更新日:2018/12/25
相続税の評価方法を解説!「生命保険契約に関する権利」って何?
もしも、被保険者ではなく契約者が亡くなってしまった場合の相続税の決定方法をご存知ですか?それは解約払戻金の評価で相続税が決まります。解約払戻金を受け取る権利を「生命保険契約に関する権利」といいます。今回は、評価の決定方法や注意点ををご紹介します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
「生命保険契約に関する権利」の評価方法はどうやるの?
あなたは、「生命保険は、契約者・被保険者・保険金受取人など権利にかかわる人が多くて契約関係が理解しにくい」と思ったことはありませんか。
たとえば、保険料を払っていた契約者が被保険者より先に亡くなった場合、名義が変わるだけで実際に保険金が支払われるわけではありませんよね。
それでも「生命保険契約に関する権利」が発生し、相続税の課税対象になるっていうことをご存知ですか?
このように、生命保険は契約や権利の関係がわかり難い為に相続の時に悩むことがあります。
特に、「生命保険契約に関する権利」は、その存在自体を知らない方も多く、相続税の申告漏れが多くなります。
そこで、今回は「生命保険契約に関する権利」について、
- 財産価値と評価方法
- デメリットと注意点
を解説していきます。
この記事をお読みいただくと、相続のとき問題の多い「生命保険契約に関する権利」について理解を深めるのに役立つかと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
「生命保険契約に関する権利」は解約払戻金の価値で決まる
掛け捨てを除く生命保険契約は、解約すると解約返戻金が発生しますよね。
そして、契約者はいつでも契約を解約して払戻金を受け取る権利を持っていますが、このような権利を「生命保険契約に関する権利」と呼ぶのです。
その評価方法は、
国税庁の「生命保険に関する権利の評価」法令によりますと、「生命保険契約に関する権利の価額は、相続開始の時においてその契約を解約するとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額によって評価します。」 と定められています。
つまり、「生命保険契約に関する権利」の相続税評価額は、保険契約者が死亡した当日に保険を解約したものと仮定して計算されます。
その算出方法は、
解約時点までに、前納した保険料や保険会社からの配当金があれば加算し、解約時点に源泉徴収される所得税等を差し引き、「解約返戻金」という額で評価するのです。
この評価額を自分で計算することはとても難しいため、保険会社に相続税評価額の問い合わせをして確認します。
尚、保険会社の回答までには時間を有しますので、時間に余裕をもっておくとよいでしょう。
解約払戻金で評価減?相続財産の圧縮
あまりご存知ない方も多いのですが、実は、生命保険をうまく活用すれば節税対策につながります。
そのわけは、「解約払戻金で評価減」すれば「相続財産を圧縮」することになるからです。
少し難しい表現ですね。
手元に相続する現金1,000万円があったと仮定して、わかりやすくご説明しましょう。
1,000万円 × 50% = 500万円
つまり相続税額は500万円ということになります。②生命保険を活用した場合、相続財産の圧縮により節税することができます。
例えば、
- 契約者=父、被保険者=子、死亡保険金受取人=父、の契約形態で、
- 一定期間、解約返戻率が低いタイプ(開始から4年目までの解約返戻率0~20%、5年目から返戻率が急上昇するタイプ)の、年間保険料1,000万円の生命保険に、
4年目に相続が発生した場合の累計保険料は1,000万円ですから、
1,000万円 × 解約返戻率20% = 解約返戻金200万円
解約返戻金200万円 × 相続税率50%= 相続税額100万円
ということになります。
このように、相続税は一生に一度しか課税されないため、そのタイミングだけ上手に生命保険を活用した結果として、相続財産を圧縮できることになります。
①-②= 500-100 = 400万円
つまり、400万円も節税できるというわけです。
ポイントは、「相続発生時に返戻率の低い時に解約するのではなく、被保険者本人に契約者を名義変更しておき、保険はそのまま返戻率が高くなるまで新契約者が継続する」ことです。
このように、手元の現金をそのまま家族に残すのではなく、現金の一部を生命保険に変えておいおくと節税対策につながります。
解約払戻金で評価減を狙い、相続財産の評価額を圧縮することが出来れば、家族の相続税の負担が減ることになるのです。遺された家族への優しい配慮と言えるかもしれませんね。
相続税評価額はどのように知るの?
相続税評価額は以下の4つの方法によって知ることかできます。
- 保険証券で確認する
- 保険会社のホームページから確認する
- 保険会社へ電話してオペレーターに確認する
- 保険会社の窓口で確認する
「生命保険契約に関する権利」の3つのデメリット
生命保険や死亡退職金のように、被相続人が亡くなった事により相続人が受け取るお金を「みなし相続財産」といいます。
みなし相続財産に該当する「生命保険契約に関する権利」には注意しなければならない点があります。
ここからは「生命保険契約に関する権利」の3つのデメリットをご紹介しますので、頭の片隅においてください。
1.非課税枠を使用できない
生命保険の「死亡保険金」を受け取った場合、
「500万円×法定相続人の数」
まで、非課税扱いとなります。
生命保険契約に関する権利を相続するのは、被相続人が他の人に生命保険を掛けていたときです。この場合、被相続人が亡くなったことを理由に死亡保険金は支払われません。
死亡保険金に対する相続税の非課税枠は、生命保険から死亡保険金が支払われた場合にのみ適用されます。
したがって、「生命保険契約に関する権利」を相続したときは、その金額に対して「500万円×法定相続人の数」という非課税枠を使うことはできません。
2.遺産分割ができない
通常の相続では、被相続人の遺産は、相続人が集まって誰が何を相続するかを話し合いますよね。
これを「遺産分割協議」と呼びます。
生命保険に関する権利も遺産分割の対象となりますので、遺言がなければ相続人全員で権利の継承者を協議することになります。
ただし、保険契約者と保険料負担者が違う場合、遺産分割の対象にならないので注意が必要です。
例えば、保険金受取人が先に亡くなった場合は、受取人を変更するだけで生命保険契約自体に変更は生じません。ところが、解約払戻金相当の権利、すなわち「生命保険契約に関する権利」も相続されたものとみなして、相続税の課税対象となるからです。
これを「みなし相続財産」と呼びます。
「生命保険契約に関する権利」が「被相続人=保険料負担者≠保険契約者」の場合、みなし相続財産とみなされ、保険契約者のものになります。
よって、「みなし相続財産」は遺産分割協議で遺産分割することはできません。
3.相続放棄ができない
遺産分割協議と同様に、通常の相続と判断される契約内容であれば相続を放棄することは可能です。
ただし、みなし相続財産となる場合は相続放棄の対象にはなりません。
相続放棄は、被相続人に借金がある場合などによく活用されます。相続人は相続放棄をすることで、財産も引き継ぐことが出来ない代わりに、借金も一切引き継ぐことが出来なくなります。
ただし、生命保険契約に関する権利は、保険契約者と保険料負担者の関係によっては相続放棄の対象にならない場合があります。
つまり、①「被相続人=保険料負担者=保険契約者」の場合は、本来の相続財産と同様に相続放棄の対象になりますが、②「被相続人=保険料負担者≠保険契約者」の場合、相続放棄の対象にはなりません。
②のケースをわかりやすく説明しますと、
例えば、保険契約者が専業主婦の妻の場合、保険料の支払い者が夫の場合がよくありますよね。相続人は保険契約者ですが、保険料の支払いは被相続人である夫の口座から引き落とされていたために、みなし相続財産と判断されてしまうパターンです。
この場合、仮に、保険契約者である相続人が相続放棄をしても、保険契約に関する権利は相続放棄することはできません。
みなし相続財産は相続放棄をしても、生命保険契約に関する権利は保険契約者のものとなります。
まとめ:「生命保険契約に関する権利」の評価方法と3つのデメリット
さて、ここまで「生命保険契約に関する権利」について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回のこの記事のポイントは、
- 「生命保険契約に関する権利」の評価方法は「払戻解約金の額」で決まる。
- 「生命保険契約に関する権利」には、①非課税枠を使用できない、②遺産分割できない、③相続放棄できない、という三つのデメリットがある。
です。
以上、「生命保険契約に関する権利」は相続財産のひとつではありますが、その評価方法とデメリットや注意点を把握して、損のない相続税申告をするようにしましょう。
「ほけんROOM」では、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。