ベーシックインカムとは?海外の成功例・失敗例などの事例を紹介

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ベーシックインカム とは、就労状況・勤労の意志・資産の有無・年齢・性別・所得に関わらず、無条件で一定の所得を保証する制度を言います。海外ではフィンランドやカナダなどの導入事例があり、成功例や失敗例など様々です。今回は、ベーシックインカム の海外事例を解説します。

この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

ベーシックインカムとは?海外の成功例・失敗例などの事例を紹介

先行きの不透明な現代、生活にまつわるお金のことで悩んでいる方も少なくないと思います。


AI化が進む中で仕事はどうなるのか、老後に必要なお金は実際のところどれくらいなのか、誰もが無関心ではいられません。


ところで「ベーシックインカム」という言葉をご存知でしょうか。


ベーシックインカムとは、簡単に言うと、政府からすべての国民に対し、最低限度の生活を送るための現金を支給するという構想で、現在すでに導入されている国もあります。


この記事では

  • ベーシックインカムとは何か
  • 各国のベーシックインカム導入事例とその成果
  • ベーシックインカムは日本でも導入されるか
などについて詳しく解説します。

この記事を読めばベーシックインカムについて事例を踏まえて理解でき、国と個人という大きな視点からお金について考えることができます。ぜひ最後までご覧ください。

ベーシックインカム とは

日本には、生活保護や老齢年金、失業保険などの支援があります。何らかの事情で働けない方や定年を過ぎた後でも生活を安定させることができるような仕組み作りがされているのですが、ベーシックインカムとは少し違っています。


ベーシックインカムとは、政府が国民に対して基本的な所得を保証する制度です。年齢や性別、所得問わずその人の所得補償として、一定金額が支給されます。 


ベーシックインカムは、誰でも最低限の生活保障を受けることのできる仕組みです。つまり、「仕事をやめてしまった」「働くことができない」などの理由がなくても、最低限の生活が行えるお金を受け取れるということになります。


政府が一人一人に、見返りもなくお金を配るというとわかりやすいでしょうか。実際に海外ではすでに導入されている国もあり、現在注目が集まっている制度ともいえます。


日本ではベーシックインカム導入予定はありませんが、これから先はまだわかりません。

ベーシックインカム導入のメリット

ベーシックインカムにはメリットがあるのでしょうか。現在考えられているメリットとしては、働き方の多様性や金銭的余裕が上げられています。


現在日本にある支援補償とは違い、国民が全員受けられる支援とだけあってメリットもそれなりに大きいでしょう。


ここでは、ベーシックインカム導入のメリットを大きく分けて

  • 働き方が多様になる
  • 金銭的な余裕ができ、不安が解消される
の二つがあります。以下で詳しくみていきましょう。

ベーシックインカム のメリット①働き方が多様になる

ベーシックインカムを導入すれば、人々の働き方が多様になるということが言えます。具体的にどういうことなのか、解説していきます。


まず、多くの人は生きるために働いているでしょう。本来、やりたかったことがあったけれど生活をするためには、この仕事を続けなくてはいけないという方も多いと思います。


実際に、「歌手を目指していたけれど、生活するお金がないからバイトをしなくてはいけない」「生活するために、自分のしたい仕事ができない」という方もいます。


ベーシックインカムを導入すれば、自分が本当にしたいと考えている仕事や夢、やりたかったことへのチャレンジが行いやすくなります。


安定した収入を得ることができるので、たとえ自分がやりたいことに失敗したとしても生活に支障をきたしてしまう心配もなくなります。


これまでより生計を立てやすくなり、「生きるために働く」のではなく、「やりたいことをやる」という考え方が根付くのではないかと考えられています。

ベーシックインカムのメリット ②金銭的な余裕ができ、不安が解消される

ベーシックインカムの最大にメリットともいえるのが、金銭的な余裕です。たとえ共働きだとしても、金銭的に余裕のある家庭は少ないのが現状です。


金銭的な余裕がなければ、不安に押しつぶされてしまいそうになることもあるでしょう。体調を崩してしまっても休むこともできず、子供がいる家庭では長く働けないといった悩みも出てきます。


ベーシックインカムを導入すれば、金銭的な不安や心配が解消されます。また、子供が欲しいけれど収入的にもう無理だと諦めている家庭でも、ベーシックインカムがあればそういった悩みが解消されます。


働かなくてはいけない、と気持ちを切り詰めれば詰めるほど、子供に優しくなれないというお母さんやお父さんもいることでしょう。金銭的な余裕というのは、家庭内における精神面でのゆとりでもあると思います。


出産や育児も行いやすい環境となり、少子化対策にも貢献できるのではないでしょうか。

ベーシックインカム 導入のデメリット

ベーシックインカムにはメリットがある一方で、もちろんですがデメリットも存在します。考えられるデメリットを大きく分けると、

  • 財源の確保について
  • 働かない人が増える
この2つが上げられます。財源の確保はもちろんですが、お金を受け取れるのであれば働きたくないと考える国民も増えてしまう可能性があります。そうなってしまうと、日本の経済に影響を与えかねません。


ここでは、ベーシックインカムをすでに導入している国を参考に具体的なデメリットを解説していきます。

ベーシックインカム のデメリット①財源の確保が難しい

日本人1人が生きてくために最低限必要な金額がいくらかご存知でしょうか?生活水準や住んでいる地域によって大きな差が出てくるとは思いますが、具体的な解説を行いたいのでここではフィンランドのベーシックインカム導入実験を参考に、7万円と仮定したいと思います。


日本の人口は約1億2700万人とされており、全員に7万円を支給した場合の金額は8兆4000億円必要となります。これは1か月の金額で、1年にすると100兆8,000億円にもなってしまいます。


日本政府は、100兆8,000億円もの大金を国家予算でねん出できるのでしょうか。2019年の国家予算を見てみましょう。

税区分31年度予算(目安)
税収 624,950億円
その他収入
 50,556億円
公債金318,786億円
その他318,786億円
合計994,291億円

(参考:平成31年度予算のポイント


この表を見ても分かるように、日本の国家予算では賄うことはできないでしょう。ここからさらに消費税を値上げしたとしても、年間100兆円には到底及びません。


ベーシックインカムを実現させるためには、大幅な増税を行うことと国民の理解を得る必要があります。かなり大きな問題となるのではないでしょうか。

ベーシックインカム のデメリット②働かない人が増える可能性がある

ベーシックインカムを導入すれば、働かなくても生活ができるお金を受け取れることになります。「働かなくても生活できるなら、働きたくない」という考えの方も増えてしまう可能性が高いです。


ベーシックインカムによって労働意欲を失う方も少なくないと考えます。働かない人が増えれば、日本の経済に影響が出てくるでしょう。


もし、そうなってしまえばこれまで24時間営業していたコンビニなどが昼間だけの営業になったり、平日のみの営業になる可能性もあります。生活をしていくうえで、不便さが出てきてしまうことも免れません。

ベーシックインカムの導入事例は?成功例や失敗例などの導入事例

これまで、実際にベーシックインカムを導入した国では、どのようなことが起きたのでしょうか。


今回は、下記の国の導入事例を見てみましょう。

  • フィンランド
  • カナダ
  • スイス
  • イタリア
  • オランダ
  • ドイツ

以上の国を事例として、その経緯や結果をご紹介します。

ベーシックインカム の導入事例①フィンランド

フィンランドでは、ヨーロッパ初の試みとして2017年からベーシックインカムの導入実験が行われました。


その内容は、無作為に選ばれた失業中の2000人に対し、ひと月あたり失業保険とほぼ同額の560ユーロ(約7万円)を支給し、雇用状態健康状態にどのような変化が起こるかが観察されるというものでした。


最終的な結果は2021年1月現在未発表ですが、2019年に公表された暫定結果によると、ベーシックインカム給付によってフィンランドでは

  • 雇用には大きな影響が見られなかった
  • 健康・ストレス面では問題が明らかに少なくなった
とのことです。

フィンランド政府はこの試験運用を延長することなく終了しています。

ベーシックインカム の導入事例②カナダ

カナダでは2017年、当時の首相キャサリン・ウィンカム氏のもとでベーシックインカム導入実験が行われました。


内容はオンタリオ州の約4000人が、無条件で毎月お金を受け取るというもので、世界最大級の試みでした。


しかし、3年の予定で開始されたこの実験は、ウィンカム氏に続く首相のタグ・フォード氏の決定により、約1年で中止となっています。


その理由はコスト面にあり、新政権の子ども・コミュニティー・ソーシャルサービス大臣、リサ・マクラウド氏は取材に対して「導入実験は費用がかかり過ぎて、オンタリオ州の家庭に対する施策になっていない」と明かしたということです。

ベーシックインカム の導入事例③スイス

スイスでは2016年、ベーシックインカム導入の是非を問う、国民投票が実施されました。スイスでは有権者10万人の署名を集めれば国民投票を行うことができます。


導入推進派が「貧困撲滅」などを訴えて署名活動を行う一方、反対派は「コストがかかり過ぎる」「労働意欲を削ぎ、生産性が低下する」と主張し、連邦政府も反対の立場をとっていました。


国民投票では、投票率が46.3%となり、賛成23.1%、反対76.9%と大差で否決という結果でした。


このようにベーシックインカムの是非を国民全体に問うという事例は、世界初のことです。

ベーシックインカム の導入事例④イタリア

2019年からベーシックインカム制度が実施されているのがイタリアです。


導入の経緯として、2018年の総選挙で、ベーシックインカム導入を公約に掲げる「五つ星運動」が最大得票を獲得しました。


五つ星運動は特に、失業率が高く貧困の問題が深刻な、イタリア南部層に支持されています。


この支持層にとって、働かなくても一定のお金が受け取れるベーシックインカム制度が魅力的であることは間違いないでしょう。


そして2018年6月に発足したジュゼッペ・コンテ政権のもとで制度開始に踏み切りましたが、財源が明確でないことから「ばらまき政策」との批判もあります。

ベーシックインカム の導入事例⑤オランダ

オランダでは国内で4番目に大きな都市ユトレヒトにおいて、2016年からベーシックインカムの導入実験が行われています。


この実験では、ベーシックインカム適用グループと現行の福祉法適用グループに分けて比較することで制度の効果が検証されます。


2017年からは更に実験の規模が拡大しているという情報もあり、オランダはベーシックインカムに対して積極的な事例であると言えるかもしれません。

ベーシックインカム の導入事例⑥ドイツ

2016年スイスでのベーシックインカム国民投票事例を受け、近隣の国でもベーシックインカムに関する議論はより活発になりました。


ドイツでは、政府や民間でさまざまな議論が行われていますが、肯定・否定の理由はほぼ同じところに集約されるようです。

  • ベーシックインカム肯定の理由:貧困対策、少子化対策になる
  • ベーシックインカム否定の理由:社会保障の水準が下がる。勤労意欲が失われ、勤勉な国民性が減退する
またドイツには、民間企業がクラウドファンディングを利用してベーシックインカム提供を行ったという、珍しい事例があります。

対象者は85人と決して多くありませんが、月額1000ドル(約11万6300円)が1年間にわたって支給されました。

ベーシックインカム の現在の導入事例

ベーシックインカムを現在も導入している国はこちらです。

  • ブラジル
  • カタール
実際に、ベーシックインカムの制度を行いながら国民が今も生活している国になります。しかし、ただお金を支援するのではなく、ある程度ルールを設定しているようです。

ここでは、2つの国の導入例を紹介します。

ベーシックインカム の現在の導入例①ブラジル

実は、世界で唯一、既にベーシックインカムを法制化している国がブラジルです。

ただし正確には「財源の確保に必要な税制改革が行われた後にベーシックインカムを支給する」という段階法としての制定となっています。

現在はその第一段階として「ボウサ・ファミリア」という所得制限付きの児童手当が導入されていますが、そこから進んでいないという状況のようです。  

ベーシックインカム の現在の導入例②カタール

ベーシックインカムという名前は付いていませんが、これに近い枠組みが適用されているのが、中東のカタールです。カタールでは、医療費、大学までの学費、電気・水道・光熱費が無料となっています。

原油生産国であるカタールでは、その豊かな財源をもって、国民にこのような手厚い制度を提供することが可能となっているのです。

参考:ベーシックインカムの導入は日本でもされる?

ベーシックインカムについて、世界各国の事例を見てきましたが、果たして日本での導入はあり得るのでしょうか。


実際のところ、日本も社会保障や税制の仕組みが複雑化し、見直すべきだという声があがっています。(参考:厚生労働省|社会保障改革


その取り組みの1つとしてベーシックインカム導入を掲げる政党には、国民民主党緑の党グリーンズジャパンなどがありますが、やはり財源等の問題に対する解決策は明らかになっていません。


ベーシックインカム導入には、スイスの事例のように国民投票とまではいかなくとも、国民全体がこの問題に関心を持ち活発な議論が行われることが重要となるでしょう。

まとめ:ベーシックインカムの導入事例は意外と多い

ベーシックインカムについて、その内容や各国の導入事例を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは

  • ベーシックインカムとは、国民に最低限度の生活を保障するため、政府が無条件で現金を支給する制度
  • ベーシックインカムのメリットには貧困の解消や少子化への歯止め、国民がやりたいことに全力を費やすことができる
  • ベーシックインカムのデメリットは、多大な財源が必要となることや労働意欲減退の懸念がある
  • ベーシックインカムは多くの国で導入実験が行われているが、成功とみられる事例はほとんどない
  • 日本でも社会保障見直しの必要性は高まっているが、ベーシックインカム導入に結びつくかは未知数
でした。

国民全員が現金をもらえるというと夢のような制度ですが、話はそう単純ではありません。

導入実験を行った国ではっきりとした成功事例がほとんどないことからも読み取れるように、お金を支給されることで、本当に誰もが幸福な社会に結びつくかは「まだ何とも言えない」というのが実際のところです。

ベーシックインカムをきっかけに、国と個人のお金や生活のあり方について理解を深めていけたら良いですね。

保険ROOMでは、他にも読んでおきたいマネーライフに関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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