ドイツの年金制度の仕組みや特徴とは?年金額や年金問題を日本と比較

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少子高齢化問題は年金問題と大きく関わっており、日本に似た年金制度のドイツでも公的年金の支給条件が年々厳しくなっています。今回はドイツの年金制度の仕組みや問題点、今後の課題を日本との比較を通して解説します。ドイツ駐在員の年金の還付や受け取りについても解説します。

ドイツの年金制度について仕組みや特徴を解説


少子高齢化が進み、保険料率が19.9 %と高くなりこれ以上保険料を集めることが困難なドイツ。この状況から、年金受給開始年齢65歳から67歳に上げるなど年金支給条件が厳しくなっています。


自分が積み立てたお金を年金として将来受け取る訳ではなく、現役世代が高齢者世代の年金を支える方式が日本と似ている点であり、気になる方も多いのではないでしょうか。厚生労働省のドイツの年金の財政検証によれば、日本と同じく、集めた年金だけでは不足し、国庫補助金を利用しているようです。


そんなドイツ年金制度の仕組み、特徴・問題点と今後の課題について、日本の年金制度との比較を通して解説します。具体的には

  • ドイツの年金制度改革について
  • リースター年金について

この辺りにも触れて、具体的にドイツの年金制度を解説していきます。


他にも、駐在員の日本人の方や国際結婚してドイツの年金制度に興味を持っている方のの年金についても詳しく説明しますので、是非最後までご覧ください。

ドイツの年金制度の仕組みと年金制度改革とは?

世界には様々な年金制度がありますが、日本との類似点が多いのがドイツの年金制度です。制度の仕組みだけでなく制度改革の経緯も含めて日本と似ていて、日本の年金制度を考える上でも非常に参考になります。

しかしその一方で年金制度の加入対象者がそもそも全国民ではない等、日本とは異なる部分もあります。

会社員や公務員、自営業など現地で働いて年金制度に加入した場合には、老後の生活に備えてドイツの年金制度の仕組みを理解しておくことが大切です。

そこで以下ではドイツの年金制度の仕組み年金制度改革について解説していきます。

日本とも比較しながら分かり易く紹介していくので、ドイツの年金について是非理解を深めて下さい。

ドイツの年金制度の仕組みの特徴とは?

高齢者世代が受給する年金を現役世代が負担する賦課方式である点は日本と同じです。保険料は労使で半分ずつ負担し、自営業者は全額自己負担になります。


老齢年金の受給開始年齢は65歳7か月で、受給要件として5年以上の加入期間が必要です。繰上げ・繰下げも可能ですが、所得が一定以上だと繰上げできず、繰下げる場合の年齢に制限がない点は日本と異なります。


なお現在の日本では繰下げ受給できる年齢を75歳に延長する議論が起きていますが、そもそも年齢制限自体を無くすという制度設計もあり得るということです。この点でドイツの年金制度は大いに参考になります。


また年金加入対象サラリーマン一部の公務員、そして一部の自営業者のみです。日本のような国民皆年金制度ではなく、無職の人や主婦は加入できません。


ここで社会保障が充実しているイメージを欧州に抱く人も多いので、無年金者が生じる制度設計に驚く人もいると思います。しかし主要国の年金制度では寧ろ日本のような国民皆年金制度のほうが稀なケースです。


年金制度に加入する段階で収入条件等の制限を設けている国は思いのほか多く、収入がない主婦などが国際結婚等で現地で生活する場合には注意が必要です。


ドイツの場合は後述するリースター年金があるので、確定拠出年金に相当するリースター年金に加入するか日本の国民年金に任意加入する方法が考えられます。


海外の年金制度の加入者は、日本の年金制度の仕組みを当たり前と考えず、各国の制度の仕組みをしっかりと理解することが大切です。

ドイツの年金制度での受給額はいくら?受給資格は?

ドイツの年金をもらうためには5年以上の加入期間が必要です。日本やアメリカは10年になっています。


ただし日本とドイツは年金協定を結んでいるので、ドイツでの加入期間が5年未満でも日独合計で5年以上の年金加入期間があれば支給対象になります。


年金協定があると両国の加入期間を合算して受給要件を判定でき、外国人が短期間だけ働いた場合でも納めた年金保険料が掛け捨てにならずに済む仕組みです。


日本は多くの国と年金協定を結んでおり、ドイツとも締結しているので現地での就労期間が短くても受給資格を得られる場合があります。


ただし年金協定の内容は国ごとに異なるので注意が必要です。例えば日米社会保障協定のように、アメリカと日本の年金を併給する場合にアメリカの年金額が減額されるようなケースがあります。


ドイツの年金の場合には日本の年金との併給でドイツの年金額が減額されることはありませんが、期間が通算されるのは受給要件の5年を判定する場合のみです。


年金額はドイツでの加入期間の長さを基に計算されるので、年金額を計算する際の期間まで日本とドイツでの年金加入期間が合算されるわけではありません。


そして年金額を計算する際の基準額は2018年7月時点で32.03ユーロ/月です。そのため例えば加入期間が3年であれば基準額の3倍もらえる計算になります。


加入期間の長さにより年金額は変わるので平均的にいくらもらえるかは一概に言えませんが、ドイツでの加入期間が長くなれば当然年金額も増える仕組みです。


なお年金を受給する際はユーロではなく円単位で振込まれるので、為替レート次第で年金額は変わります。


さらに振込手数料が差し引かれる場合も多いので、実際の手取り額を計算する場合には注意が必要です。これらの諸経費も考慮して計算するようにしましょう。

ドイツの年金制度改革・リースター年金について

日本と同様にドイツでも年金の保険料率や受給開始年齢の引き上げなど多くの制度改革が行われています。


そして改革の1つとして行われたのが2002年のリースター年金制度の創設です。様々な制度改正が実施されて実質的な給付水準が下がる中、それを補う措置として任意加入できる年金制度として導入されました。


リースター年金は積立方式の年金制度で、日本の確定拠出年金に相当する制度です。個人型と企業型があり、会社員とその配偶者を対象としています。


政府の助成金税制優遇措置が設けられている点が特徴で、配偶者の有無や子供の人数によって助成金の支給額が増額される仕組みになっています。


そして後述するようにドイツの年金財政は厳しさを増しているので、公的年金でカバーする範囲を縮小する目的で創られた制度とも言えます。


日本でもほぼ同時期に確定拠出年金制度が導入されましたが、公的年金を縮小して個人の判断・運用に委ねる流れは日本だけでなく世界の潮流と言えそうです。

高齢化の進むドイツの年金制度の問題点や課題は?

日本では高齢化率が25%を超えて社会問題化していますが、ドイツも高齢化率が既に20%を超えていて、日本と同様に高齢化が深刻な問題になっています。


賦課方式を採用している国で高齢化が進展すれば、年金受給者1人を支える現役世代の平均人数は減っていき、年金財政が厳しさを増していくからです。


そのためドイツでは年金制度を維持するために制度改革が段階的に実施され、保険料率の改定受給開始年齢の67歳への引き上げなどが行われてきました。


しかしあくまで既存の制度を修正するだけで抜本的な改革は行われず、年金財政全体としては収支が悪化して基金を取り崩す必要が出て来ています。


多くの制度改正を経た結果として年金の給付水準は既に切り下げられていますが、今後さらに制度が改正されて支給額の減額が行われる可能性もあります。


また日本とは異なる事情として、EU域内は外国人の行き来が自由にできることやドイツで高止まりしている失業率の問題も挙げられます。


就労目的の移民が増えるかどうかで年金保険料の負担者の数が変わりますし、ドイツ国内の失業率が今後改善するかどうかで年金保険料収入も変わってきます。


国際結婚などによって現地で生活したり働いたりした経験がある方は、現在のドイツの年金制度の仕組みを理解するだけでなく、今後のドイツの社会保障制度改革の行方についても注視していくべきでしょう。

駐在員でドイツの年金制度に加入、還付や受け取りは?

駐在員としてドイツで働いた期間があり、ドイツの老齢年金の受給資格を満たした場合、日本に住んでいるのであれば日本年金機構で手続きを行えます。


厚生年金加入者は事業主が、国民年金加入者は本人がそれぞれ手続きを行いますが、申請書は日本年金機構HPからもダウンロードが可能です。


またドイツの年金制度加入期間が5年未満で且つ帰国後2年以上が経過している場合には、保険料の払い戻しを受けることが可能です。


申請にあたっては大使館・総領事館での手続きが必要で、ドイツ大使館HPから申請書をダウンロードすることもできます。


ただし還付申請をしても受け取れるのは自身が負担した保険料分だけなので、この点には注意が必要です。


ドイツの年金は日本と同様に労使で半分ずつ保険料を負担する仕組みなので、還付を受けずに将来年金を受け取れば倍の保険料分が反映されます。


今還付金を受け取るべきなのか老後の年金額に反映させたほうが良いのか、還付申請をする場合にはよく考えてから手続きをするようにしましょう。

まとめ:ドイツの年金制度の仕組みと特徴

「ドイツの年金制度の仕組みと特徴」について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?


この記事のポイントは

  • 賦課方式である点などドイツの年金制度は日本と似ている点が多い
  • 日本と同様にドイツでも高齢化が進展して年金財政の健全性・持続可能性が問題になっている
  • ドイツの年金や保険料の還付金をもらう場合は日本年金機構やドイツ大使館で手続きができる

でした。


老齢年金受給のための最低加入期間がある点など、日本の制度と類似点が多いのがドイツの年金制度です。


ただし日本のように国民皆年金制度ではなく、また一定以上の所得があると繰上受給ができない仕組みになっている等、日本とは異なる点も見られます。


老齢年金を受け取るには年金加入期間が最低5年必要ですが、日独間で年金協定が結ばれているので日本での年金加入期間と通算して5年あれば受給が可能です。


ドイツの年金加入期間が短い場合には保険料の還付を受けることもできるので、該当する場合には日本年金機構やドイツ大使館で確認してみましょう。


また今回紹介した現行のドイツの年金制度の仕組みだけでなく、今後のドイツの社会保障政策の動向も注目していかなければいけません。


日本と同様に年金財政の持続可能性はドイツでも問題になっているので、ドイツ年金制度加入者の年金額が今後改定される可能性があるからです。


そして各国の年金制度も含めて日頃から年金について考える意識が、老後への確実な備えにつながります。


ほけんROOMで掲載している他の記事も参考にしながら、年金に関する知識を是非深めていって下さい。

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