「がんにはがん保険で備える」がセオリー。医療保険の明確な違いとは

がん保険と医療保険は備える保障が明確に違います。がんへの備えは、医療保険のがん特約でやり過ごそうという方もおられるかもしれませんが、「がんにはがん保険で備える」がセオリーです。本記事では、両者の明確な違いから、選び方のパターンまでを説明しています。

がん保険と医療保険の違い

医療保険には、怪我や病気に対して備える保障と、自由診療にあたるがん治療に対して備える保障があります。

医療保険の場合は、怪我やがんを含む一般の病気に対する保障となっており、幅広い医療事由に対する入院や手術に対して、保障を受けることができます。


一方で、がん保険では、がんに対してのみ手厚く保障されています。

逆に言えば、がんのみに特化しているので、がん以外の保障はされないということになります。


【図解】がん保険と医療保険の保障対象の違い

【図解】がん保険と医療保険の保険対象の違い


お互いの保障の空きを埋めるために、医療保険には「がん特約」であったり、がん保険には「医療保障特約」があったりします。

医療保険とがん保険はどちらが重要なのか

このように考えると、幅広く怪我や病気に対して保障してくれるのでれば、一般の医療保険の方が重要と思われます。

しかしながら、医療技術の発展から、昔とは違い近年では入院期間が短期間の傾向が高くなっており、一般の病気であれば、長期間にわたる入院では少なくなっており、入院保障の重要度が下がってきています。

下記に病院への平均入院日数の推移を表すグラフがあります。


平均入院日数の推移

平均入院日数の推移

(厚生労働省「平成26年患者調査の概況」)

 

しかし、そうした最新の医療利術を持ってしても、長期的な入院や治療を余儀なくされるのが三大疾病にあたる『がん』なのです。


このように、医療保障を備える上で、がんによる保障を軽視できなくなります。だからこそ、現在では、がんのみに対応するがん保険が各保険会社で販売されています。

実際の商品で比較してみる

医療保険とがん保険では、どれくらいの保障内容に違いがあるのでしょうか。

30歳の男性が、同じくらいの保険料で加入した場合の違いを比べてみたいと思います。


医療保険に加入した場合
  • 月々の保険料 3,297円
  • 入院保障1日あたり1万円(60日を限度。但し3大疾病については無制限)
  • 手術保障は種類に応じて5万円から40万円
  • 先進医療の技術料を通算2,000万円まで保障

がん保険に加入した場合
  • 月々の保険料 3,437円
  • がんと診断された時、1回100万円を保障。2年に1回を限度として、回数無制限で保障
  • がんで入院した場合、入院保障1日あたり1万円(支払日数は無制限)
  • がんと診断された場合、以後の保険料支払いは免除
  • がんによる手術保障は、1回20万円(支払い回数無制限)
  • がん治療での通院1日あたり1万円
  • 先進医療の技術料を通算2,000万円まで保障
  • 抗がん剤治療を受けている期間、1ヶ月ごとに10万円を保証(通算60ヶ月まで)

このように見比べてみると、医療保険では、幅広い病気や怪我に対応できるような保障内容になっています。


一方で、がん保険では、医療保険では賄うことができない『がんと診断された時に一時金』として保障があったり、『通院』などの保障を受けることができます。また、『支払い日数が無制限』という点も大きな違いです。

がんとその他の病気・怪我にかかる負担の違い

ここまででは、医療保険とがん保険のどちらを優先的に考えるべきか、どちらが重要なのかはあまりわからないように思います。

ここからは、病気や怪我になった時の負担について、がんとその他で分けて見ていきたいと思います。


負担とは、単純に医療費などの費用負担だけではありません。

この記事では、負担を次の3つでまとめています。

  • 平均治療費用
  • 平均治療期間と心的負担
  • 収入の減少

それでは見ていきましょう。

がんとその他の病気・怪我の平均治療費の違い

厚生労働省の統計表の中に、『医療給付実態調査』というものがあります。

これは保険者、つまり国民保険や健康社会保険(協会けんぽ・共済など)で支払われた医療保険が、1件あたりどれくらいの費用がかかったかを調査しているものです。


加入する保険によって、給付される金額に違いがあるため、ここでは協会けんぽに加入していた場合で見てみたいと思います。


1件あたりの治療費(厚生労働省統計情報)

1件あたりの治療費

参考: http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/14/


社会健康保険からは、7割の負担として上記のよう
に支払われています。

では、実際の3割負担では、どれくらいの金額になるのでしょうか。


  • がん(悪性新生物) 206,812円
  • 糖尿病      156,969円
  • 高血圧性疾患   114,429円
  • 肺炎        94,564円
  • 骨折       204,864円

上記のことから、がんと骨折では20万円以上の負担となっています。


ただし、この金額は保険対象となる治療を行った場合ですので、保険対象外となる場合は負担は含まれていません。

がん治療は保険外診療になる可能性が高い

医療技術の発達に伴い、がんの治療も先進化しています。しかし、国民がそれぞれの方法で加入している健康保険には、保険対象診療には該当し平均して3割負担の実費ですんでいます。

 

しかし、がんの治療には、特定された病院(大学病院など)で受ける最先端医療は、厚生労働大臣が認めた治療方法である『先進医療』と呼ばれており、その治療費は、全額患者が負担することになっています。


先進医療な主な例と治療費、年間実施件数

先進医療技術技術料/1件実施件数
(年間)
高周波切除器での
子宮腺筋症核手術
301,000円145件
陽子線治療2,760,022円2,016件
多焦点眼内レンズでの
水晶体再建術
554,707円11478件
前眼部三次元画像解析3,662円6,739件


さらに、がんへの医療技術は日々進化していることから、まだ国内未承認の抗がん剤治療を行う場合は、『自由診療』と呼ばれ、健康保険には対応されず、こちらも全額実費負担が必要となります。


このように、がんを患った場合の治療においては、健康保険の適用内の診療であれば、高額療養制度による『医療費の実費上限』があるので、治療費にかかる負担額は少なくすみます。


しかし、病状によっては『先進医療』や『自由診療』の治療を避けることができない場合もあり、治療費の全額負担となるケースが多くなっています。


よく間違いされるケースとして、『健康保険の適用となる診療』と『自由診療』を受けた場合、健康保険の適用分は3割負担、自由診療を自己負担と思われがちですが、この場合は、自由診療を受けた時点で健康保険の適用となる診療を含め、全て実費負担となります。下記に図解をまとめておきますので、覚えておいてください。


自由診療の自己負担費

自由診療の自己負担日


がんとその他の病気・怪我の平均治療期間の違い

一言で治療期間と言っても、入院期間や通院期間を含めるので、病状によってその差は異なります。


ここでは、公益財団法人生命保険文化センターで発表されている平成26年の厚生労働省の「患者調査」による、病気や怪我での入院日数の違いについて見てみたいと思います。


主な病気の平均入院日数

主な病気の平均入院日数


こうしてみると、意外にもがんで入院する日数は少なく感じます。その点、高血圧疾患や脳血管疾患は、とても入院日数は長くなっています。


これは、医学の発達と共に、がんの治療に手術が用いられることが多くなり、術後の回復が良ければ、退院が可能になったことによります。


逆に、高血圧疾患や脳血管疾患は、病状が安定するまで入院が必要となる為、完治はしなくとも状態が落ち着けば、退院ができるということになるので、入院が長期的になりやすい傾向にあります。


しかし、がんの場合は、手術で完治というわけではなく、退院後から、通院による治療が始まります。

がん治療は長期化しやすい、転移・再発のリスクも

がんという病気は、『5年生存率』という言葉を良く耳にする程、治療は長期に渡ります。その他の病気や怪我との違いでもあります。


がんを患った場合には、『発症・治療・寛解・完治』の順となり、完治と言われても、その再発性は現代の医学においても高いものとなっています。例え5年間、再発しなかった場合でも、7年経ってから再発や転移が見つかるといったケースは少なくありません。


このように、がん治療には入院だけでなく、退院後の再発防止に対する治療(抗がん剤治療)などを、続けていく必要性があるのです。


「公益社団法人がん研究振興財団」のデータによれば、がんの治療期間は以下のようになっているようです。 


がんの平均治療期間

がんの治療期間


全年齢でのデータであるので、高齢者の死亡事例を加味すると、若い世代では平均の治療期間はもっと長くなる見込みになります。

治療の長期化は収入がなくなることを意味する

がん治療の場合、高額医療による保障がされていても、約8万円ほどの医療費が必要となります。入院期間が1ヶ月なら、貯蓄があればすぐさま生活に支障を及ぼすことはないかもしれません。


しかしがん治療が長引くと、もちろん入院期間は働くことは不可能です。

もしがんに罹るのがした人が一家の大黒柱だったり、独身で自分自身で働くことが必要だったりした場合には、長期間にわたり収入源が途切れてしまうことになります。


厚生労働省の「治療と職業生活の両立等の支援の現状について」によれば、がんと診断されたのち、平均228万円ものの年収分が下がっているのです。


長期間への収入に対する公的保障として、『傷病手当金』を受給ることは可能ですが、自営業者など国民健康保険に加入している場合には、対象外となってしまう為、収入が途切れてしまうリスクが高くなります。


また、傷病手当金にも1年6ヵ月までと期限が設けられていますので、入院や治療・療養が長期となった場合には、就労に伴う収入は途切れてしまうことになります。

がん保険と医療保険の必要な人の特徴

病気に対するリスク感覚を統計から読み解く

公益財団法人生命保険文化センターでは、病気に対する医療保障について、アンケートによる調査を行っています。

その中での『平成28年度生活保障に関する調査』では、自分の医療費は、今後も公的な大部分まかなえると思うかの質問に対し、以下の図のようになりました。

がんに対するリスクに関して


このように、『そうは思わない』という意見である人は、全体の半分となっており、公的部分では医療費をまかなうことができないのではと考えている人が多いことになります。

がん保険と医療保険がそれぞれ守るリスクとは

がん保険が重点を置くリスクは、あくまでもがんになった場合にのみに限られます。

しかしながら、がん保険は、大きな額の治療費が必要となるがん治療と長期間にわたる収入減に備えた保険です。家計に大きなダメージを与えうるリスクを補填します。

一方で、医療保険は、突発的な一時支出ではあるが、家計に大きな影響を与えるような支出はありません。怪我や病気など幅広いリスクに備え、貯蓄を減らさないための保険です。




がん保険と医療保険の相性と選び方のパターン

できれば、幅広いリスクに備えた医療保険とがんになった時の為に備えるがん保険の両方に対する保障を持ちたいという方は、多いと思います。

しかし、どのように加入すれば良いのか悩むケースは少なくありません。医療保険とがん保険の2つに加入して高い保険料を支払っていても、保障が重複しているが為に、保険料が高くなってしまうことがあるのです。


まず、医療保障とがん保障を備える際に、どちらを主とするのかを決める必要があります。


  • 医療保険を主として、がんへの保障を備える
  • がん保険を主として、医療保障を備える

このように、主とする保障内容のパターンで加入することもできますし、それぞれ別物として医療保険とがん保険に加入するといったパターンもあります


では、それぞれのパターンの違いについて、考えてみましょう。

パターン①:医療保険+がん特約

入院保障と手術保障を主とした医療保険に加入し、がんへの備えを特約として付加した場合

怪我や病気による保障(主契約)

  1. 入院保障
  2. 手術保障

がんに対する保障(特約)

  1. がんで入院した時の入院日数無制限保障
  2. 先進医療技術料の実費(通算上限あり)
  3. がんと診断された時の一時金
  4. がんで通院した時の通院保障

パターン②:がん保険+医療特約

がんに対する保障を主として、プラスアルファでがん以外の保障を特約として付加

がんに対する保障(主契約)


  1. がんで入院した時の入院日数無制限保障
  2. がんと診断された時の一時金
  3. 抗がん剤治療給付金
  4. がんで手術した時の保障
  5. 先進医療技術料の実費(通算上限あり)
  6. がんで入院し、退院後の通院保障

怪我や病気による保障(特約)


  1. がん以外の入院保障
  2. がん以外の手術保障
  3. がん以外の先進医療保障(通算上限あり)

パターン③:がん保険+医療保険

1つの保険で加入する方法とは違い、がんに対する保障と怪我や病気に対する保障に対して、それぞれ別の保険に加入した場合

怪我や病気による保障(医療保険)


  1. 入院保障
  2. 手術保障
  3. 先進医療技術費用実費保障(通算上限あり)

がんに対する保障(がん保険)

  1. がんで入院した時の入院日数無制限保障
  2. がんと診断された時の一時金
  3. 抗がん剤治療給付金
  4. がんで手術した時の保障
  5. 先進医療技術料の実費(通算上限あり)
  6. がんで入院し、退院後の通院保障 

まとめると、各パターンの評価は以下の通りです。

パターン①パターン②パターン③
がん入院
がん通院
がん診断
がん手術
がん
先進医療
抗がん剤
治療
×
がん以外
入院
がん以外
手術
保険料やや安い普通高い

医療保険にがん特約や三大疾病特約を付帯できることはよくありますが、がん保険に医療特約を付帯できるプランはそもそも限られていたりします。

「がんにはがん保険」がセオリーだと思いますので、がん保険を優先して考えていくことをお勧めします。


また、パターン③について、医療保険とがん保険の保障が重複しないようには気をつけましょう。

医療保険とがん保険の組み合わせについての記事はこちらを参考にしてください。

まとめ:がん保険と医療保険は大きな違いがある

がん保険と医療保険は、保障の対象が違い、それぞれ何のリスクを補填しているのかが全く違います。

それぞれの保険の違いを良く把握して、加入する保険を選択する必要があります。
がん保険と医療保険の違いは、よく間違いされやすので、注意するようにしてください。 

経済的に余裕がない場合は、治療が長期に渡り、家計に大きな影響を及ぼすため、がん保険への加入をおすすめします。

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