更新日:2020/03/08
共働きの場合の遺族年金は不公平?夫が死亡・妻が死亡の場合
夫や妻が亡くなった時に配偶者や子供がもらえる遺族年金。気になるのが共働きの場合どのくらいもらえるのかだと思います。この記事では夫が死亡した場合と妻が死亡した場合に分けて共働きの家庭で遺族年金がいくらもらえるのかを解説していきます。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 共働きの場合の遺族年金はどうなる?
- 共働きで退職前の夫が亡くなった場合の遺族年金・3つの支給方法とは?
- 夫が亡くなった場合、妻が遺族年金をもらえる条件は?
- 遺族年金支給方法3つ・支給金額の決め方について
- 専業主婦と比べると損?不公平?
- 共働きで退職前の妻が亡くなった場合の遺族年金
- 妻が亡くなった場合、夫が遺族年金をもらえる条件とは?
- 残された夫はいくらもらえる?年収によってどのくらい変わる?
- 共働きのパターン別、遺族年金支給額のシュミレーション3つ
- パターン1:【夫死亡】夫の方が収入が多い場合に子なしの妻45歳がもらえる金額
- パターン2:【夫死亡】妻の方が収入が多い場合に妻35歳と子供5歳がもらえる金額
- パターン3:【妻死亡】夫の方が収入が多い場合に夫50歳と子供15歳がもらえる金額
- パターン4:【妻死亡】妻の方が収入が多い場合に夫58歳がもらえる金額
- 共働き夫婦は専業主婦の家庭より遺族年金がもらえない
目次
共働きの場合の遺族年金はどうなる?
昔とは違い、今は子育てをしながらも働く女性が増えていることから、不慮の出来事を想定して遺族年金について考えるご家庭も多いのではないでしょうか。
夫婦どちらかが亡くなった場合、一気に家計が苦しくなるため遺族年金に頼る人も多いと思います。
しかし、遺族根金は共働きの夫婦の場合、夫が亡くなった場合と妻が亡くなった場合では条件が変わってくるため、ご家庭の状況によっては遺族年金がもらえないこともあります。
そこで、今回は共働きの場合の遺族年金について、
- 共働きで退職前の夫が亡くなった場合の遺族年金の条件・支給方法
- 共働きで退職前の妻が亡くなった場合の遺族年金の条件
- 共働きのパターン別、遺族年金支給額のシミュレーション
共働きで退職前の夫が亡くなった場合の遺族年金・3つの支給方法とは?
まず最初に、共働きで退職前の夫が亡くなった場合は、どのような条件が必要となるのでしょうか。
ここでは、
- 妻が遺族年金をもらえる条件
- 遺族年金の3つの支給方法・支給金額の決め方
- 専業主婦と比べるとどうなるのか
夫が亡くなった場合、妻が遺族年金をもらえる条件は?
遺族年金には、遺族厚生年金と遺族基礎年金の2種類があります。
遺族厚生年金の条件
妻の年齢 | 子供の有無 | 受給期間 |
---|---|---|
30歳未満 | 〇 | 一生涯 |
× | 5年間 | |
30歳以上 | 関係なし | 一生涯 |
遺族厚生年金は、亡くなった人によって生計を維持されていた配偶者(もしくは子供)が条件となります。
また、妻の年齢と子供の有無によって受給期間が変わってきます。ポイントは、30歳未満で子供が居ない場合は受給期間が5年となるということです。
そして、亡くなった人(夫)の年金加入実績に応じた金額が支給されるため、支給額は一定ではありません。
受給者 | 子供あり | 子供なし |
---|---|---|
妻 | 〇 | × |
- 生計が同じであること
- 受け取る人の年収が850万円未満、もしくは、所得が655万円5千円未満であること
遺族年金支給方法3つ・支給金額の決め方について
- 妻の年金のみ
- 妻の老齢厚生年金の半額
- 夫の老齢厚生年金の半額
- 夫の遺族年金のみ
専業主婦と比べると損?不公平?
共働き世帯の年金額と片働き世帯の年金額は、当然共働き世帯のほうが多いですが、夫が亡くなった場合は話が大きく変わってきます。
先に夫が亡くなると、夫の厚生年金の4分の3が遺族厚生年金として受け取れます。
仮に夫の厚生年金が16万円だったとすると、4分の3の金額は12万円です。ここで気を付けなくてはいけないのが、自分の年金にプラスして12万円が受け取れるということではないということ。
遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある共働きの妻は、ご自分の老齢厚生年金をまず受給します。そして、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額が支給停止となってしまうのです。
仮に、妻の老齢厚生年金が10万円だった場合、差額の2万円が遺族厚生年金として受け取れますが、それ以外の金額は支給されません。専業主婦の妻のように、ご自身に厚生年金の加入経験が無ければ遺族年金は12万円全額支給されます。
では、専業主婦と共働きの妻の年金額は同じなのかと言いますと、実は専業主婦よりも損してしまう可能性があります。
- 専業主婦の場合、遺族厚生年金の12万円は非課税
- 共働きの妻の場合、ご自分の老齢厚生年金10万円は課税対象
同じ12万円でも専業主婦は12万円が非課税になりますが、共働きの妻の場合、老齢厚生年金分の10万円が課税対象となり、実際の手取額は少なくなると考えられます。
共働きで退職前の妻が亡くなった場合の遺族年金
近年では、専業主婦ではなく共働きの世帯のほうが増えていると言われています。
そのため、退職前の妻が亡くなる可能性も高くなり、遺族年金はどうなるのかと考える男性も多くいるのではないでしょうか。
ここでは、
- 妻が亡くなった場合の遺族年金をもらえる条件
- 夫はいくらもらえるのか、年収によってどれくらい変わってくるのか
妻が亡くなった場合、夫が遺族年金をもらえる条件とは?
妻が亡くなった場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金がもらえる条件は以下となります。
年金の種類 | 子供あり | 子供なし |
---|---|---|
遺族基礎年金 | 〇 | × |
遺族厚生年金 | 子供が受け取る | 条件次第による |
遺族厚生年金は男女格差があると言われており、また子供が居るか居ないかによっても変わってきます。遺族厚生年金の「条件次第による」とは、夫の年齢が55歳未満になります。
もう少し細かく見ていきましょう。
子なしの新婚世帯、夫が55歳未満
- 遺族基礎年金・なし
- 遺族厚生年金・なし
- 遺族基礎年金・あり
- 遺族厚生年金・子供に支給される(夫には受給資格なし)
- 遺族基礎年金・あり
- 遺族厚生年金・あり
- 妻が亡くなったときに夫が55歳以上であれば、遺族厚生年金を受け取れる
残された夫はいくらもらえる?年収によってどのくらい変わる?
遺族年金の支給対象者は、配偶者の年収が850万円未満(所得が655万円5千円未満)となるため、残された夫や妻の年収がそれ以上だった場合は遺族年金は支給されません。
遺族厚生年金は、妻は年齢要件はありませんが夫の場合は55歳以上という要件があります。ただし、55歳以上であったとしても、実際に受給できるのは60歳になってからです。
夫婦ともに22歳から会社員として働き、ともに現在40歳で8歳の子どもが1人居た場合、夫の年収が400万円・妻の年収が300万円だった場合で例をだしてみましょう。
- 遺族基礎年金・あり
- 遺族厚生年金・子供は18歳になるまで支給されるが、夫は55歳未満のため支給なし
共働きのパターン別、遺族年金支給額のシュミレーション3つ
共働きの場合、遺族年金の支給額には様々な条件があることがわかりました。
ここでは、実際に、
- 【夫死亡】夫の方が収入が多い場合に子なしの妻45歳がもらえる金額
- 【夫死亡】妻の方が収入が多い場合に妻35歳と子供5歳がもらえる金額
- 【妻死亡】夫の方が収入が多い場合に夫50歳と子供15歳がもらえる金額
- 【妻死亡】妻の方が収入が多い場合に夫58歳がもらえる金額
パターン1:【夫死亡】夫の方が収入が多い場合に子なしの妻45歳がもらえる金額
まず、夫のほうが妻よりも収入が多い場合で子供が居ないケースでは、遺族厚生年金と中高齢寡婦加算がなされます。
夫の平均標準報酬月額 | 支給額 |
---|---|
25万円 | 月額約8.2万円 |
35万円 | 月額約9.5万円 |
45万円 | 月額約10.8万円 |
※目安額となります。(実際の支給額を約束するものではありません。)
子供が居ないため、遺族基礎年金は受け取れません。
子供が仮に居たとしても、全員が18歳を超えている場合は子供の居ない妻と同様の扱いとなります。
パターン2:【夫死亡】妻の方が収入が多い場合に妻35歳と子供5歳がもらえる金額
妻の年収が850万円以上で、夫が亡くなった場合は遺族年金を受け取れないことがあります。
遺族年金を受け取ることができる要件にある、亡くなった人によって生計を維持されていた配偶者などの所定の親族に引っかかってしまうからです。
生計を維持されていたとは、原則として生計が同一で年収850万円未満(所得が655万円5千円未満)でなくてはいけないため、収入が多い妻の場合は遺族年金が受け取れなくなるのです。
この場合、
- 遺族基礎年金・なし
- 遺族厚生年金・なし
- 中高齢寡婦加算・なし
パターン3:【妻死亡】夫の方が収入が多い場合に夫50歳と子供15歳がもらえる金額
15歳の子どもが居る家族で、50歳の夫の妻が死亡した場合の遺族基礎年金と遺族厚生年金について見ていきましょう。
まず、妻が自営業者だった場合の、遺族基礎年金は以下のようになります。
- 遺族基礎年金・18歳まで月額約8.3万円
妻の標準報酬月額 | 支給額 |
---|---|
25万円 | 月額約11.7万円 |
35万円 | 月額約13万円 |
45万円 | 月額約14.3万円 |
パターン4:【妻死亡】妻の方が収入が多い場合に夫58歳がもらえる金額
共働きで子なしの場合、妻のほうが収入が多く死亡した場合は、夫は遺族年金の支給要件に当てはまりません。
この場合、遺族年金をもらうことはできません。子供の有無関係なく遺族厚生年金が支給される要件は、夫の年齢が60歳以上に限ります。
共働き夫婦は専業主婦の家庭より遺族年金がもらえない
共働き夫婦の遺族年金の夫と妻が死亡した場合の支給条件や支給額について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事のポイントは、
- 夫が亡くなった場合、妻の年齢や子供の有無により条件が変わる
- 遺族厚生年金は非課税だが、老齢厚生年金10万円は課税対象となるため、専業主婦の家庭のほうが遺族年金の支給額が多くなる
- 妻が亡くなった場合、夫の年齢が55歳未満だと遺族年金は支給されない
- 遺族年金を受け取ることができる要件にある、「生計を維持されていた」とは、原則として生計が同一で年収850未満(所得が655万円5千円未満)である