更新日:2019/10/15
アメリカの年金制度の仕組みとは?OASDIの特徴・年金額から課題まで
OASDIと呼ばれるアメリカのソーシャルセキュリティー(社会保障)。日本と同様年金がいつまで持続する問題です。今回はアメリカの年金制度の仕組みや特徴を日本と比較してご紹介。また、今後の課題や問題点、米国で働いた場合や結婚した場合についてもご説明します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
アメリカの年金制度について仕組みや現状を解説
1930年代の大恐慌で社会保障制度(ソーシャル・セキュリティー)が創設されたアメリカには、OASDI(Old-age, Survivors, and Disability Insurance)という、日本でいう公的年金にあたる年金制度があります。
ただ、2010年以来、支出が収入を上回る状態にあり、アメリカでも年金問題が悪化しています。
そこで今回は、アメリカ年金制度について仕組みや現状、特徴 ・年金制度の問題点と課題について詳しく解説していきます。
他にも、アメリカで働いていた場合やアメリカ人と結婚した場合の年金受け取り方法などについてもご説明しますので、是非最後まで読んで参考にしてみてください。
アメリカの年金制度の特徴は?クレジットとは?
アメリカの年金制度、通称は様々な点で日本と異なります。
近年は仕事や国際結婚によってアメリカで生活して現地の年金制度に加入する人も増えていますが、老後に備えてその仕組みを理解しておくことが大切です。そこで以下ではアメリカの年金制度である「OASDI」について解説していきます。
アメリカの年金制度加入者にとっては老後の生活に関わる大切な知識です。日本の制度とも比較しつつ、国ごとに違う年金制度への理解を深めていきましょう。
アメリカの年金制度「OASDI」について
アメリカの年金の受給額はいくら?
アメリカの年金制度では65歳から老齢年金を受け取れます。日本の年金制度と同じように受給開始年齢を繰上げ又は繰下げることも可能です。受給開始年齢を変更した場合は繰上げ・繰下げをした期間に応じて年金額が増額・減額されますが、繰り上げ申請ができるのは月の就労時間が45時間以上でないことが条件です。
アメリカでの年金の受給額は厳密な計算式は複雑ですが、35年間の平均年収から計算されることになります。2018年では2,788ドルでしたが、最高額(上限額)の金額から、無収入期間等を差し引く形式になります。
在米期間中の収入額に取得クレジット単位数を掛けて35年で割る計算方法などが考えられますが、あくまで概算額であり精緻な数字の計算は難しいと言えます。そもそも取得クレジット単位数が在勤期間と一致しないケースもあるので確認が必要であり、在勤手当など収入に何を含めて計算すべきかも注意が必要です。
支給額は人によって異なり、平均でいくら貰えるか目安がある訳でもありません。正確な支給額を知りたい場合は日本年金機構に照会するようにしましょう。そうすればアメリカの担当機関に取り次いでくれます。
なおアメリカの年金は制度改正に伴い、老齢年金の受給開始年齢が段階的に67歳に引き上げられています。その他にも段階的に制度が変更されている点があるので注意が必要です。
何歳から受給できるかは生年月日によって異なりますが、日本年金機構HPにも掲載されているので確認してみると良いでしょう。
アメリカの年金制度の問題点や課題
アメリカの年金制度は2034年に破綻する?運用の現状について
アメリカの年金制度は、加入者からの保険料収入や積み立てた年金基金の運用益などを主な収入源とし、それを財源として高齢者世代に年金を支給しています。
日本の国民年金のように多額の国庫負担が投入されている訳ではなく、現役世代からの保険料収入と高齢世代への年金給付のバランスが重要になります。
そしてこの収支の関係が逆転したのが2010年です。
それまでは収入の方が多く年金基金も着実に増えていたものの、2010年を境に積立金の運用益を除いた収入だけでは支出を賄うことができなくなりました。
年金基金を取り崩さないと現在の給付水準を維持することはできない状況で、OASDIを管理する信託理事会の報告では2034年には基金が枯渇する見通しです。(出典:厚生労働省)
そのため今後は給付水準の引き下げなど、何らかの制度改正が行われる可能性が高いと言えます。
アメリカの年金制度の加入者は、現在の年金制度の仕組みを理解するだけでなく、今後の制度改革なども含めて最新の情報を確認することが大切です。日本の制度とも比較して状況を把握出来るとさらに良いですね。
アメリカの年金を受給する方:受給条件や方法とは?
アメリカで就労して老後にアメリカの年金を受け取るには40クレジット(10年間に相当)が必要です。
一方で国際結婚をしてアメリカの年金制度加入者の配偶者になる場合は、「退職年金受給者の配偶者で65歳以上」の条件を満たせば家族年金を受給できます。自身がアメリカに住んでいなくても受給が可能です。そして駐在員としてアメリカに短期間赴任した場合のように、加入期間が10年未満のことも多いはずです。
しかし日米社会保障協定が適用されるので、「日米通算で10年以上の年金加入期間があり、6クレジット以上を取得」すればアメリカの年金をもらえます。
なおアメリカの年金を申請したい場合は、まずは日本年金機構への問い合わせが必要です。そうすればアメリカの担当機関に取り次いでくれます。
日本の年金とアメリカの年金の両方をもらうことは可能?
日本の年金とアメリカの年金の両方をもらうことは可能です。ただし併給されるケースでもアメリカの年金が減額される場合があります。
併給申請した場合に日本の年金額は影響を受けませんが、アメリカの年金制度ではWindfall Elimination Provision(棚ぼた防止規定)という規定があるからです。
これは本来はアメリカで働く公務員などが優遇されるのを防止するための規則ですが、規定の仕組み上アメリカ以外の公的年金を受け取った場合には、米国人・外国人問わずアメリカの年金が減額されます。
日本で受け取っている年金の種類によっても減額対象になるかどうかが変わるため、詳しくは日本年金機構やアメリカの担当行政機関への確認が必要です。
まとめ:アメリカの年金制度の仕組みと特徴
「アメリカの年金制度の仕組み」について日本との比較を通して説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
この記事のポイントは
- アメリカの年金制度「OASDI」から年金を貰うには40クレジット以上の加入期間が条件
- 日本だけでなくアメリカでも年金財政の問題が起きている
- アメリカの年金の平均的な支給額などの目安がある訳ではないので個別の確認が必要
- 日本の年金とアメリカの年金を両方もらうことはできるが減額される場合がある
でした。
10年間の加入期間が必要な点や老齢給付・障害給付・遺族給付が支給される点など、日本の制度と比較しても似ている点が多いのがアメリカの年金制度です。
仕事で現地に赴任した場合には日本とアメリカの年金制度の加入期間が合計で10年以上且つ6クレジット以上あれば受給でき、国際結婚をした場合には家族年金を受け取れる場合もあります。
ただしアメリカ人でも外国人でも適用される棚ぼた防止規定があるため、日本の年金とアメリカの年金を両方もらう場合にはアメリカの年金額が減額されるケースがあり注意が必要です。
今回紹介した知識は、アメリカの年金制度加入者にとって役立つことはもちろんのこと、日本の年金制度を考える上でも様々な気付きを与えてくれるものです。
老後の生活に関わる年金制度について考える上で、今後も是非活用していって下さい。