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自賠責保険の他人性とは?交通事故で配偶者にケガをさせた場合を解説

交通事故による自賠責の対人賠償責任保険請求では、「他人性」が問題となることがあります。自分の配偶者・親族に交通事故でケガをさせてしまった場合、具体的な事実関係から判断して配偶者・親族に「他人性」が認められ、保険金(賠償金)が下りるケースもあります。

自賠責の他人性とは?配偶者との事故で保険金はおりるの?

交通事故による自賠責保険の請求では、「他人性」が問題となることがあります。


自賠責保険の対人賠償責任保険では、ご自分の起こした交通事故で自身がケガをしても保険金は支払われません。


では、自分の配偶者・親族・同僚にケガをさせてしまった場合はどうなるのでしょうか。


一見、配偶者や親族は血縁上経済上、同僚などは精神的にも自分とつながっているで、『他人』というわけではないですよね。


しかし、配偶者や親族であっても、運行供用者や運転者本人でない限り『他人』に当たる場合もあるのはご存知でしょうか。


そこで今回は、「自賠責において損害賠償請求できる他人とは誰か」について


  • 自賠責法3条における他人の範囲
  • 配偶者間の事故でも他人性が認められない場合
  • 任意保険と他人性

以上のことを中心に解説していきます。 

この記事を読んでいただければ、自賠責において損害賠償請求できる他人の範囲、請求の際の注意点を知ることに役立つと思います。 

ぜひ最後までご覧ください。 



自賠責において損害賠償請求できる他人(他人性)について!

自分のために自動車を運行の用に供する者は、その運行により「他人」の生命や身体を害したとき、その損害を賠償する責任があると法律で規定されています(自動車損害賠償保障法第3条)。


こちらでは、まず運行供用者へ責任を追求できる「他人」の範囲について解説していきます。

自賠責法3条について!他人性の問題とは?

法律では運行供用者責任について、交通事故により他人の生命または身体を侵害したときに発生すると規定しています。


つまり、損害を被った他人であれば、運行供用者に対して損害賠償を求めることができるわけです。


ただし、この責任を追求できる「他人」とは、一体どういう人のことを指すのかが問題となります。


これを「他人性の問題」と呼びます。

自賠責法3条において他人性のない者とは?

法律の条文をみれば、運行供用者本人は,少なくとも「他人」に該当しないことになります


では、そもそも運行供用者とはどんな立場の人が該当するのでしょうか。


主に次の3つの場合が運行供用者に該当することになります。


  1. 運行支配:加害自動車の運航をコントロールできる人が当てはまります。     しかし、実際の運転手だけではなく、①自動車の運行を指示・制御する立場にある人、②危険な運行をさせないように監視や監督をするべき立場の人、運行を容認した人等であるかどうかが基準とされます。
  2. 運行利益:加害自動車の運行によって利益を得ている人が当てはまります。ただし、この利益は金銭的利益のみに限定されていません。
  3. 保有者:こちらは加害自動車の所有者が当てはまります。また、所有者から無償で自動車を借りた人も保有者に該当します。

現在の判例通説において、運行供用者に該当する人とは前記した「1」+「2」に該当する人を指します。

また、「3」に該当した場合は「1」と「2」を考慮すること無く、運行供用者に当たることになります。

自賠責法3条における他人の範囲とは?他人性の判断基準を解説!

前述した、運行供用者の条件をまとめれば、

  • ①加害自動車の運行をコントロールできて、それによって利益を得ている人、または
  • ②加害自動車を保有している人であることが必要となります。

つまり、①、②の条件に該当しない人全てが「他人」となります。

ただし、この条件をみればわかる通り、実際に自動車を運転している人だけが運行供用者に該当するわけではありません。

妻は他人か?夫婦間の交通事故は自賠責で補償される?

こちらでは運行供用者の配偶者が、法律で規定されている「他人」に該当するのか裁判で争われた事案(最高裁判所第三小法廷昭和47年5月30日)を解説します。

自賠責保険会社側は、次のように配偶者(妻)の「他人性」を否定する理由を述べました。

  • 配偶者や親族に他人性を認めれば、運行供用者(夫)が損害賠償責任を負って、同居している配偶者(妻)が損害賠償請求権を持ってしまう
  • そんなことになれば、ケガをした配偶者(妻)に保険金が下りてしまい、運行供用者(夫)まで得をしてしまうことになる

そのため、妻は他人と言えず自賠責保険から賠償金は支払えないと主張しました。

しかし裁判所は次のような判決を下しました。

  • 自賠法3条は、運行供用者および運転者以外の者を他人と規定している
  • 被害者は運行供用者の配偶者(妻)であるからという理由だけで、配偶者(妻)が他人に当らないと解すべき論拠はない
  • 具体的な事実関係から、配偶者(妻)が他人に当るかどうかを判断するべき

そのため、自賠責から損害賠償金が支払われるべきと判示しました。

この裁判所の判断は、運行供用者の配偶者のみならず、親族でも「他人」となり得ることを示しています。

自賠責法3条において配偶者間の事故でも他人性が認められない場合とは?

配偶者間の事故でも他人性が認められない場合は、


  • 加害自動車が妻の所有する車で、たまたま夫が運転し、妻が助手席に同乗していて交通事故に合い、妻が負傷したケースがあげられます。


妻が加害自動車の所有者である以上、前述した運行供用者の条件「保有者」に該当してしまうからです。


また、

  • 保有名義は夫であっても、日常的に妻が運転していたり、維持費も夫婦で平等に負担していたりした場合にも他人性が認められないことがあります。
  • 日常的に妻が運転していなくても、夫名義の加害自動車を長距離運転し、夫と妻が交互に運転しながら移動中に、妻が事故を起こした場合はもとより、夫が事故を起こした場合でも、他人性が認められないことが考えられます。


つまり夫名義の加害自動車であっても、その使用・維持・利益等にどれだけ妻が関与しているかが、他人性の有無を判断する基準となります。


ちなみに判例では、


夫婦で共同生活をしていて、加害自動車の保有名義は夫であり、維持費も夫が負担し、日常も夫が使用し、妻は運転免許も保持していない場合、事故の当時に運転補助行為もしていない事実関係であれば、妻の他人性を肯定されるとしています。  

自賠責保険だけでなく任意保険で万全の備えをしよう!

自賠責保険は強制加入であるため、自動車を所有している人なら必ず加入しなければなりません。


損害賠償の金額は次の通りとなります。


  • 傷害(被害者1名の場合)→120万円
  • 死亡(被害者1名の場合)→3,000万円
  • 後遺障害(被害者1名の場合)→75万円から4,000万円
最近、損害賠償の請求は高額となる傾向があり、自賠責保険から下りるお金だけでは不足してしまうケースもあります。

そこで任意保険に加入し、まさかの事態に十分対応できる備えを事前に行っておきましょう。

こちらでは、任意保険に加入する際の注意点を解説します。

人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険について!

ここまで述べてきた通り、自賠責保険の場合には配偶者・親族に他人性が認められ保険金が下りることもあります。


しかし、任意保険を扱う損害保険会社・共済では、約款で「被保険者(運行供用者)の親、配偶者、子が被害者になった場合、対人賠償の支払いはありません。」と明記されています。


約款に規定されている以上、対人賠償に関する保険金(賠償金)は配偶者・親族に支払われません。


なので運行供用者の交通事故が原因で、配偶者や親族がケガをした場合等は、「人身傷害補償保険」や「搭乗者傷害保険」等で補償されるよう、これらの保険に加入しておきましょう。


この2つの補償は次の内容となっています。


  • 人身傷害補償保険:補償対象となる人が死傷した場合、過失の有無に関係なく、治療費・休業損害等が補償されます。対象となる人は、自動車を運転する人、その配偶者、親族が該当します。
  • 搭乗者傷害保険:自動車に搭乗中の人が自動車事故でケガまたは死亡した場合、契約で定めた金額が補償される保険です。搭乗中の人は誰でも補償を受けることができます。

まとめ

自賠責において損害賠償請求できる他人とは誰かについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。 


今回の記事のポイントは 


  • 損害賠償責任を負う運行供用者とは、実際に運転した人に限られない
  • 配偶者や親族も運行供用者に該当しなければ「他人性」が認められ、対人賠償の対象となり自賠責保険の保険金(賠償金)が受け取れる
  • 任意保険に加入する場合は、約款で配偶者・親族の他人性は認められない旨を規定しており、対人賠償の対象外となる
  • 任意保険の場合は、人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険で家族分の補償をカバーする
でした。

自賠責保険で認められる「他人性」は、具体的な事実関係からその有無を判断されます。

そのため、「自動車は自分(夫)の名義であるから、妻や子等に他人性が必ず認められる。」、というわけではないことに注意しましょう。

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