放火の被害は火災保険で補償される?3つの補償されないケースも解説

放火は火災の出火原因1位であり、その被害の対策を十分にしていても100%防げる保証はどこにもありません。いつ身の回りに起きるかわからない放火ですが、火災保険は適用されるのでしょうか?今回は、放火が起きた際の火災保険の補償範囲や例外について紹介します。

目次を使って気になるところから読みましょう!

放火で自宅が火事になった場合に火災保険は使える?

近所で放火事件が起きると、いつか自分の家も被害に遭うのではないかと不安になってしまいますよね。


そのように不安に思うと、万が一自宅が放火の被害に遭ったとき、火災保険で放火の被害も補償できるのか気になってくるのではないでしょうか。


基本的に、火災保険では放火の被害もカバーできますが、火災保険の契約者の対応によっては、放火の被害を補償してもらえないこともあります。


そこで、この記事では「火災保険と放火」について、

  • 放火による被害は火災保険で補償されるのか
  • 火災保険で放火の被害が補償されないケース
  • 火災保険の保険金の請求方法
  • 今すぐできる放火対策

以上のことを中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、放火を防ぐ方法や、万が一放火の被害に遭ってしまったときに補償金をもらう方法が分かります。


ぜひ最後までご覧ください。


基本的に放火による火事の場合は火災保険で補償される!

基本的に、放火による火事が発生したときは、火災保険で補償できます。


1997~2016年度の火災の原因において、放火による火災は1位を占めていました。また、2021年度の放火および放火の疑いによる火災は、全体の11.0%という非常に高い割合を占めています。


このように放火による火事は、決してまれなことではないのです。


「放火」と一口に言っても、放火の原因や状況はさまざまです。


本当に関係ない第三者が家に火をつけるケースはもちろん、家族などの関係者が意図的に火をつけるというケースもあります。


放火の犯人や状況によっては、必ずしも火災保険の補償金が下りるわけではありません。


では、火災保険による放火の補償範囲について、簡単にご説明していきますね。

放火は火災保険で必ず補償される!補償範囲について解説

原則、火災保険で放火の被害は補償されるのですが、中には補償対象外となるケースもあります。


放火が、契約者や被保険者の

  • 故意
  • 重大な過失
  • 法令違反

によるものであった場合は、火災保険の補償対象外となってしまいます


例えば、火災保険の契約者が故意に放火したり、「放火が起きる」と明らかに予想できる状態だったにもかかわらず何もしなかったりという場合などは、放火による被害が出ても、火災保険で補償されません。


上記のような状態で放火が行われた場合は、火災保険の免責事項(保険会社が補償金を支払わなくてもよいケースのこと)にあてはまり、補償金が下りないのでくれぐれも注意しましょう。


では、放火が免責事項にあてはまるケースをいくつかご紹介します。

家族(身内)または従業員が故意に放火をした場合は免責になる

家族従業員などが故意に放火した場合は、火災保険の免責事項にあてはまるため、補償金は出ないです。


たとえ、放火した家族や従業員などが火災保険の契約者・被保険者でなかったとしても、補償金をもらえるケースは非常に少ないです。


火災保険の保険金目的で放火することを防ぐためですね。


過去の裁判事例では、「従業員が、火災保険の契約者の意図をくみとって放火した可能性が高い」とされ、補償金が下りなかった例もあります。


もちろん、故意な放火とはいっても、まったく関係ない第三者の故意な放火は、基本的に火災保険で補償されるので安心してください。

重大な過失があった場合も免責になってしまう

火災が起こりやすい状態を放置していたりと、放火・火災を誘発するような重大な過失があった場合、免責事項に該当し保険金は受け取れません。


例えば過去にあった裁判事例では、

  • 鍵をかけないまま長期間空き家のまま放置し放火犯が侵入した
  • 電気会社から指摘された漏電疑いを放置し、修理やブレーカーの切断を怠った
  • 石油ストーブの近くで、しっかりと固定されない状態で洋服を吊るしていた

などがあります。


戸締りは確実に行い、燃えやすいものはしまっておく等、火災を引き起こすことを予知できるような状態は防ぐようにしましょう。

ただし、精神疾患を持つ人による放火は免責事項は適用されない!

過去事例では、「精神障害に罹患し、自由な意思決定が出来ない状態における事故は免責事項に該当しない」と判決が下っています。つまり心神喪失等の精神疾患を持っている犯人による放火の場合、火災保険の保険金は受け取ることが出来ません。(参考:平成26年神戸地裁判決)


令和元年度の犯罪白書によると、平成30年の放火による総検挙数537件のうち、精神疾患者による放火は94件であり、約17.5%が精神障害を持つ犯人による犯行です。

(参考:令和元年版 犯罪白書

火災保険で空き家の補償は対象外になることがある

多くの火災保険では、空き家は補償対象外となっています。普段から住居として利用している建物に比べると、空き家は放火による火災や、隣家からの延焼等のリスクが高くなるためです。


また、すでに火災保険に加入済みの場合であっても、途中から人が住まず空き家となってしまった場合であっても、保険会社はその事実を知るすべがありませんので、保険料支払いは継続します。しかし、火災が発生し、いざ保険金請求をしようすると、補償対象外となってしまう可能性もあるので、定期的な保険見直しは大切です。

焼損の程度によって支払われる保険金額は変わる

放火被害にあった場合に、保険金はいくらもらえるのでしょうか。


保険金額は損害度合いによって異なります。保険金額を決める損害度合いは、保険会社によっても異なりますが、

基準損害度合い
全損契約金額の50%損失または、床面積の70%以上を損害
半損契約金額の20~50%を損失または、床面積の20~70%未満を損害

とされています。


損失度合いは、保険会社による判断となるので、実際にどちらに該当するかは分かりません。保険金請求時は、被害状況を正しく伝えるようにしましょう。

被害にあったら速やかに保険金の請求を

万が一、放火の被害にあった場合にはできるだけ早く火災保険の保険金の請求申請をしましょう。


火災保険の請求期限は3年ですが、時間が経つにつれて原因の追究が難しくなります。


もし、保険会社が経年劣化と判断した場合には、保険金を受け取れないこともあります。


ここでは火災保険の保険金の請求方法について簡単に解説しますので、請求する際の参考にしてください。

被害状況を確認

安全が確保できたら、まずは被害状況を確認しましょう。


保険会社に連絡をする際には、火災が起こった日時や場所だけでなく、原因や損害状況などを伝える必要があります。事前にメモしておくと、保険会社に連絡した際にも確実に説明できます。


被害状況を確認する際には、被害状況が分かる写真や動画を撮影しておきましょう。


保険会社に被害状況を説明するときの証拠として利用できるので、アップの写真や少し離れたところからの写真など複数枚の撮影を行っておくことをおすすめします。

被害にあったらすぐに保険会社に連絡

被害状況を確認したら、できるだけ早く保険会社の事故受付窓口に連絡しましょう。


代理店を通して契約している場合には、代理店に連絡をすると保険会社への連絡を代理店が代行してくれる場合もあります。


また、インターネットで受付を行っている保険会社もあります。


連絡する際には、手元に保険証書を準備しておきましょう


連絡の際には、氏名や連絡先のほかに証券番号、事故の日時や場所、事故の原因や被害状況などについて伝える必要があります。事前に準備しておくことで、スムーズに対応できるでしょう。

修理業者へ連絡、見積もり

修理業者へ連絡を行い、見積もりを取りましょう。修理業者の手配は、自分自身で行う必要があります。


修理業者を選定する際には、インターネットなどで口コミを参考にして選んだり、地元で優良とされている業者を選んだりすることが重要です。


できるだけ複数の修理業者に見積もりを依頼し、比較することをおすすめします。


インターネット上には、一括見積ができるサイトもあるので利用してみるとよいでしょう。


修理業者の中には、契約者に対して不当な保険金を請求させようとする悪徳業者も存在するので、注意しましょう。

保険金の請求に必要な書類を提出

保険金の請求に必要な書類を作成し、提出しましょう。


申請の際に必要な書類には、保険会社から送付されてくるものと自分で準備する必要があるものがあります。


たとえば火災保険の保険金申請には、

  • 保険金請求書
  • 修理業者などから受け取った見積書
  • 損害部分の写真
などが必要となります。

他にも「事故内容報告書」や「罹災証明書」、「住民票」などが必要となる場合もあります。

提出する資料は多いですが、火災保険の審査は、提出された資料をもとに行われるため、不足がないように提出することが重要です。 

火災保険に必要な書類は、損害の程度や種類、保険会社によって異なります。保険会社の指定された書類をもれなく準備して提出しましょう。

保険会社による現地調査、審査

提出した書類をもとに、保険会社で審査が行われます。


書類に不備がある場合には、保険会社から連絡があるので対応しましょう。


また、保険会社に提出した写真だけでは判断が難しい場合や請求金額が相場よりも高額な場合には現地調査を求められる場合があります。


現地での調査が必要な場合には、保険会社から鑑定人が発見されて調査が行われます。


鑑定人による調査では、調査の立ち会いや被害の説明が求められることがあるので、その都度対応しましょう。

保険金を受け取ったら、建物の再建築や家財の購入

保険会社の審査が終わり、保険金の支払いが確定したら、保険会社から連絡があります。


契約者が保険金額に合意すると、契約者の口座に保険金が振り込まれます。


入金の確認後、建物の修理や家財道具の購入などを行いましょう


保険会社に請求する前に修理などを行うと、証拠として保険会社に提示するものがなくなってしまい、保険金が受け取れない場合があるので注意してくださいね。

適切な保険金を受け取るためのコツをご紹介

保険金の請求申請の流れを説明してきましたが、保険金請求をしても審査に通らずに保険金が受け取れない場合があります。


請求の際のコツを把握し、適切な保険金が受け取れるようにしておきましょう。


請求~支払をスムーズに進めるためのコツとしては、

  1. 被害状況が正しく伝わるように、片付け前の写真を複数枚撮影する
  2. 事故内容報告書、修理見積書は詳細に正確に記載する
  3. 保険会社から求められる必要書類は漏れなく提出する
  4. 保険請求期限である3年以内に、請求を行う

などが挙げられます。


特に、損害を小さく判断されて、必要な保険金が下りない事態を避けるためにも、被害状況を正確に伝えられるように写真や事故内容報告書・見積書を揃えるのが大切です。


万が一のケースに備えて、請求方法やコツは頭に入れておくと安心です。ぜひ参考にしてみてください。

火災保険の申請時には詐欺に注意しよう!

火災保険への事故報告や請求申請は手続きや書類が煩雑で難しいので、保険の申請をサポートしてくれる業者があります。しかし、サポート業者の中には悪質な代行業者がいるのも事実です。


また、保険金が出るからと言って不要な工事を進めてくる修理業者も存在します。


そのため、火災保険の請求申請の際には、詐欺にあわないように十分に注意しましょう。  


詐欺にあわないために下記のような点には注意しておきましょう。

  • 火災保険の内容を熟知しているか
  • 不要な工事を進めてこないか
  • 「保険金で修理が無料になる」などのセールストークをしないか
  • 火災保険の適用外となった場合の対応について説明してくれるか
  • 保険金額が確定してから工事に入るか
  • 正確な見積書を作成してくれるか
  • 契約内容を丁寧に説明してくれるか
このようなポイントに気を付けながら優良な業者を選んでみてください。

そのためにも、見積もりは1社だけではなく、2~3社から見積もりを取るようにしましょう。

参考:放火の犯人に損害賠償の支払いを請求することはできるのか

放火の被害に遭ったときは、まず、保険会社に補償金を請求します。


また、放火犯にも賠償責任があるため、民事裁判で放火犯に損害賠償請求できます。


賠償請求方法としては、裁判示談の2種類があり、それぞれで以下のような違いがあります。

賠償請求方法賠償金
裁判家財・住宅の損害額(時価)
示談家財・住宅の損害額の50~120%

賠償請求までの基本的な流れとしては、

  1. 刑事裁判(容疑者が放火したかどうかを確定するため)
  2. 民事裁判または示談(賠償請求額を決めるため)

という流れが基本です。


民事裁判を選ぶか示談を選ぶかは、被害者が決められます。


裁判の場合、火災保険で補償しきれなかった金額を犯人に請求できます。


ただし、裁判の場合は、刑事裁判で放火犯が有罪にならなければ損害賠償を請求できないので、有罪が決定し、賠償金が下りるまでに1年以上かかることもあるでしょう。


基本的に、放火犯から示談の申し出がなかった場合は、裁判を選択する可能性が高いです。


被害者が自ら示談を申し入れると、賠償金が少なくなってしまうことが多いからです。


「裁判に時間がかけられない」という方は示談、「時間がかかってもよいので、きちんと時価分の賠償金を請求したい」という方は裁判を選ぶのがよいかもしれません。


また、犯人が見つからなかった場合でも、放火が火災保険の契約者と関係ない第三者によるものだと分かれば、火災保険の保険金は下りるので安心してください。

放火に遭わないための対策を紹介

ここまで、火災保険で補償される放火の被害について説明してきました。


火災保険では多くの場合で放火の際に、保険金が下ります。


しかし、いくら火災保険で補償金が下りたとしても、燃えてしまった大切な家財などは二度と戻ってきません。


場合によっては、大切な人の命すら失ってしまうこともあります。


できることなら、保険金にかかわらず、そもそも放火被害に遭わないようにしたいものですよね。


では、ここからは、今すぐできる放火に遭わないための対策をご紹介します。


記事としては終盤となりますが、皆さんにとって重要な対策方法を説明していくので、もう少し頑張って下さいね。


家の周りに燃えやすいものを置かない

放火を防ぐためには、まず、家の周りに燃えやすいものを置かないようにしましょう。


燃えるゴミを置いておいたり、段ボールなどを放置したりしてはいけません。


共同住宅の場合は、廊下や階段部分など、共用の部分に燃えやすいものを置かないように心がけましょう。


また、消火器がある場合は、消火器の周りに物を置かないことも大切です。


消火器の周りに所せましと物を置いていると、放火魔に「防火対策に関心がない家だ」と認識され、自宅が放火のターゲットにされる可能性もあります。

物置には鍵をかける

放火を防ぐには、物置に鍵をかけておくことも重要です。


放火犯は、物置車庫などに侵入し、車やバイクのボディカバーシートに火をつけることもあります。


家の周りの燃えやすいものを物置にしまったからといって安心せず、きちんと施錠することを忘れないようにしましょう。


さらに、ボディカバーシートなどを防炎仕様のものにしておけば万全です。

2022年10月の火災保険の保険料改定をご存じですか?

放火の被害にあった時、補償対象外になっていたということがないように火災保険の定期的な見直しが重要です。


火災保険に加入している方もいらっしゃると思いますが、2022年10月に火災保険の保険料が改定されることはご存じでしょうか。


自然災害の多発で2022年10月から保険料が値上がりする予定です。


また、これまでの最長契約年数は10年でしたが、保険料の改定に伴い最長5年契約に変更されます。一般的に、契約年数が長いほど、保険支払総額は安くなります。


そのため、今の内に一度火災保険を見直すことをおすすめします。


その際には、ぜひ一括見積をご利用ください。


下記の一括見積りサービスでは、無料で最大26商品の見積もりを最短即日で受け取れます。


補償内容の見直しもお考えの方は、保険アドバイザーに何度でも無料で相談にのってもらえるので、保険に詳しくない方でも安心です。


無理な勧誘はないので、気軽な気持ちで一括見積を利用してみてください。

まとめ:火災保険に加入していれば放火された場合でも安心

火災保険と放火について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回のこの記事のポイントは、

  • 放火による被害は火災保険で補償されるのか
  • 火災保険で放火の被害が補償されないケース
  • 今すぐできる放火対策

です。


基本的に、放火による被害は火災保険で補償されます。


ただし、保険の契約者・被保険者の関係者が故意に放火した場合や、放火事件が起きる可能性が高いと容易に推測できた場合などは、保険金が出ないこともあるので注意してください。


特に、燃えるものを無施錠で放置しているなど、契約者や被保険者が重大な過失を犯してしまう場合には注意しましょう。


大切な家・家財を守るため、重大な過失を犯さないためにも、普段から防火対策しておくことが大切です。


家の周りに燃えるものを置かず、物置や倉庫にはきちんと鍵をかけるように心がけましょう。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。  

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