国民健康保険が軽減・免除される年収の条件は?退職や失業も対象に?

国民健康保険料は所得(年収)によって自動的に軽減され、その後、場合によっては、減額、全額免除されることもあります。今回は、国民健康保険料について説明し、所得(年収)がいくらなら軽減・減額・全額免除されるのかを説明します。

国民健康保険料が軽減・免除される所得(年収)の条件は?

税金と同じく所得(年収)を得ると支払いが必要なものに、社会保険料があります。


自営業や無職の方なら国民健康保険、サラリーマンなら健康保険に加入する必要があります。


国民健康保険や健康保険は、医療費の自己負担額が3割までになるとても便利な制度です。


サラリーマンの方は、毎月の給料から健康保険料が控除されているので、あまり問題はないかもしれません。


ですが、国民健康保険の加入者は、自営業者や無職の方が多くなります。


仕事を辞めて収入がなくなった、起業して収入が安定しないなどの理由から、国民健康保険料を支払いたくても、支払うことが難しい場合もあるのではないでしょうか。


今回は、国民健康保険料を支払うことが難しいと感じている方へ、

  • 国民健康保険料の軽減や免除制度の内容について
  • 軽減や免除制度を受けるための所得条件について
  • 軽減や免除制度を受けるための具体的な手続き方法について
以上のことについてお伝えしていきます。


この記事を読めば、どれくらいの所得(年収)であれば、国民健康保険料の軽減や免除を受けられるのか、その手続き方法についても分かるようになります。


ぜひ、最後までご覧ください。


なお、年収所得について厳密には違います。しかし、今回は国民健康保険料の説明ですので、所得について記載する部分について年収を括弧書きで記載していますので、同じようなものと考えて読み進めてください。

国民健康保険料の軽減は前年の所得と家族構成で決まる

国民健康保険料はどのように決まるのでしょうか。


税金やサラリーマンが加入する健康保険は所得額(年収)によって金額が決まります。


国民健康保険料も所得額で決定される部分もありますが、それ以外で決定される部分もあるため、他の制度と比較して少し複雑になっています。


まず、大まかな理解として国民健康保険料は、前年の所得額(年収)家族構成(世帯の人数)によって決定されます。


国民健康保険料を決定する際の項目として、所得割均等割世帯割の3つの項目があります。この3つでそれぞれ計算された金額の合計額が、健康保険料として決定されます。


まず、所得割はその名の通り、所得額(年収)によって決まります。


この所得額(年収)ですが、前年の世帯総所得(年収)をもとに計算されます。


夫のみ働いている場合は夫の所得(年収)が、妻も働いている場合は妻の所得(年収)を合算して計算します。


次に均等割です。


均等割は世帯の人数に対してかかります。1人あたりの金額を市町村で定めているので、定められた人数×世帯人数になります。


ポイントとしては、世帯人数には所得(年収)のある人だけではなく、収入のない主婦や子供であっても計算をする際の人数に加算される点です。国民健康保険は健康保険と比較して、扶養の概念がないと言われる所以です。


最後に世帯割があります。


世帯割は1世帯ごとの金額が市町村ごとに定められており、各世帯を1単位として金額が算定されます。


所得割と均等割は全ての市町村で定められていますが、世帯割は定められている自治体と定めていない自治体に分かれます。


国民健康保険料が決定される計算の概要について説明しましたが、保険料の減額を受ける際は前年の所得(年収)と世帯人数がポイントとなります。


税金の場合もそうですが、所得(年収)がより低く、世帯人数が多いほうがより減額の割合も高くなります。

国民健康保険料は軽減・免除・全額免除の3つに分かれる

国民健康保険料はどのように安くなるのでしょうか。


一口に減額といっても、具体的には軽減免除全額免除の3段階に分かれます。


まず、減額の1段階目は軽減が適用されます。所得(年収)が一定以下の場合、世帯の人数が多い場合は、それぞれ7割5割2割と保険料が軽減されます。


所得(年収)が低いほど、世帯人数が多いほど軽減される割合は2割→5割→7割と大きくなります。


軽減は前年の所得(年収)をもとに適用されるため、確定申告を行うか、自治体に住民税の申告を行っていれば、軽減を受けるための申請手続きは不要です。


軽減だけでは保険料の負担が大きい場合、次に免除が適用されます。


免除は所得(年収)がもともと低い場合に適用されるというよりも、会社の倒産や退職、災害にあった場合など、前年とは状況が大きく変化した場合に適用されます。


最後の全額免除は、内容としては免除と同じですが、免除額が100%となることを指します。


なお、免除と全額免除については、軽減と違い、申請手続きが必要になりますので注意してください。


国民健康保険料の軽減判定は自動的に行われる

国民健康保険料の減額を受ける制度のうち、まずは軽減について説明します。


先ほど説明した通り、軽減の判定は確定申告や住民税の申告内容をもとに、市町村側で行われます。


雇用されている方は会社での年末調整を、自営業者の方などは確定申告を行えば、年収(所得)について申告を受けた税務署からお住まいの自治体に申告内容が通知されます。


年末調整、確定申告ともに対象となっていない方は、年収(所得)について自治体への申告が必要になりますのでご注意ください。

まずは自分の世帯の前年の総所得(年収)金額を計算しよう

ここから総所得(世帯年収)金額の計算を行います。


最初に、所得割については世帯の総所得に基づき計算されること、所得と年収は本来は違うものですが、国民健康保険の制度について説明する際は便宜的に併記することをお話ししました。


所得について簡単に説明すると、収入から経費を引いたものが所得になります。

国民健康保険料は世帯の総所得になりますので、収入がある人の所得を各世帯で合計した金額になります。


なお、事業をしている方は、売り上げから費用を引いた額が所得になります。ですが、給料をもらっている方は、経費の内訳が分からない場合が多いので、収入に応じた費用(給与所得控除額と呼びます)が定められています。


そして、総所得(年収)額はあくまでも前年の金額に基づいて計算されることを再度思い出してください。

所得(年収)と家族構成別の軽減判定表

実際に国民健康保険料が軽減される所得(年収)を東京都23区に在住の場合でご紹介します。国民健康保険料の軽減が受けられる所得(年収)と世帯人数は表のようになります。


【平成31年度均等割額の減額基準】

減額区分
世帯の総所得(年収)減額後の均等割額(1人あたりの金額)
7割減額33万円15,660円
5割減額33万円+国保加入者の数×28万円26,100円
2割減額33万円+国保加入者の数×51万円41,760円

        (東京都江東区:国民健康保険料の計算方法、通知、軽減について)


上の表のうち、世帯の総所得(年収)の項目を世帯人数ごとに分けると次のとおりとなります。表の金額以下の場合にそれぞれの軽減を受けられます。


【世帯人数ごとの減額される所得額】

世帯の人数5割減額2割減額
1人33万円33万円
2人89万円135万円
3人117万円186万円
4人145万円237万円

では、ある家庭の例で計算してみます。


夫(給与所得:100万円)、妻(所得なし)、子供2人の世帯とします。

(夫、妻ともに40歳未満で、介護保険料の負担はなしとします。)


世帯人数が4人で世帯の総所得が100万ですので、上の表では5割減額の4人の部分、145万円までが5割減額となります。


先ほど、国民健康保険料は所得割、均等割、世帯割から構成されると説明しました。


国民健康保険料の軽減は3つのうち、均等割と世帯割に適用されます(所得割については、所得に応じて決定されるため、軽減はされません)。


東京都では世帯割がありませんので、均等割についてのみ軽減を受けられます。


軽減を受けられない場合の1人あたりの均等割額は、52,200円です。


5割軽減の場合の1人あたりの均等割額は、52,200円の半分となり、26,100円となります。



世帯全員で計算すると、

52,200円×4人=208,800円

の半分となるので、104,400円になります。


軽減前の保険料と軽減後の保険料を較してみましょう。

国民健康健康保険料軽減前軽減後
所得割63,583円63,583円
均等割208,800円104,400円
合計272,383円167,983円

所得割は軽減されないため、合計額も均等割の軽減分のみ軽減されます。


自己都合退職でない場合は所得割も軽減される

軽減についてご紹介しましたが、前の年と比較して所得(年収)が急に低くなってしまう方もいらっしゃると思います。

会社が倒産した、失業した(自己都合ではなく会社を退職した)、そのような方は所得割部分も軽減される制度があります。

この場合は、所得割を計算する際の所得を30%減額して計算し、均等割の軽減も適用されるため、さらに保険料が安くなります。

この制度については、これまでご紹介した軽減制度と違い、自治体での手続きが必要になりますので注意してください。

国民健康保険料が免除(減免)・全額免除される場合

所得(収入)が低い場合は国民健康保険料が軽減される制度についてご紹介されました。


先ほどのシュミレーションでもご紹介したとおり、軽減後の保険料もそれなりの金額になります。


軽減された金額でも国民健康保険料の支払いが難しい場合は、軽減後の保険料をさらに免除(軽減)する制度があります。

国民健康保険料が免除(減免)される場合

国民健康保険料が免除(減免)される条件は、自治体ごとに多少異なりますがおもなものをご紹介します。

  • 災害などにより、重大な損害を受けたとき
  • 経営している事業が継続できなくなり、収入が見込めない時
  • 預貯金などの資産を活用しても、保険料の支払いが不可能なとき
上記のような特殊な状況であり、保険料の支払いが困難と判定された場合は免除(減免)を受けることができます。


免除(減免)を受けるには、自治体での手続きが必要になりますので、条件に該当されると思われる方は、お住まいの自治体HPの確認、問い合わせをお願いします。


軽減の説明で、自己都合以外で退職し失業した場合は保険料の軽減を受けることが可能と説明しました。自己都合以外の退職し失業の場合は免除(減免)を受けることも可能な場合があります。


ですが、この場合は軽減と免除(減免)制度を併用することはできないため、事前に自治体の窓口でどちらが有利になるかご相談されることをオススメします。

国民健康保険料が全額免除される場合

国民健康保険料が免除(減免)される条件について説明しました。


では、全額減免される場合はどのような場合があるのでしょうか。


条件は自治体により少し異なりますが、主な条件として、

  • 生活保護を受給している
  • 障害者年金の1級・2級の認定を受けている
  • 解雇や事業清算のため、著しく生活が困窮している
  • 刑務所に服役している
以上のような条件があります。


全額減免については条件の適用がかなり限定されているため、公費から医療費が支給される生活保護受給者刑務所に服役しており、医療機関での治療が予定されない(刑務所内で治療を受ける)場合に限定されます。


生活に困窮している場合も全額免除される可能性はありますが、多くの場合は軽減や免除措置が適用されます。

国民健康保険料を減額・免除するための申請手続きは自治体へ

これまで、国民健康保険料の負担が重い場合に負担を軽くする制度として、軽減、免除(減免)、全額免除の制度についてご紹介しました。


所得が低い場合の軽減については、確定申告や住民税の申告内容をもとに、自動的に適用されます。ですが、自己都合以外の退職により軽減の措置を受ける場合、免除(減免)、全額免除の適用を受ける場合は、自治体での手続きが必要になります。


手続きの際には、印鑑や健康保険証が必要になります。


ご自身が制度の適用を受けられるかお住まいの自治体に確認し、申請に必要なものについても同時に確認されることをオススメします。


また、免除(減免)の手続きを行わずに、保険料を滞納することはオススメしません。

確かに、保険料を一時的に支払わなくてもいいように感じますが、健康保険証が使えなくなり、治療費を全額自己負担しなければならなくなります。


最悪の場合は、財産を差し押さえられることもあるので、面倒でも、自治体に相談するようにしてください。

参考:自治体ごとの国民健康保険料を計算してみよう

国民健康保険料の減額について説明する際、自治体ごとに条件が少しことなることを説明しました。軽減や免除のの条件も自治体によって異なりますが、保険料も自治体により少し異なります。

今回は参考として、広島県広島市と愛知県名古屋市を比較してみます。

【夫38歳(給与収入:300万円)、妻37歳(収入なし)、子供2人】
保険料広島市名古屋市
1年あたり292,970 円340,200 円 
1回あたり(1年あたりの金額を10分割)29,297円34,020円

1回あたりの保険料は、多くの自治体で年額を10分割して納付することから、年額の10分の1の金額を記載しています。

名古屋市と広島市では年間で5万円、1回あたり5千円の差があります。

各自治体のHPなどで国民健康保険料の計算ができる場合や、いろいろな自治体のシュミレーションができるサイトもありますので、活用してみてください。

まとめ:国民健康保険料の軽減・減額について

国民健康保険料の軽減・減額制度について説明しました。


今回の記事のポイントは

  • 所得(年収)が低い場合は軽減の制度を受けることが可能
  • 軽減を受けても保険料を支払えない場合は、免除(減免)を受けることも可能
  • 最悪の場合は、全額免除される場合もある
  • 保険料の延滞は財産を差し押さえされる場合もあるので、自治体へ相談
です。


健康保険は医療費の自己負担が最高3割になる便利な制度ですが、保険料の支払いは安くはありません。


また、これまである程度の収入があった方も、退職や事業の経営不振などにより、保険料を一時的に負担することが難しくなる時期があるかもしれません。


安易に保険料を延滞するのではなく、容易されている軽減措置を受けるようにしましょう。


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