役員社宅の活用方法|失敗しないための4つのポイントを解説

役員社宅制度は、税効果もあり、社会保険料の負担軽減などもできる、さまざまなメリットのある制度です。社宅制度というと従業員の福利厚生というイメージがありますが、実は役員にも適用が可能です。この記事では役員社宅について詳しくご紹介していきます。ぜひ最後までご覧ください。

▼この記事を読んで欲しい人

  • 役員社宅について知りたい人
  • 役員社宅を取り入れたい人
  • 役員社宅の活用方法を知りたい人
  • 役員社宅を活用するときのポイントや注意点を知りたい人


▼この記事を読んでわかること

  • 役員社宅を活用できる仕組み
  • 役員社宅の家賃の設定方法
  • 役員社宅を活用するときのメリット
  • 役員社宅を活用するときのポイント
  • 役員社宅を活用するときの注意点

内容をまとめると

  • 役員社宅では会社が支払う分の家賃を損金算入できる
  • 会社が支払う家賃は役員報酬とならないため、社会保険料負担を軽減できる
  • 役員の住居を役員社宅とすることで、役員の可処分所得を増やすことができる
  • 役員社宅の家賃は住宅の規模によって算出するか、または賃料の50%
  • 豪華すぎる住宅は社宅と認定されない
  • 役員社宅へ役員が支払う家賃を50%とすると税効果が薄くなる
  • 役員が支払う家賃設定が無償だったり低すぎたりすると社宅認定されず給与所得とされる
  • 役員社宅を会社名義で購入すると住宅ローン控除は受けられない
  • 役員社宅として会社が購入した物件の売却には法人税がかかる
  • 役員社宅制度を導入するなら、役員専用の社内ルールが必要
  • 役員社宅の導入には初期費用がかかり、一時的にキャッシュフローが悪化する
  • 役員社宅の家賃以外の光熱費などの費用は課税対象となる
  • もとから役員が居住していた物件を法人名義に変更するのは困難
  • 税効果や福利厚生の充実には、法人保険もおすすめ
  • FPへの相談なら満足度93%マネーキャリアがおすすめ! 
  • マネーキャリアならプロのFPに全国どこでも無料相談ができる! 
  • マネーキャリアはオンライン対応なので、予約から面談までスマホ1つで可能! 

役員社宅の基本的な仕組み

役員社宅の基本的な仕組みをご説明します。


  1. 役員の住む物件を会社名義で借りて、会社が家主に家賃を支払う。
  2. その物件を社宅として役員に貸与し、入居する役員からは家賃の一部を受け取る。
  3. 会社が支払った家賃と、入居する役員から受け取った賃料との差額を経費にすることで、法人税の課税金額を抑えることができる。


つまり、役員社宅制度を設けることで、会社が負担する家賃の全額を損金算入でき、税効果が得られるということになります。


さらに、役員社宅制度には法人税の対策のほかにも、社会保険料の負担を軽減できたり、役員個人の可処分所得を増やすことができたりといったメリットもあります。


つぎからは、役員社宅活用時のメリットポイント注意点などについてさらに詳しくみていきます。

役員社宅活用時の3つのメリット

役員社宅を活用するメリットとは具体的にはどういったものがあるのでしょうか。


ここでは


  1. 役員社宅に支払う家賃は損金算入が可能
  2. 社会保険料の負担を減らすことができる
  3. 役員の可処分所得を増やすことができる


といった3つのメリットをご紹介します。

①役員社宅に支払う家賃は全額損金算入できる

役員社宅制度を取り入れて、役員が住む住居の家賃を会社が払った場合は、会社が支払った分の家賃は全額損金算入が可能です。


たとえば、賃料20万円の物件を役員社宅とした場合


  • 会社名義で物件を契約し、家主に20万円支払う
  • 会社から役員へ10万円で貸与する
  • 差額の10万円を「地代家賃」として経費に計上することができる


ということになります。


つまり、法人税を抑えることが可能となります。


また、物件を契約するときの仲介手数料や、引越し費用などの初期費用についても、規程に定めておけば経費に計上でき、さらに税効果が得られます。


ただし、役員から賃料をとらず無償で貸与すると、賃料全額が給与として扱われ、この場合は税効果が得られません。

②社会保険料を軽減できる

役員の住む住居を役員社宅とすることで、役員報酬としての金額が減ることになります。


その結果、社会保険料の負担を軽くすることができます。


従業員の給与には社会保険料がかかり、その一部は会社が負担しており、役員についても同様です。


役員が社宅に住むということになれば、役員が社宅の家賃を給与から会社へ支払うということになります。


つまり、給与から家賃分を引いた金額が報酬金額となります。


社会保険料月額の報酬金額に掛け合わせて算出されますので、結果として会社も役員個人も社会保険料の負担が軽くなる、ということになります。

③可処分所得が増える

役員社宅制度を導入することで、役員の可処分所得を増やすことができます。


役員が役員社宅に住むことで、家賃の一部を会社が負担するため、家賃負担が軽減されます。


また、役員報酬から会社へ支払う社宅の家賃分が引かれる為、所得税社会保険料住民税などの負担が軽減されることとなります。


もし、役員社宅制度を取り入れず、役員が個人で住居を契約した場合には、単なる給与からの自己負担となります。


しかし、役員社宅制度を活用すれば、会社としても個人としても税効果が得られます。


個人事業主のみなさんにとっても、かなり有効な方法といえるでしょう。

役員社宅の家賃の具体的な設定方法

役員社宅で税金対策するには、会社から役員に貸与する物件について税務署に社宅として認めてもらう必要があります。


たとえば、役員が会社に支払う家賃が低ければ社宅とはみなされず、会社が支払う家賃も給与報酬として判断され、税効果は得られません。


会社が役員に貸与する物件が社宅とみなされるには、国税庁が定めた「一定額」以上の家賃を役員が会社に支払う必要があります。


役員が会社に支払う社宅の家賃は、床面積などの諸条件から、3つの区分に分けて設定されています。


  • 小規模な住宅の場合
  • 一般的な住宅の場合
  • 豪華な住宅の場合


ここでは役員が支払う家賃の算出の仕方について、以上の3つをお伝えします。

小規模な住宅の場合

役員に貸与する住宅が小規模な住宅というのは、以下の条件を満たす物件です。

▼法定耐用年数が30年以下の物件 

  • 床面積が132㎡以下

▼法定耐用年数が30年を超える物件

  • 床面積が99㎡以下

役員に貸与する住宅が小規模な住宅だった場合の家賃相当額は以下となります。

  1.  (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2% 
  2. 12円×(その建物の総床面積(㎡)/(3.3㎡))
  3.  (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

<参考>国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」

一般的な住宅の場合

役員に貸与する住宅が小規模な住宅ではない場合は、その物件が「自社所有」「賃貸物件」かで算出の仕方は違ってきます。


▼自社所有の社宅の場合


次の1と2の合計額の12分の1が家賃相当額となります。


  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
     ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%を乗じる
  2. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%


▼他から借り受けた住宅等を貸与する場合


会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記「自社所有の社宅の場合」で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額家賃相当額になる


<参考>国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」

豪華な住宅の場合

「小規模な住宅」にも「一般的な住宅」にも該当しない「豪華な住宅」の場合は、上記の算式の適用はありません。

通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。

つまり、家賃の全額が役員の負担となるので、役員社宅の税効果は得られません。

豪華な住宅というのは、以下のような物件です。

▼床面積が240㎡以上

  • 物件の価格
  • 賃料
  • 内装/外装

などについて、総合的に判断します。

なお、床面積が240㎡以下のものでも、


  • プールなどの設備
  • 役員の個人的な好みによる設備

などが設置されている物件などは、豪華住宅とみなされる可能性があります。


<参考>国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」

役員社宅を活用する際の4つのポイント

役員社宅を活用する為には、いくつか知っておきたいポイントがあります。


ここでは


  • 役員が支払う家賃を50%以上にすると税効果が薄くなる
  • 役員が支払う家賃が無償や少額であると、給与とみなされ課税されてしまう
  • 役員社宅では住宅ローン控除は受けられない
  • 役員社宅では住宅を個人に売却する際には法人税がかかる


といったことをお伝えします。

①役員が支払う家賃が50%以上では税効果は薄い

役員社宅で役員が会社に支払う家賃の設定では、「家賃の50%」とする場合がよくあります。


これは、住宅の床面積で家賃相当額を計算することが難しかったり、面倒であったりするときは家賃の50%として設定することが認められているからです。


役員社宅の家賃を、家賃の50%としている会社が多いのは、このためです。


しかし、役員が支払う家賃を家賃の50%とすると、税効果としては薄くなってしまいます。


実は、床面積から計算する家賃相当額が家賃の50%以下となることがほとんどで、おおよそ10%~20%が目安となっています。


役員が会社へ支払う家賃がより少ない方が、会社としてはより多くの金額を損金算入でき、税効果は高くなります。


住宅の規模から家賃相当額を算出するには、固定資産税の課税標準額などを調べねばならず、難しいと思われるかもしれません。


ですが、より多くの税効果を得たいなら、安易に家賃の50%で設定せず、住宅規模から算出して家賃を決めるのが良い方法でしょう。

②無償やとても少額な家賃だと給与として課税される

役員社宅を役員に無償で貸与したり、家賃を著しく低く設定したりすると、その住居は社宅としてみとめられません。


社宅としてみとめられなければ、会社が支払うその住居の家賃は役員に対する給与として扱われますので、税効果は得られないということになります。


また給与として課税対象ともなります。


役員社宅の家賃設定は、税務署から社宅としてみとめられる範囲で設定することが必要です。


また、「住宅手当」として家賃を支給した場合は、「役員報酬」とみなされて課税されることになります。注意しましょう。

③住宅ローンの控除は受けられない

社宅として会社で住宅を購入する場合に注意したいのが、住宅ローン控除が適用されないということです。


個人で住宅ローンを契約し住宅を購入するときには、所得税や住民税からローンの利息相当額について控除を受けることができます。


しかし、会社で購入すると住宅ローン控除を受けることができません。


住宅購入の場合は、会社で購入するべきか、個人で購入するべきか、メリット・デメリットを比較検討することが大切です。

④住宅を個人に売却する際には法人税がかかる

会社で社宅として所有している物件を売却する場合は、個人で所有する物件を売却するときよりも税金が高くなってしまいます。


なぜなら、会社で所有する物件を売却したときの利益については、会社の益金として計上するため、法人税の対象となるからです。


個人で所有する物件については、売却して利益がでたら譲渡所得税が課せられますが、特例制度の「3,000万円控除」が適用されるため、利益が3,000万円を超えなければ譲渡所得税は課税されないことになります。


役員のマイホームを購入するなら、個人で購入した方が税制上の優遇措置などもあるため有利といえます。


会社として役員社宅用の物件を購入することは、得策とはいえないでしょう。

役員社宅を活用するときに知るべき注意点

役員社宅を活用するときにはいくつか知っておきたい注意点があります。


  • 社内ルールの作成を綿密にしておくこと
  • 初期費用が大きくかかること
  • 家賃以外の負担は課税対象になること
  • もともと居住している賃貸物件を法人契約に変更することは困難であること


以上の点について、お伝えしていきます。

①社内ルールの作成を綿密に作成しておく

役員社宅を活用するために、まずは社内でのルールをしっかりと作成しておく必要があります。


従業員の社宅については、福利厚生として社内規程などに定められていますが、役員社宅についてはこれとは別に役員用の社宅規程を設けておくのがよいでしょう。


なぜなら、税務に関して役員と従業員では取り扱いが異なるからです。


役員社宅の利用方法などについてのルールが定められていなければ、税務調査などで問題となってしまうことがあります。


役員社宅のメリットをしっかりと活用するためにも、役員用の社宅規程は用意しておくことをおすすめします。

②初期費用が大きくかかる

役員社宅制度を導入するときの注意点のひとつとしてあげられるのは、初期費用がかかり、資金負担が発生することです。


役員社宅として会社名義で物件を借りるときには


  • 敷金
  • 手数料
  • 各種書類の作成費用


といった、契約時の初期費用がかかります。


一時的にではありますが、経費負担が増え、キャッシュフローが悪化するということを念頭にいれておく必要があるでしょう。

③家賃以外の負担は課税の対象になる

役員社宅を活用するとき、家賃以外の諸費用については課税対象となりますので覚えておきましょう。


たとえば、水道代や電気代、ガス代などの光熱費を会社が負担する場合は、役員報酬となり、課税対象となります。


ただし、共益費については、家賃とみなしても大丈夫です。

④既に居住している賃貸物件を法人契約に変更は難しい

もともと役員が個人で契約している物件を、途中から役員社宅として会社名義にすることはカンタンではありません。


一般的には、個人契約から法人契約へ名義変更することはできません。


ですから、多くの場合は、契約の手続きを最初からやり直すということになってしまいますので、注意が必要です。

福利厚生を考えるなら法人保険の検討もするべき!

役員社宅制度の導入は、税金対策の効果もあり、福利厚生としての面も備えているため、会社の経営者や個人事業主にとっては検討するメリットのある制度といえます。


ただし、導入についてはさまざまな留意すべきポイントや注意点もあり、しっかりとした知識や情報を持ったプロのアドバイスも欲しいところです。


そんなときは、マネーキャリアでの相談をおすすめします。


役員社宅制度についての相談はもちろんですが、税金対策と福利厚生についてお考えなら、「法人保険」についての相談も可能です。


サービス内容が多岐にわたっているため複雑でわかりにくい法人保険ですが、法人保険の導入には福利厚生の充実税効果など、さまざまなメリットがあります。


マネーキャリアなら、全国どこでも無料でオンライン相談が可能です。


気になることがあったなら、気軽にマネーキャリアの無料相談をご活用ください。


お金や保険のプロフェッショナルであるFP(ファイナンシャルプランナー)が、豊富な知識と情報であなたの疑問点や悩みにお応えします。

まとめ

今回は、役員社宅仕組みや、役員社宅を活用するときのポイント・注意点などをまとめてお伝えしました。


役員社宅は、税効果もあり、社会保険料の負担も少なくできるなど、さまざまなメリットを備えています。


しかし、役員社宅の税効果を知って導入している経営者や個人事業主は、まだまだ多くはないようです。


今回の記事をご覧いただくことで役員社宅について知っていただき、その効果を十分に発揮できるよう、ご活用ください。


ほけんROOMでは他にも法人保険に関する記事を多数掲載していますので、興味なる方はぜひ参考にしてください。

ランキング