定年後・退職後の生活費はいくら必要?早めの試算・貯金で不安を解消!

定年後の生活費はいくら必要か、今の貯蓄額で賄えるのか不安ですよね。定年後の生活費は独身か夫婦か、暮らし方により変わります。ここでは必要な生活費はいくらかシュミレーションした上で定年後の収入(年金や退職金)の平均額を解説し、節約術や収入を増やす方法も紹介します。

定年後・退職後の生活費はいくら必要?場合別で解説します

少し前に「老後に年金の他に2,000万円が必要」という政治家の発言が話題になりましたが、それをきっかけにしてご自身の老後の生活やお金のことが気になり始めた方も多いのではないでしょうか。 


2,000万円という金額はともかくとして、年金以外に準備しておくことは必要なので、老後の生活の計画をたて、そのために必要なお金の準備を早めに準備しておくことは非常に大切です。 


そこで、この記事では、 

  • 定年後の生活費と収入の相場 
  • 定年後の年金、退職金 
  • 支出を減らすための節約方法 
  • 収入を増やすための方法 

などについて、解説していきます。 


老後の生活の準備を始めるには、早い方がその分無理なく準備できます。 

ですので、定年が近い方はもちろん、まだ時間がある方も、最後までお読みいただき、老後の生活の計画に役立つ知識を得ていただければと思います。

定年後必要となる生活費を場合別でシュミレーション!内訳も紹介



まず最初に、定年後の生活費としていくら必要なのか、ライフスタイル別にみていきたいと思います。

 

夫婦二人暮らしの場合、一人暮らしの場合、ゆとりある生活をする場合の3パターンに分けてそれぞれ見ていきます。 

生活費の内訳についても掘り下げて見ていきましょう。

夫婦二人暮らしの場合、定年後に必要な生活費の相場は月約22万

総務省統計局の家計調査報告(家計収支編)2018年によると、高齢夫婦の無職世帯の生活費は235,615円となっています。 


内訳は以下のとおりです。 

項目金額割合
食費65,265円27.7%
住居13,666円5.8%
光熱・水道19,792円8.4%
家具・家事用品9,425円4.0%
被服・履物6,126円2.6%
保健医療15,079円6.4%
交通・通信28,038円11.9%
教養・娯楽24,268円10.3%
交際費25,682円10.9%
その他28,274円12.0%


食費が27.7%と最も多いですが、(その他を除いて)その次に多いのは交通・通信費、教養・娯楽費、交際費などでどれも10%以上となっています。 


このことから定年後の生活は、趣味や娯楽、知人とのつきあいが多くなっていることが推測されます。 

独身・一人暮らしの場合、定年後に必要な生活費の相場は月約15万

次に同様の総務省のデータから、一人暮らしの方の生活費も見てみましょう。 

一人暮らしの方の生活費の平均は、149,603円となっています。

 

内訳は以下のようになっています。 

項目 金額 割合
食費36,354円24.3%
住居18,252円12.2%
光熱・水道13,165円8.8%
家具・家事用品4,787円3.2%
被服・履物 3,740円 2.5% 
保健医療8,228円5.5%
交通・通信14,362円9.6%
教養・娯楽17,055円11.4%
交際費18,252円12.2%
その他15,409円10.3%


一人暮らしの方の場合も、食料が最も多いのは夫婦の方と同じですが、次に住居費と交際費が続き、(その他を除いて)交通・通信費、教養・娯楽費が10%前後となっています。 


交通・通信費、教養・娯楽費が多いのは夫婦の方と同じですが、それらよりも住居費が多いことが夫婦の場合とは違っています。 

これは一人暮らしの方の方が、賃貸に住んでいる割合が多いということがいえるのかもしれません。

定年後ゆとりある暮らしをしたい場合に必要な生活費の相場は月約35万

定年後のご夫婦と一人暮らしの場合の平均的な生活費を見ましたが、さらにゆとりのある生活を送るには、ご夫婦の場合、約35万円が必要であるといわれています。


ご夫婦の生活費の平均は約23.5万円でしたので、約11.5万円が必要になるということですが、どのような用途に使いたいと考えられているのでしょうか。
 


令和元年度の生命保険文化センター「生活保障に関する調査」によると、以下のようになっています。

  • 旅行・レジャー:60.7% 
  • 趣味・教養:51.1% 
  • 生活費の充実:49.6% 
  • 身内とのつきあい:48.8% 
  • 耐久消費財の買い替え:30.0% 
  • 子供や孫への援助:22.4% 
  • 友人とのつきあい:15.5% 
  • 貯蓄:3.7% 
  • その他:0.4% 
  • 不明:0.4% 


趣味や旅行、交際にかかる費用や日常生活の費用を充実させたいと考えている方が多いことがわかります。 

老後は、ゆったりと自分のために時間もお金も使いたいと感じておられるようですね。

定年後と定年前の支出・収入の違いを把握しよう

会社員の方にとって定年前と後とでは、生活が大きく変わることになります。 


つまり、毎日会社に通勤していた生活から通勤しない生活になるということです。 

その生活の変化に伴い、収入と支出の中身も変わっていくことになります。  


収入に関しては、65歳で定年となった場合、給与収入から退職金と年金収入に変わります。 

多くの方が、定年前よりも収入は少なくなるでしょう。
 


支出に関しては、以下のような変化が考えられます。 


【減る支出】

  • スーツなどの通勤着 
  • 仕事上の交際費 
  • 教育費(子供が自立した場合) 
  • 住宅ローン(完済した場合) 
  • 厚生年金保険料 
  • 健康保険料 
  • 雇用保険料 


【増える支出】

  • 趣味・旅行・交際費などの娯楽費 
  • 医療費・介護費用 
  • 国民健康保険料 
  • 後期高齢者医療保険料(75歳以降)
     


このように、仕事に関する費用は減り、その代わりに娯楽費や医療費などが増えていくことが考えられます。 

定年後の収入はいくら?公的年金・退職金で生活費を賄えるのか



上で定年後の収入は退職金と年金によるものということを述べましたが、継続的な収入になるのは年金ですよね。 


実際にどのくらいの金額をもらえるのでしょうか。 


以下で、年金、退職金それぞれの平均の金額を見てみましょう。


定年後受給できる国民年金・厚生年金平均額

厚生労働省の「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金、国民年金の平均月額は、以下のようになっています。 


  • 厚生年金の受給者:143,761円 
  • 国民年金の受給者:55,708円 


国民年金の保険料は一律ですが、厚生年金に関しては、加入者によって払った保険料の差が大きいので、この平均値よりも多かったり少なかったりする方も多いと思われます。


しかしながらあくまで平均の金額として考えると、上で述べた定年後の支出からすると、この年金だけの収入では生活費を賄うのは厳しいといえるでしょう。


また、もらえる年金の金額は今後減る可能性もあることを考えると、年金以外にも準備をしておく必要があります。

定年後の退職金の平均額

次に退職金の平均金額ですが、退職金は一時金として全額受け取る場合と、年金として受け取る場合があります。 

どちらを選ぶかによって課税される税金が変わってきますが、それについては後で詳しくご説明しますので、ここではそれぞれの平均額を見ていきましょう。 


厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」のデータで、勤続35年以上、管理・事務・技術職の大卒・大学院卒と高校卒、現業職の高校卒の定年退職者の退職金を比較します。 

退職金大卒・大学院卒(管理・事務・技術)高卒(管理・事務・技術)
高卒(現業職)
一時金制度のみ 1,897万円1,497万円1,080万円
年金制度のみ  1,947万円1,901万円1,524万円 


単純に平均金額を比較すると、どれも一時金よりも年金の方が金額が多くなっているのがわかります。

生活費が心配な方|定年後・退職後に支出を減らす節約術とは?

「定年後受給できる国民年金・厚生年金平均額」のところでも述べましたが、退職金は別として年金だけで老後の生活費を賄うのは無理があることがわかりました。 


この場合、他に収入を増やす、支出を減らす、またその両方の対策をとらなければなりませんが、まず、支出を減らす方法について考えてみましょう。 

定年後の退職金は受け取り方次第で税金を節約できる

まず退職金に関してですが、一時金と年金では、年金として受け取る方が一時金として受け取るよりも多くの金額を受け取れることがわかりました。 

しかしながら、一時金と年金では課税される税金の金額が違うのです。  


一時金の場合は退職所得控除が適用され、その金額は以下の計算式で求められます。
 

  • 勤続年数が20年以下の場合:40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円) 
  • 勤続年数が20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年) 


例えば、勤続30年で退職金が2,000万円の場合、退職所得控除金額は 

800+70×(30-20)=1,500万円 

となり、課税対象は2,000-1,500=500万円のみになります。 


一方の年金方式の場合は、「公的年金等控除額」が適用され、公的年金とあわせて計算されます。 

例えばこの場合の控除額は以下のようになり、一時金で受け取る時の控除額よりも随分少なくなることがわかります。

合算した金額控除額
65歳未満130万円未満70万円
65歳以上330万円未満120万円


さらに、公的年金と合算した金額が多くなると、国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料も多くなり、その分支出も増えることになります。

固定費の見直し支出を楽に削減できる

生活費を大きく分けると、固定費と変動費に分けられます。 

固定費とは、生活の中でどのように行動しても一律にかかる費用、一方変動費とは、行動や選択によって変わってくる費用のことです。 


生活費の支出を節約する手っ取り早い方法は、固定費の支出を見直すことです。


というのも、固定費はどのような生活をしていても必ずかかる費用、つまり毎月必ず支払う費用なので、これが少なくなれば知らず知らずのうちに毎月の生活費を減らすことができるのです。 


具体的には、 

  • 住居費 
  • 水道光熱費 
  • スマホやPCなどの通信費 
  • 保険料 
  • 教育費 
  • こづかい 
  • 自動車にかかる費用 
  • 定期購入、定期支払いしているもの 

などがあります。 


一見当然のように払っているものでも、それぞれ内容を見直すことで、案外節約ができるものもあるのではないでしょうか。

生活費が心配な方|定年後・退職後の収入を増やす方法とは?

節約する、つまり支出を減らすことが大切なのはわかりますが、節約ばかりでなく老後はゆとりある生活を送りたいと考えておられる方も多いでしょう。 


そうなると、収入を増やさなくてはなりませんよね。 


収入を増やすにはどのような方法があるのか、考えてみます。 

公的年金に定年後も任意加入する・受給年齢を繰り下げる

退職後の収入を増やす手段として比較的容易に着手できるのが、公的年金に関するものです。 


具体的に公的年金を増やすには、 

  1. 受け取る時期を遅らせる
  2. 加入期間が40年に満たない場合は、40年になるまで任意で加入する 

方法があります。
 


それぞれ具体的にご説明しますね。

 

まず、受け取る時期を遅らせる方法ですが、年金は通常65歳からの受給となりますが、この受け取りの年齢を最長70歳まで遅らせることで、年金の受給額が増やすことができます。 

1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額されるので、1年で8.4%、2年で16.8%、最長の5年では42%も増額されることになります。 


また、国民年金を満額受け取るための加入期間40年に満たない場合は、65歳までの間、40年になるまで加入し続けることが可能です。
 


ただし、どちらの方法も年金を受け取るまでの間の生活費の確保が必要になります。


払った保険金ともらう年金のバランスを考えて、何歳から給付を受けるのかシュミレーションをして、しっかり検討することが大切です。

定年後の再雇用を検討する

定年後も働くことによって収入を増やすという方法もあります。 


現在では、60歳で定年を迎えても本人が雇用を希望すれば、65歳まで雇用することが企業に義務付けられているからです。 

働かなければ年金をもらうまでの65歳まで無収入となりますが、年金をもらうまでの期間、働くことで収入を得るという選択肢です。 


この方法は一見理にかなった方法に思えますし、実際に、内閣府による「何歳まで仕事をしたいか」という2019年の調査では、61歳~65歳までが30.7%と最も多いようです。
 


ただ再雇用や再就職においては、雇用形態や労働条件が定年前とは大きく変わる場合も多く、なかなか自分の希望通りというわけにはいかない場合もあるようです。

そのため、そのあたりのバランスをとることが大切になってきます。  

定年後の生活費に備えて個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用する

資産を運用して増やす方法もあります。 

そのひとつの方法が、個人型確定拠出年金(iDeCo)の利用です。 


iDeCoは、ご自身で運用方法を選び、60歳まで一定の掛金を積み立てて運用していくという自分で行う年金のような仕組みです。 

具体的には、銀行や証券会社で口座を作り、そこで販売されている、定期預金・投資信託・債券などから選んで、一定の掛金を積み立てていきます。 


掛金には、 

  • 自営業:月額6.8万円 
  • 会社員(企業型確定拠出年金のない会社に勤務)や主婦:月額2.3万円 
  • 公務員:月額1.2万円 

などの上限が設定されています。
 


iDeCoの最も大きなメリットは節税効果があるということです。

具体的には、積み立てた金額をそのまま所得控除されますので、その分課税所得が少なくなり、所得税と住民税に反映されるという仕組みです。 


一方注意点としては、積み立てた掛金は60歳まで引き出せないことです。 

従って、定年前の出費のために使うことはできません。
 


節税効果があるのは魅力的だが、自分で運用するのは自信がないという方は、ファイナンシャルプランナーなどのプロに相談してみるのもよいでしょう。

定年後の生活費に備えて個人年金保険に加入する

資産を運用する方法として、個人年金保険に加入するという選択肢もあります。 

個人年金とは、60歳や65歳など一定の年齢まで保険料を積み立てていき、保険会社がその保険料を運用することで、満期以降に運用益を含めた金額を年金として受け取るという保険です。
 


個人年金のメリットとしては、節税効果があるということです。 

iDeCoほどではありませんが、払った保険料の金額によって個人年金保険料控除の対象となり、課税所得から差し引くことができます。
 


また気になる運用益、どのくらい増えるのかということについてですが、この割合を示す数値として返戻率があります。 

払った保険料に対してもらえる年金の割合のことで、100%を切ると元本割れということになります。 


開始する年齢などによっても返戻率は変わりますが、返戻率の高いもので、30年から35年積み立てて105%~106%というところのようです。 

できるだけ長く積み立てること、払い込みが終了しても受け取る時期を据え置くことで返戻率を上げることができます。

定年後の生活が不安でたまらないならお金のプロ(FP)に相談してみよう

定年後の生活を少しでも安心してすごすために、支出を減らす方法、収入を増やす方法をご紹介してきました。 

一度にたくさんは無理でも、まずはどれかひとつでもできることから着手される方がよいでしょう。 


また、どの方法を実行するにしても、なるべく早く実行することをおすすめします。 

短期間よりも長期間やり続けることで、その分大きな効果が期待できるからです。
 


とはいっても「頭ではわかっているが、やはり何をどうしたらよいのかわからない」という方もいらっしゃるかもしれませんね。 


そういう場合には、思い切ってお金のプロであるファイナンシャルプランナー(FP)に相談するのもひとつの方法です。 

無料で利用できるサイトもたくさんありますので、まずはFPに相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ:定年後に必要な生活費を確保するために今から対策しよう

定年後の生活費について、色々な側面から解説してきました。 

最後に大切な内容をまとめてみます。
 


  • 定年後の生活費の平均は、夫婦は約23.5万円、一人暮らしは約15万円 
  • ゆとりある生活をするには、
    夫婦の場合約35万円 
  • 定年後の主な収入は、公的年金と退職金 
  • 支出を減らす方法は、
    退職金を一時金で受け取って節税する、 固定費を節約する 
  • 収入を増やす方法は、 65歳まで年金に任意加入する、年金を受給する年齢を遅らせる、定年後も働く、iDeCo を利用する、個人年金保険に加入する
     


定年後も安定したゆとりある生活をするには、実際の収入だけでは足りないのが現実のようです。 

そのために、支出を減らしたり、収入を増やす方法をいくつかご紹介しましたが、何かできそうなものはありましたでしょうか。


もっと詳しく知りたいという方には、FPに相談するのもよいでしょう。 

例えば、マネーキャリア相談ではお金に関する相談を、無料でプロに相談することができます。


最初の一歩として、まずはプロに相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

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