医療保険の給付対象にならないのはどんな場合?詳細に解説します!

入院や手術をしても、公的医療保険や民間の医療保険では給付対象外となる場合があります。主に、業務中だったという状況に加え、病気・ケガの治療目的では無い入院・手術、健康診断等も給付対象外になります。病気・ケガのケースによっては、他の保険が優先されることがあります。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

医療保険の給付対象にならないケースに注意

万が一の病気やケガに備える医療保険。

しかし、いつ何時でもどんなケースであっても、給付対象になるとはいえません。


医療保険より別の保険が優先的に適用されたり、保険会社が定めた所定の要件に該当しない病気の治療であったり、そもそも病気やケガの治療を目的とした手術や入院でなかったりした場合は、医療保険の適用はありません。


実は、健康診断なども医療保険の対象ではありません。


今回は医療保険の給付対象にならない各ケースを取り上げ、紹介していきます。


労災保険や損害保険が優先されるとき

主にケガの場合が対象になりますが、どんな状況下でケガをしたかによっては、医療保険が適用されなくなります。

例えば、ケガの原因が業務上の事故または通勤途中の事故であった場合、医療保険の給付対象ではありません。


保険加入者が労働をしている最中、そして労働を行うために事業所へ向かっている時に、事故に巻き込まれてケガをした場合には、労災保険の給付対象となります。


一方、事業所へ向かうという場合ではなく、例えば、買い物やデート、旅行先や故郷へ帰省する際に交通事故に遭った場合は、損害保険(自動車保険の自賠責保険)から、被害者の医療費を負担することになります。


基本的には、労災保険や自賠責保険と民間の医療保険を併用して利用することはできないということです。


当然のことながら、被害者は治療のため公的医療保険のみならず、民間の医療保険に加入しているなら、そこから給付を受けることになります。

同じ病気や関連のある病気にかかったとき

病気・ケガで入院した場合は、民間の医療保険であれば入院給付金を受け取ることができます。

保険会社の条件を見れば、1度の入院の際の支払限度額が定められています。


一度退院し、同じ病気または関連のある病気で再入院した場合には、前回を含めた1入院にカウントされてしまうことがあります。


例えば、医療保険契約の内容が1入院30日だったケースで、前回は20日入院し、退院した翌日から100日が経ち、再び関連のある病気で入院し、今度も20日入院した場合は、1入院40日間とカウントされてしまいます。つまり、10日分の入院給付金は受け取れなくなります。


ただし、前回と今回の入院について、前回の退院日の翌日から今回の再入院までの間が180日以上あいていた場合には、別々の入院として認められます

保険の保障にならない手術だった

民間の医療保険は、その全ての手術が保障の対象となるわけではありません。

契約書や約款に記載されている内容をしっかり確認する必要があります。


例えば、検査のための手術、麻酔や体内に埋め込んでいるボルトの除去等「処置」の範囲内の手術は給付対象とはなりません。

所定の状態を満たさない三大疾病

三大疾病は、がん、急性心筋梗塞、脳卒中を指します。

民間の医療保険に関して、三大疾病の保障条件が非常に厳しいと指摘されています。

  • がんの場合

がんに関しては、例えば初期のがんは保障の対象外とされたり、悪性のがんと比べて、受け取る給付金の額が大幅に減額されたりするという場合もあります。



  • 急性心筋梗塞の場合

急性心筋梗塞に関しては、最悪の場合、数時間で亡くなるケースが多い病気です。これら心疾患全体の平均入院日数は20日とされ、30日を経過すれば社会復帰は十分可能と言われています。 


しかし、民間の医療保険では大抵「60日以上継続した入院であること」が給付対象の条件とされています。そのため、この条件に当てはまる患者は非常に稀であると指摘されています。 



  • 脳卒中の場合

保障の対象は「くも膜下出血」、「脳内出血」、「脳梗塞」に限定されて、かつ、「60日以上継続した入院であること」が保障の条件である場合が多いです。


医療保険の給付対象は、ケガや病気を目的とした診療

公的および民間の医療保険の給付対象は、業務とは関係のない状況下で起きた病気やケガが対象になります。

ただし、病気やケガのための措置であっても医療保険対象外の場合があったり、そもそも手術をする必要があっても、その目的が病気やケガの治療でなかったりした場合は、医療保険の給付対象とはなりません。

健康診断や予防注射、人間ドックには医療保険は使えない

健康診断人間ドッグは、病気を発見するためには必要な措置ですが、検査にかかる医療であるため治療とはいえません。

そのため、検査の場合も公的および民間の医療保険の給付対象ではありません。


また、予防注射は、病気を予防するための措置であり、病気をしたわけでないのでこちらも対象外です。

美容整形に医療保険は使えない

美容整形の場合も顔等にメスを入れ外科的な手術を行いますが、病気の治療ではないので、こちらも公的および民間の医療保険は適用されません。

歯の矯正も同様です。

ただし、例えば乳がんの乳房再建術の場合は、医療保険を扱う生命保険会社ごとに判断が分かれます。


乳がんの際には、手術によって胸の膨らみを除去しなければならないケースがあります。


確かに手術が成功すれば、生命のリスクは軽減されますが、胸のふくらみをなくすことは治療を受けた女性にとって、大きな喪失感が伴います。


そのため、胸のふくらみを取り戻すための乳房再建術を行うことがあります。


この場合、病気の治療とはいえませんが、患者の喪失感のケアにつながる方法として、保障の対象としている民間の医療保険もあります。

美容や疲労回復のためなどの治療も医療保険の給付対象外

美容のために身体に脂肪溶解注射や脂肪吸引を施す治療も公的および民間の医療保険の給付対象外です。

また、疲労回復のためのにんにく注射や、マッサージも給付対象外となります。

検査入院やリハビリなどの入院も医療保険は給付対象外

検査入院とは、がん、肝機能障害、高血圧や糖尿病、貧血やめまい、膠原病等を対象に、精密検査を入院して行うことを指します。

疾患の疑いがある場合に入院をして検査しますが、病気やケガで入院するわけではないので公的および民間の医療保険は適用されません。


また、リハビリ施設への入所の場合も治療目的で入院するわけでは無いので、同様に医療保険の給付対象ではありません。

妊娠や出産も医療保険の給付対象ではない

正常な妊娠や出産は医療保険の対象外です、ただし、帝王切開のような異常分娩の場合には、公的および民間の医療保険が適用されます。

特に民間の女性向けの保険では、帝王切開は病気ではないものの、保障の対象になっており、通常の医療保険の入院給付金等に受け取る金額が更に上乗せされる場合が多く、手厚い保障が期待できます。

医療保険の現金給付と現物給付

医療の場で公的医療保険が適用される場合は、

  1. 診察
  2. 薬剤の給付
  3. シップやギブス等、医療材料(器具)の支給
  4. (保険診療内での)医療
  5. 入院等

を現物支給するのが一般的です。

一方、民間の医療保険の場合は、保険会社所定の治療行為の金銭的サポートとして


  1. 入院給付金
  2. 手術給付金
  3. 通院給付金
  4. 先進医療給付金等

の現金給付を行います。

看護師の国試でも聞かれる、医療保険の給付対象は理解しておこう

公的医療保険の給付対象は以下の通りです。
  • 療養給付・・・診察、薬剤・医療材料(器具)の支給、保険診療内での医療、入院とそのための看護
  • 入院時食事療養費・・・厚生労働大臣の算出した食事代から患者が自己負担する額をさし引いた金額
  • 高額療養費・・・自己負担額を超えて支払った金額
  • 傷病手当金・・・療養の為に休職した時の手当
  • 出産育児一時金・出産手当金・・・出産した時に受け取れる給付金
  • 埋葬料・・・不幸にも加入者が亡くなった場合のお金

健康診断などは適用外という問題が看護師の国家試験(国試)でもよく聞かれるポイントとなるほど間違えやすいので、気をつけましょう。

まとめ:医療保険の給付対象について

医療保険は、業務中だったという状況に加え、病気・ケガの治療目的ではない入院・手術等でも給付対象外になります。

また、常識の範囲内ではありますが、故意の犯罪・ケンカ・泥酔状態によるケガ、医師の指示に従わなかったために病気が悪化したというようなケースでは、医療保険の給付が制限され、最悪には全く給付が受けられない場合もあります。

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