年収1,000万円の人が損をしているもの11個って?子供がいると意外と貧乏?

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年収1,000万でも裕福ではないとは本当か

年収1,000万と聞くと、かなり豊かな生活ができるイメージですよね。ただ、実際に1,000万の方にお話を聞くと、意外とそうでもないという方も多くいます。


実は年収1,000万円だと。年金や奨学金、所得控除などの年収制限があるものほとんどに引っかかり、控除の対象外になったり税金が高くなったりと、実際は損なことが数多くあることあります。


今回は、そんな年収1,000万の方が損をしている11のことについてご紹介します。

年収1,000万の人はどのくらいいるか

そもそも年収1,000万以上の方はどのくらいいるのでしょうか。


国税庁の民間給与実態統計調査によると、給与所得者のうち年収1,000万円以上は全体の5.0%となっています。


下の図は年収1,000万円の男女別の割合です。



男性は13人に1人、女性は95人に1人となっており、年収1,000万円のほとんどが男性であることがわかります。


この記事では、この年収1,000万の方がどのようなことでどのくらいの損しているかをまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。

年収1,000万だとどのくらい損しているのか?

ここでは、年収が高いともらえる助成金が少なくなったり、税率が高くなる制度を11個ご紹介します。


必ずしも年収1,000万にラインがある制度だけではなく、600万や800万が基準になっているものもあるので、ご了承ください。

1. 所得控除・所得税

所得控除は給与所得金額から、その額に応じて一定の金額が差し引かれる制度ことを言い、年収から所得控除を引いたものが所得になります。


給与所得は年収から給与所得控除を引いた金額ですが、年収の額によって控除金額も変わります。

年収給与所得控除額
180万円以下収入金額×40%
※収入が65万未満の場合65万
180万〜360万円収入金額×20%+18万
360万〜660万円収入金額×30%+54万
660万〜1,000万円
収入金額×40%+120万
1,000〜1,500万円収入金額×5%+170万
1,500万円以上245万円(上限)


また、各種所得控除の金額も年収によって変化します。所得控除は14種類ありますが、ここでは年収によって控除額が変わる「配偶者控除」と「基礎控除」についてご紹介します。


配偶者控除

納税者本人の合計所得金額控除対象配偶者(70歳以下)
900万円以下38万円
900万〜950万円26万円
950万〜1,000万円13万円
1,000万円0円

※配偶者が70歳以上の場合は、控除額がもう少し高くなります。年収が900万円以上のかたは大幅に控除額が変わります。


基礎控除

個人の合計所得金額控除額
2,400万円以下48万円
2,400万〜2,450万円32万円
2,450万〜2,500万円16万円
2,500万円以上0円

基礎控除金額は所得に関わらず一律38万円でしたが、2020年から上の表のように所得によって控除額が変わり、所得金額が2,500万円以上の場合は適用されなくなりました。


他にも所得税も、以下のように年収によって税率が異なります。

課税される所得金額税率控除額
195万円未満5%0円
196〜330万円10%97,5004円
330〜695万円20%427,500円
695〜900万円23%636,000円
900〜1,800万円33%1,536,000円
1,800〜4,000万円40%2,796,000円
4,000万円以上45%4,796,000円

このように給与所得控除各種所得控除所得税率いずれも年収によって控除額や税率が異なり、年収が高いほど控除金額が減額したり、所得税が高くなってしまいます。


参考:国税庁

2. 児童手当

児童手当は、子供の年齢によって支給額が変わります。


基本的には、

支給対象児童月額支給額/1人あたり
0〜3歳未満15,000円(一律)
3歳〜小学校修了前10,000円(第3子以降は15,000円)
中学生10,000円

このように中学生まで支給されるようになっています。


ただし、親の所得によっても支給金額が変わるの所得制限があり、所得制限世帯の対象になるのは年収が約960万円以上とされています。


共働きの場合は所得が高い方の年収で決められるので、夫が900万円で妻が400万円の場合は通常通りの児童手当の支給を受けられますが、夫が1,000万円で妻が300万円の場合は所得制限世帯となってしまいます。


所得制限世帯の対象になると、子供1人あたり月額5,000円となってしまうので損ですね。

3. 高額療養費制度

高額療養費制度とは、医療費の支払いが自己負担限度額を超えた場合にその超えた分を払い戻してくれる制度のことです。


この高額療養費制度も、以下のように年収によって自己負担限度額が異なるのです。


70歳未満の場合

年収自己負担限度額
住民税非課税者35,400円
〜370万円57,600円
370万〜770万円80,100円+(総医療費-267,000)×1%
770万〜1,160万円167,400円+(総医療費-558,000)×1%
1,160万円〜252,600円+(総医療費-842,000)×1%


70歳以上の場合

年収外来(個人ごと)
自己負担限度額
外来・入院(世帯ごと)
自己負担限度額
住民税非課税者8,000円15,000円
156万〜370万円18,000円57,600円
370万~770万円-80,100円+
(総医療費-267,000円)×1%
約770万~1,160万円-167,400円+
(総医療費-558,000円)×1%
約1,160万円~-252,600円+
(総医療費-842,000円)×1%


医療費の負担が軽減されるのは嬉しいですが、年収が高いほど自己負担額の上限も上がってしまうのは大変ですね。


参考:厚生労働省

4. 年金制度

年金には国民年金と厚生年金の2種類があります。


20歳〜60歳の全国民に加入義務がある国民年金保険料は一律に設定されていますが、会社員が加入する厚生年金は以下の表のように年収によって支払う保険料が異なります。

年収保険料
300万円183,000円
400万円366,000円
500万円457,500円
600万円549,000円
700万円640,500円
800万円680,760円
1000万円680,760円


以下のグラフは年収別にもらえる年金受給額です。

年収年金受給額
300万円117,000円
400万円134,000円
500万円151,000円
600万円169,000円
700万円186,000円
750万円〜194,000円

保険料を多く払う分、もらえる年金金額も多くなります。


ただ、この二つのグラフからわかるように、支払う保険料は年収が800万円以上になると増えなくなりますが、受給額が一定になるのは年収が750万円以上の場合です。


年収が高ければ高いほどたくさん年金がもらえるというわけではないですね。


参考:日本年金機構

5. 高校授業料無償化

高校授業料無償化とは、公立高校の授業料を負担、私立高校には同じ額を国が支給してくれるものです。


2020年4月からは私立高校の授業料の無償化も始まることになりました。


しかし、この高校授業料無償化は年収910万円未満の世帯が対象となっているので年収910万円以上の家庭には支給されません。


またこの年収制限は、夫婦合わせての所得になるので注意する必要があります。


参考:文部科学省

6. 奨学金

高校や大学などの学費を貸与または給付を行う制度である奨学金。


そんな奨学金には

  • 日本学生支援機構(第一種、第二種)
  • 入学時特別増額付貸与奨学金
  • 地方自治体の奨学金
  • 民間企業の奨学金
  • 新聞奨学生制度
など数多くの種類があります。

しかし、奨学金を受け取るのにも収入制限があるのです。

第一種奨学金(無利息)の場合、所得の上限額の目安は以下のようになります。

世帯人数給与所得者給与所得者以外
3人657万円286万
4人747万円349万円
5人922万円514万円

第二種奨学金は利息があるため、第一種より少し所得上限額が上がります。
世帯人数給与所得者給与所得者以外
3人1,009万円601万円
4人1,100万円 692万円
5人1,300万円892万円

入学時特別増額付貸与奨学金は月々の奨学金とは別に、入学月に10万/20万/30万/40万/50万円から希望し増額した貸与を受けられるものです。

入学時特別増額付貸与奨学金は、第一種奨学金または第二種奨学金の申込者で、本人と配偶者の収入合計額が120万円以下であることが条件になります。

また、大学によっては大学独自の奨学金を設置していることがあります。
大学奨学金名収入制限
早稲田大学めざせ! 都の西北奨学金給与・年金収入金額 800万円未満(課税前)
その他事業所得金額 350万円未満
慶應義塾大学学問のすゝめ奨学金
給与・年金収入金額 1,000万円未満(税込)
その他事業所得金額514万円未満(税込)
明治大学明治大学特別給費奨学金なし(成績優秀者)
法政大学チャレンジ法政奨学金給与・年金収入金額 600万円以下(税込)
事業所得金額 197万円以下
青山学院大学地の塩、世の光奨学金給与・年金収入金額 800万円未満(税込)
その他、事業所得金額 350万円未満
立教大学自由の学府奨学金給与・年金収入金額 800万円未満(課税前)
その他、事業所得金額 350万円未満
中央大学中央大学予約奨学金給与・年金収入金額 700万円以下(税込)
その他、事業所得金額 346万円以下
表からわかるように、大学独自の奨学金があるほとんどの場合に収入制限があります。ただし、金額は大学によって異なりますので入学を検討している大学の奨学金を調べてみると良いですね。

参考:日本学生支援機構、各大学HP

7. 小児医療費助成制度

小児医療費助成とは、各地方公共団体が乳幼児の入院、通院でかかった自己負担額を助成する制度のことです。


各市区町村が主体となっているので、市区町村によって対象年齢や所得制限限度額が異なります。


限度額は子供の年齢や被扶養者の人数によって変わります。ここでいくつかの例を紹介します。

市区町村所得制限限度額対象年齢
横浜市(神奈川県)654万円(被扶養者3人)中学校3年生まで
千代田区(東京都)なし15歳まで
大阪市(大阪府)736万円未満(被扶養者3人) 
18歳まで
福岡市(福岡県)なし15歳まで
名古屋市(愛知県)なし18歳まで


このように、各市区町村によって所得制限限度額や対象年齢がそれぞれ異なっているので、住んでいる場所の小児医療費助成について確認してみてはいかがでしょうか。


参考:各地方自治体

8. すまい給付金

すまい給付金は、住宅購入者の金銭的負担を軽減するために制度で、所定の手続きを行うと現金が給付されます。


消費税が8%から10%に上がり、住宅取得者にとってかなりの負担になっているのでとても嬉しい制度です。


ただしこの給付金を受け取るには

  • 住宅を取得し登記上の持分を保有するとともにその住宅に居住する
  • 収入が一定以下
  • 50歳以上(住宅ローンを利用しない場合のみ)
という条件をクリアしなければなりません。

収入の上限は、
  • 消費税10%時:775万円
  • 消費税8%時:510万円
となっており、収入がこの上限を超えた場合は対象外になるので注意しましょう。

他にも、給付対象になる住宅として
  • 引上げ後の消費税率が適用されている
  • 床面積が50m2以上である
  • 第三者機関の検査を受けた住宅である
という要件が設けられており、新築と中古住宅でも要件が異なります。

また、この制度は平成26年4月から令和3年12月までの期限があるので、気になった方はお早めに検討するのが良いですね。

9. 特別障害手当

特別障害手当とは、精神または身体に重度の障害があることで日常生活で常時特別介護が必要な20歳以上の住宅障害者に支給されるものです。


この手当ては、以下の表の通り受給者かその配偶者、扶養義務者の所得によって受けられない場合があります。

被扶養者収入額(本人)所得額(本人)収入額
(配偶者/扶養義務者
所得額
(配偶者/扶養義務者)
0人518万円360.4万円831.9万円628.7万円
1人565.6万円398.4万円859.6万円653.6万円
2人613.2万円436.4万円883.2万円674.9万円
3人660.4万円474.4万円906.9万円696.2万円

被扶養者の人数によっても限度額が異なるので、一度確認してみてください。


参考:厚生労働省

10. 被災者生活再建支援金

被災者生活再建支援金とは、自然災害などで家が全壊し生活基盤に著しい被害を受けた世帯給付される支援金のことです。


暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火などの自然災害によって、

  • 住宅が全壊した(全壊世帯)
  • 住宅が半壊または住宅の敷地に被害が生じやむを得ずその住宅を解体した世帯(解体世帯)
  • 災害による危険な状態が続き、長期間住むことができない状態が継続している世帯(長期避難世帯)
  • 住宅が半壊し大規模な補修をしなければ住むことが困難な世帯(大規模半壊世帯) 
のような状態になった世帯が対象となります。

ただし、世帯年収や世帯人数で支給金額が異なり、収入によっては受給できない場合があります。

受給対象外の世帯収入は以下のようになります。

年齢世帯年収
44歳以下500万円以上
45歳〜59歳700万円以上
60歳以上800万円以上
年齢によって対象外になる世帯収入が変わるので、自分の年齢で一度確認してみると良いですね。

参考:内閣府

11. 保育園の料金

保育園には「認可保育園」と「認可外保育園」の2種類がありますが、それぞれ保育料が異なります。


また、どちらの保育園も世帯年収によって保育料が変わります。


以下は、国の定める最大の保育料です。地域・自治体によってはもっと安くなります。

所得割課税額満3歳以上(標準時間)満3歳未満(標準時間)
生活保護世帯0円0円
市町村民税非課税世帯6,000円9,000円
所得割課税額
48,600円未満
16,500円19,500円
所得割課税額
97,000円未満
27,000円30,000円
所得割課税額
169,000円未満
41,500円44,500円
所得割課税額
301,000円未満
58,000円61,000円
所得割課税額
397,000円未満
77,000円80,000円
所得割課税額
397,000円以上
101,000円104,000円


世帯年収だけでなく、子供の年齢や人数、保育時間によっても保育料は変わりますが同じ年齢で同じ保育時間なのに、年収が高い方が保育料が高くなるので大変です。

年収700万の人と年収1,000万円の人を比較してみる

これだけたくさんの制度を比較してみましたが、実際のところ、どのくらい違うのでしょうか。今回は、

  • 年収が1,000万円の方(配偶者所得なし)
  • 年収が700万円の方(配偶者所得なし)
の方を比較してみました。

その結果が以下の表です。


1つ目は、所得税です。配偶者控除をはじめ、たくさんの控除制度があるため人によりある程度は前後しますが、おおよその値はこのようになるでしょう。年間約50万の違いが生じます。


2つ目は、児童手当です、これは年間にすると12万円の違いです。


3つ目は、高額医療費制度についてです。今回は、総額で100万円かかる手術をした場合の医療費について試算しました。健康保険制度によって、どちらも3割負担よりは大きくなりませんが、その上限値が年収によって大きく変わってしまいます。今回は約8.5万の違いが生じました。


4つ目は、厚生年金です、これは4万円しか変わりませんでした。


5つ目は、公立高校の授業料です。2020年4月から、私立高校の学費補助の枠が広がります。ただ、年収1,000万円の世帯は制度の対象外で、年間11.8万円かかります。


6つ目は日本学生支援機構の奨学金です。年収1,000万円世帯では、利息ありの奨学金のみ借りることができます。


7つ目は小児医療費用です。これは自治体によって大きく異なりますが、大阪市の制度を利用したことを想定しました。


8つ目は保育園の料金です。これは国により定められた最大の額ですが、年収1,000万だと月間で8万円もかかることがあります。ただ多くの場合、条例などでもっと安くなっています。

年収1,000万円でも、子供がいるとかなりお金がかかり大変なことも

今回は、年収1,000万円の方が損をする制度について調べましたが、いかがだったでしょうか。


多くの制度では、年収500万〜年収1,000万のあたりに基準ラインが引かれているため、補助金の額が少なかったり、取られる税金が多かったりしますね。


特に、子供に関する制度ではそれが顕著でした。子供が私立の高校、大学に通う場合、むしろ年収1,000万円程度の家庭が一番大変かもしれません。

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