更新日:2021/01/04
ベーシックインカムとは?海外の成功例・失敗例などの事例を紹介
ベーシックインカム とは、就労状況・勤労の意志・資産の有無・年齢・性別・所得に関わらず、無条件で一定の所得を保証する制度を言います。海外ではフィンランドやカナダなどの導入事例があり、成功例や失敗例など様々です。今回は、ベーシックインカム の海外事例を解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- ベーシックインカムとは?海外の成功例・失敗例などの事例を紹介
- ベーシックインカム とは
- ベーシックインカム導入のメリット
- ベーシックインカム のメリット①働き方が多様になる
- ベーシックインカムのメリット ②金銭的な余裕ができ、不安が解消される
- ベーシックインカム 導入のデメリット
- ベーシックインカム のデメリット①財源の確保が難しい
- ベーシックインカム のデメリット②働かない人が増える可能性がある
- ベーシックインカムの導入事例は?成功例や失敗例などの導入事例
- ベーシックインカム の導入事例①フィンランド
- ベーシックインカム の導入事例②カナダ
- ベーシックインカム の導入事例③スイス
- ベーシックインカム の導入事例④イタリア
- ベーシックインカム の導入事例⑤オランダ
- ベーシックインカム の導入事例⑥ドイツ
- ベーシックインカム の現在の導入事例
- ベーシックインカム の現在の導入例①ブラジル
- ベーシックインカム の現在の導入例②カタール
- 参考:ベーシックインカムの導入は日本でもされる?
- まとめ:ベーシックインカムの導入事例は意外と多い
目次
ベーシックインカムとは?海外の成功例・失敗例などの事例を紹介
先行きの不透明な現代、生活にまつわるお金のことで悩んでいる方も少なくないと思います。
AI化が進む中で仕事はどうなるのか、老後に必要なお金は実際のところどれくらいなのか、誰もが無関心ではいられません。
ところで「ベーシックインカム」という言葉をご存知でしょうか。
ベーシックインカムとは、簡単に言うと、政府からすべての国民に対し、最低限度の生活を送るための現金を支給するという構想で、現在すでに導入されている国もあります。
この記事では
- ベーシックインカムとは何か
- 各国のベーシックインカム導入事例とその成果
- ベーシックインカムは日本でも導入されるか
ベーシックインカム とは
日本には、生活保護や老齢年金、失業保険などの支援があります。何らかの事情で働けない方や定年を過ぎた後でも生活を安定させることができるような仕組み作りがされているのですが、ベーシックインカムとは少し違っています。
ベーシックインカムとは、政府が国民に対して基本的な所得を保証する制度です。年齢や性別、所得問わずその人の所得補償として、一定金額が支給されます。
ベーシックインカムは、誰でも最低限の生活保障を受けることのできる仕組みです。つまり、「仕事をやめてしまった」「働くことができない」などの理由がなくても、最低限の生活が行えるお金を受け取れるということになります。
政府が一人一人に、見返りもなくお金を配るというとわかりやすいでしょうか。実際に海外ではすでに導入されている国もあり、現在注目が集まっている制度ともいえます。
日本ではベーシックインカム導入予定はありませんが、これから先はまだわかりません。
ベーシックインカム導入のメリット
ベーシックインカムにはメリットがあるのでしょうか。現在考えられているメリットとしては、働き方の多様性や金銭的余裕が上げられています。
現在日本にある支援補償とは違い、国民が全員受けられる支援とだけあってメリットもそれなりに大きいでしょう。
ここでは、ベーシックインカム導入のメリットを大きく分けて
- 働き方が多様になる
- 金銭的な余裕ができ、不安が解消される
ベーシックインカム のメリット①働き方が多様になる
ベーシックインカムを導入すれば、人々の働き方が多様になるということが言えます。具体的にどういうことなのか、解説していきます。
まず、多くの人は生きるために働いているでしょう。本来、やりたかったことがあったけれど生活をするためには、この仕事を続けなくてはいけないという方も多いと思います。
実際に、「歌手を目指していたけれど、生活するお金がないからバイトをしなくてはいけない」「生活するために、自分のしたい仕事ができない」という方もいます。
ベーシックインカムを導入すれば、自分が本当にしたいと考えている仕事や夢、やりたかったことへのチャレンジが行いやすくなります。
安定した収入を得ることができるので、たとえ自分がやりたいことに失敗したとしても生活に支障をきたしてしまう心配もなくなります。
これまでより生計を立てやすくなり、「生きるために働く」のではなく、「やりたいことをやる」という考え方が根付くのではないかと考えられています。
ベーシックインカムのメリット ②金銭的な余裕ができ、不安が解消される
ベーシックインカムの最大にメリットともいえるのが、金銭的な余裕です。たとえ共働きだとしても、金銭的に余裕のある家庭は少ないのが現状です。
金銭的な余裕がなければ、不安に押しつぶされてしまいそうになることもあるでしょう。体調を崩してしまっても休むこともできず、子供がいる家庭では長く働けないといった悩みも出てきます。
ベーシックインカムを導入すれば、金銭的な不安や心配が解消されます。また、子供が欲しいけれど収入的にもう無理だと諦めている家庭でも、ベーシックインカムがあればそういった悩みが解消されます。
働かなくてはいけない、と気持ちを切り詰めれば詰めるほど、子供に優しくなれないというお母さんやお父さんもいることでしょう。金銭的な余裕というのは、家庭内における精神面でのゆとりでもあると思います。
出産や育児も行いやすい環境となり、少子化対策にも貢献できるのではないでしょうか。
ベーシックインカム 導入のデメリット
ベーシックインカムにはメリットがある一方で、もちろんですがデメリットも存在します。考えられるデメリットを大きく分けると、
- 財源の確保について
- 働かない人が増える
ここでは、ベーシックインカムをすでに導入している国を参考に具体的なデメリットを解説していきます。
ベーシックインカム のデメリット①財源の確保が難しい
日本人1人が生きてくために最低限必要な金額がいくらかご存知でしょうか?生活水準や住んでいる地域によって大きな差が出てくるとは思いますが、具体的な解説を行いたいのでここではフィンランドのベーシックインカム導入実験を参考に、7万円と仮定したいと思います。
日本の人口は約1億2700万人とされており、全員に7万円を支給した場合の金額は8兆4000億円必要となります。これは1か月の金額で、1年にすると100兆8,000億円にもなってしまいます。
日本政府は、100兆8,000億円もの大金を国家予算でねん出できるのでしょうか。2019年の国家予算を見てみましょう。
税区分 | 31年度予算(目安) |
---|---|
税収 | 624,950億円 |
その他収入 | 50,556億円 |
公債金 | 318,786億円 |
その他 | 318,786億円 |
合計 | 994,291億円 |
(参考:平成31年度予算のポイント)
この表を見ても分かるように、日本の国家予算では賄うことはできないでしょう。ここからさらに消費税を値上げしたとしても、年間100兆円には到底及びません。
ベーシックインカムを実現させるためには、大幅な増税を行うことと国民の理解を得る必要があります。かなり大きな問題となるのではないでしょうか。
ベーシックインカム のデメリット②働かない人が増える可能性がある
ベーシックインカムを導入すれば、働かなくても生活ができるお金を受け取れることになります。「働かなくても生活できるなら、働きたくない」という考えの方も増えてしまう可能性が高いです。
ベーシックインカムによって労働意欲を失う方も少なくないと考えます。働かない人が増えれば、日本の経済に影響が出てくるでしょう。
もし、そうなってしまえばこれまで24時間営業していたコンビニなどが昼間だけの営業になったり、平日のみの営業になる可能性もあります。生活をしていくうえで、不便さが出てきてしまうことも免れません。
ベーシックインカムの導入事例は?成功例や失敗例などの導入事例
これまで、実際にベーシックインカムを導入した国では、どのようなことが起きたのでしょうか。
今回は、下記の国の導入事例を見てみましょう。
- フィンランド
- カナダ
- スイス
- イタリア
- オランダ
- ドイツ
以上の国を事例として、その経緯や結果をご紹介します。
ベーシックインカム の導入事例①フィンランド
フィンランドでは、ヨーロッパ初の試みとして2017年からベーシックインカムの導入実験が行われました。
その内容は、無作為に選ばれた失業中の2000人に対し、ひと月あたり失業保険とほぼ同額の560ユーロ(約7万円)を支給し、雇用状態や健康状態にどのような変化が起こるかが観察されるというものでした。
最終的な結果は2021年1月現在未発表ですが、2019年に公表された暫定結果によると、ベーシックインカム給付によってフィンランドでは
- 雇用には大きな影響が見られなかった
- 健康・ストレス面では問題が明らかに少なくなった
ベーシックインカム の導入事例②カナダ
カナダでは2017年、当時の首相キャサリン・ウィンカム氏のもとでベーシックインカム導入実験が行われました。
内容はオンタリオ州の約4000人が、無条件で毎月お金を受け取るというもので、世界最大級の試みでした。
しかし、3年の予定で開始されたこの実験は、ウィンカム氏に続く首相のタグ・フォード氏の決定により、約1年で中止となっています。
その理由はコスト面にあり、新政権の子ども・コミュニティー・ソーシャルサービス大臣、リサ・マクラウド氏は取材に対して「導入実験は費用がかかり過ぎて、オンタリオ州の家庭に対する施策になっていない」と明かしたということです。
ベーシックインカム の導入事例③スイス
スイスでは2016年、ベーシックインカム導入の是非を問う、国民投票が実施されました。スイスでは有権者10万人の署名を集めれば国民投票を行うことができます。
導入推進派が「貧困撲滅」などを訴えて署名活動を行う一方、反対派は「コストがかかり過ぎる」「労働意欲を削ぎ、生産性が低下する」と主張し、連邦政府も反対の立場をとっていました。
国民投票では、投票率が46.3%となり、賛成23.1%、反対76.9%と大差で否決という結果でした。
このようにベーシックインカムの是非を国民全体に問うという事例は、世界初のことです。
ベーシックインカム の導入事例④イタリア
2019年からベーシックインカム制度が実施されているのがイタリアです。
導入の経緯として、2018年の総選挙で、ベーシックインカム導入を公約に掲げる「五つ星運動」が最大得票を獲得しました。
五つ星運動は特に、失業率が高く貧困の問題が深刻な、イタリア南部層に支持されています。
この支持層にとって、働かなくても一定のお金が受け取れるベーシックインカム制度が魅力的であることは間違いないでしょう。
そして2018年6月に発足したジュゼッペ・コンテ政権のもとで制度開始に踏み切りましたが、財源が明確でないことから「ばらまき政策」との批判もあります。
ベーシックインカム の導入事例⑤オランダ
オランダでは国内で4番目に大きな都市ユトレヒトにおいて、2016年からベーシックインカムの導入実験が行われています。
この実験では、ベーシックインカム適用グループと現行の福祉法適用グループに分けて比較することで制度の効果が検証されます。
2017年からは更に実験の規模が拡大しているという情報もあり、オランダはベーシックインカムに対して積極的な事例であると言えるかもしれません。
ベーシックインカム の導入事例⑥ドイツ
2016年スイスでのベーシックインカム国民投票事例を受け、近隣の国でもベーシックインカムに関する議論はより活発になりました。
ドイツでは、政府や民間でさまざまな議論が行われていますが、肯定・否定の理由はほぼ同じところに集約されるようです。
- ベーシックインカム肯定の理由:貧困対策、少子化対策になる
- ベーシックインカム否定の理由:社会保障の水準が下がる。勤労意欲が失われ、勤勉な国民性が減退する
ベーシックインカム の現在の導入事例
ベーシックインカムを現在も導入している国はこちらです。
- ブラジル
- カタール
ベーシックインカム の現在の導入例①ブラジル
ベーシックインカム の現在の導入例②カタール
参考:ベーシックインカムの導入は日本でもされる?
ベーシックインカムについて、世界各国の事例を見てきましたが、果たして日本での導入はあり得るのでしょうか。
実際のところ、日本も社会保障や税制の仕組みが複雑化し、見直すべきだという声があがっています。(参考:厚生労働省|社会保障改革)
その取り組みの1つとしてベーシックインカム導入を掲げる政党には、国民民主党、緑の党グリーンズジャパンなどがありますが、やはり財源等の問題に対する解決策は明らかになっていません。
ベーシックインカム導入には、スイスの事例のように国民投票とまではいかなくとも、国民全体がこの問題に関心を持ち活発な議論が行われることが重要となるでしょう。
まとめ:ベーシックインカムの導入事例は意外と多い
ベーシックインカムについて、その内容や各国の導入事例を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事のポイントは
- ベーシックインカムとは、国民に最低限度の生活を保障するため、政府が無条件で現金を支給する制度
- ベーシックインカムのメリットには貧困の解消や少子化への歯止め、国民がやりたいことに全力を費やすことができる
- ベーシックインカムのデメリットは、多大な財源が必要となることや労働意欲減退の懸念がある
- ベーシックインカムは多くの国で導入実験が行われているが、成功とみられる事例はほとんどない
- 日本でも社会保障見直しの必要性は高まっているが、ベーシックインカム導入に結びつくかは未知数