亡くなった夫の遺族年金、再婚したらどうなる?手続き方法は?

亡くなった夫の遺族年金、妻が再婚した場合はどうなるのでしょうか。子供がいるかどうかや、再婚相手と子供が養子縁組を組むかどうかなどによってもらえる遺族年金は変わってきます。様々なケースに分けてシミュレーションしていきます。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

夫の遺族年金、もし再婚したらどうなる?

夫にもしもの事があったとき、残された遺族にとって経済的な支えとなるのが遺族年金です。


夫の死後、縁があって再婚をすることもあるでしょう。でも、もし再婚したら今までもらえていた遺族年金はどうなるのか気になるところですよね。


実は遺族年金には支給要件があり、それによって再婚後も受給できるかできないかが異なります。


この記事では、再婚後に夫の遺族年金がどうなるのかについて、

  • 再婚後も夫の遺族年金をもらうための条件
  • 再婚する時に必要な提出書類
  • 再婚と遺族年金に関する疑問
  • 再婚のパターン別に考える遺族年金
以上のように解説していきます。


この記事を読んでいただければ、複雑に思われる遺族年金制度について理解が深まり、新しい出発に向けての足掛かりともなるでしょう。


是非最後までお読みください。

夫の遺族年金を再婚後も受け取るための条件

遺族年金とは、年金保険料を納めていた被保険者が亡くなったときに、遺族に対して支給される年金の事です。


大きく分けて2つの種類があり、国民年金を納めていた人は遺族基礎年金、厚生年金を納めていた人は遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金を受け取ることができます。


遺族基礎年金子のいる配偶者、または子が受給できる年金で、支給要件には18歳未満の子供がいる事と、亡くなった被保険者に生計を維持されていたという事実が必要です。

遺族厚生年金が受給できるのは、被保険者に生計維持されていた人のうち、配偶者、子、父母、祖父母の順位で受け取ることができ、こちらは子の有無に影響されません


妻は再婚すると婚姻期間に関わらず遺族年金はもらえません。対して子供はもらえる可能性があります。


以下では、さらに詳しい条件について解説していきます。

1:子供の有無

遺族基礎年金の受給資格には、18歳未満の子供がいることと、故人によって生計を維持されていたことが条件となります。


遺族厚生年金は子供の有無に関わらず、故人と生計をともにしていた人に支給され、子供のいない配偶者でも受け取ることが可能です。


しかし、妻が再婚した場合には、遺族基礎年金、遺族厚生年金ともに元配偶者としての受給資格は無くなり、失権となります。


再婚後、離婚したとしても再び受給する事はできません


遺族年金を受け取る人には優先順位があり、18歳未満の子供がいる配偶者が受給している間は子供は受給停止の状態で、配偶者に受給資格がなくなると次の順位である子供が受給資格を持つことになります。


そのため、元配偶者が失権になると次順位の子供に受給権が移ります。


子供が親の再婚後に遺族年金を受け取るためには次の2、3の事項も確認します。

2:再婚相手と子供が養子縁組するかどうか

妻は再婚すると遺族年金の受給は終了しますが、今度は子供に受給資格が移ります。


基本的には遺族基礎年金、遺族厚生年金の両方とも受け取ることができるのですが、妻の再婚後も母と共に生活し、生計を同一にしている場合は遺族基礎年金はもらえず、遺族厚生年金のみ受け取ることが可能です。


この時、新しい配偶者と養子縁組をする事もありますが、その場合でも遺族厚生年金はそのまま受け取ることができます。


本来は子供が養子縁組をすると遺族年金の受給資格は無くなるのですが、例外として、直系姻族や、直系尊属との養子縁組の時は受給資格はそのまま継続できます。


母の再婚相手である義父や、実の祖父母などとの養子縁組の時であれば受給資格を失う事はありません。

3:再婚した母と子供が生計を同じくするかどうか

上記でも触れましたが、再婚した母と子どもが生計を同じくする場合、つまり、新しい父とも同居して母と生活する場合は遺族基礎年金は受け取ることができず、遺族厚生年金のみを受け取ることになります。


年金は社会保障としての意味合いが強いため、新しい父に生計を維持されるようになると遺族基礎年金は受給が停止するのです。


一方の遺族厚生年金は、母と生計を同じくする場合でも受給できます。


事情によっては母とは暮らすことなく、祖父母に預かってもらう事もあるでしょう。その場合、母の遺族年金は終了になりますが、子供は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取ることができます。


再婚した母と子供が別居していても、生活費を渡しているなど生計を同一にしている場合、遺族基礎年金の支給ができなくなる場合もあります。


遺族年金の支給には「生計が別である」という事実関係が重視されますので、再婚後の生活を考える際は頭にとどめておくとよいでしょう。


別居中の遺族年金についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

再婚にあたっての手続き〜遺族年金失権届けの提出が必要

再婚すると元妻は婚姻期間に関わらず遺族年金の受給資格を失権する事になります。


遺族年金は届け出が必要な事由が発生したときから、遺族基礎年金は14日以内遺族厚生年金は10日以内に「遺族年金失権届」という書類を提出します。


届け出が必要な事由とは次の通りです。

  1. 亡くなったとき
  2. 結婚したとき
  3. 直系尊属または直系姻族以外の方の養子になったとき
  4. 離縁したとき
  5. 障害の状態でなくなったとき
妻が遺族年金を受給している時は、遺族基礎年金と遺族厚生年金ともに1、2、3のいずれかの事由、生計を共にしている子供のすべてについて1~5のいずれかの事由にあたる時は届け出を出す必要があります。


子供が受給している場合は遺族基礎年金、遺族厚生年金ともに1~5のいずれかの事由に該当する時に届け出を出します。


注意する必要があるのは、事実婚や内縁関係の場合にも届け出は必要という事です。


届け出は自身でする必要があるため、婚姻届けを出さない場合は提出する必要がないと思うかもしれませんが、年金は事実関係を重視する制度のため、後日発覚した場合、それまで受給した遺族年金の返還を求められたり、罰金が発生してしまう可能性があります。


故意に隠すようなことはせず、きちんと申告して正しい受給を受けましょう。

遺族年金と再婚に関するQ&A

遺族年金は受給要件などが複雑で、ケースバイケーズで考える必要が出てきます。


基本的に妻は再婚すると遺族年金に関する資格は失権し、元に戻すことはできません。


夫婦の間に18歳未満の子供がいれば、妻が失権した後に子供に支給されるようになりますが、状況によっては支給されないこともあるため、注意が必要です。


亡くなった元夫との関係がどのようなものであったかが大きく関係します。


ここでは妻が再婚した場合に遺族年金がどうなるのか、よくある疑問をもとに考えてみましょう。

Q1:内縁や事実婚をした場合、元夫の遺族年金はどうなる?

遺族年金は再婚をすると妻の受給権は失権します。再婚する事で、新たな夫との関係が成立し、元夫との関係が断たれるからです。


年金制度は社会保障的な側面が強いため、書類上での婚姻にとらわれず、実態に基づいて受給資格の判定がなされます。


そのため、内縁や事実婚をした場合でも、妻は元夫の遺族年金を受給する資格は無くなります。


届け出をしなければそのまま受け取れるだろうという考えはよくありません。


確かに、事実婚の事実がばれなければ、そのまま受給し続けることはできるかもしれませんが、後から不正受給として刑事罰に処せられる可能性もあるのです。


妻の受給資格が無くなっても子供は受給できます。


逆に考えれば、事実婚の夫婦であっても遺族年金をもらう事ができるので、有利に働く場合もあります。

Q2:再婚相手の夫が亡くなった場合でも遺族年金はもらえる?

再婚する事で元夫の遺族年金は受け取ることができなくなりますが、今度は新しい夫との関係が始まるとも言えます。


不幸にも再婚相手が亡くなってしまう事もあるでしょう。このとき、再婚相手と共に生活し、生計を維持されていたという事実があれば、再婚相手の遺族年金を受け取ることは可能で、内縁や事実婚であっても認められます。


この場合は初婚で元夫が亡くなったときと同様に、18歳未満の子供がいたときは遺族基礎年金と遺族厚生年金、子供がいなかったときは遺族厚生年金を受け取ることができます。


子供が18歳を過ぎたらば遺族厚生年金のみの受給が可能です。


再婚した相手と死別ではなく離婚した場合は、元夫の遺族年金をもう一度貰うという事はできませんので、注意が必要です。

Q3:血縁関係のある元妻の子と養子縁組をした今の妻の子、どちらが多くもらえる?

離婚した妻は基本的には遺族年金を受給する事はできませんが、元妻が18歳未満の子供を育てていて、元夫として養育費生活費を渡していた場合は子供に遺族年金の受給資格が認められます。


もし今の妻の子と養子縁組をしていなくて、元妻の子に養育費を払っていたような場合は、元妻の子が遺族厚生年金を受け取ることになるでしょう。


一方、亡くなった夫が養子縁組をした今の妻の子供と生計を同一にしていれば、受給資格は子供ではなく今の妻が得る事になります。


遺族年金には受給資格に優先順位があり、子の有る配偶者が第一順位のため、元妻の子ではなく、今の妻が遺族年金の受給資格を得るのです。


遺族年金の金額は、妻が貰う場合と子供が貰う場合では金額が変わります。


以下は遺族基礎年金を配偶者が貰う場合と子供が貰う場合の例です。支給金額は改定が行われますので、表と異なる場合があります。

子供の数配偶者が貰う金額子供が貰う金額
1人779,300+224,300779,300
2人779,300+224,300×2779,300+224,300
3人779,300+224,300×3+74,800×1779,300+224,300×2

この表をもとに考えると、離婚した元妻の子より、養子縁組した今の妻の方が多い金額を貰う事ができます

再婚のパターン別、遺族年金のシミュレーション

以上では、妻が再婚すると元夫の遺族年金の受給権は無くなる事を説明しました。


その一方で、妻の受給権が停止するとそれまで支給停止状態だった子供の受給権が解除され、子供の遺族年金支給が始まります。


以下では、妻が再婚した後の遺族年金の扱いがどうなるのかをパターン別に、より具体的に説明していきます。


家族の関係にはさまざまな形があります。考えうる状態とその結果を知っておくことで、今後の事を考える道しるべとする事ができるでしょう。

パターン1:子連れで再婚後、再婚相手と子供が養子縁組する場合

妻が再婚すると、妻は遺族年金が受給できなくなります。


子連れで再婚したときは、それまで妻がもらっていた遺族年金は失権し、代わりに今度は子供が受給できる状態になります。


だたし、妻と子供は生計を同一にしていますので、子供が受け取れるのは遺族厚生年金のみです。


遺族基礎年金だけの受給だった時は、再婚後は遺族年金はもらえません。


再婚相手と子どもが養子縁組をしても、遺族厚生年金は受け取ることが可能です。


基本的には養子縁組をすると遺族年金の受給権は無くなるのですが、例外的に直系尊属と直系姻族との養子縁組の時は遺族年金は支給停止とならずに、ぞのまま貰い続ける事ができます。


この場合は直系姻族との養子縁組にあたりますので、妻の再婚後も子供が遺族厚生年金を受け取ることができます。

パターン2:妻が再婚後、子供は祖父母に預ける場合

妻が再婚し、子供は祖父母に預ける場合、妻がそれまでもらっていた遺族年金は受給資格がなくなります。妻の祖父母でも夫の祖父母でも同じです。


パターン1と違うのは、子供が妻と生計を一緒にせず、妻は再婚相手との生計維持関係になり、子供は子供で別の生計になるという事です。


この場合も、再婚した妻ではなく、子供が遺族年金を受給する事になりますが、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給する事ができます。


もし、祖父母の養子になるようなときも、両方の遺族年金を受給可能です。


妻が子供を祖父母に預けた後も養育費などで面倒を見ている場合は、「生計を同じくするその子の母」がいるという関係にあるので、遺族基礎年金の支給は無くなり、遺族厚生年金のみの支給となります。

パターン3:夫が子供を引き取り、再婚後に死亡した場合

離婚後に夫が親権を持って子供を引き取り、その後再婚した場合、養子縁組をしない限りは後妻と子供の間に親子関係はありません。


しかし、夫と後妻と子供が同一生計を営んでいれば、「被保険者(死亡した夫)の子供と生計を同じくする配偶者」という遺族基礎年金の受給要件を満たすため、後妻に遺族年金の受給資格が発生します。


遺族年金の受給資格の優先順位に従い、親子関係はなくとも18歳未満の子供と生計維持関係にある配偶者である後妻が、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取ることになります。


元妻はもちろん遺族年金の受給資格はありませんが、実子である子供も後妻が受給している間は支給停止の状態です。


子供が18歳以上になると後妻は遺族厚生年金のみを受け取ることになります。

まとめ:基本的に再婚すると妻は遺族年金を受け取れなくなるが、子供は引き続き受け取れる

亡くなった夫の遺族年金が、再婚後にどうなるのかについて説明してきましたが、いかがだったでしょうか。


この記事のポイントをまとめると、以下のようになります。

  • 妻は再婚すると遺族年金の受給資格は無くなるが、代わりに18歳未満の子供が受給できるようになる
  • 再婚した母と生計を同一にするときは遺族厚生年金、別生計になる時は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れる
  • 再婚する時は「遺族年金失権届」を忘れずに提出する。遺族基礎年金は14日以内、遺族厚生年金は10日以内が期限
  • 内縁や事実婚でも失権するので届けが必要。不正受給には罰則もある
  • さまざまなパターンがあり、子供と生計維持関係にあったか、養子縁組はしたのかなどによって異なる

遺族年金は複雑に思われて面倒に感じるかもしれませんが、遺族のその後の生活を支えるための大事な資金となります。


状況によって支給されるかどうか異なりますので、自分の場合はどうなるのかという意識を持っているだけで、よりより選択をする指標となるでしょう。


ほけんROOMでは他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、合わせてお読みください。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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