そこで今回は、

  • 事実婚(内縁の妻・夫)の配偶者が遺族年金を受給するための条件とは?
  • 事実婚であっても受給の対象外となる場合とは?
  • 配偶者との子どもには受給資格はある?
主にこれらの点を取り上げていきます。

最後までお読みいただければ、内縁の妻・夫の関係性にある夫婦が遺族年金の受給に関しての不安を軽減する助けになるでしょう。

ぜひ最後までご覧ください。

受給条件1:生計維持関係を認められる必要がある

これから、事実婚(内縁の妻・夫)の夫婦の片方が亡くなった場合の、遺族年金を受給するための条件について紹介していきます。


まず1つ目は、夫婦が「生計維持関係にある」という点です。


ここで言う「生計維持関係」とはいわゆる「結婚関係」と同義であり、共同生活をしており、両方、またはどちらかの収入により生計が成り立っている状態のことです。


たとえ法的に婚姻関係にない内縁の妻・夫でも、両者が実質上の夫婦関係にあると認められれば、遺族年金を受給することが可能です。


ただし、逆に言えばたとえお互いが「事実婚関係にあると認識」していても、法的に生計維持関係が認められない場合は、配偶者が亡くなっても遺族年金を受給することはできません。



生計維持者関係を認められるための書類と手続き方法

事実婚(内縁の妻・夫)である夫婦が生命維持関係にあると認められるためには、

  • 夫婦それぞれの住民票
  • 源泉徴収書・課税証明書等の所得を証明できる書類
これらの書類が必要となる場合があります。


生命維持関係であるかどうかの判断材料に重要な一つの点が、居住形態です。

これは事実婚の認定そのものとも関係する部分ですが、基本的には亡くなった配偶者と内縁の妻・夫が同居していることや、収入により「生命維持関係にある」と証明できる書類が必要となります。

そもそも事実婚と認定してもらうためにはどのような事柄が必要なのかは、次に紹介します。

受給条件2:事実婚であることを証明する必要がある

事実婚(内縁の妻・夫)の夫婦が遺族年金の受給対象となるためには、お互いが事実婚であることが法的に証明される必要があります。


法的には、事実婚において次のような要件が定められており、

  • 社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意がある
  • 社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在する
これらの要件を満たしている場合のみ、法的に両者が事実婚であるとされます。


あくまで「事実婚」ですから両者が籍を入れているわけではありませんが、

  • 籍を入れたかったが、入れられない正当な理由があった
  • 亡くなった当事者と婚約状態にあった
このような場合でも、事実婚(内縁の妻・夫)と認められる場合があります。

内縁関係を証明するのに使用できる書類と手続き方法

事実婚(内縁の妻・夫)であることを証明するためには、

  • 住民票
  • 健康保険証(契約内容を証明する書類)
  • 収入証明書
  • 民生委員作成の事実婚・内縁関係証明書

これらの書類が必要となる場合があります。


これは生命維持の認定とも被る部分ですが、やはり住民票により「共同生活を送っている」ことが証明される、という点が事実婚の認定に最も重要な部分となります。


また、健康保険等により内縁の配偶者が被扶養者となっている場合も。それを証明できれば事実婚と認められるための大きな証拠となります。


その他、お互いにやりとりしたメールの内容や、第三者の証言等が事実婚を証明する一つの材料になることもあります。


証明材料は一つでも多いほうが良いため、あらかじめ証明となる書類やデータを用意しておくことができます。

遺族年金と事実婚に関するQ&A

ここまで取り上げたように、事実婚(内縁の妻・夫)関係にある夫婦であっても遺族年金の受給対象ですが、いくつかの条件とステップを踏まなければなりません。


そのうえで、いわゆる「例外」についても覚えておく必要があるでしょう。


ではこれから、その遺族年金と事実婚における「例外」に踏み込むQ&Aを紹介していきます。

Q1:相手に配偶者(本妻)がいる場合、内縁の妻も遺族年金をもらえる?

事実婚(内縁の妻・夫)には、両者に配偶者がいない状態と、両者または片方に離婚していない配偶者がいる「重婚的内縁」の場合があります。


では、「重婚的内縁」の場合でも、内縁の妻・夫は遺族年金を受け取ることができるのでしょうか。


ここで重要になるのが、遺族年金における優先順位です。


遺族年金が配偶者に対して支払われるものであれば、事実婚である配偶者に支払われても良いように思えるかもしれませんが、実際に優先されるのは婚姻関係にある配偶者の方です。


ですから、相手に婚姻関係にある配偶者がいる場合は、婚姻関係にある方の配偶者が遺族年金を受け取ることになり、内縁の妻・夫は遺族年金を受け取ることはできません


あくまで夫婦が法的に婚姻関係にないだけで、実質的には「婚姻関係にある」状態であることが、遺族年金受給の条件となるのです。


ただし、婚姻関係にある方の配偶者との関係性がほぼ失われており、籍だけが残っているような状態の場合、内縁の配偶者に遺族年金の受給が稀に認められる場合があります。

Q2:離婚後にも内縁関係がある場合、遺族年金はもらえる?

中には、法的な婚姻関係を解消したとしても、その後実質的な夫婦生活を続ける方もおられます。


では、その状態でどちらかが亡くなった場合、遺族年金はどうなるのでしょうか。


この場合は、法的に婚姻関係を解消していたとしても「事実婚(内縁の妻・夫)」としての関係性が認められる可能性が高いため、遺族年金も受給できるでしょう。


あくまで二人が夫婦関係と認められるかどうかが重要なので、法的に離婚したからといってその権利が失われるわけではありません。


ちなみに、これと全く真逆の場合である「法的な婚姻関係にはあるが完全に別居している」夫婦の場合、生計維持関係が認められず、権利が失権となり遺族年金が受け取れない場合があります。


別居中の遺族年金についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

Q3:内縁の妻と夫の間に生まれた子供にも遺族年金受給資格はある?

遺族年金は、受給対象者は配偶者だけでなく、配偶者の子どもも受給対象となります。


では、重婚的内縁関係でない事実婚関係の夫婦に子どもがいる場合は、その子どもは遺族年金の受給対象となるのでしょうか。


この場合も、やはり「実質の夫婦関係にある」ことが重要となります。


ですから、夫婦に事実婚が認められる場合でも、遺族年金は親を亡くした子どもには受け取る権利があります。


ちなみに、18歳未満の子どもがいる夫婦が対象となるのが「遺族基礎年金」または「遺族厚生年金」であり、主婦・主夫であり子どもがいない場合は死亡一時金寡婦年金(妻のみ)が支給対象となります。

Q4:証明書類などを偽装して遺族年金を不正受給できる?

当然ですが証明書類を偽装して遺族年金を受け取ってはいけません。不正受給は詐欺罪となりますので10年以下の懲役が課せられます。

実際に2014年に宮城県の56歳男性が遺族年金の不正受給がバレて逮捕されました。


また、通報したいと考えている人は証拠を揃えて年金事務所に相談するのが良いでしょう。年金事務所にはデマの通報も多く入るため、匿名で電話通報するよりも直接出向く方が調査の対象になりやすいです。

まとめ:遺族年金は基本的に2つの条件を満たしていれば受給できる

今回は事実婚(内縁の妻・夫)である夫婦の遺族年金の取り扱いに関して紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは、

  • 事実婚の配偶者が遺族年金を受け取るためには、事実婚(生活維持関係)、いわば内縁の妻・夫の関係であることが認められる必要がある
  • 事実婚関係であっても、片方に法的な婚姻関係のある配偶者がいる場合は、基本的に遺族年金の受給は認められない
  • 法的に婚姻関係である夫婦と同様に、事実婚夫婦の子どもにも遺族年金の受給資格がある
以上の点です。

遺族年金は、たとえ事実婚であっても受け取ることができる、という点を知って安心したという方も多いでしょう。

ただし、「事実婚の証明」が必要というハードルがあるため、審査で認可されるためにはある程度の準備が必要だということも覚えておきましょう。

ほけんROOMではこの記事以外にも役に立つ記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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