介護保険における要介護認定更新の簡素化の具体的内容について

本格的な高齢化社会が到来し、介護保険における市区町村の要介護等の認定者数は急増しています。そこで、この記事では介護保険の要介護認定の更新認定について、現在の仕組みと要介護の更新認定の簡素化がどのように実施されるのかをご説明します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

要介護認定更新は簡素化された

現行の介護保険制度において、介護サービスを受けるには、どの程度の介護が必要な状態であるのか(要介護(1,2)・要支援(1~5)状態)を認定してもらう必要があります。

これを要介護認定と言います。

基本的に本人や家族が、市区町村の窓口に申請して、認定結果の通知を受け取るという形になります。

これは、公的介護サービスを必要としている人にのみ届けて、無駄な予算を使わないようにするためです。

介護保険の要介護認定には有効期間があるため、要介護認定を更新する必要があります。

介護保険制度の要介護認定更新の簡素化については、2018年度の保険制度改革に向けて、厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会介護保険部会において議論してきたところです。

社会保障審議会介護保険部会での検討を経て、一定の方針は決定していますが、まだ検討の余地はあります。

そこで、この記事では、介護保険の要介護認定について、現在の仕組みと要介護の更新認定の簡素化がどのように実施されるのかをご説明したいと思います。

  

要介護認定更新とは

介護保険の介護サービスを利用するためには、どの程度の介護が必要な状態なのかを判定する要介護認定を受けなければなりません。

要介護認定を受けることによって、介護保険の介護サービスを利用できることになりますが、要介護認定には有効期間があるため、更新する必要があります。

これが介護保険の要介護認定の更新です。

この記事でご説明するのは、介護保険の要介護の更新認定における二次判定の簡素化についてになります。  

介護保険の要介護認定更新の流れ

介護保険の要介護認定を更新するためには、要介護者及び要支援者(以下、「要介護者等」という。)本人又は家族が市区町村に更新申請する必要がありますが、介護保険施設等のケアマネージャーに代行してもらうことも可能です。

この要介護認定の更新申請は、要介護認定の有効期間満了日の60日前から可能です。

また、後の一次判定、二次判定において、主治医の意見書が必要になりますが、もし主治医がいない場合は、医師を紹介してもらえます。

市区町村の窓口には申請書と被保険者証を添付して、提出します。

更新申請の手続きが終わると、次に訪問調査、一次判定、二次判定の順で要介護認定の更新手続きへと進んでいきます。  

一次判定

訪問調査は、市区町村の職員などの調査員が要介護者等申請者の自宅を訪問し、要介護者等本人と面談して、実施されます。

調査員は要介護者等本人の心身の状況、どのような環境下で暮らしているのかなどについて、調査した上で調査票を作成します。

訪問調査の際には、必須というわけではありませんが、要介護者等本人だけでなく、家族にも同席してもらうこともあります。

次に、訪問調査により作成された調査票、主治医が作成した意見書を基に、コンピュータ分析による一次判定が行われます。

この際、認知症の症状がある場合、認知症によってどのような問題行動があるかについても評価します。  

二次判定

一次判定終了後、介護認定審査会において二次判定が行われます。

介護認定審査会とは、学識経験者により構成された市区町村の附属機関です。

介護認定審査会は、コンピューターによる一次判定結果、訪問調査結果、主治医の意見書をもとに、申請者の現在の要介護・要支援の状態を公平に審査し、判定します。

二次判定の結果は、介護認定審査会によって市区町村に通知され、その際、介護認定審査会は必要に応じて、市区町村に意見を述べることができます。

介護認定審査会から通知を受けた市区町村は、介護認定審査会の審査判定の結果に基づき、要介護認定の結果を申請者に通知します。  

介護保険の要介護認定更新の二次判定が簡素化された

そもそも要介護認定が、申請により判定することになっているのは、介護費の増大を防ぐために、本当に公的介護サービスを必要とする人に給付をしていくという目的があるからです。

しかし、本格的な高齢化社会を迎えている現状において、要介護認定における要介護及び要支援の認定者数は、2000年代になってから急増していることから、市区町村(保険者)の要介護認定事務の負担が増加の一途をたどっています。

そこで、保険者の要介護認定事務の負担を軽減するため、要介護認定の有効期間の延長などを段階的に実施してきました。

そして、更なる要介護認定事務の負担軽減を図ろうと、2018年度の保険制度改革に向けて検討されてきたのが、介護保険の要介護認定更新の二次判定の簡素化です。  

簡素化された二次判定の仕組み

では、どうして介護保険の要介護認定更新の二次判定が簡素化されることになったのでしょうか。

それは、認定された要介護者等の判定結果を一次判定、二次判定、翌年の更新まで見てみたところ、約4割の要介護者等の要介護度が同じだったことから、一定の状態の安定した要介護者等については、要介護認定更新の二次判定を簡素化することができるのではないかと考えられたからです。

介護保険の要介護認定更新を簡素化する上で、ポイントが3つありますので、ご説明したいと思います。

1.要介護認定更新の二次判定そのものを省略することはできるのか。

これについては、法律で要介護認定するにあたっては、一次判定及び二次判定を経た上で要介護認定することになっていることから、省略はできません。

2.一定の状態の安定した要介護者等(「状態安定者」)はどのように定義されるべきか。

一定の状態の安定した要介護者等(「状態安定者」)の定義については、要介護認定の実態を研究した上で、設定することになっています。

3.要介護認定更新の手続き中、どの部分を簡素化するのか。

これについては、現在検討中であり、どのように簡素化するかについては明らかになっておりません。  

介護保険の要介護認定更新にかかる時間

介護保険の要介護認定更新の二次判定の簡素化と共に検討され、この度決定されたのが要介護の更新認定の有効期間の上限の延長で、現在の最長「24か月(2年)」から「36か月(3年)に延長される予定です。

現在、要介護認定更新の有効期間は原則として「12か月(1年)」ですが、心身の状態が安定している場合には最長「24か月(2年)」となります。

介護保険の要介護認定更新にかかる時間については、短縮されるなどの変更はなく、従前どおり通常の要介護認定と同じです。  

申請日から30日以内に認定される

介護保険の要介護認定の更新申請は、要介護認定の有効期間が満了する日の60日前からでき、要介護認定の更新申請した日から30日以内に認定されることになっています。 

まとめ

この記事では、介護保険の要介護認定について、現在の仕組みと更新認定の簡素化がどのように実施されるのかをご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。

未だかつてない高齢化社会を迎えている日本において、介護保険を始めとする介護費用が増大していくことについては、現状ではどうしようもありません。

しかし、そんな中で予算を節約できるところは、少しでも節約していくことが非常に重要になってきています。

この記事でご紹介した介護保険の要介護認定更新の簡素化についても、こうした予算の節約の一環で、国を中心に進めているところです。

一方で、介護サービスを必要としている人たちに対して、必要なサービスを提供することができないということになれば、今後益々厳しくなる高齢化社会に対応していくことはできません。

この記事を読んで、介護保険の要介護認定を検討している方の参考になれば幸いです。  

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