介護保険はどう使う?契約してサービスを利用するまでの全知識まとめ

介護保険サービスを受ける為には、事業者との契約が必要ですが、すぐ利用できるわけではなく「要介護認定」「訪問調査」「ケアプラン作成」など、様々な段階を経て初めて利用することが出来ます。介護保険は持っているだけでは使えません。契約から利用までの流れをまとめました。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険サービスを受けるための契約について知識まとめ

介護保険は、介護サービスを受けるにあたって必要なものです。

40歳以上の方は、給料から天引きあるいは払い込み用紙などで「介護保険料」を支払っていると思いますが、実際に利用したいときにどうすればいいのか、どこにいけば使えるのか、など、いまいち「今の自分に必要なわけではないし」と、仕組みをよくわからないまま支払っている方も多いのではないでしょうか。


介護保険サービスを受けるには、「受けたい」と思ったそのときから利用できるものではなく、ある程度の段階を踏まなければなりません。


介護サービスを受けるにあたって、必要な知識をまとめました。


「介護なんてまだまだ…」と思っている方も、得ていて損はないもの。

折角、安くはない保険料を払っているのですから、大いに活用しましょう。


意外に利用できるサービスは幅広いものですよ。



介護保険のサービス事業者と契約するまでの流れ

介護保険のサービス事業者とは、介護サービスを提供してくれる施設や会社のことを指します。

「この介護サービスを受けたい」と希望すると、様々な段階を経てこのサービス事業者と「契約」することになります。


流れを大まかに並べると、

  • 市町村の相談窓口で相談する
  • 要介護認定の申請をする
  • 要介護認定の審査
  • 受けたい介護サービスの申請、連絡
  • ケアプランの作成
  • 契約

と、これが大筋の流れになります。


サービスを受けられるようになるまで、場合によっては1~2ヶ月はかかることがあるので、受けたいと思ったなら早めに手続きを開始しましょう。

介護が必要になったらまずは相談窓口に相談

介護保険料を払っているのだから、その事業者に行って必要な金額の一割を支払えば利用できる…という簡単なものではなく、まずは「要介護認定」というものが必要になってきます。


そのためには、まずお住まいの市役所や役所で、要介護認定申請をしなければなりません。


各市町村には専用の窓口が必ずありますので、まずはそこに行って相談しましょう。


本人だけでも構いませんし、家族の方と一緒に行っても構いません。なかなか複雑な話も多いため、高齢の方で理解に不安のある方は誰かと同伴することをお勧めします。


中には、本人が介護に抵抗がありそんなもの受けたくないと拒否の強い方もいらっしゃるでしょう。

ご本人が外出することが困難であるケースもあるかもしれません。

そんな場合は、本人が居なくてもご家族だけ相談に訪れても構いません。

介護サービスを利用したい方の、身の回りの状況や身体状況な聞かれる場合もありますので、窓口に行かれる方は、ある程度情報を集めていくと話がスムーズに進みます。


尚、わからないことがあっても、後にケアマネージャーさんが訪問時にお伺いするので、多少不明な点があっても大丈夫ですよ。

要介護認定の申請をする

介護サービスを利用するには「要介護認定」というものが必要になります。

その人の身体状況、認知程度、持病などを考慮し、要支援1・2から要介護1~5の区分に分けられます。


判定には一次判定と二次判定があり、それを経て最終的な「要介護度」が決定、要介護認定を受けることが出来ます。


一次判定

聞き取り調査と、かかりつけ医に記載してもらう「主治医意見書」などを元に、コンピュータが自動判定し、7つの区分に分けられます。

七つの区分は以下のとおりです。



介護度基準
要支援1要介護認定等基準時間が25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態
要支援2
要介護1
要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護2要介護認定等基準時間が50分以上70分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護3要介護認定等基準時間が70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護4要介護認定等基準時間が90分以上110分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護5要介護認定等基準時間が110分以上又はこれに相当すると認められる状態

二次判定

一次判定の結果を踏まえ、二次判定は介護認定審査会で行われ、最終的に決定、本人に通知されます。

コンピュータの判定だけではなく、人の目でしっかり調査・判定されます。


ケアマネージャーの訪問調査を受ける

ケアマネージャーとは、必ず一人に対し一人担当としてつくようになります。

受けたい介護サービスや、その人に必要な介護サービスを提供してくれるいわばパートナーのような存在となります。

介護認定を受けると、ケアマネージャーが訪問調査に訪れます。

その方の身体状況の把握や、必要としているサービスの吟味を行います。


調査のときは家族も一緒に立会いを

この訪問時は、出来ればご家族の方も一緒に立ち合われることをお勧めします。

特に、実際どの程度の生活状況かを把握しているご家族の方だと尚良いでしょう。

と、言うのも、中には、いつもなんとかやっていることを、調査員の方が来たときにやたら頑張って「出来るアピール」をしてしまう方も多いのです。



認知症の方の時の注意

認知症のある方は、訪問調査時の見た目受け答えなどではわからない場合もありますので、何か気になることがある場合、メモに書いてまとめるなどをして、本人の目の届かないところで渡すのが効果的です。


たとえば、「なべを火にかけたことを忘れてボヤ騒ぎを起こしたことがある」や、「財布をどこにしまったかわからず、一日中探している」など具体的なことを書くと良いでしょう。


本人の目の前や、離れたところでそっと伝えていると、「いい加減なことを言うな!」「何をコソコソしている!」など、怒り出す方も居ます。

ケアマネージャーの方は、様々な経験を持っています。そんなトラブルを防ぐためにも、こうした手法にも慣れています。



きちんと伝えない場合、介護認定が軽くなってしまい、十分な介護サービスを受けられなかったり、介護認定がされない場合もあります。


訪問調査の時には、遠慮せず正しい状況を伝えましょう。

申請結果を受け取ったら地域包括支援センターもしくは事業所へ連絡する

すべての審査が終わると、前述した「要支援」または「要介護」の認定が降り、通知が届きます。

申請結果を受け取ったら、地域包括センターあるいは介護サービスを提供している事業所へ連絡しましょう。

訪問調査のときに来たケアマネージャーが、自分の連絡先や担当の地域包括センターの連絡先を教えてくれることがほとんどです。



ケアプランを作成する

介護サービスを利用する際に必ず必要になってくるものがケアプランです。

ケアプランとは、今、介護サービスを受けたい方が「現在はどういう状態なのか」を踏まえたうえで、「どうするようになりたいのか」を目標に「そのためにはどんなサービスが必要か」ということを具体的に示した計画書のことです。


たとえば、具体的な例を挙げて説明しますと、


・現在はどういう状態なのか

 →足腰が弱って、一人でお風呂に入ることが出来ない


・どうするようになりたいのか

 →お風呂に入れるようになりたい


・そのためにはどんなサービスが必要か

 →入浴介助のサービス

 →お風呂が入れるデイサービスを利用する 等


といったことをまとめたものです。


その後、このケアプランの原案を元に、担当者会議が行われます。


担当者会議には、ケアマネージャー、サービス事業者の担当者など必要な人員が、本人やご家族を踏まえて検討される形になります。



サービス事業者と契約する

ケアプランに同意すると、それをもとにサービスの提供が始まります。

サービスを受けたい事業者と契約という段階に入ります。


介護保険のサービス事業者には、大まかに分けると

  • 自宅で受けるサービス(自宅での入浴、食事、掃除などの訪問介護)
  • 通所して受けるサービス(デイサービス)
  • 施設に入居するサービス(特別養護老人ホームなど)
  • 短期間のみ入所するサービス(ショートステイなど)
  • 福祉用具のレンタルや購入

といったものがあります。

それぞれ提供しているサービス事業者とケアプランを元に正式に契約し、初めてサービスを受けられることになります。


介護サービス契約を締結する際に必要な契約書の書き方

介護サービスを受ける事業者を決定したら、次に契約となりますが、書類が多く文字も小さいため、よくわからないままサインをしてしまいがちです。


重要な部分をしっかりおさえておきましょう。


契約書、サービス内容説明書、重要事項説明書とは

契約するにあたっての書類は「契約書」「サービス内容説明書」「重要事項説明書」の3種類があり、すべてに名前を自筆で記載し、印鑑を押さなくてはなりません。

それぞれ見た目は同じように見えますが、書かれていることは異なります。



サービス内容説明書

まず最初に、サービス内容説明書を見てみましょう。

自分が受けたいサービスがきちんと書かれているか、提供を約束してくれているか確認しましょう。

わからないところがあれば、遠慮せずに質問することです。



重要事項説明書

次に、重要事項説明書を見てみましょう。


この書類に書かれているのは、主に事業者の情報です。事業署名、責任者名、事業者番号などの基本情報から、サービスの提供時間、苦情窓口の案内、職員体制などが書かれています。


看護師が何人居て、理学療法士が何人居て、といった具体的な数字が明記されています。


専門職を配置している事業者かどうかも、そこである程度把握することが出来ます。


こちらもきちんと目を通しておきましょう。


これらを読んで問題なければ、いよいよ「契約書」にサインをして契約をすることになります。

契約書の記載内容

名前のとおり、契約するための書類です。

これにサインをすると、今後、提供される介護サービスに同意したことになり、料金の発生も生じます。


契約書なので、甲や乙などと難しく書かれていますが、良く読むと然程難しくはありません。


契約書には「契約期間」をはじめ、「料金の発生や徴収時期・方法」「サービスを停止したいとき」「契約を解約したいとき」などが書かれています。


他にも「料金が変更になる場合」「秘密保持」「緊急時の対応について」「相談や苦情に対して」などの記載もある場合があります。


これらすべてに同意して初めて、住所・氏名を書き、ハンコを押します。


後から「こんなの契約に無かった」「これは契約に含まれて居ない」などといったトラブルを防ぐためにも、しっかりと読んでおくことが大切です。

介護保険の契約の際に注意したほうがよいこと

これで晴れて介護サービスを受けられる、というところですが、介護保険の契約の際には注意したほうが良いことが何点か挙げられます。

気をつけるべき点を把握しましょう。


介護保険でできることととできないことを把握すること

介護保険は万能ではありません。

介護保険にも、出来ることと出来ないことがあるのです


この問題が発生するのは訪問介護に多いものです。


訪問介護時の医療行為

「介護」と「医療」は違います。

訪問介護に来た方に医療行為をお願いすることは出来ません。

  • 胃ろうチューブ・カテーテルなどの洗浄
  • 薬を飲む手伝い
  • 薬の仕分け
  • 変形した爪の爪きり
  • 傷の手当

これらは医療行為となるため、訪問介護では受けられないサービスとなります。こういったサービスを受けたい場合は、訪問看護のサービスを申請しましょう。


訪問介護(ホームヘルパー)はお手伝いさんではない

訪問介護はあくまで、その方の生活や自立を援助する目的で行われる行為です。

そのため、本人に関係のない部分は介護保険では行うことが出来ません。


  • 利用者以外の洗濯・調理・買い物
  • 利用者が使用しない部屋の掃除
  • ペットの世話・散歩
  • 洗車
  • 家具・家電の修理、移動
  • ただの話し相手
  • 利用者が不在の状態でのサービスの提供
  • 金品の管理
  • 散歩の付き添い

「ついでにやってくれればいいのに…」というものではありません。

こういったサービスは介護保険の適用外です。


どうしても利用したいのならば、介護保険外でのサービスとして承っているサービス業者がありますので、そちらを利用しましょう。

契約期間はいつからいつまでかを確認しよう

介護保険の契約には、必ず契約期間というものが存在します。

1年に渡る長期の場合や、3ヶ月程度の短期なものなど期間は様々です。


契約が切れ、再度また契約を続けたいときは「更新」となり、また契約時と同じように、自筆のサインや印鑑を押す契約作業があります。


また、介護認定の見直しがある場合、期限はそちらに合わせられることもあります。

介護保険証にも有効期限が書いてありますので、そちらも併せて確認しておくと良いでしょう。


介護サービスの利用料とその算出の仕方

介護サービスの利用料は、介護保険料を滞納などしていない限り、全体にかかる金額の一割の負担でサービスを利用することが出来ます。

所得が多い方の場合は、二割負担の場合もあります。


二割負担になる対象者

例外もありますが、おおむね以下の条件を満たしている方が二割負担の対象となります。

  • 65歳以上(第一号被保険者)
  • 本人の所得が160万円以上
  • 第一号被保険者で同一世帯の年収額(年金収入+その他の収入)が、単身世帯で280万以上・二人以上で346万以上

一割負担になる対象者

上記二割負担に該当する方以外は一割負担となります。

契約解除の場合における条件を知っておこう

介護保険における契約の解除は、利用者側が介護サービス事業者に向けて解約する場合と、事業者が利用者にむけて解除する場合の2パターンがあります。

利用者が契約を解除したい場合

その事業所との契約によって様々ですが、解約の予告期間というものが定められていることが一般的です。

たとえば一週間の予告期間の後、解約するといったスタイルです。


ただし、急な入院や何らかのやむをえない事情で解約したい場合は、その限りではないことがありますので、契約時の「重要事項説明書」を確認してみましょう。


契約解除の条件は、

  • 正当な理由無くサービスを提供してくれない
  • 守秘義務を怠った
  • 事業者が破産した

等、事業者に背徳行為が見られるときなどが条件に上がることが一般的です。



事業所が契約を解除したい場合

サービスを提供する側にも、契約を解除する権利があります。

それは主に、

  • 料金の滞納、支払いの意思が無い
  • 職員や他利用者への暴力、暴言が度を越えている

いずれも、契約を継続しがたいと判断された場合、事業者から契約の解除を通告されることがあります。



自動的に終了する場合

以下の理由の場合は、解約書の手続きなどなくても、自動的に解約となります。

  • 本人の入院、他施設(老人保健施設など)への入居を余儀なくされた
  • 要介護度が非区分(要支援や要介護でなく「自立」となった)
  • 本人が死亡した

これも、契約時に渡されている「重要事項説明書」や「契約書」に細かく記載されていますので、解約したい場合は一読してみましょう。

苦情や相談などはどこに連絡したら良いのかを確認しよう

契約時に渡されている「重要事項説明書」には、必ず苦情や相談を受付する窓口の案内が記載されています。

事業所に対して、苦情や相談がある場合はこちらの窓口を利用しましょう。

秘密保持の具体的な取組み

介護保険法には秘密保持義務という項目があります。

個人の情報や秘密を漏らしてはいけないという「守秘義務」が、利用者にかかわるすべての職種に義務付けられています。

もちろん、これを犯した場合は罰則が定められています。


個人の住所や氏名、家族暦や介護度状態など、本人のプライバシーに関わる情報は厳重に保護されるよう、各事業所では様々な取り組みを行っています。

各施設によって違いはありますが、適切な取り扱いをガイドラインにして秘密保持の具体的な取り組みを明示していることが一般的です。


これも「重要事項説明書」に書かれていますので、確認しましょう。

まとめ

介護保険の利用から、契約までの流れを説明しました。

  • 介護保険は持っているだけでは使えない
  • まずは市町村に相談、必要に応じて要介護認定をうける
  • ケアプランを立ててもらう
  • 利用したいサービス事業者と契約する
  • 契約のときは「サービス内容説明書」と「重要事項説明書」を良く読んで確認してから契約書にサインを!

介護保険のサービスは、利用したいと思ってもすぐに利用できるものではありません。

介護認定や訪問調査を経て、契約して初めて利用可能となります。


「利用したいな」と思ったら、まずは窓口に相談して早めに手続きに取り掛かりましょう!

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