更新日:2018/01/19
5年ごとに行われる介護保険法の改正。気になる平成30年の改正内容は?
5年ごとに行われている介護保険法の改正。日常生活に大きな影響を及ぼすため、介護保険法の改正内容をよく理解しておく必要があります。平成17年と平成23年の改正内容も振り返りつつ、平成30年に行われた新たな改正内容を抑えましょう。
目次を使って気になるところから読みましょう!
介護保険法改正に関する情報まとめ
介護保険法とは、高齢者が介護が必要な状態となった際に、個々に必要な介護サービスを受けることのできる制度です。
現在、日本は高齢化が深刻な問題となっていますが、介護度の高い高齢者や認知症高齢者の増加、介護の長期化による介護に対する援助の必要性が増大しています。
1985年では10.3%であった高齢化率は、2005年には20.2%、2015年では26.7%まで上昇しました。
介護保険法は高齢化に伴い介護を必要とする高齢者が増加したことから、1997年に「介護保険法」が制定され、2000年に施行された制度です。
この介護保険法は、施行から5年後を目途に必要な改正を行うとされていました。
これまでの介護保険法の改正
また、平成30年の介護保険法改正では、どのような改正内容となったのかという点についてもまとめましたので、参考にしてください。
介護保険法改正は、介護保険サービスを利用している方にとって、改正されたことで利用しやすくなる内容となる場合もあれば、利用しにくいものに感じる場合もあります。
日常生活にとても大きな影響があることでもあるので、改正内容をよく理解しておく必要があります。
平成17年(2005年)の介護保険法の改正内容
予防重視型システムへの転換とは、介護認定に該当しない自立レベルの高齢者や要支援1・2の高齢者が、出来る限り身体機能を維持し、介護を要する状態とならないようにすることを目的としたシステムです。
それまで介護サービスを利用することを要介護者と同様に「介護給付」としていたのですが、要支援者への給付を「予防給付」として新たに創設しました。
施設給付の見直しでは、介護保険施設等に入所・ショートステイした場合の食費や居住費を、保険給付の対象外にしました。
そのため、食費や居住費は原則全額自己負担となりました。
しかし、低所得の利用者への費用負担を考慮し、補足給付を設けました。
詳しくは、所得に応じて利用者負担段階が定められており、その利用者負担段階に応じた食費等の費用負担額が設けられています。
平成23年(2011年)の介護保険法の改正内容
介護保険法施行後も高齢化率は上昇の一途をたどり、重度の要介護者や医療依存度の高い高齢者が増加しました。
また、高齢者単身世帯や高齢者のみ世帯の増加に伴う介護力の低下への対応も課題となったことが背景としてありました。
そのため、医療と介護の連携の強化では、定期巡回・随時対応型訪問介護看護等といったサービスが出来たことにより、単身世帯や高齢者のみの世帯であっても安心して在宅生活を送りやすくなりました。
また、複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)を創設したことにより、在宅への「訪問」施設への「通い」「宿泊」を利用者やその介護者の能力に応じて頻度を組み合わせることが行いやすくなりました。
介護人材の確保とサービスの質の向上では、正看護師や准看護師による喀痰吸引等研修等の研修を受講した場合、その研修内容に応じて介護職員であっても痰の吸引等の実施をすることが可能となりました。
高齢者の住まいの整備としては、サービス付き高齢者向け住宅の供給を促進しました。
サービス付き高齢者向け住宅とは、入居している高齢者の「安否確認」や生活に関する不安に対して「生活相談」のサービスを提供する施設です。
また、有料老人ホーム等における前払金の返還に関する利用者保護規定を追加しました。
これにより、90日以内の契約解除の場合には入居一時金の返還が義務付けらました。
認知症対策の推進では、市区町村における地域の実情に応じた認知症支援策を盛り込むこととなりました。
認知症の正しい知識を有することを目的とした認知症サポーター養成講座の充実化により、認知症サポーターの数は年々増加しており、各地域に在住している認知症高齢者への見守り強化に繋がっています。
また、市民後見人の育成も実施するようになりました。
市町村(保険者)による主体的な取り組みの推進では、地域密着型サービスについて、公募・選考による指定を可能となりました。
地域密着型サービスとは、要支援・要介護状態となってもできる限り住み慣れた地域での生活が継続できる事を目的とした地域で行うサービスのことです。
そのため、その市区町村の住民しか利用することはできません。
その市区町村によって提供しているサービスが異なりますが、一例を挙げると「小規模多機能型居宅介護」「認知症対応型通所介護」「夜間対応型訪問介護」等があります。
介護保険法改正の経緯と日本の財政状況
介護保険制度の財源は、50%が税金、50%が保険料でまかなわれていますが、税金は国だけが負担しているのではなく、国が25%、都道府県が12.5%、市区町村が12.5%の割合で負担しています。
この財源の中から、介護サービス事業所にサービス利用料の8~9割の費用が支払われているのです。
高齢化や認知症高齢者の増加等により、介護保険を利用する高齢者数も増加しています。
今後も高齢化の進行とともに、保険財政は拡大し続けるという課題を抱えています。
少子化の問題も合わさり、財政状況は厳しくなっています。
平成30年(2018年)の介護保険法改正のポイント
それを踏まえ、平成30年の介護保険法改正ではどのような改正内容となったのかを詳しく見ていきましょう。
自己負担額が一部3割負担になる
ただし、月額44,000円の負担上限が設定されています。
また、所得が280万円以上の利用者は自己負担割合2割、280万円未満の利用者は1割負担です。
介護保険制度施行から15年間は原則自己負担割合は1割でしたが、平成26年に一定以上の所得のある利用者の自己負担割合が2割となりました。
そして今回の改正で、更に引き上げとなったのです。
福祉用具貸与価格の見直し
今回の改正により、国が商品ごとに全国平均の貸与価格を公表することになり、福祉用具を貸与するときには、全国平均貸与価格と業者の設定価格の両方を提示して利用者に説明することが義務付けられました。
また、福祉用具ごとに貸与価格の上限が設定されることとなりました。
新しい介護保険施設「介護医療院」の創設
これは、従来の介護保険施設の一つであった介護療養型医療施設(療養病床)が廃止されることとなったことから対応策として考えられたものです。
療養病床は、介護度の高い高齢者向けの介護施設で、医療依存度の高い方でも医師や看護師が在籍しているため、安心して入所することのできる施設です。
介護医療院は療養病床と同様に、長期にわたり療養することが可能であり、医療と介護を受けることのできる施設です。
今後も、要介護者の増加に伴い、医療依存度の高い高齢者が増えることが見込まれており、介護医療院の需要は高まると言えます。
新たに「共生型サービス」を位置づけ
これまでは、介護保険法によるサービスは原則65歳以上の高齢者が対象とされており、若年者が福祉サービスを受ける場合は障害者福祉サービスを利用する必要がありました。
長期間障害者福祉サービスを受けて生活を営んでいた方であっても、65歳を迎えると介護保険法によるサービスが優先されるため、事業所を変えなければいけませんでした。
しかし、共生型サービスが導入されることで、このような不便さを解消することができます。
現在、対象とされるサービスは「訪問介護」「デイサービス」「ショートステイ」などです
まとめ
介護保険法の改正は、利用者が長く介護保険法によるサービスを利用することができるようにすること、需要の高まっているサービスを盛り込むこと等、様々な角度から考慮されていることが分かります。
平成17年には、今後も少子高齢化が進むことを考慮し、自立・要支援レベルの高齢者の介護予防に力が入れられました。
平成23年には、核家族化が進んだことから介護を要する状態であっても安心して在宅生活を継続できるよう、医療と介護の連携の強化が図られました。
また、サービス付き高齢者向け住宅などの供給を促進しました。
平成30年では、財政確保が厳しい状況であるとはいえ今後も高齢化率は上昇することを考慮し、一定以上の所得の高齢者の介護保険サービス利用料の自己負担割合を3割としました。
また、医療依存度の高い高齢者や重度の要介護者が増加することを考慮し、新たな介護保険施設として介護医療院の創設が掲げられました。
このように、その時代背景や今後の状況を見据えた内容が、介護保険法の改正に盛り込まれているのです。