更新日:2022/12/06
海外渡航中の従業員は労災だけでいいの?海外旅行保険は必要ない?
海外渡航中の従業員が業務中に治療費が発生するケガをすれば、労災として会社が負担しなければいけません。海外旅行保険に加入していない状態で、海外で従業員が治療したとすれば、その費用は高額になり会社の負担も大きくなってしまうでしょう。海外旅行保険と労災について解説!
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 海外渡航中の従業員には労災保険だけでいいの?海外旅行保険に加入する方がいい?
- 労災保険が適用されない部分もあるので会社は海外旅行保険に加入した方がいい
- 海外で起こった病気やケガに対しては国内での災害と同様に労災保険が適用される
- プライベートや任意参加の社員旅行の海外旅行中における傷病に対しては、労災保険が適用されない
- 海外出張する社員のため海外旅行保険を法人契約のメリットとは?
- 労災で受けられる補償は限られている?海外派遣は補償の対象外になる
- 海外出張とは認められない海外転勤なども幅広くカバーすることが出来る
- まとめ:会社は社員に海外旅行保険への加入させる義務はないが加入した方がいい
目次
海外渡航中の従業員には労災保険だけでいいの?海外旅行保険に加入する方がいい?
仕事で海外出張によく行かれる方がいらっしゃるかもしれません。
日本には労災保険といういうものがあり、会社員の方が仕事で海外に渡航してケガや病気になってしまった場合、労災保険を使い会社が費用を負担するのが一般的です。
短期での渡航は労災保険でも補償が足りるかもしれません。
しかし長期の渡航ともなると様々なリスクが生じてくるものです。
海外旅行保険の保険期間は一般的に3ヶ月ですが他にも長期向けの海外旅行保険なども販売されています。
日本では、社会健康保険制度のお陰で治療費は自己負担の3割で済みますが、海外だとそういった制度を利用することは出来ないので、治療費や医療費が高額になってしまいます。
ではこれらのことも踏まえた上で、海外渡航中の従業員は労災保険だけで十分なのか解説していきます。
労災保険が適用されない部分もあるので会社は海外旅行保険に加入した方がいい
労災保険の他にも特別加入制度を利用するという方法もあります。
海外派遣者の特別加入制度という仕組みがあり、申請すれば労災保険の適用を受けることができるので海外の事業所で働くために渡航した場合はこの制度を利用するのがおすすめです。
この制度を利用すると治療費などが海外旅行保険と同じように補償され海外旅行保険にはない、働けず賃金を受け取れない場合の休業補償というものを受けることができます。
しかしこの制度は現地法人の代表者として派遣されたような場合は、労働者とは認められず特別加入の対象者とはならないなどの規定もあります。
万が一制度を利用できない場合はやはり海外旅行保険に加入した方が安心と言えるでしょう。
海外で起こった病気やケガに対しては国内での災害と同様に労災保険が適用される
日本の労災保険についてこちらをご参考にして下さい。⇒労災保険とは
海外で起こった病気やケガに対しては国内での災害と同じように「労災保険」が適用されます。
特別な手続き等は必要ありません。
ただし、海外現地法人への出向や海外支店への転勤等の場合は対象にならないので注意しましょう。
また多くの企業が加入している海外旅行保険では、テロに起因するケガの治療や死亡は「補償対象内」としていますが、労災保険では必ずしも補償の範囲とはならない場合もあるので、注意が必要です。
プライベートや任意参加の社員旅行の海外旅行中における傷病に対しては、労災保険が適用されない
つまり業務のために海外渡航をしてプライベートの時間や休日に万が一ケガや病気になった場合は労災保険では補償されないのです。
任意の社員旅行で海外に行く場合も労災保険の適用にはならいので注意しましょう!
例え会社の行事だとしても、ハメを外して社員旅行を楽しみケガをしたとしても、会社は治療費の補償などしてくれません。
こういったことも含め会社で従業員を海外旅行保険に加入させるか、会社で加入しない場合は自分で海外旅行保険に加入することを検討しましょう。
海外出張する社員のため海外旅行保険を法人契約のメリットとは?
まず、法人契約では、従業員の福利厚生と位置づける事が出来て会社が支払う保険料は業務上必要な経費として認められるので全額損金算入が可能です。
全額損金算入となるので会社としては、税金対策にもなります。
- 保険料の合計額:自社で保険証券を発行できるサービスが受けられる
- 対象となる人数の条件を満たす:保険料が割引される
また万が一の際には、海外旅行保険の保険金受けとり人を会社指定にすると、会社が受け取った保険金の中から残された家族に「弔慰金」などの名目で、保険金の一部を遺族に支払うこともできます。
労災で受けられる補償は限られている?海外派遣は補償の対象外になる
「海外出張」の場合は、海外出張者に関して何ら特別の手続きを要することなく、所属する国内の事業場の労災保険により給付を受けられます。一方「海外派遣」の場合は、海外派遣者に関して特別加入の手続きを行っていなければ労災保険による給付を受けられません。
出典: http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040324-7-05.pdf
海外出張と海外派遣のケースを一般的に例示すると次のようになります。
海外出張とされる場合
- 商談
- 技術・仕様などの打ち合わせ
- 市場調査・会議・視察・見学
- アフターサービス
- 現地での突発的なトラブル対処
- 技術習得などのために海外に赴く場合
- 海外関連会社(現地法人、合弁会社、提携先 企業など)へ出向する場合
- 海外支店、営業所などへ転勤する場合
- 海外で行う据付工事・建設工事(有期事業)に従事する場合(統括責任者、工事監督者、一 般作業員などとして派遣される場合)
自分がどの目的や区分で海外に渡航しなければいけないのか、しっかりと会社に確認することが重要です。
いざ病気やケガをしたときに労災保険が適用されず、特別加入制度の手続きもしていないとなると大変なことになってしまいます。
海外出張とは認められない海外転勤なども幅広くカバーすることが出来る
ここまでいかがでしょうか。
労災保険があれば大丈夫!と胸を張って海外で安心して働けるでしょうか。
日本の企業に在籍し、海外へ渡航し赴任が決まった場合は、駐在用の海外旅行保険に加入することができます。
しかし海外の現地企業に就職をされる場合は、海外旅行保険へ加入することができません。
海外旅行保険の前提が、必ず日本に帰国することが条件になっていて、出発から帰国するまでが保険期間となっているためです。
現地企業へ「就職」となると、いつ日本に戻ってくるのかが分からないので、海外旅行保険へ加入することができないので注意が必要です。
渡航先の現地で企業に就職することが決まったら、現地の保険に加入した方がいいでしょう。
まとめ:会社は社員に海外旅行保険への加入させる義務はないが加入した方がいい
慣れない土地で働くということは、従業員の不安が大きいものであると思います。
加えて世界の各地ではテロや暴動騒ぎも活発になってきています。
従業員は会社の大事な財産です。
確かに、日本の法律で海外渡航中の従業員を保険に加入させなければいけない義務はありません。
しかし、渡航先の従業員に何かあったときに日本に残された遺族の悲しみは計り知れないものになるでしょう。
渡航先の情勢や治安などもしっかりと確認をし、労災保険に海外旅行保険に合わせて加入を検討しましょう。