役員賞与を増やして社会保険料を節約!合法的に社会保険料を削減

高い社会保険料をどうにか節約したいと考えている方は役員報酬を下げて「役員賞与」を支給することで社会保険料の節約が可能です。ただし、役員賞与の支給にはいくつかの注意点もあります。今回はその注意点も含めて、社会保険料の節約方法について取り上げます。



▼この記事を読んで欲しい人

  • 支払いすぎていると感じる社会保険料を節約したい方
  • 役員報酬・賞与を変更するメリットや、変更方法が分からない方
  • 社会保険料や税金の節約を意識し始めた方
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内容をまとめると

  • 社会保険料の上限を活用して役員賞与を支給すれば保険料の節約が可能
  • 場合によっては100万円を超える社会保険料節約が可能なこともある
  • 役員賞与の支給にはデメリットもあるため、負担額とのバランスを取る必要がある
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監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

社会保険料とは?


役員報酬にかかる「社会保険」には

  1. 健康保険:医療費の助成
  2. 介護保険:要介護の高齢者を支える
  3. 厚生年金保険:公的年金制度
  4. 雇用保険:失業時に手当を給付
この4種類があります。

「1~3」の保険は役員報酬を受給するなら必ず加入し保険料を支払う必要がありますが、役員の場合「4」の雇用保険は原則対象外です。

また、非常勤役員や報酬がない方も社会保険の対象外となります。

健康保険と介護保険はいわゆる「掛け捨て」保険であり、厚生年金保険料も役員報酬額が一定額を超えると支給されなくなります。

役員賞与にかけられる社会保険料の上限


役員賞与に掛けられる社会保険料の上限(標準賞与額)は、

  • 健康保険料:573万円
  • 厚生年金保険料:150万円
この金額となっています。

健康保険料の「573万円」は年度における累計額であり、「150万円」は1度の賞与における上限額です。

この金額は「上限」なので、超えた分の社会保険料はかかりません

役員賞与を増やして社会保険料の負担額を減らす方法


賞与にかかる社会保険料に「上限がある」というしくみを用いて、本来役員報酬として支給する分を減らし、その分を「役員賞与」として支給することで保険料の節約が可能です。


まず、役員報酬は「給与」、役員賞与はいわゆる「ボーナス」です。


ボーナスが給与と一緒に支給されるのと同じく、役員賞与も

  • ✕ 報酬50万円・賞与100万円
  • ◯ 報酬(+賞与)=150万円

このように役員報酬にプラスされて支給されるお金です。


プラスされるということは、賞与を積んだ分だけ社会保険料における上限を超えやすくなり、上限を「超えた分の保険料はかからない」ため、役員報酬を減らして役員賞与を増やせば、節約できることになります。


実際に計算してみると分かりますが、たとえ総支給額が同じでも全額を役員報酬で支給するよりも、賞与を積むほうが安くなります。

どれくらいの社会保険料の節約効果がある?

役員賞与を支給することで、実際にどれくらいの節約効果があるのかをシミュレーションしてみましょう。


比較する事例は

  • 毎月75万円を「役員報酬」で支給する
  • 毎月10万円を「役員報酬」、780万円を「役員賞与」として支給する
総額はどちらも「900万円」となる、東京都でのケースです。

まず全額役員報酬で支給する場合ですが、

健保(73,800円 ✕12)+厚生年金(118,950円 ✕12)= 2,313,000円

このようになります。

次は役員報酬に役員賞与をプラスする場合ですが、

役員報酬:健保(19,680円 ✕12)+厚生年金(36,600円 ✕12)= 675,360円

役員賞与:健保(563,832円)+厚生年金(274,500円)= 838,332円

合計:675,360円 + 838,332円 = 1,513,692円

このようになり、全額を役員報酬で支給した場合よりも「799,308円」ほど保険料が安くなりました。

役員賞与を増やすことで大幅に保険料を節約できることがお分かりいただけるでしょう。

役員賞与を増額する方法

役員賞与を増額するためには、

  • 株主総会で決議
  • 「事前確定届出給与に関する届出」の提出
この2つのステップを踏んではじめて損金算入ができるようになります。

金額が株主総会で決まるのは役員報酬と同様であり、社長が独断で決められるものではありません。

役員賞与の場合は支給額が高額になると会社の財務状況によっては「支給されすぎ」とみなされ、損金算入が否認される可能性があります。

株主総会で決定された金額と支給日は、必ず「事前確定届出給与に関する届出」書類を事前に税務署へ届け出る必要があり、実際の支給に関してもその届け出た金額や支給日から少しでも変更されてはいけません

役員賞与で社会保険料の負担を減らす方法の注意点


役員賞与を支給することで社会保険料が節約できるロジックについて説明してきましたが、この方法の実践にともなっては、いくつかの注意点もあります。


次からはその注意点について、

  • 二重課税の危険性
  • 役員の生活苦
  • 業績赤字の可能性
  • 退職金の税負担
これらの点を取り上げていきます。

役員賞与を損金算入できなかったら所得税と法人税の二重課税になる

役員賞与の損金算入は、それが明らかに「保険料を安くするため」の施策と判断されれば否認される可能性があり、もし損金算入ができなければ税負担がさらに重くなります。


本来経費として扱いたいはずの役員賞与ですが、たとえ損金算入が否認されても役員の生活がかかっているため「やっぱり役員賞与は支給しない」ということは基本的にあり得ません。


そうなると経費にできず利益として計上される分が増えるため法人税が増え、役員が役員賞与を受け取ることによる所得税もかかり、いわば「二重課税」状態となります。


このように、役員賞与が損金算入ができなかった場合の税負担は、賞与の金額を増額する前よりもリスクが高くなってしまいます。

役員の毎月の生活が窮屈になる

役員賞与を支給することで社会保険料を下げるためには、毎月の役員報酬を下げる必要があるため、役員の生活が困窮するかもしれません。


役員報酬はいわば「給与」であるため、生活できるだけの資金がなければ、毎月支給される金額が減ることでそれだけ生活のやりくりが大変になります。


もちろん一時的に支払われる役員賞与で不足分はカバーされますが、税務署への事前届出義務があるため支給日を前倒ししたり、支給金額をあとから増額するような融通は効かせられない点は注意が必要です。

会社の業績が赤字になる可能性がある

賞与額を増やすことで、会社の業績が一時的にでも赤字になる可能性があります。


もちろん、利益が減れば税負担も減るというロジック自体は間違っていません。


現代でも「あえて赤字にすれば節税できる」という理論を唱えている経営者は少なからずおられます。


しかし経営状況は会社によって異なりますし、そもそも赤字にするということは「業績が悪い」と対外的に見られることにもなるため、赤字決算の影響で銀行から融資を受けられなくなる可能性があります。


また、赤字決算による施策ができるのはあくまで安定的な利益を出し続けられている会社だけです。


利益が安定しておらずそこまで税金も高くない会社が行うとただ無意味に「赤字を出しただけ」となってしまい、ギリギリで経営している会社はその赤字が原因で倒産する可能性もあります。

退職金の損金算入額が減るかもしれない

役員賞与を増やすことで、退職金の損金算入額が減る可能性があります。


まず役員の退職金は基本的に「功績倍率法」という計算方法が用いられ、

  • 最終報酬月額 ✕ 勤続年数 ✕ 功績倍率
上記の計算式で計算します。

一例として、報酬月額が「10万円」の場合と「75万円」の場合を、勤続年数20年・功績倍率を「3」という条件で比較すると、

10万円 ✕ 20年 ✕ 3 = 600万円

75万円 ✕ 20年 ✕ 3 = 4500万円

明らかに「10万円」の方が損金算入できる金額が減ってしまうため、税負担も高くなリます。

社会保険料を削減する必要性


そもそも社会保険料を積極的に削減するべきなのはなぜか、それは「削減しても良いもの」だからといえます。


本来社会保険料は国民の生活を守るためのものであり誰もがその恩恵を受けていますが、大きな利益が出てもそれだけ高い社会保険料を支払わなければならず、いわゆる「手取り」できるお金が大きく減ることになります。


たとえば法人税は20年前と比較すると10%以上下がっていますが、社会保険料は年々増加傾向にあり、現在では厚生年金保険料の料率が18.3%にもなっていますから、健康保険料を含めると給料の約3割が持っていかれることになります。


また「国民年金」に対する信頼性も乏しく、高齢社会の影響で今後さらに負担額が高くなったり、受給できる金額が減額されたりする可能性も否定できません。


ですから可能な限り所得を増やすために、あくまで法律の範囲内、「脱税」のようにならないかたちで、経営者は社会保険料の削減に努めるべきです。


将来性がなく、必ず元本割れすると分かっている「保険」へお金を渋々払い続けるのではなく、無駄を省く方向で考えていく必要があるでしょう。

役員報酬の最低金額はいくら?


役員報酬は差し引かれる社会保険料よりも上回っていないと差し引きが0になってしまうため、11,000~12,000円がおおよその最低金額となります。


役員報酬はゼロにすることも可能であり、それによって社会保険料を節約すること「だけなら」可能です。


では役員報酬をゼロにすれば良いのかというとそうではなく、月額が0の場合はそもそも役員報酬が発生していないことになりますので、社会保険へ加入はできませんが、国民健康保険や国民年金に必ず加入する必要があります。


節税のことだけを考えて役員報酬を0に設定してしまうと、たとえ社会保険料や所得税・住民税がかからなくても、高額な法人税、プラス国民健康保険や国民年金も支払わなければならなりません。


そうなると結局は支払う総額が高くなってしまうので、個人と法人で発生する保険料、税金のバランスを考えて役員報酬の金額を設定する必要があります。

【参考】社会保険料(法定福利費)の仕訳方法


社会保険料を役員報酬から徴収する場合、また納付する場合は「法定福利費」という勘定科目を用いると便利です。


たとえば役員報酬を50万円、社会保険料が5万円である場合、

貸借対照表借方
貸方

役員報酬 500,00普通預金 475,000
預り金 25,000

上のように仕訳し、社会保険料を納付する際は、

貸借対照表
借方貸方

法定福利費 25,000普通預金 50,000

預り金 25,000

このようになります。


役員報酬は給与と同じ扱いであるため、このように会社と役員で保険料を折半するので「預り金」勘定を用いますが、社長自身の役員報酬を支払う場合などは、実質的には折半ではなく全額支払うことになります。

まとめ


今回は役員報酬を増やして社会保険料を節約する方法について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回取り上げたとおり、役員賞与を活用すれば確かに大幅に社会保険料を節約できます。

しかしメリットばかりではなく逆に負担が増えてしまう可能性もあるため、経営状況などを鑑みながら慎重に判断しましょう。

ほけんROOMではこの記事以外にも役に立つ法人保険の記事を多数掲載していますので、ぜひそちらもご覧ください。

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