更新日:2019/12/10
国民年金の保険料は本当に払わないといけない?払わないとどうなる?
国民年金の保険料を払わないと、どんなデメリットがあり、どんなことが起きるのか知っていますか。また本当に払えない場合の対策はあるのでしょうか。国民年金の保険料の払わないことにより生じるデメリットや強制徴収の仕組みや払えない場合の対処法について解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 国民年金は義務!しかし、国民年金を払わないとどうなる?
- 国民年金を払わない場合に生じるデメリット
- 老齢年金を受け取れない
- 遺族年金・障害年金も受け取れない
- 財産を差し押さえられる
- 家族の財産を差し押さえられる
- 国民年金を払わないで、滞納・未納状態が続くとどうなるか
- 催告状が送られてくる
- 最終催告状が送られてくる
- 督促状が送られてくる
- 差し押さえの予告通知がくる
- 差し押さえなど、強制徴収される
- 参考:年間300万の収入で7ヶ月以上未納の場合、強制徴収の対象となる
- 国民年金を払えないという場合は、免除や猶予の申請をしよう
- 免除や猶予には条件がある(「払いたくない」は通用しない)
- 免除や猶予の期間も10年の受給資格期間に含まれる
- 免除や猶予で支払っていなくても、半額を受け取れる
- 後から追納できる
- 免除や猶予の申請方法について
- 2018年9月30日までは未納分を5年間遡って後納できる(通常は2年間)
- まとめ
目次
国民年金は義務!しかし、国民年金を払わないとどうなる?
年金財源の枯渇がニュースで飛び交う中、将来自分が受け取れる年金について不安視される方も多いと思います。
「会社に勤めていたときは、強制的に厚生年金の保険料を天引きされていたけれど、会社を辞めてフリーになってからは、国民年金の保険料を払う余裕もないし、できれば払いたくない……」と、思っている方も中にはいらっしゃるでしょう。
しかし、日本に住む20歳以上60歳未満の全ての人が、国民年金に加入することを法律で義務付けられていて、当然保険料も払わなくてはなりません。
しかも、もし国民年金を払わないままでいると、自分だけでなく家族の財産も差し押さえされるかもしれないのです。
そこで、この記事では「国民年金の保険料を払いたくないと思っている人へぜひ読んでほしい情報」として
- 保険料を払わない場合のデメリット
- 保険料滞納者への強制徴収
- 保険料を払えない場合の対処方法
以上3点を中心に解説していきます。
この記事を読んでいただければ、保険料の支払いに消極的な場合や、実際に困っている場合にも役立つかと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
国民年金を払わない場合に生じるデメリット
国民年金はそもそも「支払いたくないから支払わない」という選択ができない制度です。
この制度は、現役世代が収めた保険料によって、今の高齢者の年金が支払われ、今の現役世代が高齢者になったときは、子供世代が収めた保険料が年金の支払いに充てられるという、「世代間扶養」の考えに基づいて運営されている公的な制度なのです。
このような助け合い制度で運営されているということを念頭に置きながら、国民年金の保険料を支払わない場合に考えられるデメリットについて見ていきましょう。
老齢年金を受け取れない
国民年金は20歳から40歳まで、最低10年間の加入期間がないと、65歳からの老齢年金を受け取ることができません。
仮に10年間の加入期間で保険料を納付していたとしても、受け取れる金額は、40年間加入した人の満額の年金(年額約78万円)の4分の1です。
現在、国民年金の保険料は1か月あたり 16,340円ですので、40年間納付すると約784万円支払うことになりますが、65歳から満額の年金を受け取るとすれば、10年ほどで元は取れます。
長生きすればするほど国民年金を多く受給できるため、保険料を支払わないことでのデメリットは大きいです。
遺族年金・障害年金も受け取れない
国民年金の保険料を払わないでいると、突然、病気やケガなどで障害が残ってしまった場合に受け取れるはずの障害年金が受け取れなくなります。
また、家族を養っている一家の大黒柱が亡くなった場合には、遺族に支払われるべき遺族年金が支払われなくなります。
国民年金というと、将来受け取る老齢年金の損得を考えてしまうという人が大半かと思いますが、実は国民年金の給付は「老齢・障害・遺族」の3種類あり、現役世代の人たちにとっても大切な制度なのです。
遺族年金や障害年金を受け取る資格条件は具体的に、
- 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
- 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
と、定められていますが、老齢年金と違って、いつ起こるかわからないものです。
いつでも年金を受け取れるために、保険料を払っておく方がよいことがわかりますね。
財産を差し押さえられる
国民年金法の第96条(督促及び滞納処分)第4項に、督促を受けた滞納者が保険料を期日までに支払わない場合は「国税滞納処分の例によって処分」できる旨が書かれてあります。
保険料は国税とは違いますが、国税徴収法の規定が準用され、財産の差し押さえが可能ということがわかります。
家族の財産を差し押さえられる
同様に、国民年金法の第88条(保険料の納付義務)では
- 被保険者は、保険料を納付しなければならない。
- 世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う。
- 配偶者の一方は、被保険者たる他方の保険料を連帯して納付する義務を負う。
として、家族が納付義務を負うことを明記していますので、最終的には家族の財産まで差し押さえられることになります。
国民年金を払わないで、滞納・未納状態が続くとどうなるか
ここまで、国民年金の保険料を払わない場合のデメリットをお伝えしてきましたが、法律の話が絡むと、事が大きくなっている気がしますね。
ではここからは、国民年金の保険料を払わないで、滞納や未納の状態が続くとどうなるのか、一般的な流れをお伝えします。
催告状が送られてくる
未納期間が数カ月続くと、まずはハガキなどの文書で催告状が送られます。
この時点ですぐに納付すれば問題ありませんが、しばらく放置してしまうと、次は電話や戸別訪問によって納付催告されます。
催告状の中でも「特別催告状」が送られると、将来差し押さえもあるという予告になりますので、少なくともこの時点で手を打っておく方がよさそうです。
厚生労働省の資料によると、平成28年度の納付督励件数は8,761万件となっています。
最終催告状が送られてくる
何回かの催告があるにもかかわらず、引き続き保険料を払わないでいると、「国民年金未納保険料納付勧奨通知書(最終催告状)」が送られてきます。
この最終催告状が送られてくると、そろそろ差し押さえが始まってしまう、というところまできています。
厚生労働省の資料によると、平成28年度の最終催告件数は85,342件となっています。
督促状が送られてくる
最終催告状を送付後、指定期限までに納付がなかった場合は、督促状が送られてきます。
ここでも指定期限が記載されていますが、この期限日までに保険料の納付がなかった場合は、いよいよ延滞処分が開始され延滞金を支払わなければなりません。
また、国民年金の保険料は最終的に家族が納付義務を負うことになっていましたが、その家族へも通告され、収入や財産などについて調査をされることになります。
厚生労働省の資料によると、平成28年度の督促件数は50,423件となっています。
差し押さえの予告通知がくる
督促状が送られた後も、支払いがない場合は、「差押予告通知書」が送られてきます。
この通知は「あなたの財産滞納処分に着手することになりました」というもので、これが送られてくると、事前予告なく財産の差し押さえが始まります。
差し押さえなど、強制徴収される
差し押さえの予告通知が送られると、差し押さえが実行され、延滞料を含む国民年金の保険料が、強制徴収されます。
差し押さえの対象は、銀行の預金や給与、売掛金、生命保険の解約金、自動車、貴金属などです。
厚生労働省の資料によると、平成28年度の差し押さえ件数は13,962件となっており、悪質と判断された滞納者については、国税庁が直接徴収に入ります。
国税庁に委任された件数は35件となっています。
参考:年間300万の収入で7ヶ月以上未納の場合、強制徴収の対象となる
強制徴収とは最終催告状や督促状を出して、財産を差し押さえるということでしたが、この強制徴収の対象者は、年々拡大されています。
低所得者を除くすべての滞納者への督促を目標とされていますが、平成30年度は「年間所得300万以上で未納月数7ヶ月以上」のおよそ37万人への強制徴収を目指しているようです。
また強制徴収というと悪いイメージしかないですが、口座振替を促進したり、年金教育を普及させたりと、年金機構の管理体制を強化しつつ、未納者への理解を図る取り組みも行われています。
国民年金を払えないという場合は、免除や猶予の申請をしよう
国民年金を払わないと、大変なことになりそうだ……ということがご理解いただけたと思いますが、中には経済的に「本当に支払う余力がない」という方もいると思います。
そんなときに知っておいてほしい制度が保険料の免除・猶予の制度です。
必ず申請をしなければいけませんが、申請が通れば保険料を全額もしくは一部免除されたり、猶予されますので、経済的負担が軽減されます。
免除や猶予には条件がある(「払いたくない」は通用しない)
免除や猶予の申請ができるといっても、申請すれば誰でも通るわけではありません。
「払いたくない」のではなく、本当に「払えない」人のための制度ですから、条件がいくつか決まっています。
具体的にどういった人が申請できるのか、見ていきましょう。
1.学生
20歳になると国民年金に加入しますが、大学など就学中で所得がない場合は、「学生納付特例制度」を利用できます。
ただし、この期間は年金を受け取れる期間として計算されますが、年金額には反映されないため、将来満額の年金をもらいたい場合は、就職後などに支払う必要があります。
2.学生以外の低所得者
前年の所得に応じて、保険料が全額免除や一部免除になる制度があります。
一部免除とは、保険料のうち、1/4・半額・3/4を納付する制度で、それぞれ4分の3免除・半額免除・4分の1免除といわれます。
所得の基準は、扶養者が何人いるかによって変わりますが、次のように定められています。
前年の所得が以下の計算の範囲内で申請可能 | |
---|---|
全額免除 納付猶予 | (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 |
4分の3免除 (1/4納付) | 78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
半額免除 (半額納付) | 118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
4分の1免除 (3/4納付) | 158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
ここで表記されている金額は「所得」になるため、アルバイトをして給与収入を得ている独身者は、年収が122万円以下であれば、国民年金の保険料を払わなくてもよいことになります。
また、平成37年6月までは「若年者納付猶予制度」といって、30歳未満の低所得者について、保険料が猶予される制度もあります。
こちらは「学生納付特例制度」同様、この期間は年金を受け取れる期間として計算されますが、年金額には反映されません。
3.配偶者から暴力(DV)をうけた人
免除申請をする際、通常配偶者の所得も審査基準となりますが、配偶者からDVを受けて別居している人については、特例で、本人の前年所得が基準以下であれば、免除申請できます。
4.失業者
会社の倒産など、失業者についても申請することで、保険料が免除となったり猶予されたりする場合があります。
この場合は前年の所得基準をオーバーしていても申請できますので、雇用保険に入っていた人は雇用保険受給資格者証の写しまたは雇用保険被保険者離職票等の写しを、雇用保険に入っていなかった人は失業を証明できるものを準備しましょう。
免除や猶予の期間も10年の受給資格期間に含まれる
国民年金に加入しても、将来老齢基礎年金を受給するためには、最低10年の受給資格期間が必要です。
免除や猶予の期間も、この貴重な受給資格期間に含まれますので、条件に当てはまる人は、免除や猶予の申請をしましょう。
また、免除や猶予の制度を利用することで、万が一の事故で障害が残ってしまったときにも、障害基礎年金の受給資格を確保することができます。
免除や猶予で支払っていなくても、半額を受け取れる
国民年金の老齢基礎年金は、その財源について、保険料だけなく国庫負担といって税金が充てられています。
そのため、免除申請をした期間についても、その国庫負担分を加味した年金額が受け取れます。
平成21年4月から国庫負担は2分の1のため、簡単にいうと、平成21年4月から60歳まで全額免除申請をしていれば、年金の半額は受け取れるということになります。
また平成21年3月までは国庫負担が3分の1でしたので、それまでに免除全額免除申請をしていた人は、その期間までは3分の1の年金が受け取れます。
免除申請した場合の年金額への反映率は次のとおりです。
全額免除 | 4分の3免除 (1/4納付) | 半額免除 (半額納付) | 4分の1免除 (3/4納付) | |
---|---|---|---|---|
~H21年3月 | 1/3 | 1/2 | 3/2 | 5/6 |
H21年4月~ | 1/2 | 5/8 | 6/8 | 7/8 |
後から追納できる
保険料の免除などを受けた場合、いくらか年金額に反映されるといっても、全額を納めていた人に比べると、もらえる年金は少なくなります。
そこで、免除期間については、10年前まで遡って納付(追納)することができます。
ただし、申請を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降は、当時の保険料に一定の金額が加算されます。
免除や猶予の申請方法について
住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口や、年金事務所に必要書類を提出、または郵送します。
提出書類について
- 学生は「国民年金保険料学生納付特例申請書」に国民年金手帳と学生証コピーを添付します。
- それ以外の申請者は「国民年金保険料免除 ・ 納付猶予申請書」をに国民年金手帳を添付し、失業者については失業を証明する書類をさらに添付します。
申請書は市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口や、年金事務所に備えられていますが、ホームページから取得することもできます。
2018年9月30日までは未納分を5年間遡って後納できる(通常は2年間)
年金保険料の納付期限は、当月分について翌月末日までとなっており、2年間を過ぎると、遡って支払うことができません。
しかし、年金事業運営改善法の「後納制度」によって、すでに未納となってしまった過去5年間の保険料を支払うことができます。
この制度は平成30年9月30日までの時限措置のため、未納保険料がある人は、忘れずにこの制度を活用しましょう。
まとめ
国民年金の保険料を「払わない」場合、「払えない」場合の両方について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回のこの記事のポイントは、
- 国民年金は保険料を「払わない」という選択ができない。
- 国民年金の保険料を払わないと、老齢年金だけでなく障害や遺族年金ももらえず、財産差し押さえなどのデメリットがある。
- 国民年金の保険料を「払えない」ときは免除・猶予の申請をする。
でした。
年金未納になると、自分だけではなく、家族に迷惑をかけてしまうこともわかりましたね。
免除などの申請をすることで、保険料をすべて払わないでも、将来の年金を増やすことができます。
なんとなく諦めたり開き直ったり、後回しになりがちな国民年金の手続きですが、心あたりのある方は、この機会にぜひ確かめてみてください。
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