ベーシックインカムってなに?スイスやフィンランドなどの導入事例を紹介

「ベーシックインカムって何?」「ベーシックインカムの導入国や事例はある?」と無条件でお金が欲しい人は疑問に思うはずです。今回は、ベーシックインカムについて、フィンランド・スイス・イタリア・カナダ・オランダ・ドイツでの導入事例や、成功例や失敗例を解説します!

ベーシックインカムはフィンランドやスイスでも?成功や失敗の事例を紹介

先行きの不透明な現代、生活にまつわるお金のことで悩んでいる方も少なくないと思います。


AI化が進む中で仕事はどうなるのか、老後に必要なお金は実際のところどれくらいなのか、誰もが無関心ではいられません。


ところで「ベーシックインカム」という言葉をご存知でしょうか。


ベーシックインカムとは、簡単に言うと、政府からすべての国民に対し、最低限度の生活を送るための現金を支給するという構想で、現在すでに導入されている国もあります。


この記事では

  • ベーシックインカムとは何か
  • 各国のベーシックインカム導入事例とその成果
  • ベーシックインカムは日本でも導入されるか
などについて詳しく解説します。

この記事を読めばベーシックインカムについて事例を踏まえて理解でき、国と個人という大きな視点からお金について考えることができます。ぜひ最後までご覧ください。

ベーシックインカムって何?導入のメリットを紹介

ベーシックインカムというのは決して新しい概念ではありません。


さかのぼって18世紀末、トマス・ペインとトマス・スペンスという、2人のイングランド人哲学者によってこの構想が提唱されました。


20世紀以降には多くの社会学者や経済学者によって研究が進み、現在ではヨーロッパを中心に試験的な導入などが行われています。


前述の通りベーシックインカムとは、政府から国民に対する、最低限度の生活を保障するための現金支給を指します。


その具体的なメリットとしては次のようなことが挙げられます。

  1. すべての国民の生活水準が底上げされ、貧困の解消になる
  2. 世帯の人数が増えればその分支給額が増えることから、少子化対策につながる
  3. 複雑化した社会保障制度を1つにまとめることができる
  4. 仮に仕事を失っても生活が保障されているため、条件の悪い企業などで働く必要がなくなり、ブラック企業が淘汰される
3の「複雑化した社会制度」については、世界中でも特にヨーロッパ諸国で顕著な現象であり、そのためベーシックインカムのトライアル事例は、ヨーロッパに多くなっています。

なおここで「つまり社会主義と同じ?」と思われた方もいるかもしれません。

確かにどちらも現金支給による生活保障というシステムですが、決定的に異なる点があります。

それは、社会主義では働いて上げた利益が自分のものにならないのに対し、ベーシックインカムは自分の労働による利益は自分のものになるという点です。

このため社会主義のように「働くだけ損だから」と勤労意欲を失うことは、ベーシックインカム制度ではないと考えられています。

ベーシックインカムの導入国は?導入例や事例・結果を紹介

これまで、実際にベーシックインカムを導入した国では、どのようなことが起きたのでしょうか。


いくつかの国を事例として、その経緯や結果をご紹介します。

事例①:フィンランド

フィンランドでは、ヨーロッパ初の試みとして2017年からベーシックインカムの導入実験が行われました。


その内容は、無作為に選ばれた失業中の2000人に対し、ひと月あたり失業保険とほぼ同額の560ユーロ(約7万円)を支給し、雇用状態健康状態にどのような変化が起こるかが観察されるというものでした。


最終的な結果は2020年2月現在未発表ですが、2019年に公表された暫定結果によると、ベーシックインカム給付によってフィンランドでは

  • 雇用には大きな影響が見られなかった
  • 健康・ストレス面では問題が明らかに少なくなった
とのことです。

フィンランド政府はこの試験運用を延長することなく終了しています。

事例②:カナダ

カナダでは2017年、当時の首相キャサリン・ウィンカム氏のもとでベーシックインカム導入実験が行われました。


内容はオンタリオ州の約4000人が、無条件で毎月お金を受け取るというもので、世界最大級の試みでした。


しかし、3年の予定で開始されたこの実験は、ウィンカム氏に続く首相のタグ・フォード氏の決定により、約1年で中止となっています。


その理由はコスト面にあり、新政権の子ども・コミュニティー・ソーシャルサービス大臣、リサ・マクラウド氏は取材に対して「導入実験は費用がかかり過ぎて、オンタリオ州の家庭に対する施策になっていない」と明かしたということです。

事例③:スイス

スイスでは2016年、ベーシックインカム導入の是非を問う、国民投票が実施されました。スイスでは有権者10万人の署名を集めれば国民投票を行うことができます。


導入推進派が「貧困撲滅」などを訴えて署名活動を行う一方、反対派は「コストがかかり過ぎる」「労働意欲を削ぎ、生産性が低下する」と主張し、連邦政府も反対の立場をとっていました。


国民投票では、投票率が46.3%となり、賛成23.1%、反対76.9%と大差で否決という結果でした。


このようにベーシックインカムの是非を国民全体に問うという事例は、世界初のことです。

事例④:イタリア

2019年からベーシックインカム制度が実施されているのがイタリアです。


導入の経緯として、2018年の総選挙で、ベーシックインカム導入を公約に掲げる「五つ星運動」が最大得票を獲得しました。


五つ星運動は特に、失業率が高く貧困の問題が深刻な、イタリア南部層に支持されています。


この支持層にとって、働かなくても一定のお金が受け取れるベーシックインカム制度が魅力的であることは間違いないでしょう。


そして2018年6月に発足したジュゼッペ・コンテ政権のもとで制度開始に踏み切りましたが、財源が明確でないことから「ばらまき政策」との批判もあります。

事例⑤:オランダ

オランダでは国内で4番目に大きな都市ユトレヒトにおいて、2016年からベーシックインカムの導入実験が行われています。


この実験では、ベーシックインカム適用グループと現行の福祉法適用グループに分けて比較することで制度の効果が検証されます。


2017年からは更に実験の規模が拡大しているという情報もあり、オランダはベーシックインカムに対して積極的な事例であると言えるかもしれません。

事例⑤:ドイツ

2016年スイスでのベーシックインカム国民投票事例を受け、近隣の国でもベーシックインカムに関する議論はより活発になりました。


ドイツでは、政府や民間でさまざまな議論が行われていますが、肯定・否定の理由はほぼ同じところに集約されるようです。

  • ベーシックインカム肯定の理由:貧困対策、少子化対策になる
  • ベーシックインカム否定の理由:社会保障の水準が下がる。勤労意欲が失われ、勤勉な国民性が減退する
またドイツには、民間企業がクラウドファンディングを利用してベーシックインカム提供を行ったという、珍しい事例があります。

対象者は85人と決して多くありませんが、月額1000ドル(約11万6300円)が1年間にわたって支給されました。

成功例より失敗例が多い理由は?ベーシックインカム導入のデメリット

ここまでいくつかの国のベーシックインカム導入例を見てきましたが、全体的に見て、成功を収めた事例はほとんどないことにお気づきかと思います。


国民投票の時点で否決となったスイス、予定より早く実験を打ち切ったカナダなどを含め、失敗事例の方が目立つのはなぜでしょうか。


この理由として、次のようなベーシックインカムのデメリットが挙げられます。


財源の確保の問題

どこの国であれ、すべての国民に無条件で現金を支給するとなれば、巨額の財源が必要になります。


社会保障制度から移行する形での実施となるため、社会保障費を回すことはまず考えられますが、それだけで十分とは言えません。


そのため、財源の確保に向けた大幅な税制改革が必須となりますが、導入国の中ではその見通しが追いついていない事例が多数派です。


労働意欲の減退

ベーシックインカムは社会主義と違い、私有財産が認められるため労働意欲は削がれないと言われますが、これはあくまでも理想論です。


いざ働かなくても生活ができるとなった時に、人間がどのように行動するかは、それぞれの所得状況なども含めて未知数です。


その結果として、あるべき経済競争が働かなくなることなどが懸念されています。

ベーシックインカムの現在の実施国

期間限定の導入実験とは異なり、現在、正式な制度としてベーシックインカムに近いものを実施している国もあります。


ベーシックインカムそのものというわけではありませんが、2つの国の実施事例を紹介します。


ブラジル

実は、世界で唯一、既にベーシックインカムを法制化している国がブラジルです。


ただし正確には「財源の確保に必要な税制改革が行われた後にベーシックインカムを支給する」という段階法としての制定となっています。


現在はその第一段階として「ボウサ・ファミリア」という所得制限付きの児童手当が導入されていますが、そこから進んでいないという状況のようです。


カタール

ベーシックインカムという名前は付いていませんが、これに近い枠組みが適用されているのが、中東のカタールです。カタールでは、医療費、大学までの学費、電気・水道・光熱費が無料となっています。

原油生産国であるカタールでは、その豊かな財源をもって、国民にこのような手厚い制度を提供することが可能となっているのです。

ベーシックインカムの導入は日本でもされる?

ベーシックインカムについて、世界各国の事例を見てきましたが、果たして日本での導入はあり得るのでしょうか。


実際のところ、日本も社会保障や税制の仕組みが複雑化し、見直すべきだという声があがっています。(参考:厚生労働省|社会保障改革


その取り組みの1つとしてベーシックインカム導入を掲げる政党には、国民民主党緑の党グリーンズジャパンなどがありますが、やはり財源等の問題に対する解決策は明らかになっていません。


ベーシックインカム導入には、スイスの事例のように国民投票とまではいかなくとも、国民全体がこの問題に関心を持ち活発な議論が行われることが重要となるでしょう。

まとめ:ベーシックインカムの導入国の事例は多い

ベーシックインカムについて、その内容や各国の導入事例を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは

  • ベーシックインカムとは、国民に最低限度の生活を保障するため、政府が無条件で現金を支給する制度
  • ベーシックインカムのメリットには貧困の解消や少子化への歯止め、一方デメリットには多大な財源が必要となることや労働意欲減退の懸念がある
  • ベーシックインカムは多くの国で導入実験が行われているが、成功とみられる事例はほとんどない
  • 日本でも社会保障見直しの必要性は高まっているが、ベーシックインカム導入に結びつくかは未知数
でした。

国民全員が現金をもらえるというと夢のような制度ですが、話はそう単純ではありません。

導入実験を行った国ではっきりとした成功事例がほとんどないことからも読み取れるように、お金を支給されることで、本当に誰もが幸福な社会に結びつくかは「まだ何とも言えない」というのが実際のところです。

ベーシックインカムをきっかけに、国と個人のお金や生活のあり方について理解を深めていけたら良いですね。

保険ROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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